日本消化器内視鏡学会雑誌
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60 巻, 9 号
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総説
  • 石川 秀樹
    2018 年60 巻9 号 p. 1547-1557
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/20
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    大腸内視鏡検査の普及とともに,大腸癌検診による便潜血検査陽性や,大腸内視鏡検査によるドックなどで,家族性大腸腺腫症を診断する機会が増えてきている.そこで本章では,家族性大腸腺腫症の診療において消化器内視鏡医が知っておくべき内容および最新の治療研究を紹介した.

    家族性大腸腺腫症は,大腸に腺腫が多発することを主徴とする常染色体優性遺伝性疾患である.本疾患で高頻度に認める胃腺腫,胃癌,胃底腺ポリープ,十二指腸腺腫,大腸腺腫,大腸癌,回腸ポーチ腺腫の診断について,通常診療と異なる注意点を記した.

    治療については,これまで本疾患は外科的な大腸全摘術や膵頭十二指腸切除術しかなかったが,内視鏡的なポリープ摘除や,大腸ポリープの抑制をめざした化学予防の研究が積極的に行われている.これらの研究状況を紹介した.

    なお,家族性大腸腺腫症の診療には,大腸癌研究会より出版されている「遺伝性大腸癌診療ガイドライン2016年版」を必ず参照してほしい.

  • 青山 大輝, 永田 信二
    2018 年60 巻9 号 p. 1558-1571
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/20
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    本邦では高齢化に伴う大腸憩室症の増加,また背景の併存疾患増加を受けて大腸憩室出血の頻度は高まり,臨床的重要性が増している.大腸憩室出血は間欠的な動脈出血を来すという疾患特性からしばしば内視鏡診断に難渋する.自然止血率も高いが,適切な内視鏡治療がなされないと再出血率も高い.クリップ法や結紮法といった内視鏡治療は止血率が高く有効であるが,そのためには内視鏡検査でSRH(stigmata of recent hemorrhage)の所見を捉えることが必須である.出血後できるだけ早期の大腸内視鏡検査,造影CT検査を行い,また新しい責任憩室同定法“step clipping”法などを用いることで出血源の診断率向上が期待できる.

症例
  • 矢野 充保, 大塚 加奈子, 青木 秀俊, 寺前 智史, 面家 敏宏, 鈴木 康博, 中本 次郎, 柴田 啓志, 八木 淑之, 工藤 英治
    2018 年60 巻9 号 p. 1572-1578
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/20
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    症例は69歳,女性.経過観察されていた胃底腺ポリポーシス内部に一部に発赤を伴う褪色調の平坦隆起性病変を認め,生検で癌を確認後に胃全摘術を施行した.病変部は胃腺窩上皮型腺腫および同腺癌であった.本症例ではWorthleyらの提唱する遺伝性のgastric adenocarcinoma and proximal polyposis of the stomach(GAPPS)を疑い,APC遺伝子promoter 1Bを解析した.その結果GAPPSに特異的な遺伝子異常であるc.-191T>Cの変異を認めた.GAPPSは新しい疾患概念であり,悪性化ポテンシャルが高い.密生する胃底腺ポリポーシスに遭遇した際はGAPPSを念頭においた精査が必要である.

  • 吹田 洋將, 豊水 道史, 石橋 啓如, 浅木 努史, 安田 伊久磨, 武田 武文, 佐藤 育也, 野澤 聡志, 末松 直美
    2018 年60 巻9 号 p. 1579-1584
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/20
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    回腸終末部の狭窄を引き起こした右側結腸憩室症の1例を経験した.症例は66歳,女性.主訴は右側腹部痛.40歳頃より60歳代まで複数回の上行結腸憩室炎の既往があり,保存治療で軽快していた.およそ二カ月前に右側腹部痛が出現した.画像検査で回腸終末部の狭窄による腸閉塞と診断され,回盲部切除術が施行された.病理組織検査では,上行結腸および盲腸における憩室周囲の著明な線維化が認められ,これにより回腸終末部の狭窄が引き起こされていた.右側結腸憩室症が回腸終末部の狭窄を引き起こす病態について考察した.上行結腸および盲腸の憩室症に起因する回腸終末部の狭窄症例はまれであり報告した.

  • 佐藤 宗広, 森田 真一, 川田 雄三, 相場 恒男, 木村 淳史, 大崎 暁彦, 米山 靖, 古川 浩一, 和栗 暢生, 橋立 英樹
    2018 年60 巻9 号 p. 1585-1590
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/20
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    症例は38歳女性.5年前に家族性地中海熱(FMF)と診断され,コルヒチンで加療されていた.軟便と血便にて当科を紹介され,大腸内視鏡検査で回盲部に円形の深掘れ潰瘍が認められた.内視鏡所見や臨床症状などから腸管ベーチェット病(腸管BD)もしくは単純性潰瘍が併発したと考えられた.副腎皮質ステロイドで加療したところ,腹部症状は軽快し潰瘍も瘢痕化した.FMFの経過中に腸管BD類似の深掘れ潰瘍をきたし,副腎皮質ステロイドが著効した症例は極めてまれであり,報告する.

  • 金子 淳一, 松下 雅広, 渡邉 晋也
    2018 年60 巻9 号 p. 1591-1597
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/20
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    骨盤内膿瘍に対するEUSガイド下経直腸的ドレナージは欧米での有用性や安全性の報告は多いが,本邦からの報告は少ない.われわれは同手技にて治療した骨盤内膿瘍の2症例を経験したので報告する.症例1は42歳女性.壊疽性虫垂炎術後に骨盤内膿瘍に対し,ダグラス窩穿刺で改善なく,経直腸的ドレナージを施行した.直腸から超音波内視鏡ガイド下で膿瘍を穿刺し,外瘻チューブを留置し,膿瘍の改善を認めた.症例2は84歳女性.特発性直腸穿孔術後に骨盤内膿瘍に対し,症例1と同じ方法で膿瘍の改善を認めた.2症例共に外瘻チューブは1週間で抜去し,合併症や再燃はなかった.同手技が,骨盤内膿瘍の治療に有効である可能性が示唆された.

手技の解説
  • 小原 英幹, 森 宏仁, 西山 典子, 正木 勉
    2018 年60 巻9 号 p. 1598-1610
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/20
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    消化管の難治性出血,穿孔,瘻孔に対する救済治療は,既存の内視鏡機器及び技術では限界とされてきた.近年,その救済治療の役割を担う内視鏡用の全層縫合器,Over-The-Scope Clip(以下OTSC)システムが登場し,内視鏡治療の最後の砦となる革新的なデバイスとして注目される.

    本機器は,簡便な機構で消化管壁に対する強固な縫合,かつ専用鉗子の補助による大きな創面や瘻孔の縫合閉鎖という従来機器にない特性をもつ.それゆえ,救済治療に傑出した臨床的効果をもたらしうる.2018年4月より,一定の施設基準を満たした条件下ではあるものの,内視鏡による穿孔・瘻孔閉鎖の手技点数が新規に追加された.その費用面でのハードルが下がり,活用しやすい環境も整ってきた.そこで本稿では,本機器の適応,特性が十分に理解された上で,実臨床で有意義に生かされるようその使用のコツを解説する.

資料
  • 鎌田 研, 竹中 完, 北野 雅之, 大本 俊介, 宮田 剛, 三長 孝輔, 山雄 健太郎, 今井 元, 櫻井 俊治, 西田 直生志, 樫田 ...
    2018 年60 巻9 号 p. 1611-1620
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/20
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    【背景と目的】孤立性胆嚢病変の鑑別診断は課題が残されている.本研究の目的は,胆嚢孤立性病変に対する造影ハーモニックEUS(CH-EUS)の有用性を評価すること.

    【方法】2007年3月から2014年2月までの間に,孤立性胆嚢病変を有する125人の患者に対してCH-EUSを施行し,レトロスペクティブにCH-EUSの有用性を検討した.はじめに,胆嚢病変と胆泥の鑑別診断能に関して,通常のBモードEUS(FB-EUS)とCH-EUSを比較検討した.その後,良悪性鑑別に対する診断能を両検査間で比較検討した.CH-EUSのVascular imageおよびPerfusion imageにおける血流パターンを5人の医師によるブラインドリーディングにて評価した.

    【結果】胆嚢病変と胆泥の鑑別診断能に関して,FB-EUSの感度は82%,特異度は100%,正診率は95%であった.一方,CH-EUSの感度は100%,特異度は99%,正診率は99%であった.良悪性鑑別に関して,腫瘍の大きさあるいは形状に基づいて診断した場合のFB-EUSの診断感度は61-87%,特異度は71-88%,正診率は74-86%であった.CH-EUSにてVascular imageにおけるirregular vessel patternあるいはPerfusion imageにおけるheterogeneous enhancementを悪性所見とした場合の診断感度は90%,特異度は98%,正診率は96%であり,FB-EUSの診断能と比較し有意に良好であった.

    【結語】CH-EUSは,孤立性胆嚢病変の鑑別診断において有用である.

内視鏡室の紹介
最新文献紹介
  • 伊佐山 浩通
    2018 年60 巻9 号 p. 1630
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/20
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    【背景】感染性壊死性膵炎は致死的となる可能性があり,侵襲的な治療の適応のある疾患である.外科的Step-up approachが標準である.有望な代替治療は内視鏡的Step-up approachである.われわれは内視鏡的Step-up approachが外科的Step-up approachよりも臨床的,経済的に優れているか検証するために両方のApproachを比較した.

    【対象と方法】今回の多施設共同無作為化比較優性試験では,オランダの19施設から感染性壊死性膵炎を伴う,侵襲的な治療の適応がある成人を登録した. 患者は無作為に内視鏡的(内視鏡群)か外科的なStep-up approach(外科治療群)を行う群に割り付けられた.内視鏡的Step-up approachは超音波内視鏡ガイド下に経消化管壁的にドレナージし,必要であれば内視鏡的Necrosectomyを施行した.外科的Step-up approachは経皮的なドレナージチューブの留置を行い,必要であればビデオ補助下の壊死物質除去術を施行した.主要評価項目は6カ月以内の重篤な偶発症と死亡の組み合わせである.解析は治療企図解析が行われた.本臨床試験はISRCTNに登録した(ISRCTN09186711).

    【結果】2011年9月20日から2015年9月20日の期間に膵内外に壊死を伴う418例がスクリーニングされ,98例が登録され,内視鏡的(n=51),外科的(n=47)Step-up approachを行う群に割り付けられた.主要評価項目である重篤な偶発症と死亡は内視鏡治療群22例(43%),外科治療群で21例(45%)認められた(risk ratio [RR] 0・97, 95% CI 0・62‒1・51; p=0・88).死亡率は両群間で差はなく(内視鏡群9例(18%),外科治療群6例(13%); RR 1・38, 95% CI 0・53‒3・59, p=0・50),重篤な偶発症も同様であった.

    【考察・結論】感染性壊死性膵炎の治療においては,重篤な偶発症発生率,死亡率の点では内視鏡治療群は外科的治療群よりも優れてはいなかった.しかし,膵液漏,入院期間の長さの点では,内視鏡群が優れていた.本臨床試験の結果からは,内視鏡的治療の方が望ましいと考えられた.

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