日本消化器内視鏡学会雑誌
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60 巻, 12 号
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総説
  • 馬場 重樹, 辻川 知之, 髙橋 憲一郎, 佐々木 雅也, 杉本 光繁, 安藤 朗
    2018 年 60 巻 12 号 p. 2485-2498
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/12/20
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    クローン病の最も多い手術理由は小腸狭窄である.炎症性狭窄の場合は全身的な薬物投与により狭窄の改善が期待できるが,線維性狭窄に対する現状薬剤の効果は認められていない.以前はアプローチ困難であった小腸狭窄の治療として,バルーン小腸内視鏡を用いた内視鏡的バルーン拡張術が普及しつつある.スコープが狭窄部に到達できれば,バルーン拡張術の成功率は高く,偶発症も少ないことが明らかとなっている.また比較的低侵襲であり,腸管切除術による腸管機能低下を防ぐ意味において狭窄に対しては最も優先されるべき治療法である.しかし,実際は手術を回避するために繰り返し拡張を要することが課題となっている.クローン病の狭窄に対して内視鏡的バルーン拡張術以外にも,針状メスによる狭窄切開術(stricturotomy)やステント留置術などが報告されているが一般化するには至っていない.今後は新規薬剤の中には線維化をターゲットとした薬剤も含まれており,再狭窄予防へ向けた効果の検討が待たれる.

症例
  • 武藤 桃太郎, 武藤 瑞恵, 市來 一彦, 石川 千里, 井上 充貴, 佐藤 啓介
    2018 年 60 巻 12 号 p. 2499-2504
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/12/20
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    症例は75歳男性.スクリーニングの上部消化管内視鏡検査で,胃角部小彎に2cm大の粘膜下腫瘍を認めた.定期的に内視鏡検査で経過観察していたが,6年目で増大傾向を示し,7年目に粘膜切開生検で充実型低分化腺癌の診断となった.Epstein Barr Virus(EBV)が検出され,gastric carcinoma with lymphoid stroma(GCLS)の術前診断で,胃全摘術を施行した.GCLSの自然史を追えた貴重な症例と考え,報告する.

  • 祢津 寧子, 大原 秀一, 大原 祐樹, 斎藤 紘樹, 清水 貴文, 半田 朋子, 齋藤 晃弘, 白木 学, 小島 康弘, 岩間 憲行
    2018 年 60 巻 12 号 p. 2505-2511
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/12/20
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    症例1は38歳女性.心窩部痛で近医を受診し,Proton Pump Inhibitor(以下PPI)内服後も症状改善せず,1カ月後上部消化管内視鏡(以下EGD)を施行.胃内多発潰瘍認め,生検はgroup1であった.PPI増量で寛解したが,Helicobacter pylori(以下H. pylori)抗体陰性と非典型的なため,当院紹介となった.当院EGDで穹隆部から胃体部に小顆粒状粘膜を伴う瘢痕を認め,生検で肉芽腫が検出された.結核やサルコイドーシスなど否定の後,下部消化管内視鏡(以下TCS)施行.上行結腸に多発アフタ認め,生検での非乾酪性肉芽腫からCrohn病(以下CD)と確定診断した.症例2は30歳男性.十二指腸潰瘍でH. pylori除菌療法施行後だが,今回心窩部痛有り,近医EGDで十二指腸潰瘍認め,H. pylori血清抗体陰性で当院紹介.球部下壁に潰瘍,前庭部・十二指腸下行脚にびらんを認めた.痔瘻の既往からCDも念頭にTCS施行し,びらん,アフタ認め,生検で肉芽腫が検出され,CDと確定診断した.H. pylori陰性胃十二指腸潰瘍についてはCDの可能性も念頭に問診,諸検査を施行する事が重要である.

  • 鈴木 貴久, 高士 ひとみ, 三宅 忍幸, 村山 睦, 平井 恵子, 髙橋 秀和, 澤口 洋視, 呉原 裕樹, 溝口 公士
    2018 年 60 巻 12 号 p. 2512-2518
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/12/20
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    症例は37歳,男性.201X年S状結腸癌のため手術を施行.2年後のCTで吻合部に径16mm大の腫瘤が出現したが経過観察.201X+7年大腸内視鏡検査で吻合部近傍に径30mm大の粘膜下腫瘍を認めた.EUSで腫瘤は嚢胞状であった.高周波ナイフで腫瘍の表面を切開し吸引すると粘稠な内容液が排出された.細胞診で異型細胞はなくimplantation cystと診断した.本邦におけるimplantation cystの報告は24例と少ない.術後の吻合部に粘膜下腫瘍を認める場合には,EUS後に病理組織検査を検討すべきである.大腸の手術後の症例ではimplantation cystを念頭におく必要がある.

手技の解説
  • 川村 昌司
    2018 年 60 巻 12 号 p. 2519-2529
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/12/20
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    Helicobacter pylori(H. pylori)感染は胃癌などの疾患リスクと関連しており,内視鏡観察時にはH. pylori感染状態に合わせた好発疾患・好発部位に注意する必要がある.内視鏡によるH. pylori感染診断は未感染・現感染・除菌後(自然除菌含む)の3つの状態に特徴的な胃粘膜所見を用いて行い,その局在と頻度は“胃炎の京都分類”にまとめられている.H. pylori未感染の診断は胃角までのRAC(regular arrangement of collecting venules)が有用であり,現感染診断はびまん性発赤・内視鏡的萎縮,除菌後診断には地図状発赤などの所見を用いて診断する.一方,内視鏡による感染診断の注意点として,PPI(proton pump inhibitor)などの薬剤により未感染例でもRACが不明瞭化すること,現感染例・除菌後例でも体部の集合細静脈がみられる例があること,びまん性発赤の判定が難しい例があることなどが挙げられる.内視鏡的なH. pylori感染診断は一つの所見にとらわれずに総合的に判断する必要がある.また,H. pylori感染診断のみに注視しすぎて内視鏡本来の目的である病変発見を忘れないように,バランスのとれた内視鏡観察を行う必要がある.

資料
  • 島村 勇人, 岩谷 勇吾, 郷田 憲一, Christopher W. Teshima
    2018 年 60 巻 12 号 p. 2530-2541
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/12/20
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    バレット食道,腺癌は欧米で近年増加しており,本邦含めアジア諸国でも増加傾向である.バレットdysplasiaおよび表在型腺癌に対しては内視鏡治療が第一選択であるが,標準治療は未だ確立していない.内視鏡治療に関する大多数のエビデンスは欧米から発信されており,同時性多発癌に対する治療および異時性多発癌の予防を目的としてバレット食道腺癌のみならず,発生母地である背景粘膜のバレット食道も含めた完全根治が治療のゴールとされている.欧米では内視鏡的切除とラジオ波治療(Radiofrequency ablation:RFA)を組み合わせた治療が中心となっている.一方で,RFAの使用が制限されているアジアではバレット食道腺癌の内視鏡的切除が治療の中心となっている.このように欧米とはバレット食道に対する治療方針が大きく異なり,われわれはこの相違を最新のエビデンスに基づいて理解することが重要である.したがって,本稿では最新のエビデンスをまとめ,主に欧米でのバレット食道治療について概説する.

内視鏡室の紹介
最新文献紹介
  • 河上 洋
    2018 年 60 巻 12 号 p. 2548
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/12/20
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    【試験デザインおよび目的】本試験はオランダのhigh volume center 4施設で行った切除可能肝門部領域胆管癌(BpBDC)に対する内視鏡的胆道ドレナージ(EBD)と経皮経肝的胆道ドレナージ術(PTBD)の無作為化比較試験である(Netherlands National Trial Register, number NTR4243).両手技における重症偶発症の発生率を検討した.

    【方法】選択基準は,1)18歳以上,2)広範肝切除の適応,3)予定残肝領域の胆管閉塞,4)総ビリルビン値>2.9mg/dLであり,EBD:PTBD=1:1で割付した.割付調整因子は,1)初回胆道ドレナージ法,2)胆管浸潤,3)施設とした.主要評価項目は重症偶発症(追加の侵襲的処置,入院を要する偶発症,死亡)の発生率.Intention-to-treat(ITT)解析で割付後から外科切除後までを解析した.

    【結果】2013年9月~2016年4月までの期間中,スクリーニング後の54例を登録した(各群27例).中間解析により術前重症合併症の頻度はEBD群とPTBD群の両群間で有意差はないものの(67% vs 63%,P = 0.78,相対危険度0.94),術前致死率がPTBD群はEBD群より高く(11% vs 0%,P = 0.24),本試験は中止となった.重症偶発症のうち両群ともに胆管炎が最も高頻度(EBD群vs PTBD群=37% vs 59%,P = 0.1)であった.PTBD群の術前死亡となった3例の詳細は,胆管炎由来の敗血症→肝不全,消化管出血→循環血液量減少性ショック,治療抵抗性胆管炎→安楽死,であった.術後偶発症(90日以内)はEBD群 vs PTBD群で有意差はなかった(55% vs 65%,P = 0.49,相対危険度1.19).

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