日本消化器内視鏡学会雑誌
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62 巻, 9 号
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総説
  • 村尾 高久, 梅垣 英次, 塩谷 昭子
    2020 年 62 巻 9 号 p. 1577-1584
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/23
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    Helicobacter pylori陰性胃癌とは主にH. pylori未感染胃粘膜から発生する胃癌と除菌後に発見される除菌後胃癌がある.H. pylori未感染胃癌は未分化型腺癌と胃型形質を有する超高分化型(低異型度)腺癌(胃底腺型胃癌,腺窩上皮型胃癌)が報告されている.未分化型腺癌の多くは印環細胞癌で褪色調のⅡc,Ⅱb病変であることが特徴である.胃底腺型胃癌は胃底腺領域に発生し,粘膜下腫瘍様の形態を呈することが多く,腺窩上皮型胃癌は白色調の側方発育型腫瘍様の扁平隆起性病変やラズベリー様の発赤調の隆起性病変である.除菌後胃癌の多くは強い萎縮性胃炎を伴う分化型癌であり,Ⅱc病変が多い.除菌後分化型癌では表層粘膜を非癌上皮が覆い,生検診断や範囲診断が難しい症例が報告されている.強い萎縮を認める症例では発がんのリスクが高く,除菌後も内視鏡検査による注意深い経過観察が必要である.

症例
手技の解説
  • 中村 純, 加藤 恒孝, 引地 拓人
    2020 年 62 巻 9 号 p. 1614-1623
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/23
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    食道アカラシアは,下部食道括約筋の弛緩不全と食道体部の蠕動運動の障害をきたす良性疾患である.しかし,食事摂取が困難であることの苦痛度は高く,治療の必要性が高い疾患といえる.これまでの治療は,バルーン拡張術やHeller筋層切開術が行われていたが,内視鏡的治療として,Inoueらにより経口内視鏡的筋層切開術(Per-oral endoscopic myotomy:POEM)が開発された.POEMは,筋層切開術を低侵襲である経口内視鏡的に行う手技であり,1回の治療で長期的な効果を得ることができる.現在,日本国内でPOEMを施行可能な施設は限られているが,その普及により食道アカラシア自体の関心や認知度も高くなっている.本稿では,POEMの術前診断ならびにPOEMのコツと,さらにトラブルシューティングについて述べる.

資料
  • 小林 健一, 宮原 良二, 舩坂 好平, 古川 和宏, 澤田 つな騎, 前田 啓子, 山村 健史, 石川 卓也, 大野 栄三郎, 中村 正直 ...
    2020 年 62 巻 9 号 p. 1624-1633
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/23
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    【背景】食道扁平上皮癌の治療方針決定に正確な深達度診断が重要であるが,MM/SM1の正診率は低く解決すべき課題となっている.本研究の目的はLED光源を用いたLCIにおける食道表在癌に対する色と深達度の関連性について検討することである.

    【方法】表在型食道癌と診断された病変に対し白色光につづいてLCIで観察を行った.色合いの評価についてはCIE-Lab空間を用いて色値を算出し,深達度ごとの癌部と非癌部の色差を算出した.血管径およびintrapapillary capillary loopの分岐角を病理的に算出し,色合いとの相関を検討した.

    【結果】48症例52病変が登録された.深達度別の正常と病変部の色差において,MM/SM1以深群ではEP/LPM群に比べて有意に色差が大きかった(P=0.025).血管径はb値と弱い正の相関を認めた(相関係数=0.302,P=0.033).

    【結論】LED光源を用いたLCI観察は,表在型食道癌における深達度診断の向上に有用である可能性があるが,その有用性を示すのにはさらなる検討が必要である.

ガイドライン
  • 後藤田 卓志, 赤松 拓司, 阿部 清一郎, 島谷 昌明, 中井 陽介, 八田 和久, 細江 直樹, 三浦 義正, 宮原 良二, 山口 太輔 ...
    2020 年 62 巻 9 号 p. 1635-1681
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/23
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    消化器内視鏡分野における鎮静のニーズがさらに高まり日常診療において重要度の高い医療行為となっている.この度,日本消化器内視鏡学会は日本麻酔科学会の協力のもと「内視鏡診療における鎮静に関するガイドライン(第2版)」の作成にあたり,安全に検査・治療を遂行するためには何が問われているかを実地診療における疑問や問題として取り上げた.そのうえで,20項目のクリニカルクエスチョンを決定した.作成にあたっては「Minds診療ガイドライン作成マニュアル2017」に従い,推奨の強さとエビデンスの質(強さ)を示した.現在日常的に行われている消化器内視鏡診療(以下,内視鏡)における鎮静の臨床的疑問と問題に関して現時点でのステートメントを示すことができた.なお,この領域における本邦からのメタアナリシスなど質の高い報告は少なく,専門家のコンセンサスを重視せざるを得ない部分も多かった.また,鎮静に主に使用されているベンゾジアゼピン系の薬剤は保険適用外であるのが現状で,費用負担に関する不利益の検討ができなかった.また,診療ガイドライン作成にあたって受益者である患者・市民の視点を反映することが今後の課題である.

    なお,ガイドラインは現時点でのエビデンスの質(強さ)に基づいた標準的な指針であり,医療の現場で患者と医療者による意思決定を支援するものである.よって,個々の患者の希望,年齢,合併症,社会的状況,施設の事情や医師の裁量権によって柔軟に対応する必要がある.

内視鏡室の紹介
最新文献紹介
  • 蘆田 玲子
    2020 年 62 巻 9 号 p. 1686
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/23
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    【目的】新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染患者の消化管症状を95例で検討した単一施設後方視的研究である.

    【方法】新型コロナウイルスの診断は咽頭スワブからRNAを抽出し,リアルタイムRT-PCR法を用いて行われた.また,便検体や内視鏡検査によって得られた食道,胃,十二指腸,直腸粘膜の生検組織からもRNAを抽出した後,RT-PCR法により新型コロナウイルスの有無を検出した.

    【結果】95例中,58例が消化管症状を呈した.11例は入院当初から症状があり,47例は入院後に症状が出現した.主な消化管症状は下痢が最も多く(24.2%),次いで食欲不振(17.9%)および悪心(17.9%)が多く,他にも嘔吐(4.2%),胃食道逆流症(2.1%),心窩部不快感(2.1%),上部消化管出血(2.1%)が出現した.また,入院中に下痢症状が出現した患者は,抗菌薬使用の影響が考えられた.入院患者65例の便検体を検査し,消化管症状があった42例中22例(52.4%)で便検体からSARS-CoV-2ウイルスが検出され,消化管症状がない患者でも23例中9例(39.1%)からウイルスが検出された.消化管症状のある6例に内視鏡検査を実施したところ,重症患者1例で,食道にびらんと円形の小潰瘍(直径4-6mm)が散在しており,ごく少量の出血を伴っていた.重症患者2例においては生検した食道,胃,十二指腸,直腸すべての検体からSARS-CoV-2ウイルスが検出された.また,非重症患者4例中,1例で十二指腸検体からウイルスが検出された.

    【結論】消化管はSARS-CoV-2の伝染経路であり標的臓器ともいえる.

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