Endocytoscopy system(ECS)はOptical biopsyを実現する内視鏡として2003年に第1世代ECSが試作された.第4世代ECS(GIF-H290EC)はHi-vision画像で通常内視鏡観察から連続して500倍までの拡大が可能となり,2018年に市販された.食道でのECSを用いた観察では,細胞核の形状が明瞭に描出される.「核密度」と「核異型」を指標として診断が行われ,90%を超える正診率が得られている.胃でのECS観察では粘液の除去が最大の課題であるが染色液の工夫などで「構造異型」,「細胞配列の乱れ」,「細胞異型」を観察することが可能である.十二指腸でのECS観察の報告は少ないが,Celiac病,十二指腸腺腫,十二指腸癌でそれぞれ病理組織を反映する特徴的画像が得られている.
ECSは生体内でリアルタイムに組織学的最終診断を可能にする.これにより内視鏡学的に従来のマクロ診断からミクロ診断へと診断の新しい扉を開けるものである.
原因不明の慢性炎症性疾患である炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease,IBD)はいまだ増加傾向が続いており,長期予後改善を目指した新たな治療戦略が必要である.具体的な治療目標を設定したtreat to target(T2T)に基づく治療戦略の重要性が唱えられている.内視鏡的寛解が標準的な治療目標として設定され,さらに組織学的寛解を治療目標とするべきかの検討も行われている.T2T治療戦略には適切なモニタリングも重要であり,便バイオマーカーであるカルプロテクチンや便潜血定量法が使用可能となった.さらにカプセル内視鏡や小腸バルーン内視鏡の発達により小腸病変雄モニタリングも可能になった.さらにcross sectional imagingも進歩し日常診療の診断・モニタリングツールとして使用されている.治療の面では,5-アミノサリチル酸製剤やブデソニド製剤の選択肢が増え,チオプリン製剤についてはNUDT15遺伝子多型を含めた新たなエビデンスが構築されつつある.さらに抗TNFα抗体製剤の成功によりIBDに対する分子標的治療薬がめざましい勢いで開発されつつある.
症例は41歳,男性,吐血で発症し行った上部消化管内視鏡検査で胃穹窿部後壁の粘膜下腫瘍様隆起からの噴出性出血を認めた.内視鏡的静脈瘤結紮術用Oリングを用い結紮止血後行った腹部造影CTで,大動脈から分枝する拡張した左胃動脈枝からの出血が疑われた.同日夜間に再破裂したため再度結紮術を行ったのちに胃全摘・脾摘術を施行した.病理学的に検討すると,Segmental arterial mediolysis(SAM)の変化が認められた.
70歳男性.10年前の上部消化管内視鏡検査で胃体上部小彎に7mm大の褪色調粘膜下腫瘍様隆起を指摘された.以降の定期的な内視鏡検査ではサイズ,形態に変化はなかったが,10年目の内視鏡時に9mm大への増大と陥凹形成を認めた.陥凹部の生検で胃底腺型胃癌と診断し,生検1カ月後の精査内視鏡検査では,陥凹部のNarrow band imaging(NBI)拡大観察でirregular microsurface(MS)and microvascular(MV)patternを認めた.診断的治療として内視鏡的粘膜下層剝離術を施行,病理組織像では,腫瘍は粘膜深層主体に発育し,陥凹部で粘膜表層へ伸展・露出しており,一部粘膜下層へ微小浸潤していた.胃底腺型胃癌の長期経過における内視鏡像の変化やNBI拡大所見を検討した報告は少なく,貴重な症例と考える.
64歳,男性.食欲不振・下痢により,9カ月間で23kgの体重減少を認めた.高血圧症に対して,オルメサルタン内服歴が10年間あった.上下部内視鏡検査では原因となる疾患を認めず,小腸カプセル内視鏡検査で,十二指腸・小腸の絨毛萎縮を認めた.十二指腸粘膜生検ではアミロイド沈着,異型リンパ球は認めず,便培養・便虫卵検査が陰性であることから,セリアック病を疑った.オルメサルタン内服中であることから,セリアック病と同様の臨床像を呈するオルメサルタン関連スプルー様腸疾患を疑い,オルメサルタンを中止とした.その後,食欲不振・下痢・体重減少は改善し,4カ月後の小腸カプセル内視鏡検査で,十二指腸・小腸の絨毛萎縮の改善を認めた.慢性下痢の原因として,オルメサルタン内服中の場合には,オルメサルタン関連スプルー様腸疾患を念頭におくべきである.小腸カプセル内視鏡検査は小腸絨毛の萎縮評価に有用であった.
73歳女性.下痢,血便,体重減少の精査のために施行した大腸内視鏡検査で全大腸にMultiple lymphomatous polyposis(MLP)を認め,上部消化管内視鏡検査では十二指腸に白色顆粒状の隆起性病変を認めた.大腸,十二指腸病変からの生検より濾胞性リンパ腫と診断した.追加検査にて多発リンパ節腫大,脾臓,骨髄浸潤を認め,濾胞性リンパ腫 grade1,Ann Arbor分類IVB期,FLIPI high riskと診断した.化学療法(R-CHOP療法)8コース施行後の画像検査でCRと判定した.十二指腸に典型的な濾胞性リンパ腫の所見を呈し,大腸にMLPを認める全身性濾胞性リンパ腫の症例は稀でありここに報告する.
症例は71歳,女性.肝胆道系酵素上昇の精査加療目的に当院を紹介受診した.各種画像検査で下部胆管に腫瘤と胆管周囲のリンパ節腫大を認め,PET検査でFDGの集積があり,ERCPによる下部胆管狭窄部の擦過細胞診ではAdenocarcinomaが疑われた.下部胆管癌と診断し,幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行した.摘出標本では乳頭部に15mm大の腫瘤を認めたが,組織学的には異型性の乏しい腺管の集簇が見られ,周囲には平滑筋・線維組織の増生を伴っておりAdenomyomatous hyperplasia(以下AMH)と診断された.
32歳女性,心窩部痛,背部痛で受診し,高アミラーゼ血症(1,627IU/L)を認めた.CTで膵頭部に造影効果乏しい43×37mm大の腫瘤を認め,腸間膜,傍大動脈リンパ節が腫大していた.上部消化管内視鏡で,十二指腸下行脚に白色顆粒状の小隆起性病変を認め,十二指腸濾胞性リンパ腫と思われた.また,膵周囲の腫大したリンパ節による急性閉塞性膵炎も発症しており,膵管ステントを留置した.PET-CTで右腋窩,両鼠径,腹腔内リンパ節にFDG集積を認め,可溶性IL-2Rも上昇しており,右腋窩リンパ節摘出術施行した.病理組織診で形質転換したfollicular lymphomaと診断され,R-CHOPで治療した.
Inside stentはプラスチックステントを主乳頭部から出さずに,胆管内に留置する方法である.その有用性はまだ明確ではないが,近年の後ろ向き研究から将来期待がもてる結果が報告されている.特に良性胆管狭窄例や悪性肝門部領域胆管狭窄例が適応となりやすい.ステント留置の際には,逸脱に注意する必要がある.つまり,狭窄や胆管形態に合うようなステント選択が必要である.肝門部領域胆管狭窄例に対しては複数本留置の方が1本のみの留置と比較して,逸脱しにくい.また,市販されている専用プラスチックステントには抜去時のことを考慮して遠位端に糸が装着されているが,この糸を用いた抜去時のコツも知っておく必要がある.本稿では,現時点でのエビデンスと適応や留置に関する技術的なコツを解説する.
【背景と目的】膵管癌(PDAC:Pancreatic ductal adenocarcinoma)は,全癌種の中で最も予後が悪いものの1つで,早期発見するのは困難である.予後を改善するためには,PDACを疑ったときに正確に診断することが必要である.超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS-FNA)はPDACの診断に広く受け入れられている方法だが,その感度は85~89%であり,PDAC症例の約10%は診断できない.EUS-FNAによってPDACを診断できない主な原因は,腫瘍の大きさ,穿刺経路上に存在する血管または主膵管,および抗凝固薬の休薬困難である.膵液細胞診(PJC:Pancreatic juice cytology)は感度33.3~65.8%とされ,EUS-FNAが施行困難なPDAC症例に対する診断法である.PDACを確実に診断するためには,PJCの診断能力を向上させる必要がある.
【方法】138例の膵腫瘍および膵臓非腫瘍性疾患に対して合成セクレチンを負荷したPJCについて検討した.
【結果】合成セクレチン負荷によってPJCの感度は50.9%から74.0%に向上し,EUS-FNAで診断できなかった13例のPDACを,PJCにより病理学的に診断することができた.合併症として軽症膵炎が12例(8.7%)あったが,全例が保存的治療で改善した.
【結論】合成セクレチン負荷PJCは,PDACに対してEUS-FNAを施行困難な症例に有用である.
【背景と目的】少なくとも1つリンパ節転移のリスク因子があるT1大腸病変は外科的切除の必要があり,内視鏡的には切除不能であると考えられる.内視鏡治療を要する粘膜下浸潤病変を同定するために,NICE分類に基づいた画像診断が用いられる.われわれはNICE分類に肉眼型を加味して内視鏡的切除不能な浸潤病変(少なくとも1個のリンパ節転移リスクを持つ病変)を同定する場合のNICE分類の正診率を解析した.
【方法】2014年7月~2016年6月までの期間,スペインの17の大学と関連病院にて多施設共同前向き研究を行い,58人の内視鏡医によりNBIで診断された10mm以上の連続病変,2,123病変(1,634人)を対象とした.プライマリーエンドポイントは粘膜下層深部浸潤癌(T1b)に対するNICE分類の正診率とし,病理診断をゴールドスタンダードとして用いた.また,CTREE(conditional inference tree)が正診率の解析法として用いられた.
【結果】解析された2,123病変のうち89病変(4.2%)がT1bであり,91病変(4.3%)が内視鏡的切除不能病変であった.NICE分類のT1bに対する感度は58.4%(95%信頼区間47.5%~68.8%),特異度96.4%(95%信頼区間95.5%~97.2%),陽性反応的中度41.6%(95%信頼区間32.9%~50.8%),陰性反応的中度98.1%(95%信頼区間97.5%~98.7%)であった.すべての変数を含んだCTREEによる解析ではNICE分類がもっとも正確にT1bを診断可能であった(p<0.001).しかしながら有茎性の肉眼型(p<0.007),潰瘍形成(p=0.026),陥凹面(p<0.001),LST-G mixed type(p<0.001)が正診率に影響していた.内視鏡的切除不能病変を同定する場合の解析結果も同様であった.
【結論】10mm以上の2,123の大腸病変に対し,NICE分類と肉眼型によりT1bを診断する場合,非熟練医による非拡大内視鏡観察であっても96%以上の特異度を持って診断可能であった.