膵疾患に対するEUS-elastographyで用いられるelastographyはstrain elastography(SE)とshear wave elastography(SWE)に大別される.これまでの検討のほとんどはSEを用いて行われてきた.SEの解釈の方法としてはROI内の画像のパターンを認識する方法,脂肪組織または結合組織と病変部の硬度を比較するSR(strain ratio)を用いる方法,対象の硬度分布をヒストグラム解析により評価する方法の三つがある.前二者は再現性が悪く,複数回の評価が必要となり,その解釈には十分な注意を払う必要がある.この方法は主に腫瘍性疾患に対して用いられてきた.ヒストグラム解析は再現性に優れ,硬度分布を評価するような慢性膵炎などの評価に用いられてきた.膵は加齢により硬度が上昇するので,年齢を考慮した検討が必要となる.
59歳女性.2年前より嚥下困難を認め,当院を受診.精査により頸部食道に40mm大の粘膜下腫瘍を認め,腫瘍の圧排による食道狭窄を認めた.粘膜面にびらんや潰瘍を認めず,粘膜切開生検による組織検査にて顆粒細胞腫と診断した.病理学的に悪性所見は認めなかったものの,通過障害に伴う嚥下困難感が強いために胸腔鏡下腹腔鏡下食道亜全摘を施行した.腫瘍は気管膜様部に浸潤し,本症例は病理学的に良性であるが,悪性顆粒細胞腫の診断基準を満たした.食道顆粒細胞腫は本例のように病理組織学的に良性でも深部浸潤をきたす症例があり,腫瘍径が大きい症例や周囲臓器への浸潤を認める症例,自覚症状を伴う症例は外科加療を考慮すべきである.
症例は74歳女性.検診胃透視にて胃体部大彎の辺縁不整を指摘され,当院へ紹介された.上部消化管内視鏡にて胃体下部大彎に20mm大の粘膜下腫瘍様隆起を認め,超音波内視鏡(EUS)では第2層内に15mm大,境界明瞭で内部不均一な低エコー腫瘤として描出された.ボーリング生検にて濾胞様結節構造と中型までのリンパ球増殖像を認め,免疫組織染色結果から,濾胞性リンパ腫(Grade1)と診断した.諸検査の結果から,Lugano国際分類StageⅠと診断し,計30Gyの全胃放射線照射を施行した.治療終了約2カ月後の上部消化管内視鏡では同部位にわずかな白色調瘢痕を認めるのみで,現在までの約1年半にわたって,明らかな再発なく経過している.
症例は75歳男性.黒色便を認め,内視鏡検査で十二指腸球部後面に無茎性腫瘤性病変(25mm)を認め,頂部に微小な露出血管を伴ったびらんがあり止血処置を行った. EUS-FNAを施行しBrunner腺の過形成を認め悪性の可能性は極めて低いと判断したが,出血を繰り返し治療適応と判断した.局在や大きさ,形態から内視鏡的切除困難なため外科的局所切除を施行した.病理はBrunner腺の他に導管や平滑筋の増生も認めBrunner腺過誤腫と診断した.Brunner腺過誤腫が内視鏡切除できない場合,病変の局在によっては膵頭十二指腸切除など侵襲的な手術が選択された報告もあるが,EUS-FNAは診断に有用であった.
症例1は64歳女性.膵腫瘍による閉塞性黄疸を疑われ当科紹介となった.CTでは膵頭部にのみ腫瘍を認識できたが,EUSにて膵頭部と膵体部に腫瘍を認めた.EUS-FNAにより両者ともに腺癌と診断し,当院外科にて亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行した.膵頭部は中分化型腺癌,膵体部は高分化型腺癌であった.症例2は78歳女性.膵腫瘍を指摘され当科紹介となった.CTでは膵尾部にのみ腫瘍を認識できたが,EUSにて膵体部と膵尾部に腫瘍を認めた.EUS-FNAにより腺癌と診断し,当院外科にて膵体尾部切除術を施行した.膵体部,膵尾部ともに高分化型腺癌であったが形態には相違があった.浸潤性膵管癌発見時にはEUSで膵全体を観察し,多発病変を確認する必要がある.
管腔内での確実な創閉鎖を目的として,手術で汎用されている外科用縫合糸を内視鏡用軟性持針器で運針し組織を縫合する内視鏡的手縫い縫合法が開発された.軟性鏡下に持針器で湾曲針を把持し,バーブ付き縫合糸を組織に通して連続縫合する本法は,より強固で信頼性のあるtissue apposition methodとして,内視鏡治療後出血予防をはじめ様々な場面で有用となる可能性を秘めている.本手技の確立,普及および適応拡大が期待される.
低緊張性十二指腸造影は,鎮痙剤を用い十二指腸の蠕動を抑制して行うX線検査法である.その目的は腫瘍性病変の質的量的診断だけでなく,広範囲な病変の全体像,病変の正確な壁在,周辺臓器との関係性などを明確に把握できるため,内視鏡診断に補足すべき情報を多く得られる利点がある.検査法には十二指腸専用のゾンデを用い精密検査に特化した有管法と,造影剤を飲用させて行う無管法がある.造影剤はバリウム製剤を用い,二重造影法で撮影する.ただし,高度便秘や腸管の通過障害が疑われる場合は水溶性消化管造影剤を選択する.実際の検査と読影は,十二指腸の正常X線像を十分に理解した上で臨む.正常の十二指腸粘膜は Kerckring 皺壁を伴い,腸絨毛を反映した微細な模様を認める.また主乳頭の位置・形態を把握することも重要である.撮影における注意点は,標的病変の壁在を理解し,その上にバリウムを流すようにして造影効果の良好な写真を撮影することである.
【背景と目的】超音波内視鏡下胆道ドレナージ術(Endoscopic ultrasound-guided biliary drainage;EUS-BD)には,endoscopic ultrasound-guided choledochoduodenostomy(EUS-CDS)およびendoscopic ultrasound-guided hepaticogastrostomy(EUS-HGS)の2つのアプローチ方法が存在する.本研究は,悪性胆道閉塞に対するこれらの2つの手技の有効性と安全性を比較検討した前向き無作為化試験である.
【方法】ERCPが不成功であった悪性遠位胆道閉塞を有する患者を対象とし,EUS-CDS群およびEUS-HGS群に無作為に割り付けた.本研究は,2013年9月から2016年3月の期間に国内の高次医療機関9施設で行われた.主要評価項目は手技成功率とし,片側有意水準5%,非劣性マージンを15%と設定し,EUS-HGSのEUS-CDSに対する非劣性を検討した.副次的評価項目は,臨床的成功率,偶発症発生率,ステント開存期間,生存時間,および初期治療,二次治療を含めたEUS-BDの手技成功率とした.
【結果】EUS-HGS群:24例,EUS-CDS群:23例の計47症例が登録された.手技成功率は,EUS-HGS群およびEUS-CDS群で,各々87.5%,82.6%であり,リスク差の90%信頼区間の下限は12.2%であった(P値=0.0278).臨床的成功率は,EUS-HGS群およびEUS-CDS群で,各々100%,94.7%であった(P値=0.475).偶発症発生率,ステント開存期間,生存期間には両群で差がなかった.EUS-BDの二次治療を含めた全体での手技成功率は,EUS-HGS群およびEUS-CDS群で各々100%,95.7%であった(P値=0.983).
【結語】本研究により手技成功に関してEUS-HGSのEUS-CDSに対する非劣性が示された.いずれかの手技が困難な場合,他のEUS-BD手技に切り替えることが手技成功を高めることにつながる可能性がある.
【背景と目的】Bismuth ⅢaもしくはⅣ型の肝門部悪性胆道狭窄(malignant biliary strictures:MBS)を有する患者に対するドレナージには,3本以上のステントが必要になる場合がある.金属ステント(self-expandable metallic stent:SEMS)を用いたmultistentingは,これまでPartial stent-in-stent(PSIS)による留置が唯一の方法であった.近年,6Fr以下の細径ステントデリバリーが製品化され,2本のSEMSを同時に留置するside-by-side stenting(SBS)法が開発された.3本以上のmultistentingに対しても,このSBS法にPSIS法を組み合わせた方法であるHybrid法による留置が可能となった.本研究では,新たな内視鏡的3区域ドレナージ法であるHybrid法の有効性と安全性を評価している.
【方法】本研究では,Bismuth ⅢaもしくはⅣ型のMBSを有する17人の患者に対してHybrid法を用いたmultistentingを施行した.
【結果】手技的成功割合は82%(14/17)であり,処置時間中央値は54分であった.手技を通してバルーンによる拡張を必要とした患者は2人であった.2人の患者(12%)に早期偶発症として胆嚢炎を発症し,1人の患者(6%)に晩期偶発症として肝膿瘍を認めた.Hybrid法を用いたmultistentingのステント開存期間中央値は189日であった(95%信頼区間:124~254日).
【結論】ステントデリバリーの細径化により可能となった内視鏡的3区域ドレナージであるHybrid法を用いたmultistentingは,肝門部MBSに対する効果的な内視鏡的ドレナージ法である.