Long segment Barrettʼs esophagusからの発癌が多い欧米では,食道腺癌やHigh grade dysplasia症例に対して結節部分をEMRで切除し,Barrett食道を含めた周囲をラジオ波で焼灼するCombination therapyが主に用いられている.一方本邦では,術前に癌の広がりを診断し,癌の部分のみがESDで切除されている.食道腺癌に対するESDの一括切除率はほぼ100%であったが,治癒切除率は65%以下と低く,これは食道腺癌の側方及び深達度診断の困難さを反映しており,今後改善すべき課題である.内視鏡切除後の治癒判定に関し,欧米では脈管侵襲なし,低分化成分なし,3cm以下では転移再発のリスクが低いと考えられている.本邦の多施設共同研究でも同様の結果が得られており,この規準を本邦の治癒判定にも適応するか検討が必要である.
日本消化器内視鏡学会から,2012年「抗血栓薬服用者に対する消化器内視鏡診療ガイドライン」と2017年「直接経口抗凝固薬(DOAC)を含めた抗凝固薬に関する追補2017」の2つのガイドラインが示され,これらは消化器内視鏡後の出血予防のみならず,抗血栓薬の休薬による血栓塞栓症の誘発にも配慮されたガイドラインとなっている.抗血栓薬多剤内服患者や抗凝固薬内服患者では特に胃ESD後出血率が高く,ESDを施行する際には,内視鏡施行医が偶発症発生リスクを正しく理解のうえ,患者本人に治療の必要性と出血などの偶発症を説明し,明確な同意のもとに施行する必要がある.
【背景・目的】ヨード染色は多発ヨード不染帯(まだら食道)の抽出に有用であるが患者の苦痛を伴う.まだら食道を予測する白色光(white light;WL)/非拡大narrow band imaging(NBI)所見を検討した.
【方法】候補所見1;白色隆起,所見2;水平模様,所見3;血管透見低下,所見4;境界を有さないbrownish area,所見5;点状血管を抽出し,3人の内視鏡医が食道癌内視鏡治療136例(2010-11年)の治療前画像を見直した.背景粘膜の候補所見の有無とヨード不染Grade(A/B/C)を評価し,まだら食道(C)に対する各々の所見,組み合わせ所見の感度/特異度を検討した(derivation).選定した所見について食道癌内視鏡治療125例(2014-15年)でvalidationした.
【結果】Derivationで「所見2または3」の感度/特異度(%)が78/47(WL),82/43(NBI)と検討の中では最も妥当であり,validationでは同所見の感度/特異度(%)は72/70(WL),78/59(NBI)であった.
【結論】水平模様または血管透見低下を認めた場合,まだら食道を予測する可能性が高く,ヨード染色を考慮する指標になる可能性がある.
症例は60歳の女性.3日前に焼き魚(イサキ)を食べた際に魚骨を嚥下した.その後に咽頭違和感が持続したため,当院を救急受診した.頸部CTで頸部食道壁内に高吸収域を認め,魚骨と判断した.周囲に膿瘍や臓器損傷を疑わせる所見を認めなかった.上部消化管内視鏡を施行したが,食道壁の浮腫を認めるのみで魚骨を発見できなかった.魚骨が食道壁内に迷入したと考え,浮腫部分の粘膜を切開し,さらに粘膜下を検索すると迷入した魚骨を発見し摘出しえた.食道異物はその後の穿孔穿通を考慮し摘出することが望ましいが,食道壁に内視鏡で同定できない場合は,CTで正確に部位を判断し内視鏡下に食道粘膜切開により異物除去が可能であり,考慮すべき手技である.
症例1は51歳の男性で,メトロニダゾール(MNZ)治療抵抗性のため,近医より当院に紹介となった.症例2は53歳の男性で,当院にてアメーバ性大腸炎と診断された.両症例ともMNZを2コース投与したが,いずれも大腸内視鏡(CS)にて大腸に潰瘍の残存を認めた.MNZに続きパロモマイシン(PRM)の内服を行い,CSで治癒を確認した.両症例とも嚢子の残存がMNZ抵抗性の原因と考えられた.これまでの報告と今回の経験からMNZ治療終了2~3カ月にCSを行い,潰瘍が残存している場合はMNZ抵抗性と診断し,MNZとPRMの併用治療を行うのが良いと考えられた.
症例は68歳男性.3カ月持続する頻回の下痢と腹痛を主訴に当科を受診した.大腸内視鏡検査では,直腸からS状結腸にかけて連続する粗大顆粒状粘膜を伴う高度狭窄を認めた.血管造影所見から下腸間膜静脈の灌流障害が疑われたが,4型大腸癌も否定できず,ハルトマン手術を施行した.切除標本の病理組織では,直腸Rs部に15mm大の中分化腺癌からなる陥凹性病変を認めた.さらに腫瘍は著明な静脈浸潤を伴い,下腸間膜静脈内に腫瘍塞栓を形成していた.その他の部位では粘膜下層や筋層の著明な線維化を認めたが,間質内への腫瘍浸潤は見られなかった.陥凹型の原発巣から下腸間膜静脈腫瘍塞栓症をきたした非常にまれな症例と考えられた.
【目的】Cold snare polypectomy症例(以下CSP群)と従来から行われているpolypectomyおよびEMR症例のうち腫瘍径10mm未満のもの(以下HSP群)を後ろ向きに比較検討した.【対象と方法】2015年1月から2016年12月までに行われたCSP群3,448例,4,749病変とHSP群2,496例,3,891病変を臨床病理学的に比較検討した.【成績】担癌率はCSP群では1.2%,HSP群では4.5%であり,CSP群で有意に低かった.術後出血率はCSP群では0.3%,HSP群では0.9%と,CSP群で有意に少なかった.また,切除術から出血までの期間はCSP群では平均1.0日,HSP群では平均2.4日であった.【結論】術後出血はCSP群で有意に少なく,術後早期にのみ認められ,CSP群では術後QOLの向上が期待された.
Pocket-creation method(PCM)は,最初はESD難症例である大腸のIs腫瘍を克服するためにtunneling methodから進化した.PCMは以下の多くの利点を有している.1)小さな粘膜切開のため,局注液の漏出が少なく,粘膜の膨隆を長時間維持できる.2)ポケット内では,剥離先進部の粘膜下層組織にフード先端で牽引・反対牽引をかけることができ,粘膜下層剥離が容易になる.3)内視鏡画面内に筋層走行を視認できるので,安全に筋層直上での粘膜下層剥離が可能となり,十分な厚さの粘膜下層がついた組織標本を得ることができる.4)筋層が内視鏡に対して垂直方向に存在していても,ポケット内に入った内視鏡でそのアプローチアングルを接線方向に調整することができる.5)ポケットの中では呼吸変動や心拍動と内視鏡先端が同期し安定した操作性を維持できる.さらにPCMはその作法通りに行えば,難局に捕らわれることなくESDを遂行できることにも気づいた.そのような理由よりPCMはESDを行おうとする多くの内視鏡医に習得していただきたい標準法に値するとわれわれは考えている.
大腸癌術後吻合部狭窄に対する狭窄解除術としてこれまで内視鏡的バルーン拡張術(endoscopic balloon dilation:EBD)が施行されてきたが,再狭窄のため治療に難渋する症例を経験し患者のQOLの低下につながってきた.
今回,われわれはITknife nanoTMを用いて大腸癌術後吻合部狭窄瘢痕部位を切開(切れ込み)し削ぎ落としていくradial incision and cutting(RIC)法を経験したので手技の解説などを中心に報告する.
【背景と目的】大腸内視鏡的粘膜下層剥離術(endoscopic submucosal dissection;ESD)は,技術的に難しい・治療時間が長い・偶発症発生割合が高い,といった原因で,未だに高い技術が必要とされる手技である.大腸ESDを簡便な手技にするために,われわれは糸付きクリップによる牽引補助下大腸ESD(traction-assisted colorectal ESD using a clip-and-thread;TAC-ESD)を考案し,TAC-ESDの有効性を証明するために無作為化比較試験を行った.
【方法】20mm以上の表在型大腸腫瘍をもつ患者が本試験に登録され,従来法ESD群とTAC-ESD群に無作為に割付けられた.50mm以下の表在型大腸腫瘍に対しては大腸ESD中級者2名が,50mm以上の表在型大腸腫瘍に対しては大腸ESD上級者2名が術者となった.主要評価項目は治療時間とした.副次評価項目はTAC-ESD成功割合(治療終了まで糸付きクリップが外れず,有効であった割合),中級者の自己完遂割合,偶発症発生割合とした.
【結果】両群ともに42病変が解析対象となった.治療時間中央値[範囲]は,TAC-ESD群が40[11-86]分で,従来法ESD群の70[30-180]分よりも有意に短かった(P<0.0001).TAC-ESD成功割合は95%(40/42)であった.中級者の自己完遂割合は100%[39/39]で,TAC-ESD群の90%[36/40]より有意に高かった(P=0.04).偶発症は,術中穿孔を従来法ESD群で1例,遅発穿孔をTAC-ESD群で1例認めた.
【結論】TAC-ESDは大腸ESDの治療時間を短縮し,中級者の自己完遂割合を高めた(UMIN000018612).
【目的】英国消化器病学会(BSG)/欧州消化器内視鏡学会(ESGE)ガイドラインに準じた直接経口抗凝固薬(DOAC)の周術期管理下での内視鏡偶発症発生頻度を評価すること.
【方法】イタリア13施設の内視鏡センターによる多施設前向きコホート研究.2016年3月から2017年6月までに連続したDOAC服用中の内視鏡予定患者が前向きに登録された.DOACの休薬と再開時期は記録され,後出血と血栓塞栓症および死亡について電話インタビューとカルテ記録により調査された.一次エンドポイントは検査中もしくは検査後30日以内の出血(国際血栓止血学会クライテリア1以上の大出血と臨床的に問題となる出血)である.
【結果】529人(低危険手技327人,高危険手技202人)について解析された.出血は45人(8.5%,95%,CI 6.3%-11.2%)でみられ,検査中出血が28人で,17人は後出血であった.低危険手技における出血は1.8%(95%CI 0.7%-4%)で,すべて生検による出血であった.高危険手技では19.3%(95%CI 14.1%-25.4%)に出血がみられた.血栓塞栓症は2人(0.4%,95%CI 0-1.4%)に発症した.ガイドラインの遵守率は休薬が41.9%,再開は61.3%であった.DOAC再開時期別の高危険手技の後出血は,ガイドライン遵守で6.6%,ガイドラインよりも遅い再開で7.7%とほぼ同等であったが,ガイドラインより早く再開した場合は14.3%と2倍程度高い出血率であった(p=0.27).また,高危険手技におけるヘパリン置換群では非置換群に対し,有意に後出血が多かった(26.7%:5.9%,p=0.017).
【結論】BSG/ESGEガイドラインに基づいたDOACの内視鏡周術期管理は,リスクベネフィットの点からは有益と思われる.