日本消化器内視鏡学会雑誌
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58 巻, 7 号
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総説
  • 潟沼 朗生, 真口 宏介, 金 俊文, 矢根 圭, 高橋 邦幸
    2016 年 58 巻 7 号 p. 1205-1214
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/20
    ジャーナル フリー
    EUSは,空間分解能が高く胆膵疾患診断には欠かすことのできない検査法である.従来の機械走査式から電子走査式のEUSが開発されたことにより,画質の向上のみではなく,ドプラ機能による血流の評価,Tissue harmonicによるアーチファクトの軽減,Elastographyによる組織弾性評価,超音波造影剤を用いてEUSにより血流の評価を行うContrast enhanced EUS(CE-EUS)など,新機能が搭載された.Tissue harmonicにより,膵嚢胞性病変における嚢胞の境界・内部構造や充実性腫瘍における境界や内部エコーが,従来のBモード画像と比べ明瞭な画質が得られることが報告されている.またElastographyによる膵腫瘤性病変の良悪性の鑑別診断は,感度96.3-100%,特異度64.3%-67%と報告されている.CE-EUSによる良悪性の鑑別は,感度69-100%,特異度64-100%,正診率82-95%の成績である.EUS機器の進歩により,様々な新機能が使用可能となっているが,さらなる診断能の向上のためには,その特徴を理解し,適応を考え,適切な使用を行うことが重要である.
症例
  • 西川 倫子, 大井 充, 寺島 禎彦, 小畑 大輔, 吉江 智朗, 竹中 完, 塩見 英之, 藤田 剛, 東 健, 森永 友紀子
    2016 年 58 巻 7 号 p. 1215-1220
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/20
    ジャーナル フリー
    57歳男性.両下腿浮腫と腹部膨満感を主訴に受診し,上部消化管内視鏡(以下EGD)およびCT検査で4型進行胃癌が疑われたが胃粘膜の生検,周囲リンパ節のEUS-FNA(fine needle aspiration)では悪性所見を認めなかった.一方で著明な低蛋白血症を認めていたことより蛋白漏出シンチグラフィーを施行したところ消化管からの漏出を確認できた.大腸内視鏡(以下CS)上大腸粘膜に異常は認めなかったが,回腸から直腸すべての生検標本に好酸球の浸潤を認め,好酸球性胃腸炎に伴う蛋白漏出性胃腸症と診断した.
  • 原田 英, 八板 弘樹, 蔵原 晃一, 大城 由美, 長末 智寛, 久能 宣昭, 岩崎 一秀, 渕上 忠彦
    2016 年 58 巻 7 号 p. 1221-1226
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/20
    ジャーナル フリー
    症例は63歳,男性.多発性骨髄腫で当院内科加療中に黒色便を認め当センター紹介受診.上部消化管内視鏡で胃体上部大彎に,頂部に発赤調のびらんを伴う約9cmの粘膜下腫瘍様隆起を認め,生検にて骨髄腫髄外病変と診断した.病変は易出血性で,その後も出血を繰り返したため,放射線療法(40Gy)を施行した.放射線療法後,速やかに黒色便は消失し,上部消化管内視鏡でも腫瘍は著明に縮小していた.多発性骨髄腫の消化管髄外性病変は稀であり,特に本症例は消化管病変に対して放射線療法の有効性を確認した本邦初の症例であるため,文献的考察を含め報告する.
  • 峠 英樹, 小倉 健, 都木 航, 恩田 沙織里, 佐野 達志, 井元 章, 宮野 亮, 奥田 篤, 増田 大介, 樋口 和秀
    2016 年 58 巻 7 号 p. 1227-1233
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/20
    ジャーナル フリー
    症例は90歳代男性.発熱,腹痛を主訴に当院を受診した.腹部CTでは,胆嚢の腫大を認め急性胆嚢炎と診断した.認知症を有し,tubeの自己抜去の危惧から経皮的アプローチは困難と判断し,十分なインフォームドコンセントのうえ,ドレナージ法として超音波内視鏡下胆嚢ドレナージ術を選択した.十二指腸球部から胆嚢を穿刺し,ガイドワイヤーを留置,瘻孔を拡張したのち,金属ステントを留置した.偶発症を認めず経過し症状の改善が得られたため第14病日に軽快退院となった.今回われわれは急性胆嚢炎に対し超音波内視鏡下胆嚢ドレナージ術が有用であった一例を経験したので報告する.
注目の画像
手技の解説
  • 西村 智子, 石川 剛, 内藤 裕二
    2016 年 58 巻 7 号 p. 1236-1249
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/20
    ジャーナル フリー
    超高齢化社会を迎え嚥下機能障害が大きな臨床課題である中,平成26年の診療報酬改定で胃瘻造設(PEG;Percutaneous Endoscopic Gastrostomy)に関連して嚥下機能評価が保険算定されるようになり,消化器内視鏡医には嚥下内視鏡(VE;Videoendoscopic examination of swallowing)への関与が期待されている.本稿では喉頭内視鏡を用いた効果的なVEの実践的方法について述べる.消化器内視鏡医の役割を明確にし,手技習得のための研修体制の整備を進め,より多くの摂食嚥下機能障害症例をサポートできる充実した体制を確立する必要がある.
  • 小田 一郎, 阿部 清一郎, 野中 哲, 鈴木 晴久, 吉永 繁高, 斎藤 豊
    2016 年 58 巻 7 号 p. 1250-1258
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/20
    ジャーナル フリー
    食道癌に対する根治的治療である外科的切除,化学放射線療法,内視鏡的切除のいずれの治療法においても,治療後に良性の食道狭窄を発生する可能性がある.それにより,嚥下障害を来し,経口摂取量低下による低栄養や場合により誤嚥性肺炎を合併することがあり,適切な対応が必要である.その内視鏡治療としては,ブジー拡張術,内視鏡的バルーン拡張術(endoscopic balloon dilatation:EBD),Radial Incision and Cutting(RIC)などがある.初回治療としては,ブジー拡張術または内視鏡的バルーン拡張術が選択されることが多いが,多くの患者は複数回の拡張術を要する.複数回の拡張術を行っても改善しない難治性狭窄に対しては,高周波ナイフで狭窄部に切れ込みを入れた後に瘢痕組織そのものを切除するRICの有効性が報告されている.これらの内視鏡治療によって,低侵襲に拡張が可能であり,大きな利点となるが,穿孔などの偶発症のリスクもあり,適切な手技の基本を習得し,慎重に拡張を行うことが重要である.
資料
  • 南 ひとみ, 井上 晴洋, Haji Amyn, 磯本 一, 卜部 繁俊, 橋口 慶一, 松島 加代子, 赤澤 祐子, 山口 直之, 大仁田 ...
    2016 年 58 巻 7 号 p. 1259-1266
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/20
    ジャーナル フリー
    食道アカラシアは,株食道括約筋の弛緩不全に起因する食道の機能性疾患であり,現時点では食道胃接合部の強制的な解放が治療の本流となっている.比較的低侵襲であるものの高い再発率が問題となる内視鏡的バルーン拡張術や外科的筋層切開術にかわる新たな低侵襲治療としてPOEM(内視鏡的食道筋層切開術,Per-oral endoscopic myotomy)が注目されている.
    POEMは,ほぼすべての食道アカラシアに対して適応があると考えられ,術後再発例やS字型の難関例に対しても良好な成績が報告されている.また,びまん性食道痙攣やnutcracker食道に対しても有用とされており,症例報告レベルではあるが症例が蓄積されつつある.われわれの施設では,これまでにPOEMの手術に伴う重篤な合併症の報告はなく,安全性についても期待されている.
    POEMの応用として,食道の粘膜下腫瘍に対するPOET(per-oral endoscopic tumor resection)などが派生し,また筋層に直接アプローチ可能な手法として,本疾患群の病態解明に向けた新たなアプローチが生まれつつある.
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