日本消化器内視鏡学会雑誌
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62 巻, 5 号
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総説
  • 中山 佳子
    2020 年 62 巻 5 号 p. 529-537
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/05/20
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    日本では小児消化器病医が不足しているために,小児の消化管内視鏡検査を成人の消化器内視鏡医が小児科から依頼され,検査を行うことがある.本稿では小児の上部消化管内視鏡検査(EGD),大腸内視鏡検査(CS),小腸カプセル内視鏡検査,小腸バルーン内視鏡検査の役割を概説し,検査の適応や内視鏡機器の選択について述べる.診断を目的とした内視鏡検査では,生検の適応が成人と小児では大きく異なる.症状のある小児のEGDでは十二指腸,胃,食道から,CSでは終末回腸と大腸の各部位から生検を採取する.CS前の消化管前処置は,安全性に加えて,患者の好みや受容性を考慮する.また,小児の内視鏡検査の多くは,安全性,快適性,検査への協力を促すために鎮静または全身麻酔下に行われる.鎮静に伴う合併症のリスクは成人と小児では異なり,鎮静前から鎮静後まで十分な管理体制を要する.また,小児の内視鏡検査前には,患者と保護者の不安な気持ちへの対応が必要である.

  • 水野 英彰, 竹内 弘久, 阿部 展次
    2020 年 62 巻 5 号 p. 538-549
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/05/20
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    わが国においては高齢化が進行している.その一方で,平均寿命は年々伸びているが健康寿命は変化していないことが問題点としてクローズアップされている.この対策として,フレイル・サルコペニア・ロコモティブシンドロームといった健康寿命延伸を目的とした部門横断的な医療全体の取り組みが行われている.アウトカム向上因子は,いずれも共通し,薬物療法・栄養介入・運動介入の3本柱が連携することが重要とされている.特に栄養介入はアウトカム向上の中核的因子である.栄養の安定供給には,消化管における消化・吸収が適切に機能し,摂食意欲が維持されていることが必要である.しかし,消化管の老化が原因とした器質性疾患や機能性疾患は年々増加しており,その結果,腸内細菌叢の変化・低栄養・フレイルにつながる点が危惧されている.つまり,消化管の老化そのものが健康寿命を損なう可能性があり,健康寿命延伸の根幹は,消化管疾患改善や消化管の老化予防にあると考えられる.今後,内視鏡診療を含めた消化器領域で健康寿命延伸を目的としたエビデンスのさらなる構築とアウトカム向上に向けた対策の発展が望まれる.

症例
注目の画像
手技の解説
  • 青山 大輝, 永田 信二
    2020 年 62 巻 5 号 p. 572-578
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/05/20
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    電子付録

    大腸憩室出血症例において,腹部造影CT検査における造影剤の血管外漏出像(extravasation)は次いで行われる内視鏡検査に有用な情報を提供するが,実際に内視鏡による責任憩室同定率は期待するほど高くない.それは,内視鏡検査ではCT検査ほどの客観的な位置把握が難しく,被疑部位を正確に探せていないことによる.“step clipping” 法は,クリップを用いてCT画像,内視鏡画像で共通に認識および対比可能な標識を作ることで内視鏡検査に正確な位置情報を付与する技術である.それにより出血源診断率の向上のみならず,内視鏡での探索範囲限定による検査時間の短縮が期待できる.

  • 佐藤 高光, 岩崎 暁人, 窪田 賢輔
    2020 年 62 巻 5 号 p. 579-592
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/05/20
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    肝門部領域胆管癌の治療には,外科的な肝切除を必要とすることから,術前に正確な進展度診断を行うことが求められる.検査を行う前に知識として,肉眼分類,浸潤形式,TNM分類による病期診断,Bismuth分類による胆管の浸潤範囲を理解し,それに応じた切除範囲を考える力が必要である.内視鏡診断は侵襲性が高いため,事前に放射線画像を用いて外科と予定術式を議論し施行することが望ましい.胆管癌における内視鏡検査には,EUS,ERCPおよび関連手技,胆道鏡が挙げられる.腫瘍がどこまで進展しているかを,様々な検査を組み合わせることで,可能な限り正確に診断することを心掛ける.そのためには,それぞれの検査の手技だけではなく,期待される役割も把握した上で検査を行いたい.EUSは肝外胆管の進展度診断に有用であるが,術者依存の検査である.直接胆道造影の評価は必須であり,IDUSやMapping生検を加えることで,進展度の情報を増やすことが可能である.胆道鏡の設備がある場合は,直接胆管上皮の肉眼診断を行うこともできる.

資料
  • 川嶋 啓揮, 橋本 千樹, 大野 栄三郎, 石川 卓哉, 森島 大雅, 松原 浩, 杉本 啓之, 野々垣 浩二, 金森 明, 原 和生, 桑 ...
    2020 年 62 巻 5 号 p. 593-603
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/05/20
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    【背景と目的】一般的に切除不能悪性遠位胆道狭窄のドレナージには内径が太いself-expandable metal stent(SEMS)の方が閉塞再発までの時間(time to recurrence obstruction;TRBO)が長いと考えられているが,fully covered SEMS(FCSEMS)において内径別のTRBOについての検討はない.この多施設前向き研究の目的は,切除不能遠位胆管悪性狭窄患者における8mm径と10mm径のFCSEMSのTRBOと胆嚢炎や膵炎などの偶発症の頻度を比較検討することである.

    【方法】この多施設前向き研究には18施設が参加した.エントリーされた患者は8mm径群と10mm径群に割付けされた.この両群においてTRBO,8mm径FCSEMSの10mm径に対する非劣性の有無の検討,全生存期間,偶発症の頻度とその種類,死亡時ステント開存率を比較検討した.

    【結果】TRBOの中央値は8mm径群(n=102)と10mm径群(n=100)で有意差を認めなかった(275日と293日,P=0.971).8mm径群の10mm径群に対するハザード比は0.90であった(80%信頼区間は0.77-1.04であり上限が帰無仮説の許容ハザード比1.33より小さかった).この結果によってTRBOにおいて8mm径ステントは10mm径ステントに対して統計的に非劣勢であると判断された.全生存期間,偶発症の発症率,死亡時ステント開存率に有意差は認めなかった.

    【結論】8mm径FCSEMSは10mm径FCSEMSにTRBOにおいて非劣性であった.この結果は今後のSEMS新規開発に重要である.

    (UMIN 000013560)

内視鏡室の紹介
最新文献紹介
  • 岡庭 信司
    2020 年 62 巻 5 号 p. 612
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/05/20
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    【背景】隔壁肥厚(septal thickness:ST)は,分枝型および混合型膵管内乳頭粘液性腫瘍の悪性度予測に有用であるが,そのcut-off値は明らかになっていない.本検討の目的は,悪性度を予測するために最適なSTのcut-off値をEUS画像を用いて明らかにすることである.

    【対象と方法】1989年から2017年までに外科的に切除されたIPMN200例のうち,分枝型および混合型132例を対象とし遡及的に検討した.STは分枝型あるいは混合型病変の隔壁あるいは被膜の最大値とした.ST単独およびSTと壁在結節(mural nodule:MN)高との組み合わせによるIPMNの悪性予測指標としての可能性につき検討した.

    【結果】132例中81例(61.4%)が病理学的に良性であり,51例(38.6%)が悪性病変であった.STのIPMNの悪性予測におけるROC曲線下面積(AUC)は,病理標本0.74,EUS 0.70,CT 0.56であった.多変量解析におけるST 2.5mm≦とMN高5mm≦のオッズ比は,それぞれ3.51(95%CI, 1.55-7.97, p=0.003),3.36(95%CI, 1.52-7.45, p=0.003)であった.

    【結語】多変量解析により,STはMN高と同様にIPMNの悪性度を予測する独立した予測因子と考えられた.EUSにおけるSTはIPMNの悪性変化に伴う線維性隔壁の肥厚を反映していると考えられた.ST 2.5mmは悪性IPMNを予測するcut-off値と考えられた.

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