日本消化器内視鏡学会雑誌
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61 巻, 5 号
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総説
  • 相原 弘之
    2019 年 61 巻 5 号 p. 1095-1108
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/05/20
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    外科領域における縫合(suturing)は基本的で必須な手技であるものの,軟性内視鏡領域での縫合技術開発の困難さからわが国では現在,日常診療で使用可能な内視鏡的縫合デバイスが存在しない.米国ではOverStitchおよびIncisionless Operating Platformが現在使用可能であり医原性消化管穿孔の閉鎖,内視鏡的全層切除術,難治性慢性消化管瘻孔の閉鎖,ステントの留置固定,そして内視鏡的肥満治療など非常に多岐にわたり活用されており,従来外科治療の適応であった様々な疾患に対しても軟性内視鏡手術(flexible endoscopic surgery)により治療を完遂できるようになってきている.内視鏡的縫合術(endoscopic suturing)は軟性内視鏡手術の基本手技であり,上記の内視鏡治療を施行する上で必須な手技である.軟性内視鏡先進国のわが国で,このような内視鏡的縫合デバイスが使用できる日がすぐに到来し,さらに新しい先進的な治療技術が生まれることを期待したい.

症例
  • 辻 国広, 土山 寿志, 吉田 尚弘, 辻 重継, 竹村 健一, 片柳 和義, 車谷 宏, 湊 宏
    2019 年 61 巻 5 号 p. 1109-1114
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/05/20
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    67歳女性.上部消化管内視鏡検査で胃体下部小彎に20mm大の黄白色の境界やや不明瞭な平坦な隆起性病変を認めた.NBI併用拡大観察ではMicrovascular patternは血管の増生を認めるがirregularityに乏しく,癌の所見はないと判断した.形質細胞腫を疑い,病変より生検を行ったが確定診断は得られず,確定診断目的にESDを行った.病理組織学的には粘膜固有層に形質細胞のびまん性の増殖を認めたが,形質細胞腫は否定的であった.本症例の内視鏡画像は形質細胞腫の内視鏡像と酷似しており,拡大観察像も形質細胞の増殖をとらえていたと考える.本症例は内視鏡診断の限界例と考えられ,今回報告する.

  • 岡村 卓真, 小澤 栄介, 岩津 伸一, 中村 裕, 中鋪 卓, 吉川 大介, 吉田 亮, 山尾 拓史, 岩崎 啓介, 中尾 一彦
    2019 年 61 巻 5 号 p. 1115-1122
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/05/20
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    症例は54歳男性.十二指腸下行部に隆起性病変を指摘され当科に紹介された.上部消化管内視鏡で十二指腸主乳頭部の約20mm大の粘膜下腫瘍様の病変を認めた.EUSでは20×17mmの低エコー腫瘤として描出された.リンパ節転移・遠隔転移を認めないことから診断的治療として内視鏡的乳頭切除術を行い,十二指腸主乳頭とともに腫瘍を切除した.病理組織所見でGangliocytic paraganglioma(以下GP)と診断された.GPはその多くが良性腫瘍であり,過度に侵襲的な治療を避けるため,内視鏡的乳頭切除術は診断的治療として有用であると考えられた.十二指腸乳頭部GPの内視鏡的乳頭切除術の報告例は少なく,貴重な症例と考え報告する.

  • 吉田 優子, 松下 弘雄, 吉川 健二郎, 原田 英嗣, 高木 亮, 田中 義人, 加藤 文一朗, 津田 一範, 菅井 有, 永塚 真
    2019 年 61 巻 5 号 p. 1123-1130
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/05/20
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    症例は64歳,女性.健診の全大腸内視鏡検査でS状結腸に径5mmの粘膜下腫瘍様の形態の病変を指摘された.病変の大半は正常粘膜で被覆されていたが,病変中央部に発赤調の陥凹を認め,内部に管状や分枝状のpitが観察された.同病変は13カ月前にも指摘されており,13カ月の経過で病変は増大し,中央の陥凹は拡大していた.診断的治療目的に内視鏡的粘膜切除術を施行した.病理組織学的には,粘膜下層を主座とした中分化管状腺癌であり,腫瘍は粘膜から粘膜下層にフラスコ状に浸潤していた.粘膜下腫瘍様形態を呈する大腸癌は比較的まれであり,本病変は径5mmで経過を追えたという点で貴重な症例と考え報告する.

  • 小嶋 啓之, 大場 信之, 掛川 達矢, 吉峰 尚幸, 小山 洋平, 武田 悠希, 伊藤 謙, 西中川 秀太, 児島 辰也
    2019 年 61 巻 5 号 p. 1131-1136
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/05/20
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    症例は82歳男性.心窩部痛と下血を主訴に来院し,腹部造影CTで膵頭部に10cm大の嚢胞性病変を認められた.内視鏡検査で,主乳頭からの出血が見られたことより,出血性膵嚢胞が主膵管と交通し,消化管出血を来たしたHemosuccus Pancreaticus(HP)と考えられた.経鼻膵管ドレナージチューブを用いた嚢胞内ドレナージを行い,止血と嚢胞の縮小が得られた.また,嚢胞部と主膵管の交通部より乳頭側に主膵管狭窄がみられたため,再発予防を目的として内視鏡的膵管ステント術を施行し,1年7カ月後にステントフリーとしたが,経過は良好である.HPの内,膵頭部の仮性嚢胞が原因となる症例においては,内視鏡治療が有用と考えられた.

経験
注目の画像
手技の解説
  • 稲場 勇平, 斉藤 裕輔, 小林 裕, 杉山 隆治, 助川 隆士, 小澤 賢一郎, 垂石 正樹, 藤谷 幹浩, 奥村 利勝
    2019 年 61 巻 5 号 p. 1145-1157
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/05/20
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    大腸T1(SM)癌の深達度診断における超音波内視鏡検査(EUS)診断のコツについて解説した.超音波内視鏡検査は大腸内視鏡検査とは異なり,病変の垂直断面像が得られることにより大腸癌のSM以深への浸潤像を直接観察できる唯一の検査法である.内視鏡検査と同時に施行可能な超音波細径プローブ検査が簡便であり初学者には推奨される.約10%程度の症例で画像そのものが得られない,また屈曲部やハウストラ上の病変では良好な画像を得ることが困難な場合がある.内視鏡であらかじめSM深部浸潤が疑わしい部位を中心にスキャンすることで,また内視鏡画像を見ず,超音波画像を見ながらスキャンを行うことで正診率の向上が得られる.また,病変高6mm以上の隆起型病変においては深部減衰により満足な深達度診断能が得られない場合もあり,低周波プローブ(12または7.5MHz)の併用が有用である.内視鏡摘除か外科手術かの治療法選択における正診率は全体では77.0%(211/274)とさほど高くはないが,T1b癌における深達度正診率はTis・T1a癌に比較して有意に高く(それぞれ87.3%(125/151)vs 69.2%(86/123);p<0.01),特に表面型T1b癌における深達度正診率は隆起型T1b癌に比較して有意に高かった(それぞれ91.4%(53/58)vs 83.3%(50/60);p<0.05).高周波超音波細径プローブ検査(HFUP)は(特に表面型の)T1b癌を疑う病変の深達度診断に有用であると考える.EUSは組織上のSM浸潤距離をよく反映することから,今後の大腸SM深部浸潤(T1b)癌への内視鏡治療の適応拡大に向けて必須の検査法となると考えられる.そのため,消化器内視鏡医は,EUSの手技に精通しておくことが肝要である.

資料
  • 本部 卓也, 矢野 友規, 鳩貝 健, 小島 隆嗣, 門田 智裕, 小野澤 正勝, 依田 雄介, 堀 圭介, 大野 康寛, 池松 弘朗, 藤 ...
    2019 年 61 巻 5 号 p. 1158-1169
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/05/20
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    【背景および目的】サルベージ内視鏡的切除(ER)は,食道扁平上皮癌(ESCC)に対する化学放射線療法(CRT)後に生じる表層性の局所遺残再発病変への根治的治療法の一つである.本研究は,サルベージER後の再発に関する危険因子を明らかにすることを目的とした.

    【方法】本研究では,1998年から2013年にかけて,CRT後の局所遺残再発病変に対してサルベージERを実施した一連のESCC患者を登録した.サルベージER後の再発には,局所領域内再発および遠隔転移再発があった.サルベージER後の再発の危険因子を特定するため,臨床病理学的な項目を多変量解析した.

    【結果】本試験に登録された72名の患者に対しCRT実施前に病期分類を行い,cT1/T2/T3/T4に該当した患者はそれぞれ37/8/23/4名であり,また,cN0/N1に該当した患者はそれぞれ44/28名であった.対象病変の状況は,CRT実施後の遺残病変が19名,再発病変が53名であった.切除標本を分類した結果,pT1a(M)が45名,pT1b(SM)が27名であった.サルベージER実施後の経過観察期間中(中央値:45カ月,範囲:3~175カ月)に,患者27名(38%)が再発しており,3年無再発生存率は48.9%(95%信頼区間(CI):36.5~60.3)であった.多変量解析により,CRT実施後の遺残病変(ハザード比(HR):2.55,95% CI:1.32~4.94),およびサルベージER実施前に粘膜下腫瘍(SMT)様の肉眼所見を有する病変(HR:2.08,95% CI:1.04~4.18)は,サルベージER実施後の再発と有意に関連することが示された.

    【結論】臨床所見(例:CRT実施直後に見られた遺残腫瘍や,サルベージER実施前のSMT様の肉眼所見)は,サルベージER実施後の再発の顕著な危険因子であることが示された.

内視鏡室の紹介
最新文献紹介
  • 中村 昌太郎
    2019 年 61 巻 5 号 p. 1174
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/05/20
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    【目的】胃癌の原因であるHelicobacter pyloriと大腸癌リスクとの関連が報告されているが,対象によって結果が一致せず,毒素因子VacAに特徴的である可能性が示唆されている.本研究では,米国住民を代表する大規模集団のコホートを集積し,種々のH. pylori抗体と大腸癌リスクの関連を評価した.

    【方法】大腸癌4,063例および性・年齢を一致させた対照4,063例の血清毒素因子VacAおよびCagAを含む13種のH. pylori蛋白に対する抗体反応を,多重血清測定法を用いて解析した.

    【結果】対照の40%および症例の41%がH. pylori血清抗体陽性であった(オッズ比1.09;95%信頼区間0.99-1.20).H. pylori VacA血清抗体陽性は大腸癌のオッズ比を11%上昇させ(オッズ比1.11;95%信頼区間1.01-1.22),この関連はアフリカ系米国人で強かった(オッズ比1.45;95%信頼区間1.08-1.95).さらに,大腸癌のオッズはVacA抗体価と共に,全コホート(P=0.008)およびアフリカ系米国人(P=0.007)で上昇した.

    【結論】多様な大規模集団のコホート解析により,H. pylori VacAに対する血清反応が,特にアフリカ系米国人において,大腸癌リスクと関連することを見出した.今後,このマーカーが,米国住民におけるH. pylori毒性株と関連するか探求する必要がある.

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