欧米では20世紀後半からBarrett食道腺癌が急増し,1990年代には過半数を占めるに至った.一方,本邦での食道癌は大部分が扁平上皮癌だが,食道腺癌も漸増傾向にあり,約6%に達している.
Barrett食道癌の内視鏡所見は基本的に早期胃癌と同様で,色調差,高低差が診断の発見の鍵である.その基本形は0-Ⅰ,0-Ⅱa,0-Ⅱb,0-Ⅱcであり,0-Ⅲは稀である.鑑別すべき疾患は腸上皮化生,びらん,炎症だが,WL非拡大内視鏡による鑑別は難しい.したがって,米国では米国における標準的surveillance法はSeattle protocolすなわち,1-2cm毎の盲目的4点生検とされている.
しかし,NBI拡大内視鏡を用いて,その表面構造,血管構造を詳細に検討すると診断が可能となる.筆者らの検討では約50%の症例で組織学的に0-Ⅱb進展を合併しており,白色光観察での随伴0-Ⅱb診断率は25%と低率であるが,NBI拡大観察では94%と良好であった.しかし,LSBEに発生した粘膜内癌は,時に存在診断が困難であるため,LSBEのsurveillanceはNBI拡大内視鏡観察に精通した専門施設で行う事が望まれる.
【背景・目的】小児の下部消化管内視鏡検査の前処置における負担軽減と良好な腸管洗浄を得る目的で,アスコルビン酸含有ポリエチレングリコール電解質製剤(以下PEG-Asc)の有効性,安全性を検討した.【方法】検査前日夜にPEG-Asc 20mL/kg,ピコスルファート内用液0.5mL/kg.検査日の朝に25%グリセリン浣腸4mL/kg,PEG-Asc 10mL/kg服用し検討した.【結果】服用できた19例において,全部位で残渣が存在するも検査には支障ない程度にとどまったが,11歳以下では洗浄度が有意に低下していた(p<0.015).また,PEG-Asc服用前後で,血清総蛋白,総ビリルビン,クレアチニンおよびCa値の有意な変動を示したが,服用後に異常値を示したものはなかった.【結論】PEG-Ascによる前処置は,小児においても十分な腸管洗浄効果を得ることができ,安全性においても問題ないと考えられた.
症例は73歳,女性.5年前に胃癌に対して胃全摘術,Roux-en-Y再建術を受けており,心窩部痛を主訴に当院へ救急搬送された.腹部造影CT検査でY脚全体の腸管拡張を認め,Y脚吻合部は盲端に終わっていた.輸入脚症候群と診断し緊急上部消化管内視鏡検査を行い,粘膜のわずかな引きつれと黄白色液漏出を手掛かりにpin hole状のY脚吻合部を同定しえた.同部に対し内視鏡的バルーン拡張術を施行すると大量の腸液流出を認めた.術後経過は良好で第6病日に退院となった.輸入脚症候群に対しては内視鏡的拡張術が極めて有効であり,CT検査による全体像把握に加え詳細な内視鏡観察によりY脚吻合部を同定することが有用である.
食道癌術後に縫合不全が生じると絶食期間が遷延し在院期間が長期化する.今回,食道癌術後の縫合不全で生じた瘻孔2例に対し,内視鏡的にカバー付き食道ステントを留置することで瘻孔閉鎖を試みた.いずれも瘻孔閉鎖に成功し,早期からの経口摂取再開が可能となり,瘻孔治癒が促進されたことで在院期間の短縮へと繋がった.食道癌術後の瘻孔閉鎖にカバー付きステント留置が有用であったので報告した.
症例1は74歳男性.2015年6月,胃癌に対し胃全摘術及びRoux-en-Y再建術施行.高度逆流症状を呈し,上部消化管内視鏡検査にて食道内に胆汁を含む黄色の腸管内容物貯留と逆流性食道炎が認められた.膵酵素阻害薬や蠕動促進薬も効果不良であったが六君子湯追加により摂食可能となり退院し得た.症例2は75歳男性.2011年11月,胃癌に対し腹腔鏡下幽門側胃切除術及びBillroth-Ⅰ再建術を施行.嘔吐・吃逆,摂食不良,体重減少を呈し,術後5年の時点で当科紹介.同様に逆流性食道炎と診断され,六君子湯追加で軽快した.六君子湯の効果として消化管運動改善や食欲増進の他,胆汁吸着作用が報告されており,胃切除術後逆流性食道炎の症状改善に寄与すると考えられる.
症例は80歳男性.切除不能の下部胆管癌に対し胆管プラスチックステントを留置し経過観察していた.担癌状態による慢性消耗性貧血のため輸血を繰り返されていたが,乳頭部に露出した胆管癌による急速な貧血を認めるようになったため,この腫瘍部に対して放射線照射を行うことで癌性貧血を緩和でき頻回な輸血を回避することが可能となった.出血性下部胆管癌に対する放射線治療は患者のQOLの改善と生存期間の延長を得られる可能性があると考える.
欧米においてBarrett腺癌は急増しているが,本邦では依然まれである.しかし,本邦における逆流性食道炎罹患率は上昇しており,今後,Barrett食道および腺癌の増加が憂慮されている.進行したBarrett腺癌の予後は不良であり,患者予後の改善には内視鏡による早期発見が必要である.本邦ではBarrett食道の大多数がshort segment typeであることから,腺癌病変の多くは内視鏡的観察の難しい食道胃接合部に局在する.よって,その早期発見には観察のコツと高い内視鏡診断能を要する.内視鏡観察の基本は通常観察であるものの,酢酸法やNarrow Band Imaging(NBI)を併用した拡大観察の有用性が確立されつつある.本稿では筆者らの経験と国内外の臨床研究成果に基づき,内視鏡を用いたBarrett腺癌の早期発見に肝要と思われるテクニックと診断体系について,実際の症例を供覧しつつ解説したい.
Underwater EMR(以下UEMR)は消化管の管腔内を水で満たした状態で粘膜下局注を行わずに病変をスネアで絞扼し,高周波手術装置を用いて通電切除する方法である.消化管内腔を脱気し水で満たすと,粘膜・粘膜下層が固有筋層から管腔内に浮かぶ様に突出し,スネアによる絞扼が容易となる.本稿では大腸ポリープに対するUEMRの処置の実際について解説する.
【背景と目的】無症状の被検者に対する上部消化管内視鏡検査(esophagogastroduodenoscopy;EGD)の検査時間の意義は確立されていない.今回の検討の目的は,無症状の被検者へのEGDに長い時間を費やす内視鏡医が,より多くの腫瘍性病変を見つけているかを明らかにすることである.
【方法】2010年4月から2015年9月に筆者らの施設で施行されたEGDのデータベースを後ろ向きに検討した.観察時間により内視鏡医を分類するために,生検を施行した症例を除いた平均観察時間を算出し,スタッフ医師を短時間群・中間群・長時間群の3群に分けた.3群間の腫瘍検出割合の差異を多変量解析にて比較した.
【結果】対象期間内に施行した55,786件のEGDのうち,スタッフ医師が無症状の被検者に対して施行した15,763件のEGDを分析した.生検を施行していない13,661件のEGDの平均検査時間は6.2分(範囲:2-18分)であった.カットオフ値を5分と7分に設定すると,4名の内視鏡医が短時間群(平均時間4.4±1.0分),12名の内視鏡医が中間群(平均時間6.1±1.4分),そして4名の内視鏡医が長時間群(平均時間7.8±1.9分)に分類された.短時間群・中間群・長時間群の腫瘍検出割合は,それぞれ0.57%(13/2,288),0.97%(99/10,180),0.94%(31/3,295)であった.多変量解析では,短時間群と比べた中間群・長時間群の腫瘍検出割合のオッズ比は,それぞれ1.90(95% 信頼区間[CI],1.06-3.40),1.89(95% CI,0.98-3.64)であった.
【結論】EGDに適切な検査時間を費やさない内視鏡医は,病変を見逃している可能性がある.
【背景】膵の上皮内新生物は,超音波内視鏡(EUS)にて慢性膵炎様変化としてとらえられることがある.本研究の目的は,BRCA2変異キャリアがどの程度非キャリアよりEUSにおける慢性膵炎様変化を示すかを調べることである.
【方法】内視鏡データベースからEUS目的に紹介されたBRCA2突然変異を有する患者を同定し,医療記録,EUSレポート,およびEUS画像について検討した.対照として,性別,EUS施行日,内視鏡専門医,および内視鏡機種を一致させた症例を1:2の割合で抽出した.慢性膵炎様変化の評価はRosemont分類を用いた.
【結果】37人のBRCA2変異キャリアと92人の対照症例がEUSを受けた.対照群と比較して,BRCA2変異キャリア群は,膵臓の充実性病変(16.2%対1.08%;P=0.005),膵嚢胞(21.6%対6.1%;P=0.01),Rosemont分類における「慢性膵炎と一致する」所見(13.5%vs 1%;P=0.002),またはRosemont分類における「慢性膵炎を示唆する」所見(16.2%対2.1%;P=0.003)を有意に有していた.年齢,アルコール摂取,および喫煙歴を調整した後,BRCA2変異キャリアは,慢性膵炎様変化を示す可能性が約25倍高いことが判明した.
【結論】BRCA2変異キャリアにおいて,慢性膵炎様の変化は膵臓の充実性および嚢胞性病変とともに,非キャリアよりも有意に多くみられた.