日本消化器内視鏡学会雑誌
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61 巻, 7 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
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総説
  • 土肥 統, 八木 信明, 内藤 裕二, 伊藤 義人
    2019 年 61 巻 7 号 p. 1367-1375
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/22
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    レーザー光源搭載の内視鏡システムであるLASEREO(レザリオ)の登場により,2種類の波長のレーザー光(410nm,450nm)を利用した狭帯域光観察であるBlue laser imaging(BLI),BLIをより明るくしたBLI-brightならびにLinked color imaging (LCI)といった新たな画像強調内視鏡(image-enhanced endoscopy:IEE)が可能となった.筆者らはVessel plus surface classification systemを用いたBLI拡大観察により,Narrow-band imaging(NBI)拡大観察と同等の胃癌診断が可能であることや,白色光と比較して優れた胃癌の質的診断能を有していること,これまでのIEEの光量不足や画質不良などの課題を克服することで,BLI-brightが胃癌の存在診断において白色光よりも有用であることを報告した.また,LCIは,赤色はより赤く,褪色はより白くなるように,粘膜色付近のわずかな色の差を認識しやすくする機能である.LCIにおいてはびまん性発赤が韓紅色に,腸上皮化生がラベンダー色に観察されることで胃癌のリスク分類をより高い精度で評価できる.さらに,早期胃癌の存在診断においてもLCIの有用性が期待されている.

  • 高原 楠昊, 中井 陽介, 吉田 俊太郎, 小池 和彦
    2019 年 61 巻 7 号 p. 1376-1387
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/22
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    悪性胃十二指腸閉塞(Gastric outlet obstruction;GOO)は腫瘍による上部消化管の通過障害であり,経口摂取困難に伴う悪液質の進行およびQOLの低下などを来し,予後不良である.従来GOOに対する姑息的治療として外科的胃空腸バイパス術や胃瘻造設術,経鼻胃管留置などが行われてきたが,近年内視鏡的胃十二指腸ステント留置術の安全性および有効性が示され,標準治療の選択肢の一つとして位置づけられるようになってきた.本邦では2010年4月にThrough-the-scopeタイプの胃十二指腸用ステントが保険収載され,多くの施設で用いられている.しかし未だ個々の症例に対する外科的胃空腸バイパス術との選択基準や最適なステント選択については結論が出ていない.また近年,lumen-apposing metal stentを用いた超音波内視鏡ガイド下胃空腸吻合術という画期的な方法が報告され,新たなmodalityとして注目されている.

    本稿ではGOOに対する内視鏡的ステント留置術の実際を紹介し,また文献的レビューをするとともにコンセンサスの得られていない新たな課題を明らかにし,今後の展望について述べる.

原著
  • 川崎 梓, 吉田 尚弘, 土山 寿志
    2019 年 61 巻 7 号 p. 1388-1394
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/22
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    【背景・目的】下部消化管内視鏡検査を行う内視鏡医の性別に対する被検者の要望については十分に検討されていない.女性内視鏡医へのニーズを明らかにすることを目的に本研究を計画した.【方法】下部消化管内視鏡検査を受ける1,157人(男性被検者677人,女性被検者480人)を対象に検査前後のアンケート調査を行った.【結果】検査前では,女性内視鏡医を希望する割合(男性被検者/女性被検者)は0.9%/25.8%であった(P<0.01).女性被検者のうち,50歳未満の47.3%(P<0.01),検査未経験者の39.7%(P<0.01)が女性内視鏡医を希望した.検査後では,女性内視鏡医に検査された女性被検者の52.6%(P<0.01)が次回も女性内視鏡医を希望した.【結論】女性被検者は男性被検者に比べ女性内視鏡医を希望する割合が高く,若年被検者や検査未経験者でその傾向がより顕著であった.

症例
  • 小島 真一, 葛原 正樹, 竹内 俊文, 山田 玲子, 中村 美咲, 濱田 康彦, 井上 宏之, 田中 匡介, 堀木 紀行, 竹井 謙之
    2019 年 61 巻 7 号 p. 1395-1400
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/22
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    症例は46歳女性.検診の上部消化管内視鏡検査(esophagogastroduodenoscopy;EGD)で,下部食道に限局性の褪色調粘膜を指摘された.上皮内腫瘍を疑われ,精査目的に当院へ紹介受診となった.前医の生検で好酸球浸潤を認めていたため,好酸球性食道炎の可能性を考え,エソメプラゾールの投与を開始した.8週間後のEGDでは,多発する褪色調粘膜と縦走溝が上部食道から下部食道にかけて拡がり,好酸球性食道炎と診断した.近年,下部限局型好酸球性食道炎の概念が提唱され,びまん性型好酸球性食道炎の初期像であると言われている.今回われわれは,下部限局型好酸球性食道炎がびまん性型に短期間に進展していく自然経過を捉えることが可能であった.

  • 中島 隆善, 生田 真一, 相原 司, 滝 正登, 川添 智太郎, 岸 清彦, 大﨑 往夫, 梶本 仙子, 覚野 綾子
    2019 年 61 巻 7 号 p. 1401-1407
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/22
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    症例は31歳,女性.1年前から発現と消退を繰り返す上腹部痛を主訴に前医受診,上部消化管内視鏡検査で胃体上部大彎に径25mm大の胃粘膜下腫瘍を認め,当院紹介となった.腫瘍からの細胞診で異所性膵が疑われ,症状を伴い本人の希望もあったため手術を施行した.腹腔鏡・内視鏡合同手術(laparoscopy endoscopy cooperative surgery:LECS)の手技を用いて腫瘍を摘出し,病理組織学的検査により異所性膵と診断した.術後,上腹部痛は消失した.有症状で手術適応となる胃異所性膵に対するLECSに言及した報告は少ないが,低侵襲で過不足のない切除が可能となるLECSはよい適応と考えられる.

  • 植野 紗緒里, 小倉 健, 奥田 篤, 宮野 亮, 都木 航, 佐野 達志, 天野 美緒, 今西 みゆき, 増田 大介, 樋口 和秀
    2019 年 61 巻 7 号 p. 1408-1414
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/22
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    72歳男性,心窩部痛を主訴に近医受診,酸分泌抑制薬にて改善なく精査目的に当科紹介,造影CTとEUSにて膵癌腹膜播種の診断となり抗癌剤治療が開始予定であったが,頻回の嘔吐を認めるようになり精査加療目的に当科入院となった.上部消化管内視鏡にて十二指腸球部に腫瘍浸潤による狭窄部位を認めた.悪性十二指腸狭窄に対しカバー付きステントを留置したところ,食道内へ逸脱しステント端に粘膜増生を来し抜去困難となった.このような合併症は稀であり,自験例のように抜去せずに経過観察症例はさらに稀である.カバー付き十二指腸ステントが食道内へ逸脱した際の問題点と逸脱後に経過観察が可能かどうかについて考察した.

  • 星川 聖人, 平松 慎介, 安部 瞬, 浦岡 正尚, 馬場 慎一, 中村 彰宏, 滝原 浩守, 植田 智恵, 井上 太郎, 西野 栄世
    2019 年 61 巻 7 号 p. 1415-1422
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/22
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    症例は46歳男性.右下腹部痛を主訴に受診.画像検査で回盲部に複数のリンパ節腫大を認め,悪性リンパ腫が疑われた.血液検査で可溶性インターロイキン2受容体(sIL-2R)の上昇と,下部消化管内視鏡検査で回腸末端に発赤・びらんを伴う粘膜不整を認め,生検でMALTリンパ腫と診断した.H. pylori陽性であり除菌治療を行った5カ月後,回盲部リンパ節腫大は消失し,回腸末端のびらんは瘢痕化していた.生検でもMALTリンパ腫の所見は消失し寛解と判断した.本邦における消化管原発MALTリンパ腫の報告は大半が胃原発であり,小腸原発の報告は少ない.さらに除菌療法後に寛解に至った例は極めて稀であるため,貴重な症例と考えられた.

  • 永田 充, 大倉 康男
    2019 年 61 巻 7 号 p. 1423-1429
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/22
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    電子付録

    症例は65歳,男性.便潜血陽性のため大腸内視鏡を施行された.回盲弁から10cm口側に23mmの発赤調のⅡa+Ⅱc様病変を指摘され,生検で高異型度腺腫と診断された.NBI(Narrow band imaging)拡大観察ではJNET(Japan NBI Expert Team)分類Type 2Aに相当する所見であった.EMRを施行し,病変を一括切除した.出血や穿孔などの合併症は認めなかった.病理診断は軽度異型と高度異型の混在した管状腺腫であった.一括完全切除されており,1年後の大腸内視鏡で再発は認めなかった.本症例は非常に稀なⅡa+Ⅱc様回腸腺腫の治療におけるEMRの有用性と,組織型推定におけるNBI拡大観察の有用性が示唆された貴重な症例と考えられたため,報告する.

  • 安達 哲史, 島田 紀朋, 神田 仁, 佐々 政人, 田口 泰三
    2019 年 61 巻 7 号 p. 1430-1434
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/22
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    90代男性.前医にてS状結腸に活動性出血を呈する憩室を認め,クリップによる止血術がなされた.その後2度再出血しクリップを追加したものの,止血困難であったため当院に転院搬送された.下部消化管内視鏡検査を施行したところ,責任憩室およびその近傍にクリップが残存しており,把持鉗子でクリップを除去して出血点を明確にした.小さな露出血管を認め,coagulasperの先端を軽く押し当て,soft凝固で露出血管を焼灼し,同部位を遅発性穿孔予防目的でクリップ縫縮した.クリップ法で止血困難であった場合に止血鉗子で再止血し得た大腸憩室出血の報告例は検索し得た限りでは認めず,文献的考察を加えて報告する.

手技の解説
  • 野中 哲, 小田 一郎, 阿部 清一郎, 鈴木 晴久, 吉永 繁高, 斎藤 豊
    2019 年 61 巻 7 号 p. 1435-1445
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/22
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    ESDという治療手技の中で最も歴史が長く,すでに胃ESDは一般化したと言ってもよいと思われる.しかしながら,困難部位における胃ESDはいまだ先進施設やエキスパートでないと完遂することが難しいことがある.また,胃ESDは出血との戦いであり,いかに出血を制御するかが手技を迅速かつ円滑に完遂できるかのポイントである.筆者らは体部病変の胃ESDにおいて,先端系ナイフの切除戦略とITナイフの戦略を組み合わせた近位側アプローチ法を適応しており,その実際について解説する.

  • 肱岡 範, 坂本 康成, 大場 彬博, 丸木 雄太, 永塩 美邦, 前原 耕介, 森実 千種, 斎藤 豊
    2019 年 61 巻 7 号 p. 1446-1457
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/22
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    悪性胆道狭窄に対する胆道ドレナージでは,現在,endoscopic retrograde cholangiopancreatography(ERCP)が第一選択として広く行われている.しかし,手技困難時には,percutaneous transhepatic biliary drainage(PTBD)のほか,endoscopic ultrasound-guided biliary drainage(EUS-BD)も次善策として挙げられる.本稿では,ERCP手技困難時におけるEUS-BDの方法および一般的なEUS-BDとPTBDとの選択方法について,当院の経験をもとに概説した.あらゆる胆道閉塞に対応するには,内視鏡的ドレナージ単独,PTBD単独の胆道ドレナージでは,いずれも限界がある.このため,内視鏡医とinterventional radiology専門医の双方がベストドレナージを目指すという明確な目的を持ち,戦略的パートナーシップを組む姿勢が重要である.

資料
  • 山崎 泰史, 竹内 洋司, 岩坪 太郎, 加藤 穣, 濱田 健太, 東内 雄亮, 松浦 倫子, 金坂 卓, 山階 武, 荒尾 正道, 鈴木 ...
    2019 年 61 巻 7 号 p. 1458-1468
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/22
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    電子付録

    【背景と目的】ESD後創部を縫縮するとpost-ESD coagulation syndrome(PECS)の発生割合が低下する可能性がある.しかし,今までは大きな大腸ESD後創部を内視鏡的に縫縮することが難しかった.そこで,大きな大腸ESD後創部を内視鏡的に縫縮するための新しい方法として,われわれは糸付きクリップを使用した縫縮法(LACC)を考案した.今回の研究では,LACCによるPECSの予防効果を検討した.

    【方法】2016年1月から2016年8月に大腸ESD後創部に対してLACCを試みた61症例を解析対象として抽出した.LACC不成功症例とESD中に偶発症を生じた症例を除外し,57症例をLACC群とした.一方で,大腸ESD後創部を縫縮していない495症例を対照群とし,両群間の治療成績を比較検討した.また,背景を揃えるため,傾向スコアマッチングを用いた解析も行った.

    【結果】LACCを試みた61症例の大腸ESD後切除標本径の中央値(範囲)は35(20-72)mmで,LACC成功割合は95%(58/61)であった.LACC施行時間の中央値は14分であった.LACC群ではPECSの発生割合は2%で,後出血や遅発穿孔は認めなかった.傾向スコアマッチングを用い,両群51症例が抽出された.傾向スコアマッチング後の解析では,LACC群は対照群と比較して有意にPECSの発生割合が低く(0% vs 12%,P=0.03),入院期間が短かった(5日 vs 6日,P<0.001).

    【結論】さらなる大規模研究が必要であるが,LACCは大腸ESD後のPECSの発生割合を低下させることが示唆された.

内視鏡室の紹介
最新文献紹介
  • 炭山 和毅
    2019 年 61 巻 7 号 p. 1476
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/22
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    【緒言】バレット食道症例の初回内視鏡時に発見された異形成や食道腺癌(esophageal adenocarcinoma:EAC)について,継時的変遷を推量できるデータは少ない.本研究の目的は,過去25年間に初回内視鏡時に発見された,バレット食道を発生母地とする異形成やEACの概要を明らかにする事である.

    【方法】The Barrett’s Esophagus Studyは,大規模コホートを用いバレット食道のアウトカム評価を行うために発足した多施設共同研究グループである.研究参加施設において実施されたバレット食道症例に対する初回内視鏡所見を,異形成なし(no dysplasia:NDBE),低度異形成(low-grade dysplasia:LGD),高度異形成(high grade dysplasia:HGD),および,EACに分け,その割合を一年ごとに抽出し,さらに1990年から2010+(2010年から現在)まで5年ごとに集計した.初回内視鏡時の各異形成(LGD,HGD,EAC,and HGD/EAC)の有病割合を内視鏡所見とともに評価し,過去25年間の変遷を明らかにする事で,バレット食道を発生母地とする異形成や腺癌の検出力の変化を観察した.統計学的解析にはSAS version 9.4(SAS,Cary,NC)が用いられた.

    【結果】計3,643例の初回内視鏡所見が解析された結果,NDBEが2,513例(70.1%),LGDが412例(11.5%),HGDが193例(5.4%),EACが181例(5.1%)に認められた.年代が進むに従い,バレット食道症例の平均年齢の上昇(51.7±29 vs 62.6±11.3),男性割合の増加(84% vs 92.6%),また,バレット食道長の短縮(4.4±4.3cm vs 2.9±3.0cm)が認められた(1990-1994 vs 2010-2016).1990年から2016年までの期間,LGDの有病率がほぼ一定であったのに対し,HGDとEACの有病率,およびその合計は有意に増加していた(HGD:148%,EAC:112%)(P<.001).また同時期の,初回内視鏡時に視認し得た病変の発見率も同様に有意な増加が認められた(1990-1994:5.1%,2005-2009:6.3%,2010+:16.3%).

    【結語】過去25年間,バレット食道長が短くなっていたにも関わらずHGDやEACの有病率は有意に増加していた.また,この有病率の増加傾向は内視鏡的に視認可能な病変の発見率の増加傾向と類似しており,初回内視鏡時の注意深い観察の重要性を示唆する結果であった.

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