日本消化器内視鏡学会雑誌
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59 巻, 12 号
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総説
  • 小倉 健, 樋口 和秀
    2017 年 59 巻 12 号 p. 2693-2706
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/20
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    超音波内視鏡ガイド下治療は,超音波内視鏡下穿刺吸引法のadvanced techniqueとして現在発展を遂げてきている.膵仮性嚢胞ドレナージ術や,胆管・膵管ドレナージ術など様々な報告がなされている.本手技の発展により,今まで治療困難であった病態に関しても治療可能となり,その有用性が期待される.手技成功率は,一般的に良好である報告が多いが,一方でその偶発症の頻度も高く報告されている.中には重篤で,時として致死的な偶発症も報告されている.本手技を施行するにあたっては,起こりうる偶発症の種類を熟知し,生じた場合の対処法を知っておくことが大切である.何より,偶発症を生じないよう,防止策を二重,三重に講じておくことが極めて重要である.

症例
  • 亀髙 大介, 石山 修平, 塩出 純二, 吉岡 正雄, 那須 淳一郎, 藤原 明子, 伊藤 守, 藤井 雅邦, 齊藤 俊介, 金藤 光博
    2017 年 59 巻 12 号 p. 2707-2711
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/20
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    電子付録

    異物誤飲は臨床的によく経験される緊急性の高い疾患である.中下咽頭領域であれば耳鼻科的処置での対応が可能であるが,下咽頭から頸部食道の異物は耳鼻科や外科,消化器内視鏡医の連携が必要な領域である.今回,下咽頭輪状後部に刺入した魚骨異物を経験した.78歳女性.夕食時にブリを食べた後から咽頭痛が出現,輪状軟骨近傍に4cm長の魚骨が頸部CTで確認された.彎曲型喉頭鏡を使用し咽頭展開したところ,刺入部が確認でき安全に内視鏡的摘除が可能であった.治療法選択にCT検査は有用であった.彎曲型喉頭鏡を使用しての処置は下咽頭から頸部食道の異物処置時に視野確保が困難な場合,外科的処置移行前に一度考慮すべき手技と考えられた.

  • 古橋 隆, 佐藤 伸隆, 安部 利彦, 畑田 鉄平, 北﨑 真未, 石川 伸久, 藤東 寛行, 笹栗 靖之
    2017 年 59 巻 12 号 p. 2712-2718
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/20
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    症例は73歳女性.上部消化管内視鏡にて胃底部後壁を中心に巨大な1型腫瘍と胃底部前壁側に0-Ⅱa型腫瘍を認め,生検にてNeuroendocrine cell carcinomaとTub2>Tub1の結果を得た.噴門側胃切除+脾合併切除術を行い,術後補助化学療法としてS-1(tegafur gimestat otastat potassium)+CDDP(cisplatin)療法を8クール後,S-1単独療法18カ月施行し,術後6年無再発生存中である.胃神経内分泌癌と腺癌との同時多発症例の報告は稀であり自験例が12例目で,術前に正診できた初めての報告である.また予後が極めて不良な胃神経内分泌癌で5年以上の長期生存報告は少なく,自験例で11例目となる貴重な症例であった.

  • 西脇 伸二, 馬場 厚, 若山 孝英, 中村 博式, 岩下 雅秀, 田上 真, 畠山 啓朗, 林 隆夫, 前田 晃男
    2017 年 59 巻 12 号 p. 2719-2724
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/20
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    難治性空腸皮膚瘻に対し,ガイドワイヤーを併用したOTSCシステムによる閉鎖術が有効であった1例を報告する.症例は71歳男性,脳梗塞後,空腸瘻が施行された.施設入所中に空腸瘻カテーテルが皮下に埋没し紹介入院となった.カテーテルを抜去後も瘻孔が閉鎖せず,保存的治療で改善しないため,OTSCシステムによる内視鏡的閉鎖術を試みた.経皮的に瘻孔よりガイドワイヤーを挿入し,内視鏡を用いて口からガイドワイヤーを引き出した.このガイドワイヤーの誘導下にOTSCシステムを装着した内視鏡を空腸皮膚瘻まで挿入し,クリップを展開し閉鎖した.空腸など内視鏡操作が困難な瘻孔閉鎖にOTSCシステムを使用する際,ガイドワイヤーを併用した工夫が有用であった.

  • 榊田 智喜, 奥山 祐右, 中津川 善和, 川上 巧, 山田 真也, 戸祭 直也, 佐藤 秀樹, 木村 浩之, 吉田 憲正, 浦田 洋二
    2017 年 59 巻 12 号 p. 2725-2731
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/20
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    53歳,女性.腸閉塞にて入院し,イレウス管による減圧術を施行した.下部消化管内視鏡検査では回腸末端部に不整潰瘍を認め,管腔は狭小化し,盲腸に輪状配列傾向のびらんを認めた.腸閉塞が遷延するため,狭窄部を含む回盲部切除術を施行した.切除組織の抗酸菌培養で結核菌を検出し原発性腸結核症と診断した.本邦における腸閉塞で発症した腸結核症例を文献的に検討し,結核菌の検出状況と治療法の選択について考察した.

  • 黒田 太良, 熊木 天児, 小泉 光仁, 畔元 信明, 大野 芳敬, 山本 安則, 竹下 英次, 藤山 泰二, 水野 洋輔, 日浅 陽一
    2017 年 59 巻 12 号 p. 2732-2739
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/20
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    症例は41歳女性.健診でALP高値を指摘され,当院整形外科で骨軟化症と診断された.自覚症状はなかったがCTで膵・胆管合流異常を指摘され,当科を紹介受診した.神経線維腫症Ⅰ型(von Recklinghausen病,以下VRD)の家族歴があり,体幹・四肢にカフェオレ斑が多発,皮膚生検でVRDと診断された.ERCP時主乳頭に3mm大の黄白色隆起がみられ,生検で神経内分泌腫瘍(以下NET)が疑われた.手術を施行されNET(G1)と診断された.VRDに合併する消化管腫瘍は,腹痛や黄疸などの自覚症状を契機に発見されることが多く,本症例のように無症候で発見されることは稀である.VRD患者は無症状であっても積極的な内視鏡精査が望まれる.

手技の解説
  • 矢野 友規, 武藤 学
    2017 年 59 巻 12 号 p. 2740-2749
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/20
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    光線力学療法(PDT:photodynamic therapy)は,がんに取り込まれる腫瘍親和性光感受性物質(PS:photosensitizer)とPSの吸収波長に一致したレーザー光をがんに照射することで,光化学反応を生じさせて,腫瘍細胞を破壊する局所治療である.2015年に,国内で行われた医師主導治験の良好な結果を受けて,タラポルフィンナトリウム(レザフィリン®,Meiji Seikaファルマ)と半導体レーザ(PDレーザ®)を用いたPDTが化学放射線療法(CRT)後または放射線療法(RT)後遺残再発食道癌に対する治療として薬事承認され,保険適用が認められた.遺残再発食道癌に対するPDTの具体的な適応は,1)リンパ節や遠隔臓器に転移がない,2)遺残再発病変の壁深達度がT2に留まる,3)長径3cm以下,4)半周以下,5)頸部食道に浸潤していない病変になっている.PDTは,レーザー治療なので,病変に対して真正面の位置で出来るだけ近い距離から照射をしないと,治療効果が落ちてしまうという内視鏡治療の特徴とPS投与後の患者は,光線過敏症を起こす可能性があり遮光が必要という患者管理の特徴がある.また,レーザー医療機器は,誤った使用をすると,治療効果が不十分になるだけでなく,重篤な医療事故につながる可能性がある.遺残再発食道癌に対するPDTの各施設への導入に際しては,レーザーの特性や人体に及ぼす影響などの基礎的な講義を含めた講習会の受講が必須になっている.本稿をきっかけに,食道癌に対するPDTが安全で有効な治療として,消化器内視鏡医の間で普及することを期待している.

資料
  • 由雄 敏之, 土田 知宏, 石山 晃世志, 大前 雅実, 平澤 俊明, 山本 頼正, 藤崎 順子, 佐藤 由紀子, 佐々木 徹, 川端 一嘉 ...
    2017 年 59 巻 12 号 p. 2750-2759
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/20
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    【背景】上部消化管内視鏡検査における咽頭観察への関心が高まり,Narrow band imagingを用いた観察が広まったことにより,表在型咽頭癌を治療する機会が増加している.本検討は表在型咽頭癌に対する内視鏡的切除の短期,長期成績を評価することを目的とした.

    【方法】2006年から2013年に当院で治療した表在型咽頭癌113症例,169病変を対象とした.当院では最初は内視鏡的粘膜切除術(EMR),次に従来の内視鏡的粘膜下層剥離術(cESD),そして最近では補助細径内視鏡による牽引を利用したdouble-scope ESD(dsESD)を施行している.観察期間の中央値は30カ月であった.

    【結果】すべての病変は扁平上皮癌であった.cESD,dsESDの完全切除率は56.4%,82.3%(p<0.01),局所再発率は2.6%,0.0%であった.dsESDにおける切除時間は有意にcESDに比べ短かった(p<0.05).リンパ節転移再発は4例に認められたが,いずれも頸部リンパ節郭清を施行され中央値48カ月を経て生存している.リンパ節転移の危険因子は上皮下浸潤,腫瘍の厚み1,000μm以上,滴状浸潤と脈管侵襲であった.5年全生存率は79.5%で表在型咽頭癌による死亡例はなかった.表在型咽頭癌の異時多発病変の5年累積発生率は46.5%であった.

    【結論】表在型咽頭癌に対する内視鏡的切除は異時性多発癌を多く認めたが,適切で有効な治療法であった.切除方法としてdsESDは有効であった.

内視鏡室の紹介
最新文献紹介
  • 杉本 光繁
    2017 年 59 巻 12 号 p. 2767
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/20
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    【背景と目的】近年,消化管内視鏡検査時にプロポフォールが使用される機会が増加しているが,心肺系合併症の発症が危惧されている.本研究は内視鏡検査時にプロポフォールと従来の鎮静薬を使用した際の心肺系合併症の発症につき比較検討する目的で行われた.

    【方法】Medlineを含む3つのデータベースを使用して鎮静薬使用時の低酸素血症,血圧低下,不整脈の出現頻度を検討した.上下部内視鏡検査を通常内視鏡検査とし,内視鏡的逆行性胆管膵管造影,超音波内視鏡検査,バルーン小腸内視鏡検査,内視鏡的粘膜下層剥離術を侵襲的内視鏡検査と定義した.鎮静薬を使用した際の心肺系合併症出現の危険性をオッズ比で評価した.

    【結果】27本の原著論文が本研究のメタアナリシスに合致した.1,324人でプロポフォールが使用され,1,194人が従来の鎮静薬のミダゾラム,ペチジン,メペチジン,レミフェンタニル,フェンタニルが使用された.従来の鎮静薬と比較して,プロポフォールの低酸素血症のリスクは0.82(95%CI:0.63-1.07),血圧低下のリスクが0.92(0.64-1.32)であった.通常内視鏡検査時のプロポフォールのリスクは0.61(0.38-0.99)と従来の鎮静薬使用時よりも39%の危険性の削減効果を示した.侵襲的内視鏡検査時は両薬剤間で心肺系合併症の発症に有意差は認めなかった.

    【結論】プロポフォールでの鎮静は,従来の鎮静薬の使用時と心肺系合併症の発症の危険性は同程度であった.しかし,通常内視鏡時では,プロポフォールを使用した時の方が心肺系合併症の発症率は有意に少なく,従来の鎮静薬よりもプロポフォールを使用することが適切かもしれない.

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