胆管狭窄は日常診療でしばしば遭遇する病態であり,良悪性の鑑別が求められる.胆道癌と術前診断され,外科手術を施行した症例の3~17%は術後病理組織学的検索で良性であったと報告されている.良性胆管狭窄の原因としては,原発性硬化性胆管炎(PSC),IgG4関連硬化性胆管炎(IgG4-SC),術後胆管狭窄が多いが,その他様々な原因による続発性硬化性胆管炎や原因不明の非特異的胆管炎も存在する.胆管狭窄に遭遇した場合,まず良性か悪性か,次に良性とすればIgG4-SCか否かを鑑別することが治療方針を決定する上で重要である.しかし各種画像診断や生検・細胞診を駆使しても良悪性の鑑別が困難で外科手術を余儀なくされる症例があることを念頭に置く必要がある.
【目的】茎を有する大腸腫瘍で,頭部に陥凹局面を呈する腫瘍を持ったⅠp+Ⅱc型早期癌の特徴について検討した.【対象・方法】Ⅰp+Ⅱc型早期癌22例(男性15例,女性7例,平均61.1歳)22病変を対象とし,その臨床病理学的所見についてⅠp型早期癌(417例),表面陥凹型病変317例(SM癌147例)と比較した.また自然経過例2例の形態変化について検討した.【結果】平均腫瘍径はⅠp+Ⅱc型12.7mmに対し,Ⅰp型は16.2mmで有意に大きかった.Ⅰp+Ⅱc型の局在部位はⅠp型および陥凹型(Ⅱc,Ⅱa+Ⅱc,Ⅰs+Ⅱc)に対し有意にS状結腸に多く,22例中19例で86.4%を占めた.Ⅰp+Ⅱc型の深達度はTis:2,T1a:3(13.6%),T1b:17(77.3%)で,リンパ節転移はSM癌の3例15%に認めた.以上はⅠp型のSM浸潤率,リンパ節転移率に比べ有意に高く,その悪性度が示唆された.同様にⅠp+Ⅱc型SM癌はly+:7/20(35.0%),v+:6/20(30.0%),budding:grade 2-3:9/20(45.0%)で,Ⅰp型SM癌に比べ有意に転移リスク因子の頻度は高かった.一方,Ⅰp+Ⅱc型SM癌と陥凹型SM癌の比較ではリンパ節転移リスク因子の陽性率,およびリンパ節転移率に有意差は認めなかった.また,22カ月でⅠp+Ⅱc型からⅠs+Ⅱc型,そしてⅡa+Ⅱc型T1b癌へ変化した1例,22日の経過でⅠp+ⅡcからⅡa+Ⅱc型T1b癌へ変化した1例を認めた.【結論】Ⅰp+Ⅱc型早期癌は主にS状結腸の場で発現した陥凹型早期癌の一表現形態であり,陥凹型特有の生物学的特性を有すると思われた.
症例は67歳,男性.平成19年に胃癌に対し幽門側胃切除・Roux-en-Y再建術を施行された.平成28年11月,腹痛・発熱にて当院入院となり腸石による十二指腸憩室炎と診断し,細径大腸内視鏡を用いて内視鏡的砕石・摘出術を施行した.治療後憩室炎は速やかに改善を認め,入院17日目に退院となった.腸石を合併した憩室炎の報告はこれまで本邦では5例あるが,うち2例で内視鏡的摘出術により治癒が得られ,Roux-en-Y再建術後の内視鏡治療の報告は本症例が初めてであった.腸石による十二指腸憩室炎では,胃術後であったとしても内視鏡的摘出術が有用である可能性が示唆された.
症例は41歳男性で,食欲不振,倦怠感,発熱を主訴に来院した.当院で施行した上部消化管内視鏡では十二指腸にびまん性の白色絨毛を認め,生検病理組織所見と合わせてWhipple病と診断した.抗菌薬治療を開始し,約2カ月後と約8カ月後の内視鏡像と病理組織像の評価を行うことができた.最近の本邦における本症の報告のほとんどが,上部消化管内視鏡における十二指腸の白色絨毛を契機に診断されており,症状から診断することが難しい本症の診断において非常に有用な所見と考えられた.自験例は免疫低下を来す背景がないこと,内視鏡像と生検病理組織所見を経時的に評価し得たことから貴重な症例と考え報告する.
症例は74歳,女性.主訴は貧血と黒色便.貧血の原因検索目的に施行した腹部造影CT検査で,空腸に限局性の壁肥厚・周囲のリンパ節腫脹を認めた.経口的ダブルバルーン小腸内視鏡検査では,空腸に全周性の潰瘍を認めた.潰瘍辺縁はやや厚みがあり,辺縁は整で,壁伸展も良好であった.潰瘍底には露出血管を伴っており,クリッピングによる止血術を行った.生検病理組織所見よりT細胞性リンパ腫と診断した.小腸部分切除術より得られた切除標本から,腸管症関連T細胞リンパ腫Ⅱ型と診断した.消化管出血を契機に診断しえた腸管症関連T細胞リンパ腫の一例を経験したので報告する.
HybridKnife®(HK)は高圧水流発生装置ERBEJET 2と組み合わせ,ナイフ先端中央の小孔から生理食塩水を粘膜下層に局所注入可能なESD用ナイフである.胃ESDにおけるHKの有効性と安全性の評価を目的に,HKを使用した23症例(HK群)と症例対照研究として既存のナイフを使用した22症例(Conventional群:C群)を比較した.剥離速度に差はなかったが,デバイスの交換回数はHK群1.0±0.9回,C群9.2±6.5回とHK群で有意に少なかった(P<0.0001).穿孔はHK群1例,後出血はC群3例であった.HKによるESDはデバイスの交換が少ない効率的で安全な方法である.
2012年7月,日本消化器内視鏡学会より『抗血栓薬服用者に対する消化器内視鏡診療ガイドライン』が発刊され,血栓症の発症リスクが高い患者において低用量アスピリン(low dose aspirin:LDA)単独服用者はLDAを休薬することなく消化器内視鏡処置を施行してもよいとされた.LDA内服継続下における早期胃癌に対する内視鏡的粘膜下層剥離術(endoscopic submucosal dissection:ESD)の際,循環器・脳神経内科などの専門科コンサルトによる全身状態の把握,予期せぬ急変時に対応できる体制の整備,ESD中の確実な止血操作手技,ESD終了時の切除後潰瘍底の視認可能な血管に対する凝固止血やsecond look内視鏡検査などによる後出血対策が重要である.当科では2010年12月以降,院内規定によりLDA内服患者は全例LDAを継続したままで胃ESDを施行しているが,後出血率はLDA内服継続例(7%)とLDA休薬例(4%)の両群に有意差はなく,LDA内服継続例における周術期の虚血性疾患イベントは1例も認めなかった.
目的:女性内視鏡医のキャリアサポート体制の現状を把握し,改善すべき点を明らかにする.
方法:日本消化器内視鏡学会指導施設1,280施設に対し「女性内視鏡医のキャリアサポート体制に関するアンケート調査」を行った.
結果:115施設(9.0%)より回答を得た.115施設中,キャリアサポート体制を有する施設は22施設(19.1%)のみであった.体制無しの施設中,検討中は41.1%であり,多忙,指導医不足等の理由により検討していない施設が57.8%であった.
結論:女性内視鏡医のキャリアサポート体制に対する関心が少ない実態が明らかとなった.サポート体制を有する施設での研修内容は充実していたが,少数であり,サポート体制を有する指導施設を増加させることが必要と思われる.そのためには女性内視鏡医のキャリアサポート体制に対する関心を高め,協力的な指導医を増やすことが重要である.
【背景】超音波内視鏡下穿刺吸引術(EUS-FNA)の出血性偶発症はまれであるが,抗血栓薬服用者におけるEUS-FNAの出血リスクと安全性は明らかではない.本研究は,抗血栓薬服用者におけるEUS-FNAの出血性偶発症率を明らかにすることを目的とした.
【方法】2008年から2015年までの間に,充実性腫瘍に対してEUS-FNAを施行した連続742例を対象とし,後方視的に検討を行った.出血性偶発症率に関して,抗血栓薬を服用していない群(非内服群),休薬した群(休薬群),アスピリンあるいはシロスタゾールを継続した群(継続群),ヘパリン置換を行った群(ヘパリン置換群)の4群に分けて検討を行った.
【結果】742例中131例が抗血栓薬を服用していた(17.7%).出血性偶発症は742例中7例で認め,発症率は0.9%であった.いずれも術中出血であり,術後出血は認めなかった.各群の出血性偶発症率は,非内服群1%(6/611),休薬群0%(0/62),継続群1.6%(1/61),ヘパリン置換群0%(0/8)であった.止血術を要した重症例は1例のみであり,重症出血の頻度は0.1%(1/742)であった.また重症例は非内服群であり,抗血栓薬服用者で重症出血は認めなかった.
【結論】抗血栓薬服用者におけるEUS-FNAの出血性偶発症率は低く,アスピリンあるいはシロスタゾール継続下でも安全に施行できる可能性が示唆された.
【背景】ガイドラインでは,早期胃癌ESD非治癒切除患者に対してリンパ節転移の危険性から追加外科切除が推奨されているが,全例に追加外科切除を行うことは過剰医療となる可能性がある.そこで,本研究では,早期胃癌ESD後の治療方針決定のためのスコアリングシステムを確立することを目的とした.
【方法】本研究は,2期にわけて行った.Development stageでは,ESD非治癒切除後追加外科切除を行った1,101例を対象とし,ロジスティック回帰分析を用いてリスクスコアリングシステム(eCura system)を作成した.Validation stageでは,eCura systemをESD非治癒切除後経過観察となった905例に当てはめ,癌特異的生存率(CSS)よりeCura systemの検証を行った.
【結果】Development stageでは,5つのリンパ節転移リスク因子をβ回帰係数による重みづけから,3点:リンパ管侵襲,1点:腫瘍径>30mm,SM2,静脈侵襲,垂直断端陽性とした.続いて,患者を低リスク(0-1点,リンパ節転移率2.5%),中リスク(2-4点,同6.7%),高リスク(5-7点,同22.7%)の3群に分類した.Validation stageでは,CSSが3群間で有意差を認め(log-rank test:P<0.001),それぞれ5年CSS:99.6%,96.0%,90.1%であった.多変量Coxハザード回帰分析では,低から高リスクになるにつれて胃癌死のリスクが上昇する傾向を認めた(P trend<0.001).また,eCura systemの胃癌死に対するC statisticsは0.78であった.
【結論】eCura systemは早期胃癌ESD非治癒切除患者の胃癌死を予測可能であった.eCura systemにて低リスクの場合には,ESD後経過観察もオプションとなりうる.