日本消化器内視鏡学会雑誌
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60 巻, 7 号
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総説
  • 菅野 敦, 正宗 淳, 下瀬川 徹
    2018 年60 巻7 号 p. 1295-1308
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/20
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    自己免疫性膵炎(AIP)は,膵腫大と主膵管の不整狭細像を特徴とし,しばしば胆管が狭窄するIgG4関連硬化性胆管炎(IgG4-SC)を合併する.内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)による膵管の不整狭細像はAIPに特徴的であるが,限局性のAIPと膵癌を膵管像から鑑別することは難しい.IgG4-SCにおける胆管狭窄は,胆管癌と比較して狭窄長が長いといった特徴を有するが,胆管像のみによる鑑別は困難である.ERCPに引き続いて行われる管腔内超音波検査による胆管壁の所見は,IgG4-SCと胆管癌の鑑別に有用とされている.超音波内視鏡検査(EUS)は,膵臓の低エコー腫大やIgG4-SCの胆管壁肥厚を描出可能で,Elastographyや造影EUSなどを用いた診断も試みられている.EUSガイド下穿刺吸引法を用いたAIPの組織学的診断の有用性も報告されており,AIPの診断能向上が期待される.AIPの治療は,ステロイドを用いた寛解導入ならびに維持療法が基本であるが,閉塞性黄疸時の胆道ドレナージや膵石治療の適応,さらに再燃時に用いられる免疫調節薬の使用法などについて更なる検討が必要である.

  • 松林 宏行, 石渡 裕俊, 藤江 慎也, 佐藤 純也, 小野 裕之
    2018 年60 巻7 号 p. 1309-1316
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/20
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    膵癌家系や遺伝性腫瘍症候群の家系では膵癌発生リスクが上昇するため,欧米では2000年頃から早期膵癌診断を目的としたサーベイランスが行われて来た.スクリーニングにはMRIやCTなどの横断面画像に加えて膵管と膵実質の両方を精度高く観察できるEUSが用いられ,膵癌やその前駆病変が疑われた際にはERCPやEUS-FNAによる精査・病理検体採取が行われて来た.膵癌家系のEUSでは,点状・線状高エコー,嚢胞,膵管拡張,分葉状エコー等,早期慢性膵炎の所見が特徴的と報告される.2011年に米国ボルチモアで開催されたCancer of the Pancreas Screening(CAPS)国際コンソーシアムでは膵管上皮の高度異型病変(PanIN 3)ないし早期膵癌の診断・治療が目標に定められたが,今日まで世界的に報告される膵癌サーベイランスの成績はこの目標には程遠い.2014年に本邦でも家族性膵癌登録が設立され,膵癌家系のサーベイランスが始まろうとしている.

症例
  • 杉本 尚仁, 久貝 宗弘, 赤澤 貴子, 松本 次弘, 山内 徳人, 森川 輝久, 村松 哲, 堀 和敏, 藤本 莊太郎
    2018 年60 巻7 号 p. 1317-1322
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/20
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    症例は99歳女性.糖尿病・高血圧・腎機能低下で近医通院中,下肢に紫斑出現し当院皮膚科に紹介来院.同時に軽度上腹部痛があったため腹部CTを撮影したところ,著明な十二指腸壁の肥厚を認めた.内視鏡では食道および胃体部から前庭部にわずかな隆起を伴う発赤粘膜の多発,十二指腸球部から下行部に発赤を伴うびらん面を認めた.消化管の生検では特異的な所見は得られなかったが,皮膚生検でleukocytoclastic vasculitisの所見を認め,消化管病変を伴うIgA血管炎と診断した.一般にIgA血管炎は若年者に多いが,超高齢者においてもその可能性を念頭に置く必要性がある.

  • 石井 清文, 大部 誠道, 叶川 直哉, 三根 毅士, 藤本 竜也, 吉田 有, 駒 嘉宏, 藤森 基次, 畦元 亮作, 井上 泰
    2018 年60 巻7 号 p. 1323-1330
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/20
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    症例は61歳男性.高血圧,痛風,糖尿病で代謝内科に通院治療中,膵嚢胞性病変の評価目的に当科へ紹介となった.精査のために行った造影CT検査で偶発的に下腹部の腸間膜に45mmの境界明瞭な充実性腫瘤と腹部大動脈脇に多発するリンパ節腫大を認めた.FDG-PET/CTでは同腫瘤とリンパ節及び,左大腿骨と第3腰椎に異常集積を認めた.組織学的診断のため腹腔内腫瘤に対して超音波内視鏡下穿刺吸引組織診を施行し,病理診断の結果から神経内分泌腫瘍と診断された.ソマトスタチン受容体シンチグラフィーを施行し他臓器に原発病変は認めなかった.腸間膜原発神経内分泌腫瘍は稀であり,その診断に超音波内視鏡下穿刺吸引組織診が有用であったため報告する.

  • 伊藤 誉, 堀江 久永, 直井 大志, 田原 真紀子, 森 克亮, 巷野 佳彦, 井上 賢之, 有田 宗史, 鯉沼 広治, 佐田 尚宏
    2018 年60 巻7 号 p. 1331-1337
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/20
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    大腸内視鏡が左鼠径ヘルニアに嵌入し挿入困難になった3例を経験した.症例はいずれも高齢の男性であった.1例は慎重に抜去を行った後,脱出した腸管を徒手整復手技に準じて還納することで全大腸内視検査が施行可能であったが,その他2例は検査の継続が不可能であった.大腸内視鏡は広く普及している手技であるが,検査中に内視鏡が鼠径ヘルニアに嵌入した報告は極めて少ない.大腸内視鏡検査を行う上で,高齢の男性では陰嚢腫脹を伴う外鼠径ヘルニアの病歴聴取が重要である.大腸内視鏡検査中に予期せず内視鏡が鼠径ヘルニアに嵌入した場合は,一旦手技を中断し,鼠径部痛などの臨床症状の確認を行った後,慎重に抜去するのが望ましい.

  • 森本 有加里, 藤田 泰三, 水野 龍義, 伊藤 あろか, 中野 知幸, 蜂須賀 崇, 巽 孝成, 森田 敏裕, 小西 登, 松村 雅彦
    2018 年60 巻7 号 p. 1338-1343
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/20
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    症例は73歳女性.右季肋部痛,背部痛を主訴に当院を受診し,腹部CTにて総胆管下部に線状の石灰化陰影を認め,総胆管結石と診断した.内視鏡的乳頭切開術(EST)を行い,針状の結石を2本摘出した.病理組織学的所見や成分分析の結果,魚骨と判断した.魚骨を核とした総胆管結石の報告はまれであり,Vater乳頭に対する未処置例において,複数の魚骨が存在した報告例は検索しえた限りみられず,文献的考察を加えて報告する.

新しい手技・処置具・機器
手技の解説
  • 角川 康夫, 居軒 和也, 中村 佳子, 松本 美野里, 高丸 博之, 松田 尚久, 斎藤 豊
    2018 年60 巻7 号 p. 1346-1352
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/20
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    大腸カプセル内視鏡が臨床現場に登場して4年が経過した.精度の高い検査であることは多くの研究で実証されているが,解決すべき諸課題もいくつか残っており,下剤の服用方法をはじめとして,各施設がより良い方法に向けて模索している段階である.本稿ではまず,大腸カプセル内視鏡の準備について述べ,次にその腸管前処置とブースターについて当院の工夫を紹介する.最後に3ステップ方式の読影方法(プレビュー・レビュー・レポート)について私たちが行っている方法を紹介する.

  • 池谷 敬
    2018 年60 巻7 号 p. 1353-1359
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/20
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    電子付録

    当院では大腸憩室出血に対してEndoscopic Band Ligation(EBL)で治療を行ってきた.今までの経験から治療のポイントをお伝えする際に,治療全体をA:責任憩室の同定,B:EBL手技,C:治療後のマネージメントについて分けて説明する.

    A:責任憩室の同定では,腸管蠕動が強まる前に責任憩室を同定することが重要である.また活動性の出血(Active Bleeding:AB)のみならずNon-Bleeding Visible Vessel(NBVV)やAdherent Clot(AC)といったStigmata of recent hemorrhage(SRH)を同定することが求められる.

    B:EBL手技では効果的なマーキングクリップを行うため,2つのクリップを鳥居状に配置する事が重要である.バンドが不成功であった際にはクリップやボスミン局注を憩室の開口部の大きさをみて選択する.

    C:治療後のマネージメントでは早期再出血への対応,少数例ながら本邦で報告されている穿孔例について情報を共有したい.

資料
  • 由雄 敏之, 富田 英臣, 岩崎 竜一郎, 堀内 裕介, 大前 雅実, 石山 晃世志, 平澤 俊明, 山本 頼正, 土田 知宏, 藤崎 順子 ...
    2018 年60 巻7 号 p. 1360-1369
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/20
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    【背景】抗凝固薬は血栓塞栓性イベントを予防するために使われる.直接経口抗凝固薬(DOAC:Direct Oral Anticoagulant)は新しい選択肢だが,内視鏡治療における出血性リスクに及ぼす影響については報告がない.DOACが胃腫瘍に対する粘膜下層剥離術(ESD:Endoscopic submucosal dissection)に及ぼす臨床的影響についてワルファリンと比較して評価することを目的とした.

    【方法】3施設の高度医療施設で胃腫瘍に対してESDを施行した抗凝固薬を内服している97症例108病変について後方視的に検討した.24症例がDOACを内服しており,その内訳はダビガトラン12例,リバーロキサバン11例,アピキサバン1例,ワルファリン73例であった.

    【結果】DOAC群ではリバーロキサバン内服例がダビガトラン内服例より有意に後出血率が高く(45% vs 0%,p<0.05),ヘパリン置換の有無とは無関係だった.ワルファリン群では78%の症例でヘパリン置換が施行されており,後出血率はヘパリン置換施行例がヘパリン置換非施行例と比べて有意に高かった(36% vs 0%,p<0.05).内服する抗血栓薬の数が増えるほど後出血率は高かった(p<0.05).DOACではより早く最大効果に達するためワルファリンと比べヘパリン置換の期間が短く(p<0.05),入院期間も短かった(p<0.05).多変量解析ではヘパリン置換(OR 10.7),リバーロキサバン(OR 6.00)と複数の抗血栓薬内服(OR 4.35)が独立した後出血の危険因子であった.

    【結論】DOACの影響は薬剤ごとに異なった.ダビガトランは入院期間の短縮に寄与し後出血率も低いためワルファリンに代わりえる良い選択肢となるが,リバーロキサバンは有意に後出血率が高かった.

ガイドライン
  • 岩切 龍一, 田中 聖人, 後藤田 卓志, 岡 志郎, 大塚 隆生, 坂田 資尚, 千葉 俊美, 樋口 和秀, 増山 仁徳, 野崎 良一, ...
    2018 年60 巻7 号 p. 1370-1396
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/20
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    日本消化器内視鏡学会は,内視鏡診療ガイドライン作成作業の一環として,消化器内視鏡の洗浄・消毒標準化にむけたガイドラインを作成した.本邦と欧米先進国では消化器内視鏡医療の環境が異なる.欧米先進国では消化器内視鏡の施行は,ほぼ専門施設に限られ,厳格な洗浄・消毒の既定が遵守されている.本邦では小規模クリニックでも消化器内視鏡が行われ,年間に行われる消化器内視鏡数は膨大な数になる.内視鏡の洗浄・消毒法も医療機関によって差が認められるのも事実である.洗浄・消毒に関しての根拠は,エビデンスが乏しいのも事実であるが,内視鏡医療の発展のためにも消化器内視鏡の洗浄・消毒の標準化が必要である.

内視鏡室の紹介
最新文献紹介
  • 坂本 琢, 斎藤 豊
    2018 年60 巻7 号 p. 1405
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/20
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    【要旨】一般的な病理組織診断には,一定の労力と時間を要するし,それが診断ないし治療の選択を遅らせることがある.本研究グループは,ヒトのがん診断を迅速かつ非侵襲的に行う質量分析デバイスを開発した(MassSpec Pen).MassSpec Penは診断標的部の分子を十分に回収するために,組織表面に小さな水滴を放出し,質量分析計へ送り出すようになっている.本研究では,ex vivoの解析としてヒトから採取されたがん組織切片(20検体)とがん患者から得られた非腫瘍および腫瘍組織(253検体)を用いてMassSpec Penの診断精度を検証した.がん組織は,乳癌・肺癌・甲状腺癌および卵巣癌が対象となった.結果,感度は96.4%,特異度は96.2%,正診度は96.3%と非常に高かった.同様に,甲状腺腫瘍の良悪性鑑別や肺癌の組織型の鑑別にも有用であった.特に,一つの検体内で腫瘍非腫瘍境界部分についてのスペクトラムをみると,両特性が混在する結果が得られたことも,がんの存在診断の正確性を支持するものである.また,マウス生体内での実験により非侵襲性が確認された.今回の結果から,MassSpec Penは実臨床(外科領域の術中)における生体内外の癌存在診断に利用可能となる可能性が示された.

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