日本消化器内視鏡学会雑誌
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59 巻, 10 号
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総説
  • 山田 篤生, 小池 和彦
    2017 年 59 巻 10 号 p. 2489-2499
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/20
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    消化管出血の約5%が上下部消化管内視鏡検査を行っても原因不明の消化管出血である.カプセル内視鏡検査やバルーン内視鏡検査,放射線画像診断の進歩により,小腸出血の出血源が診断できるようになっており,血管性病変,潰瘍性病変,腫瘍性病変など様々な病変が見つかる.さらに小腸出血に対し内視鏡的止血治療も可能であり,主に血管性病変に対しアルゴンプラズマやクリッピングなどの治療が有効である.しかし,内視鏡治療を行っても再出血率が高く,治療法の改善や再出血のリスク因子に対する介入が必要である.

原著
症例
  • 楠本 聖典, 濱田 暁彦, 藤井 茂彦, 日下 利広, 水本 吉則, 安原 裕美子
    2017 年 59 巻 10 号 p. 2508-2513
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/20
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    症例は80歳,男性.初見時0-Ⅱc+Ⅲの早期胃癌に対して2年間経過観察を行った.初見時より1年後には0-Ⅰ型に形態変化を来し,今回吐血で受診したため上部消化管内視鏡検査を行ったところ,同病変は0-Ⅱc+Ⅲ型に形態変化し,噴出性出血を来していた.2度の形態変化を来し出血を来した胃癌を経験したため報告する.

  • 田中 俊多, 松岡 里紗, 三浦 翔, 印藤 直彦, 藤田 光一, 松井 佐織, 阿南 隆洋, 渡辺 明彦, 菅原 淳, 向井 秀一
    2017 年 59 巻 10 号 p. 2514-2520
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/20
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    症例は70歳代の女性.間質性肺炎で通院加療中に炎症反応亢進を認めたため施行したPET/CTで上行結腸と左腎に集積を認めた.大腸内視鏡検査で,盲腸から上行結腸に直径5-7mm大の黄白色調の扁平隆起性病変の集簇を認めた.また上行結腸に10mm大のⅠsp様の隆起性病変を認めた.生検病理組織学的所見で腎・大腸いずれも,細胞質に顆粒状から類円形のPAS染色陽性像を認め,M-G小体(Michaelis-Gutmann body)と考えマラコプラキアと診断した.マラコプラキアは稀な慢性炎症性疾患で,病理学的に大型のマクロファージの集簇と,その細胞内にカルシウムや鉄の沈着を伴った層状同心円構造を有する封入体(M-G小体)を認めることを特徴とする.膀胱等の尿路系が好発部位であり消化管における報告例は少ない.今回われわれは,腎及び大腸に発生したマラコプラキアの1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

  • 吉田 優子, 山野 泰穂, 松下 弘雄, 吉川 健二郎, 原田 英嗣, 高木 亮, 田中 義人, 菅井 有, 永塚 真, 山本 英一郎
    2017 年 59 巻 10 号 p. 2521-2525
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/20
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    症例は81歳男性.2次検査目的に受診し全大腸内視鏡検査で直腸に径5mmのⅡa病変を指摘された.病変は白色平坦隆起部と発赤調の隆起部より構成され,拡大内視鏡観察では白色平坦隆起部はⅡ型pit,発赤調の隆起部はⅢL型pitであった.鋸歯状病変の部分的変化または鋸歯状病変と腺腫の衝突を疑い,内視鏡的粘膜切除術(以下EMR)を施行した.病理診断は平坦隆起部は過形成性ポリープ,隆起部は管状腺腫であった.また,分子生物学的検討では,白色平坦隆起部のみにK-ras変異を認め,発赤調の隆起部はK-ras変異,BRAF変異ともに認めなかった.内視鏡,病理,分子生物学的所見を総合すると,過形成性ポリープと管状腺腫の衝突病変と考えるのが妥当であるという結論に至った.

経験
  • 吉田 行哉, 仲又 進, 宮坂 信雄, 尹 京華, 速水 陽子, 中山 聡
    2017 年 59 巻 10 号 p. 2526-2532
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/20
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    レーザー経鼻内視鏡EG-L580NWのLCIモードを用いて胃底腺粘膜の近接観察を行い集合細静脈(CV)と腺管構造(GS)の視認性を観察することが,Hpの現感染,除菌後,未感染の診断に有用か否かを後方視的に検討した.CVおよびGS視認性はそれぞれ消失・不明瞭・明瞭の3群に分類した.①現感染ではCVの消失と明瞭なGS視認性,②除菌後では明瞭あるいは不明瞭なCV視認性とGS視認性の消失,③未感染では明瞭なCV視認性,が診断の特異度を上げる所見であった.また,除菌後は2年未満の早期からGS視認性の消失が観察された.LCIモードでは,色調が白色光観察と近似しており違和感なく日常臨床で使用できる点,また,腸上皮化生巣が示唆されるラベンダー色を呈する領域を避けて胃底腺粘膜を観察できる点で有用である.

新しい手技・処置具・機器
手技の解説
  • 山口 直之, 中尾 一彦, 江口 晋, 磯本 一
    2017 年 59 巻 10 号 p. 2535-2545
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/20
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    電子付録

    食道ESDは2008年に保険収載となり,難易度がやや高いものの低侵襲・高い根治性により全国的に広く普及してきている.

    一方で,3/4周以上の広範囲剥離症例では術後狭窄が高頻度に起こり,頻回の拡張術が必要となるため,患者や医療経済上の負担が大きいことが問題となっており,その克服が食道ESD普及の最大の課題となっている.

    このような広範囲剥離症例に対しわれわれは,ステロイド投与,細胞シート移植療法により有意に狭窄率を低減可能であることを報告してきた.

    そこで今回,ステロイド経口投与・局注療法の有用性とその限界,さらに,それら狭窄予防治療抵抗性症例に対するステロイド経口+局注併用療法の有用性を検討した.

    【本項のポイント】食道ESD後狭窄予防にSH投与,細胞シート移植はいずれも有用であるが,1.切除範囲:9/10周以上,2.切除長軸径:5cm以上,3.頸部食道,4.CRT/ER治療歴のうち2因子以上を満たす症例は,狭窄予防治療抵抗性症例であった.

    そのような治療抵抗性症例に対してSH経口+局注併用療法が有用である.

資料
  • 向井 強, 安田 一朗, 伊佐山 浩通, 岩下 拓司, 糸井 隆夫, 河上 洋, 木暮 宏史, 中井 陽介
    2017 年 59 巻 10 号 p. 2546-2556
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/20
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    目的:非切除悪性遠位胆管閉塞に対するcovered self-expandable metallic stent(CSEMS)はtumor ingrowthを予防できるため,uuncovered self-expandable metallic stentより長期の開存期間が期待できる.また,CSEMSのrecurrent biliary obstruction(RBO)の主因であるsludgeによるステント閉塞は,ステント径が大きいほど低率になると報告されている.そこで,われわれは12mm径のfully-covered SEMS(FCSEMS-12)を開発し,臨床的安全性および有用性に関する前向きの多施設共同観察研究を行った.

    方法:2011年6月から2012年11月の期間に非切除悪性遠位胆管閉塞38例に対してFCSEMS-12を留置した.主要評価項目はステント留置から6カ月後のnon-RBO率とした.

    結果:手技的および臨床的成功率ともに100%であり,ステント留置6カ月後のnon-RBO率は50%であった.TRBO中央値は184日,生存期間中央値は241日であり,6カ月以内にRBOなく死亡されたのは12例(32%)であった.RBOは10例(26%)で認められ,ステント閉塞は7例(18%),migration 3例(8%)であり,30日以内の早期偶発症を6例(16%;胆嚢炎1例,膵炎1例,高アミラーゼ血症1例,膵管炎1例,腹痛2例)に認めた.reinterventionの際にステント抜去を試みた8例全例で抜去に成功した.

    結語:われわれが開発したFCSEMS-12の使用は安全で有効性も高く,偶発症発生率も容認できると考える.

    (Clinical trial registration number:UMIN000007061)

内視鏡室の紹介
最新文献紹介
  • 伊佐山 浩通
    2017 年 59 巻 10 号 p. 2564
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/20
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    【背景と目的】悪性肝門部胆管閉塞に対するself-expandable metal stents(SEMSs)留置で,両葉,片葉の効果についてはまだ議論がある.本試験は切除不能悪性肝門部胆管閉塞症例に対する,前向きの多施設共同比較試験で両葉が片葉留置よりも優れているかどうかを検証する試験である.

    【対象と方法】切除不能悪性肝門部胆管閉塞で,SEMSの内視鏡的な両葉または片葉留置予定の症例が対象である.主要評価項目は留置成功例に対する初回のRe-intervention率で,副次的評価項目はステント開存期間,技術的・臨床的成功率,偶発症,生存期間である.

    【結果】133症例の病理学的に診断された症例を両葉群(67例),片葉群(66例)に無作為に割付けた.両葉群と片葉群の技術的成功率は95.5%(64/67)と100%(66/66)であった(p=0.047).Re-intervention施行率は42.6%(26/61),60.3%(38/63)で,片葉群のほうが有意に高率であった(p=0.049).累積ステント開存期間中央値は252日,139日であり,ステント閉塞危険率は有意に片葉群で高率であった(p<0.01).ステント開存に関する因子の多変量解析では,両葉留置が望ましいという結果であった(adjusted hazard ratio 0.30;95% CI,0.172-0.521;p<0.001).生存期間と後期の偶発症発生率は二群間で差を認めなかった.

    【結論】切除不能悪性肝門部胆管閉塞に対するSEMS留置では,両葉留置と片葉留置は同様の手技成功率を示したが,両葉留置の方がRe-interventionを要する頻度が低く,ステント開存期間も長いという結果であった.

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