日本消化器内視鏡学会雑誌
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58 巻, 8 号
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総説
  • 岡 志郎, 田中 信治, 田丸 弓弦, 朝山 直樹, 茶山 一彰
    2016 年 58 巻 8 号 p. 1311-1323
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/20
    ジャーナル フリー
    大腸T1(SM)癌に対する内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)は治療の側面のみならず,完全摘除生検(total excisional biopsy)としての役割もある.しかし,(1)完全摘除生検が可能であるための術前診断学,(2)ESD手技,(3)摘除病変の病理診断の標準化や精度管理がまだ不十分であり,現時点では大腸SM高度浸潤(T1b)癌に対するESDは精度管理が担保されたセンター的施設において臨床研究的に施行することが望ましい.内視鏡的摘除後大腸T1b癌の取り扱いに関しては大腸癌治療ガイドライン2014年版が使用されているが,追加手術適応の決定には種々のリンパ節転移危険因子の組み合わせから予測される転移リスクからみた根治性と患者背景を総合的に比較評価することが重要である.これまで多数例の検討から,大腸T1b癌におけるリンパ節転移リスクの極めて低い条件も明らかになっており,将来的には(1)~(3)の一般化や精度管理が確立することで大腸T1b癌に対する完全摘除生検としてのESDが可能になることが期待される.
症例
  • 遠藤 智広, 柳本 邦雄, 細川 治, 渡邊 透, 佐藤 広隆, 高井 佑輔, 百々 秀彰, 伊藤 錬磨
    2016 年 58 巻 8 号 p. 1324-1330
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/20
    ジャーナル フリー
    57歳女性.胃体中部大弯の隆起性病変からの内視鏡生検でNETと診断.萎縮性胃炎を伴い,孤発性であり,抗胃壁細胞抗体と抗内因子抗体が陰性のためTypeINETは否定的だが,血清ガストリン値が740pg/mlと高値を示した.腹腔鏡・内視鏡合同手術を行い,病理検査でNET G2(Ki-67 6.4%)と診断した.周囲粘膜にECL細胞過形成を認めたが,内分泌細胞微小胞巣(ECM)への進展はなく,ガストリン値上昇に伴う変化と考え,TypeIIINETと診断した.腫瘍はガストリン染色陰性であり,除菌治療後の血清ガストリン値は低下した.TypeIIINETでも血清ガストリン値上昇,ECL細胞過形成を伴う場合があり,鑑別診断と治療選択の上で重要と考える.
  • 新宅 雅子, 西上 隆之, 徳原 満雄, 進藤 嘉一, 関 守一, 若狭 研一
    2016 年 58 巻 8 号 p. 1331-1336
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/20
    ジャーナル フリー
    症例は41歳女性.健診で貧血と胃X線検査で多発胃ポリープを指摘され,受診した.内視鏡検査では前庭部に萎縮を認めず,胃体部大彎は高度に萎縮し,小彎,前後壁に多数の扁平隆起が島状に存在する像を示した.大彎粘膜からの生検では壁細胞,主細胞が消失し,enterochromaffin-like cellの過形成を認めた.抗壁細胞抗体陽性であり,A型胃炎と診断した.扁平隆起からの生検では胃底腺の萎縮を認めず,間質にリンパ球を主体とする中等度の炎症性細胞浸潤を認め,一部は胃底腺内に浸潤していた.本症例は小彎,前後壁に多発する扁平隆起を特徴とする内視鏡像を呈したA型胃炎の一例である.
  • 大楽 勝司, 二川 康郎, 島本 奈々, 千葉 允文, 金澤 慶典, 森 直樹, 今津 博雄, 田尻 久雄, 矢永 勝彦
    2016 年 58 巻 8 号 p. 1337-1343
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/20
    ジャーナル フリー
    症例は74歳男性.心窩部痛にて近医を受診.CT,MRCP,EUSにて混合型IPMCの診断で当科紹介受診.亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行した.術後14日目に発熱を生じ,腹部CTにて膵空腸吻合部背側に液体貯留を認め,膵液瘻と判断した.膿瘍腔は腸管が介在するために体外ドレナージが困難であったが,残胃に接していたため,EUS下経胃的ドレナージを施行した.感染性排液を認めたが,徐々に減少し,1週間でドレーン抜去可能であった.膵切除術後の膵液瘻に対するEUS下経胃ドレナージは低侵襲,かつ入院期間の短縮の可能性が見込める手技であり,有効な治療選択肢の一つとなり得ると考えられたため報告する.
注目の画像
手技の解説
  • 佐々木 隆, 伊佐山 浩通, 笹平 直樹
    2016 年 58 巻 8 号 p. 1346-1353
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/20
    ジャーナル フリー
    悪性消化管狭窄に対するステント治療は,より安全でより簡便な手技になってきている.その結果,複雑な狭窄に対してもステント治療が可能となっている.一方で消化管狭窄の原因となる癌自体の生存期間延長に伴って,多発狭窄に対してステント治療する機会も増えている.多発狭窄例では深部の狭窄評価が不十分になる可能性があるため,すべての狭窄治療を一期的に行うことに固執すべきではない.長い狭窄に対して一期的にステント治療する場合は,奥から手前にステントを直列に留置する.その際,決して処置途中でガイドワイヤーが抜けないように注意する.その他,屈曲部にステントを重ねて留置する場合,axial forceの弱いステントを選択する.消化管多発狭窄に対するステント治療は難易度の高い手技となるため,ステント自体の特性や通常のステント治療のポイントに精通するだけでなく,多発狭窄例特有の注意点も理解しておく必要がある.
  • 河本 博文, 谷川 朋広, 浦田 矩代, 岡 好仁, 中村 純, 末廣 満彦, 西野 謙, 川中 美和, 春間 賢, 加藤 博也
    2016 年 58 巻 8 号 p. 1354-1366
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/20
    ジャーナル フリー
    肝門部悪性胆道狭窄に対する内視鏡的マルチステンティングとは,屈曲狭窄した胆管に,内視鏡を用いて様々な剛性を持ったdeviceを選択的に繰り返し挿入し,複数本のstentを留置することで,肝のfunctional volumeをより多く確保する手技である.単に右左にステントを入れるということではない.この手技は難易度が高く,不適切なステンティングから胆管炎を来すと,感染コントロールが困難となり患者の予後を悪化させる.この手技を安全確実に行うには,まず適切な分枝を選択するために肝門部胆管の解剖を理解し,胆管の合流パターンを読み解くことである.次に手技的にはガイドワイヤー操作で目的とする枝を探りステントを留置していくことから,使用するデバイスの性質を理解し,難易度に応じてデバイスを選択し使い分けることも重要である.これらに基づき戦略を立て実行することが,マルチステンティングのコツである.
資料
  • 荒 誠之, 飯島 克則, 前嶋 隆平, 近藤 穣, 日下 玄, 八田 和久, 宇野 要, 浅野 直喜, 小池 智幸, 今谷 晃, 下瀬川 徹
    2016 年 58 巻 8 号 p. 1367-1374
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/20
    ジャーナル フリー
    目的:日本では抗血栓薬服用者に対する内視鏡診療ガイドラインの改訂後,抗血栓薬継続下での内視鏡生検が可能になった.しかしながら,内視鏡生検後の出血症例が非常にまれであるため,抗血栓薬継続または休薬下での生検後出血のリスクは未だにはっきりしていない.そのため,今回の前向き検討は抗血栓薬継続下での上部消化管内視鏡生検後の出血リスクを評価することを目的とした.
    方法:2011年12月から2014年3月までに上部消化管内視鏡検査にて生検を施行された患者を前向きに検討した.エントリー時に抗血栓薬の継続・休薬状況をチェックし,生検後1カ月以内に外来受診もしくは電話にて出血イベントの有無を確認した.
    結果:内視鏡生検を施行した3,758例の中で,394例(10.5%)が抗血栓薬服用者であり,そのうち286例(抗血栓薬服用者の72.6%)が抗血栓薬継続者だった.生検後に出血をきたした症例は6例(0.16%,95%信頼区間;0.09%~0.22%)だったが,抗血栓薬継続者は1例のみだった.生検後出血率は抗血栓薬継続群においても他の群と比較して有意な上昇は認めなかった(0.35% vs 0.14%,P=0.38).
    結語:今回の前向き検討において,抗血栓薬継続下でも上部消化管内視鏡生検後の出血リスクは上昇しないことが示された.
    (UMIN000014369)
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