日本消化器内視鏡学会雑誌
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63 巻, 3 号
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総説
  • 西川 潤, 柳井 秀雄, 坂井田 功
    2021 年 63 巻 3 号 p. 255-263
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/22
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    EBウイルス関連胃癌は胃癌の約10%を占め,胃上部・中部に多く存在し,リンパ球浸潤癌が多い.内視鏡的には,胃体部から噴門部の陥凹を主体とした病巣が多く,陥凹の周囲に境界不明瞭な隆起を伴い,粘膜下腫瘍様の形態を呈する.超音波内視鏡では第3層に境界明瞭な低エコー腫瘤が観察される.EBウイルス関連胃癌はH. pylori感染胃炎を背景に発生し,除菌後にも発生する.EBウイルス関連胃癌は,粘膜下層に浸潤してもリンパ節転移が極めて少なく,内視鏡的切除が適応拡大できる可能性がある.EBウイルスの有無が胃癌の治療法や経過観察に影響を与えるため,EBウイルス関連胃癌を診断する重要性が高まってきている.

  • 吉田 成人, 田中 信治
    2021 年 63 巻 3 号 p. 264-278
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/22
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    消化管粘膜下腫瘍(submucosal tumor:SMT)は日常臨床ではしばしば遭遇する疾患であるが,その定義は粘膜より深部に存在する壁内病変により粘膜が挙上された隆起の総称とされている.通常内視鏡検査では病変そのものの観察を行うことができず,かつ多彩な組織を呈するため診断は困難な場合が多く,超音波内視鏡検査(endoscopic ultrasonography:EUS)が診断に有用である.EUSには大きく分けて,超音波内視鏡専用機を用いて行う方法と,通常内視鏡の鉗子口から出す細径超音波プローブを用いた方法があるが,いずれにしても詳細な画像診断には良好な画像の描出が必須であり,機器や描出方法の選択に留意する必要がある.EUSで特徴的な所見を示す脂肪腫,異所性膵,嚢胞,リンパ管腫などのSMTでは,通常内視鏡およびEUSで診断がほぼ可能であり,組織採取は必要ない.一方,粘膜下層および固有筋層の内部が低エコーや不整なエコーの病変は診断困難な病変も多く,これらの病変を確定診断するには,組織採取による病理診断が推奨される.そのような病変に対してはEUS下穿刺吸引細胞診および開窓生検法など様々な手法で組織採取が行われているが,同時に新しい診断手技の開発による画像診断の進歩にも期待したい.

症例
  • 室井 航一, 古川 和宏, 鈴木 智彦, 廣瀬 崇, 伊藤 信仁, 古根 聡, 角嶋 直美, 中村 正直, 大林 友彦, 藤城 光弘
    2021 年 63 巻 3 号 p. 279-286
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/22
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    症例は74歳,男性.つかえ感を主訴に当院を受診.上部消化管内視鏡検査(EGD)を施行したが,異常は認めなかった.エソメプラゾールの内服を開始するものの,症状は持続し,半年後に食事をすることが困難となり入院となった.EGDを再検したところ,中下部食道に粘膜白濁浮腫,輪状狭窄を認め通過障害をきたしていた.各種検査から好酸球性食道炎(EoE)を疑ったが,生検で食道上皮に好酸球浸潤は認めなかった.超音波内視鏡検査(EUS)では筋層を含む食道壁の肥厚を認め,複数回の生検にて上皮下層に浸潤した好酸球を確認した.今回われわれは,半年間で重度の通過障害をきたし,EUSによる食道壁評価が診断に有用であった好酸球性食道炎亜型の1例を経験したため報告する.

  • 浜野 由花子, 大河原 悠, 岡 靖紘, 馬淵 敬祐, 水谷 悟, 山口 雄司, 平井 信二, 谷中 昭典, 鴨志田 敏郎
    2021 年 63 巻 3 号 p. 287-292
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/22
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    症例は2歳3カ月,男児.硬貨を誤飲したため来院した.100円硬貨が食道入口部に存在し,把持鉗子による摘出が不能であった.胆道結石除去用バルーンカテーテルを硬貨の肛門側まで進め,バルーンを拡張した後にスコープごと引き抜き,硬貨の摘出に成功した.透視下に尿道バルーンカテーテルを用いて食道異物を摘出した報告はあるが,内視鏡下に胆道結石除去用バルーンカテーテルを食道異物の摘出に用いた報告はなかった.小児において食道入口部に存在する硬貨異物の頻度は高く,本法は内視鏡下にバルーンの位置と拡張が確認できるため,小児食道異物に対する有効な摘出方法の一つとなり得ると考えられた.

  • 友岡 文優, 北川 洸, 美登路 昭, 小堤 隆広, 依岡 伸幸, 松田 卓也, 藤永 幸久, 古川 政統, 西村 典久, 吉治 仁志
    2021 年 63 巻 3 号 p. 293-299
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/22
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    48歳男性.19歳時に十二指腸潰瘍のため幽門側胃切除術を施行された.その際に胆道損傷を来たし,術後に胆管空腸吻合術を追加で施行された.2019年に腹痛・発熱のため近医を受診し,腹部CTで肝内胆管に多数の結石を認め,急性胆管炎と診断された.当科に紹介となり,バルーン内視鏡を用いてERCPを試みたが,吻合部に到達不能であった.超音波内視鏡下肝管胃吻合術(EUS-guided hepaticogastrostomy;EUS-HGS)を施行し,片ピッグテイル型プラスチックステントを留置した.速やかに胆管炎は改善し,二期的な結石除去を企図したが,HGS2カ月後の胆管造影では結石はすべて消失していた.EUS-HGS施行後に肝内結石が自然排石した例はこれまでに報告がなく,貴重な症例と考えられる.

手技の解説
  • 矢野 智則, 竹澤 敬人, 三浦 義正
    2021 年 63 巻 3 号 p. 300-312
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/22
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    電子付録

    消化管出血に対する緊急内視鏡や,内視鏡治療中の出血では,視野確保が難しい.送気や吸引で視野が確保できない場合は,水を注入しての浸水観察が試みられるが,出血の勢いが強いと流れ出た血液と水が混ざり合って,濁った視野になる.水の代わりに透明なgelを注入するgel immersion endoscopyを用いれば,水や血液とすぐには混じり合わず,血液や凝血塊等を押しのけて透明な空間を作り出して視野確保でき,直視下で処置が可能になる.この方法のために開発した電解質を含まない専用gelを用いれば,gelの中でもモノポーラー高周波処置具が使用可能である.腸準備不良時の大腸内視鏡や,腸管内圧を低圧に保って内視鏡を行いたい場合など,様々な場面に応用できる.今後,送気と送水に続く第3の視野確保方法として,gel immersion endoscopyが普及していくことを期待している.

  • 安孫子 怜史, 小田 寿, 宮城島 拓人
    2021 年 63 巻 3 号 p. 313-318
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/22
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    近年,内視鏡治療後潰瘍に対して様々な縫縮法が報告されているが手技が煩雑であったり高価なデバイスが必要であるため,まだ定まったものはない.われわれはdouble-loop(D-L)clipsテクニックを用いた大腸ESD後潰瘍に対しての縫縮法を考案した.後出血(特に抗血栓薬内服患者)などのESD後偶発症予防において,内視鏡的縫縮術が欠かせない技術になるのではないか,と考えている.内視鏡的縫縮術の確立,普及が期待される.

資料
内視鏡室の紹介
最新文献紹介
  • 中村 昌太郎
    2021 年 63 巻 3 号 p. 338
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/22
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    【抄録】粘膜関連リンパ組織(mucosa-associated lymphoid tissue;MALT)リンパ腫の病態は,T細胞シグナル,辺縁帯B細胞の慢性抗原刺激およびnuclear factor-kappa B(NF-κB)シグナル経路の活性化に依存したリンパ腫細胞による動的過程として特徴づけられる.この概念は,慢性Helicobacter pylori関連胃炎と特異的T細胞による持続する自己抗原刺激に基づく胃MALTリンパ腫発生との強力な病因的関係に基づく.しかし,胃外のリンパ腫発生においては,別の病原微生物感染や自己免疫性疾患が病因となる可能性がある.このようなMALTリンパ腫細胞の腫瘍微小環境依存性を考慮すると,本症に対しては免疫調節薬が治療戦略として適していると考えられる.近年,免疫調節薬IMiDsであるサリドマイド(thalidomide),レナリドマイド(lenalidomide),マクロライド系抗菌薬などを含む薬剤の治療効果が評価されている.本稿の目的は,MALTリンパ腫に対する免疫調節薬治療の理論的根拠および本症患者に対する免疫調節薬治療と非化学療法治療の現況について考察することである.

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