胃の腸上皮化生は分化型胃癌発生のリスクと関連している.近年の狭帯域光観察(narrow band imaging;NBI)を中心とした画像強調内視鏡(Imaged enhanced endoscopy;IEE)の目覚ましい発達により,胃の腸上皮化生の診断について,さまざまな知見が報告されてきた.NBI併用拡大内視鏡(以下,M-NBI)により腸上皮化生を診断するポイントは,第一に腸上皮化生に特有な所見〔light blue crest(LBC),白色不透明物質(white opaque substance;WOS),marginal turbid band(MTB)〕の有無を評価すること,第二に表面微細構造について,畝状・絨毛状の腺窩辺縁上皮(marginal crypt epthelium;MCE)の有無を判定することである.これらを内視鏡検査時にリアルタイムで行うことで,生検をすることなく多巣性・多中心性に広がる腸上皮化生粘膜の局在を正確に診断可能となり,胃癌のリスク層別化を適切に行うことができると考える.
家族性地中海熱(Familial Mediterranean fever:FMF)は遺伝性周期熱症候群の1つで,周期性発熱と漿膜炎を特徴とする.一般的に,FMFの主な発症機序は腹膜炎であるため,消化管粘膜病変はFMF患者では稀な状態であると考えられてきた.近年,FMF患者が炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎やクローン病)に似た消化管病変を有する報告例が増加傾向にある.しかしながら,FMF関連の腸管病変に関する情報は限られている.本総説ではFMF発症の機序ならびにFMF患者における腸管病変に焦点を当て,さらに内視鏡的特徴についても述べた.いままでの報告をまとめると,直腸病変を伴わない,全周性の発赤粘膜,浮腫,びらん,および潰瘍などのUC様病変がFMF患者で主に観察された.一方,クローン病で観察されるような縦走潰瘍性病変および狭窄も認められている.FMF関連腸炎の患者の罹患率は未だ不明である.従って,今後FMF関連腸病変の症例を蓄積することが,本疾患の臨床的特徴を解明するために必要である.
症例は76歳女性.心窩部痛と黒色便の精査で当科紹介となった.慢性関節リウマチ(RA)で41歳時よりメトトレキセート(MTX)で加療されていた.上部消化管内視鏡検査で十二指腸下行脚に潰瘍性病変を認め,生検結果でびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(diffuse large B-cell lymphoma:DLBCL)の診断となった.CTで全身のリンパ節腫大を認め,可溶性IL-2レセプター(sIL-2R)は高値であり,メトトレキセート関連リンパ増殖性疾患(methotrexate-associated lymphoproliferative disorders:MTX-LPD)と判断しMTXを中止とした.十二指腸下行脚の潰瘍性病変は,MTX中止1カ月後より縮小改善傾向であり,リンパ節は縮小増大様々であった.MTX中止で経過観察していたがリンパ節病変が寛解に至らず,MTX中止から9カ月後にリツキシマブを投与し,リンパ節の縮小,sIL-2Rの低下を認め,十二指腸病変は瘢痕化していた.MTX-LPDの十二指腸病変は非常に稀である.MTX内服中のRA患者の消化管病変を認めた場合,MTX-LPDも鑑別すべき疾患であると考えられた.
症例は35歳,男性.腹痛と下痢を主訴に初診,下部消化管内視鏡施行し回腸末端と直腸に不整な浅い潰瘍,全大腸に連続性のアフタを認め,生検及び便培養でY. enterocoliticaが検出されエルシニア腸炎と診断した.一旦症状消失したが3カ月後に粘血便出現し再診,内視鏡再検査で直腸からS状結腸に連続性に粘液付着した粘膜浮腫,びらん,浅い潰瘍が多発し生検結果もあわせて潰瘍性大腸炎と診断した.数カ月の間に多彩な内視鏡所見を呈したエルシニア腸炎後に潰瘍性大腸炎と診断した貴重な1例を経験したので報告する.
症例は52歳,女性.検診で便潜血陽性を指摘され,精査目的に当科に紹介となった.下部消化管内視鏡検査で上行結腸に白色光遠景観察で3mm大の白色隆起病変を認め,NBI近景拡大観察を行ったところ,腺開口部は開大し表面平滑で立ち上がりが滑らかなポリープとして観察された.特殊な粘膜下腫瘍を疑い生検を施行した.病理学的にHE染色で粘膜下層に変性した膜様の構造物を認め,Masson trichrome染色で血管周囲に集簇する弾性線維の増生を認めたことから弾性線維腫様ポリープと診断した.大腸弾性線維腫様ポリープは比較的稀で注意すべき疾患として報告する.
症例は80歳,男性,暗赤色便が出現し前医に入院した.慢性心房細動に対し内服していた抗凝固薬エドキサバンを中止後も血便が続くため,入院3日目に当院へ転院となった.緊急CSでは内腔に突出した粘膜下血腫により,スコープが通過できなかった.保存的治療にて血便は止まり,貧血の進行も認めなかった.第2病日より菌血症を来したため抗生剤治療を追加し,全身管理を行った.第9病日のCSでは血腫は完全に消失し,同部位に帯状の縦走潰瘍を認めた.以後狭窄症状を来すことなく治癒した.新規経口抗凝固薬が登場する中で稀な疾患である大腸粘膜下血腫を経験し,さらに大腸内視鏡に関連した菌血症を併発したため文献的考察を含め報告する.
症例は20歳代の男性で同性愛者である.しぶり腹と血便を主訴に近医を受診し,直腸に隆起性病変を指摘されたため,当院を受診した.大腸内視鏡検査では,直腸前壁に縦走配列する潰瘍性病変を3個認め,口側の2病変は周囲に隆起を伴っていた.表面には白苔が付着した潰瘍を伴っており,アメーバ性大腸炎に類似する所見であった.血液検査では梅毒TP抗体陽性,HIV抗体陽性,赤痢アメーバ抗体陰性であった.生検ではアメーバの虫体を認めず,抗Treponema pallidum免疫染色で陽性所見を示したため,HIV感染を合併した梅毒性直腸炎と診断した.その後,皮疹が生じたが,アモキシシリンの内服にて消化器症状や皮疹は改善し,梅毒RPRの陰性化を確認した.
安全性と有効性が明らかになり,大型病変に対する大腸ESDを施行する事が可能となったが,未だその技術的難易度は高い.なぜなら通常の大腸ESDに必要な技術的要素以外にも,広範囲ESDならではの工夫や,個々の病変に応じた臨機応変な対応が求められるためである.術中は常に全体を見ながら治療を組み立て,途中で柔軟に体位やデバイスを変えるなど労を惜しんではならない.そして何よりも撤退や手術への移行などの判断を誤らず,実力を過信しない事が大切である.十分な技術習熟の上で,大腸大型病変に安全な大腸ESDを施行していただきたい.
ダブルバルーンやシングルバルーンなどのバルーン内視鏡の技術により従来は観察が不可能であった小腸の精査が可能となり,現在では広く普及している.バルーン内視鏡の技術と細径内視鏡を応用することで狭窄を超えた内視鏡的アプローチ(Balloon endoscopy and ultra-thin endoscopy method:BUT method)ができるようになっている.狭窄を超えることは病態の正確な把握に有用であるのみならず,止血やイレウス管挿入などの治療にも応用ができる.非常にシンプルな方法であるが,覚えておくと役に立つことがある.今回BUT methodの適応と手技的なコツについて概説する.
食道の内視鏡切除後に発生する狭窄は,嚥下障害を来したりバルーン拡張が必要となるため,患者のQOLを低下させる.この狭窄を予防するため,各種方法が開発されている.これらの中では,ステロイド局注法が最も多く用いられており,非全周切除例に対する標準的な狭窄予防法である.しかし,全周切除例では,ステロイド局注法で十分な効果が得られないため,より強い効果が見込めるステロイド経口法が行われている.これらのステロイド治療,即ちステロイド局注法と経口法は,低コストで有効な方法ではあるが,食道壁が脆弱となり,バルーン拡張時に穿孔のリスクが高まるなどの問題点もある.そのため様々な革新的方法,例えばポリグリコール酸を用いた組織被覆法,自己口腔粘膜シート移植などの再生医療的アプローチ,ステント留置などが開発されている.これらの新しい方法は有望であるが,現時点では有用性に関するデータが不足しているため,今後さらなる検討が必要である.
【背景および目的】切除不能高度悪性肝門部領域胆管狭窄に対するアンカバードタイプの自己拡張型金属ステント(uncovered self-expandable metallic stent:USEMS)を用いた両葉ドレナージは,stent-in-stent(SIS)法あるいはstent-by-stent(いわゆるside-by-side:SBS)法がある.いずれが有用なのかは明らかとはなっておらず,パイロット試験を計画した.
【方法】多施設共同前向き比較試験により高度狭窄を有する切除不能高度悪性肝門部領域胆管狭窄を登録した.主要評価項目は有害事象発生率,副次評価項目は技術的成功率,臨床的成功率,reintervention成功率,ステント開存期間,生存期間,などとした.
【結果】2016年6月~2018年1月までの期間中,病理組織学的に確定診断した69例をSIS法(34例),SBS法(35例)に無作為に割付した.主要評価項目である有害事象発生率は両群に有意差は認められなかった(SIS法:23.5%,SBS法:28.6%,P=0.633).副次評価項目は技術的成功率(SIS法:100%,SBS法:91.4%,P=0.081),臨床的成功率(SIS法:94.1%,SBS法:90.6%,P=0.688),reintervention成功率(SIS法:100%,SBS法:91.7%,P=0.255),3カ月後のステント開存率(SIS法:85.3%,SBS法:65.7%,P=0.059),6カ月後のステント開存率(SIS法:47.1%,SBS法:31.4%,P=0.184),50% ステント開存期間(SIS法:253日,SBS法:262日,P=0.865),50% 生存期間(SIS法:209日,SBS法:221日,P=0.197)のいずれも両群間で有意差はみられなかった.