日本消化器内視鏡学会雑誌
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61 巻, 10 号
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総説
  • 後藤 修, 柿沼 大輔
    2019 年 61 巻 10 号 p. 2327-2336
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/21
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    腹腔鏡と内視鏡を用いて,過不足なく任意の部位を安全・確実に全層切除できる腹腔鏡内視鏡合同手術(laparoscopic and endoscopic cooperative surgery:LECS)は,より低侵襲な局所切除法として2014年に保険適応となり,腹腔鏡下手術の適応となる胃粘膜下腫瘍を主な対象として国内外に普及している.LECSコンセプト誕生に紹介された管腔開放性術式であるClassical LECS以降,CLEAN-NET, NEWSなど管腔を開放させない方法も考案され,大きさや発育形式,潰瘍の有無など病変の特徴に応じて適切な術式を選択することが可能となった.また,胃癌や他臓器への応用,さらにはセンチネルリンパ節ナビゲーション手術との融合も試みられており,LECSのさらなる適応拡大が期待されている.

原著
  • 吉住 有人, 宇野 秀彦, 志田 崇, 加藤 佳瑞紀, 土屋 慎, 嶋田 太郎, 関本 匡, 小松 悌介
    2019 年 61 巻 10 号 p. 2337-2345
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/21
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    【背景・目的】大腸SM癌のリンパ節転移のリスク因子については様々な報告を認め,追加切除の適応については議論の余地がある.また,先行内視鏡的切除が予後に影響を与える可能性も報告されている.

    【方法】当院でリンパ節郭清を伴う大腸切除術が施行された大腸SM癌118例を対象とし,リンパ節転移のリスク因子,無再発生存期間・全生存期間を調査し,先行内視鏡的切除が予後に与える影響を検討した.

    【結果】リンパ節転移のリスク因子はリンパ管侵襲であり,リンパ管侵襲陰性例ではSM浸潤度が3,500μm未満ならばリンパ節転移を認めなかった.内視鏡的切除の有無で分けた2群間では,無再発生存期間・全生存期間共に有意差を認めなかった.

    【結論】本検討からは先行内視鏡的切除が大腸SM癌の予後を増悪させる可能性は少なく,SM浸潤度が正確に診断できない病変に対してR0切除が可能であることを担保した上で慎重に内視鏡的切除を先行することは選択肢となり得ると考えられた.

症例
  • 松枝 真由, 髙橋 索真, 稲葉 知己, コルビン 真梨子, 青山 祐樹, 香川 朋, 河井 裕介, 石川 茂直, 和唐 正樹, 安藤 翠
    2019 年 61 巻 10 号 p. 2346-2352
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/21
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    症例は13歳の健常男児.主訴は発熱,胸痛,食欲不振.上部消化管内視鏡検査にて,中部食道に境界明瞭な円形潰瘍を,下部食道に融合傾向を伴う縦走潰瘍を認めた.生検では,核腫大,核のスリガラス状変化を認め,抗単純ヘルペスウイルス(HSV)抗体による免疫染色が陽性であった.来院時血清抗HSV-IgG抗体は陰性であったが,回復期には抗HSV-IgG抗体が陽転化した.以上より,HSV初感染によるヘルペス食道炎と診断した.一般的にヘルペス食道炎は免疫不全患者にHSVの回帰感染によって発症し,初感染によるヘルペス食道炎の報告は本邦にはない.また,早期の抗ウイルス療法が著効し,内視鏡像も改善した.

  • 寺部 寛哉, 宗 祐人, 酒見 亮介, 八坂 太親, 辛島 嘉彦, 大津 健聖, 今村 健太郎, 森光 洋介, 田邉 寛, 岩下 明德
    2019 年 61 巻 10 号 p. 2353-2359
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/21
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    症例は79歳女性.2008年の上部消化管内視鏡検査で胃穹窿部に隆起性病変を認め,過形成ポリープとされていた.約5年後に同病変は若干増大し,病変周囲に陥凹面を認めた.NBI併用拡大内視鏡所見は,irregular microvascular pattern plus absent microsurface pattern with a demarcation lineを呈し,Type0-Ⅱa+Ⅱcの早期胃癌と診断しESDを施行した.病理組織学的に病変は腺窩上皮様と幽門腺様への分化を示す超高分化腺癌で構成され,免疫組織化学的にMUC6およびlysozymeが陽性,Pepsinogen-Ⅰが陰性であった.以上より胃型粘液形質を示す幽門腺粘膜型の粘膜内癌と診断された.粘膜内癌の幽門腺粘膜型癌の報告はなく,世界に先駆けて報告する.

  • 浦上 聡, 阿南 隆洋, 北村 泰明, 藤田 光一, 松井 佐織, 渡辺 明彦, 菅原 淳, 向井 秀一
    2019 年 61 巻 10 号 p. 2360-2365
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/21
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    症例は72歳男性.食道癌ESD後の経過観察中に,穹窿部後壁に8mm大の扁平な粘膜隆起性病変を認め,生検ではGroup1であった.半年後の再検時には15mm大と増大し粘膜下腫瘍様の形態となり,生検で胃癌(pap)と診断した.EUSでは粘膜下層に点状の高エコー域があるため,胃癌の粘膜下層浸潤が疑われたが,反応性変化の可能性があることと,患者の希望を考慮してESDを施行した.病理組織で,異所性胃腺の腫瘍への移行像と腫瘍内に石灰化像がみられたため,石灰化を伴う異所性胃腺由来癌と考えた.粘膜下腫瘍様の形態で特異なEUS像を呈した異所性胃腺由来胃癌を経験したので報告する.

  • 香川 哲也, 軸原 温, 吉田 圭吾, 宮城 琢也
    2019 年 61 巻 10 号 p. 2366-2371
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/21
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    症例は78歳女性,嘔気・嘔吐を主訴に当院を受診し,総胆管結石による閉塞性胆管炎と診断された.内視鏡的乳頭括約筋切開術後総胆管結石採石術の際に,十二指腸下行部の穿孔を来した.内視鏡下にクリップ閉鎖を試み,7本のクリップで粘膜面に閉鎖に成功し,減圧・絶飲食・抗菌薬加療にて保存的加療が可能であった.ERCP関連の十二指腸穿孔に対して,内視鏡下クリップ閉鎖術を行った本法報告は少ない.しかし,患者の状態や技術面などの条件を満たせば侵襲の大きな外科的手術を回避出来る可能性がある.偶発症への対処法として自験例を共有する意義は深いと考え,文献的考察を加えて報告する.

  • 中村 正克, 大塚 俊美, 林 蘭仁, 野村 友映, 太田 雅文, 櫻井 尚子, 林 援, 髙野 暉, 小坂 健夫, 有沢 富康
    2019 年 61 巻 10 号 p. 2372-2378
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/21
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    症例は79歳男性.高度貧血を主訴に近医を受診し小腸腫瘍が疑われたため当院紹介となった.造影CT,PET-CTで空腸に腫瘤性病変を認めたため,経口シングルバルーン小腸内視鏡検査と小腸カプセル内視鏡検査を行った.2型病変を空腸に認める以外に十二指腸水平部にも0-Ⅱc病変を認め,いずれの病変も腺癌の病理結果であった.リスク因子となる炎症性腸疾患や遺伝性疾患(FAP,Lynch syndrome,Peutz-Jeghers syndrome)を認めない,非常に稀な原発性同時多発小腸癌を経験したため報告をする.

手技の解説
  • 千野 晶子
    2019 年 61 巻 10 号 p. 2379-2387
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/21
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    放射線性腸炎の出血に対するアルゴンプラズマ凝固(APC治療)は,適応や治療のタイミング,焼灼方法のいずれも重要である.対象は易出血拡張血管主体の晩期障害で,治療のタイミングは最終照射より半年以上経過している症例とする.APC治療計画を考慮した分類を用いる(TypeA,B,Cが対象,本文中参照).焼灼方法のコツは,①正常粘膜部を残してまだらに焼灼する(まだら焼灼),②血液を洗浄して標的血管部位のみを焼灼する(洗浄焼灼),③反転観察および治療時には細径スコープを選択する(反転焼灼),④患者の治癒能力を判定しながら,数回に分けた計画治療をする(分割治療の計画)について説明した.治療対象となる病態別の分類を認識することから始まり,治療計画,凝固方法,効果判定までを踏まえた理解がより長期にわたる止血効果を得られる.

    ■アドバイス■

    ・ポイント1,正常粘膜部を残してまだらに焼灼する(まだら焼灼).

    ・ポイント2,血液を洗浄して標的血管部位のみを焼灼する(洗浄焼灼).

    ・ポイント3,反転観察および治療時には細径スコープを選択する(反転焼灼).

    ・ポイント4,患者の治癒能力を判定しながら,数回に分けた計画治療をする(分割治療の計画).

  • 土屋 貴愛, 祖父尼 淳, 石井 健太郎, 向井 俊太郎, 糸井 隆夫
    2019 年 61 巻 10 号 p. 2388-2396
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/21
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    Lumen apposing metal stent(LAMS)である,Hot AXIOSTM(Boston Scientific社)が被包化壊死(walled-off necrosis:WON)や膵仮性嚢胞に対してEUS-TDを行う際に使用可能となり,WONの内視鏡治療戦略が大きく変化した.これまでのプラスチックステントや金属ステントよりも大口径であるため,より高いドレナージ効果を得ることができ,直接内視鏡を挿入し壊死物質を取り除くネクロセクトミーも容易に行える.また,WONへの適応を取得したデバイスが登場したことにより,安心して治療が行えるようになった.WONがそれほど大きくなく,ほとんどを液体成分が占め,ネクロセクトミーの必要がないと予想される時は,外瘻の経鼻ドレナージチューブか内瘻のプラスチックステント,または内外瘻同時留置を行い,WONが広範に及ぶ場合やネクロセクトミーの施行が予想される場合にはLAMSを留置する.WONの内視鏡治療には致死的な偶発症が起こり得るため,放射線科医や外科医のバックアップ体制を十分整えて行うべきである.

資料
  • 鈴木 晴久, 滝沢 耕平, 平澤 俊明, 竹内 洋司, 石戸 謙次, 布袋屋 修, 矢野 友規, 田中 信治, 遠藤 昌樹, 中川 昌浩, ...
    2019 年 61 巻 10 号 p. 2397-2408
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/21
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    【目的】治癒切除および適応拡大治癒切除の基準を満たした早期胃癌に対する内視鏡切除症例の短期成績,長期成績を調査するため,「Web登録システムを用いた早期胃がん内視鏡切除症例の前向きコホート研究(J-WEB/EGC)」を計画した.今回はこの研究の短期成績を明らかにする.

    【方法】全国41施設において内視鏡切除予定の胃癌病変,あるいは胃癌疑い病変のあるすべての患者を対象に,2010年7月から2年間の登録を行った.登録に際し,“基本情報”と“術前診断”は内視鏡切除施行までにデータを入力し,“短期成績”は内視鏡切除より6カ月後までに入力した.

    【結果】9,616症例・10,821病変の内視鏡切除(ESD:99.4%)が行われ,切除時間の中央値は76分,一括断端陰性切除は91.6%であった.後出血は4.4%,術中穿孔は2.3%であった.2時間以上の長時間の切除となった要因としては,腫瘍径20mm以上,U領域,M領域,局所再発病変,UL,胃管,男性,SMが抽出された.内視鏡切除後の病理評価によって,10,031病変が通常型胃癌と診断された.腫瘍径中央値は15mmであった.18.3%が非治癒切除病変と診断され,リンパ節転移リスクのある非治癒切除1,695病変のうち,824病変・48.6%で追加外科手術が施行された.そのうち,64病変・7.8%でリンパ節転移を認めた.

    【結論】この多施設前向き研究により,早期胃癌に対するESDの良好な短期成績が示された.

  • 関口 正宇, 五十嵐 中, 坂本 琢, 斎藤 豊, 江崎 稔, 松田 尚久
    2019 年 61 巻 10 号 p. 2409-2421
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/21
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    電子付録

    【目的】大腸ポリープ切除後の至適サーベイランスに関する推奨は十分に確立しておらず,初回大腸内視鏡で切除されたポリープの結果に基づいたリスク層別サーベイランスの必要性についてもコンセンサスが得られていない.本研究では,費用効果分析を行い,至適な大腸ポリープ切除後サーベイランスプログラムを検討した.

    【方法】4つの大腸ポリープ切除後サーベイランスプログラムについて,マルコフモデルを用いた費用効果分析を行った.効果指標には質調整生存年(Quality-adjusted life year:QALY)を用いて,各プログラムの費用対効果と,必要となる内視鏡件数を検討した.モデル内のパラメータは,日本のデータに基づいて設定した.4つのプログラムのうち,2つはポリープ切除後一律1年(プログラム1),3年(プログラム2)に大腸内視鏡を行うリスク層別を伴わないプログラムで,残り2つは,切除されたポリープ結果に基づくリスク層別を伴うサーベイランスプログラムである.プログラム3では「高リスク腺腫」切除後は3年後,「低リスク腺腫」切除後は10年後にサーベイランス大腸内視鏡を施行,プログラム4ではその検査間隔を短くし,各々1,3年後に施行する形で設定した.

    【結果】リスク層別サーベイランスプログラム(プログラム3,4)は,リスク層別を伴わないプログラム(プログラム1,2)よりもかかる費用は低く,期待QALYは大きくなる.プログラム3と4の比較では,プログラム4は3よりも期待QALYは大きく(一人当たり23.046QALY),費用は安価であった(一人当たり107,717円).必要となる内視鏡件数は,プログラム4が最も多く,プログラム1,2,3の各々1.2倍,1.5倍,1.6倍必要であった.確率論的感度分析からは,費用対効果に優れる可能性が最も高いのはプログラム4と判断された.

    【結論】大腸ポリープ切除後のサーベイランスにおいては,切除されたポリープの結果に基づいたリスク層別を考慮すべきである.日本では比較的短い検査間隔の大腸内視鏡を用いたリスク層別サーベイランスプログラムが効果的で費用対効果に優れる可能性があるが,内視鏡キャパシティとの兼ね合いについてさらなる検証と配慮を要する.

内視鏡室の紹介
最新文献紹介
  • 蘆田 玲子
    2019 年 61 巻 10 号 p. 2430
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/21
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    【目的】画像精度,CA19-9や病理学的診断の改善にもかかわらず,胆管狭窄における良悪性鑑別は困難である.近年,癌の早期発見やマネージメントにおける次世代シークエンス(NGS)の有用性が報告されているが,胆道系腫瘍に対しての有用性は確立していない.

    【方法】胆管狭窄を呈した症例に対し,ERCPを施行した際に採取した検体を用いて28遺伝子を搭載したNGSパネル(BiliSeq)解析を行い前向きに検討した.血清CA19-9,病理学的診断,およびBiliSeq解析における診断能について252人の患者(57のtrainingと195のvalidations)の346検体を用いて検討した.

    【結果】悪性胆道狭窄におけるBiliSeqの感度と特異度はそれぞれ73%と100%であった.血清CA19-9値と病理診断では,感度はそれぞれ76%と48%,特異度は69%と99%であった.BiliSeqと病理診断を併用することより,感度は83%に増加し,特異度は99%を保っていた.BiliSeqとの組み合わせは,悪性腫瘍の病理学的評価の感度を,胆管ブラッシングでは35%から77%に,胆管生検では52%から83%に改善した.原発性硬化性胆管炎(PSC)症例においては,病理診断では感度8%であったが,BiliSeqの感度は83%であった.また治療に関連するゲノム変異が20人(8%)に認められた.胆管癌の2人の患者にERBB2増幅がみられ,トラスツズマブベースの治療を受けたところ臨床画像上腫瘍の縮小が認められた.

    【結論】BiliSeqと病理診断の併用は悪性胆管狭窄の診断率を向上した.中でも特にPSCにおいて有用であった.さらにBiliSeqは胆道癌の治療方針を決定する特異的遺伝子変異を検出した.

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