光線力学療法(PDT:photodynamic therapy)は,腫瘍親和性光感受性物質(PS:photosensitizer)とPSの吸収波長に特化した励起レーザーを用いたがんに対する治療方法である.第1世代PSを用いたPDTは,1990年代に早期胃がん,表在性食道がんに対する治療として薬事承認されたが,4-6週間の遮光期間が必要なこと,ESDの開発によって活躍の場を失った.欧米では,バレット食道に対するアブレーション治療,進行食道がんや胆道がんの症状緩和目的治療として良好な治療成績の報告があるが,現在では薬剤を用いないラジオ波アブレーションなどの治療が主流である.近年開発された,遮光期間が短く日光過敏症が少なくなった第2世代PSを用いたPDTは,放射線治療後遺残再発食道がんに対する開発が進み,医師主導治験の良好な治療成績によって,2015年に薬事承認が得られた.第2世代PDTは少しずつ普及が進んでいるが,消化器がんでは再発食道がんにしか承認されておらず,対象となる症例は少ない.今後,PDTが消化器がんの治療において,その適応を拡大しさらに普及するためには解決すべき課題も多い.
カプセル内視鏡は低侵襲かつ簡便に消化管精査が可能であり,小腸疾患の診断に不可欠な検査となっている.また大腸カプセル内視鏡は,大腸内視鏡が困難な患者において,大腸腫瘍のスクリーニング検査の一翼を担っている.一方で,カプセル内視鏡の読影には多くの時間を要し業務負担となっている,画像診断には習熟が必要である,読影医が不足しているといった課題がある.これらの課題の解決策として,カプセル内視鏡読影支援ネットワークやカプセル内視鏡読影支援技師制度がある.カプセル内視鏡読影支援ネットワークは,連携した検査実施施設で行ったカプセル内視鏡画像を,読影支援施設にて遠隔読影を行うシステムであり,検査実施施設での読影の業務負担軽減や診断の標準化が可能となる.読影支援施設においては,多数のカプセル内視鏡画像を正確かつ迅速に読影することが求められ,カプセル内視鏡読影支援技師を含めた効率的な読影体制の整備と読影能の向上維持のための教育体制の整備が必要不可欠となる.本稿では,カプセル内視鏡読影支援センターの現状と課題について概説する.
症例は67歳女性.胃穹窿部に約3cm大の粘膜下腫瘍(submucosal tumor,SMT)を指摘され経過観察されていた.定期検査で増大傾向を認めたため,精査予定であったが,心窩部痛と黒色便を認めたため当科へ紹介され入院した.上部消化管内視鏡検査で,胃穹窿部SMTが十二指腸側に脱出している所見を認め,ball valve syndromeと診断した.内視鏡的整復が困難で開腹腫瘍切除術が施行された.病理検査は消化管間質腫瘍(gastrointestinal stromal tumor,GIST)であった.胃穹窿部GISTによるball valve syndromeは比較的稀であり,文献的考察を加え報告した.
症例は84歳,女性.発熱,上腹部痛,嘔吐を主訴に来院した.他院にて腹腔鏡下胆嚢摘出術および術後胆管狭窄に対する胆管空腸吻合術の既往があり,Roux-en-Y再建胆管空腸吻合部狭窄に伴う急性胆管炎の診断で入院した.絶食・補液・抗菌薬による保存的加療の後に,小腸内視鏡を用いたERCPを施行した.小腸内に膜様狭窄が多発しており,消化管拡張用バルーンカテーテルを用いて小腸狭窄部を拡張しながらスコープを進め,胆管空腸吻合部に到達した.吻合部は瘢痕狭窄を認め胆道拡張用バルーンで拡張した.その後は胆管炎の再発なく経過している.Roux-en-Y再建胆管空腸吻合部狭窄と非ステロイド性抗炎症薬(Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drugs:以下NSAIDs)に起因した小腸の膜様狭窄を合併する症例に対し,小腸内視鏡を用いて内視鏡治療を行った.
症例は49歳男性.健診のFDG-PET検査で直腸に集積を認め,便潜血も陽性であり,全大腸内視鏡検査を施行した.直腸に限局する多発顆粒状粘膜を認め,病理組織では,非特異的な炎症所見であった.無症状のため経過観察していたが,5カ月後に軟便と腹痛が出現した.再度の内視鏡検査で,直腸の多発細顆粒状粘膜に加え,直腸から脾彎曲部に連続する粗造粘膜及び虫垂開口部周囲にもびらんを認めた.病理組織では,腺管密度や杯細胞の数が減少し,多彩な炎症細胞浸潤をびまん性に認め,左側大腸炎型潰瘍性大腸炎と診断した.本症例は,潰瘍性大腸炎の初期病変からの悪化,口側伸展が観察された貴重な症例であり,鑑別診断を含めて報告する.
症例は65歳,男性.胆囊管癌に対して胆囊床肝切除,肝外胆管合併切除,Roux-en-Y再建術後に胆管・空腸吻合部の局所再発による閉塞性黄疸と挙上空腸閉塞に対してEUS-guided hepaticogastrostomyおよびEUS-guided transmural drainageを施行し,良好なドレナージが得られた.
癌再発による小腸閉塞に伴う病態は外科的介入による生存率やQOLの向上が得られることが困難な例が多く,可能であれば低侵襲な内瘻化が望ましい.本例はEUSガイド下ドレナージによりQOLの向上が得られた.今後,同様の症例に対して,処置具の適応拡大や専用処置具の開発が期待される.
【目的】立体感や距離感の認識における3D内視鏡の有用性を検討する.
【方法】12名の術者が30mm,50mm,100mmの距離からテーブルに立てた70mmの鍋ネジを把持鉗子で掴めるか最大5回まで繰り返した.①初回の成功率②5回以内の成功率を,2D内視鏡を施行した2D群と3D内視鏡を使用した3D群で比較検討した.
【結果】初回の成功率は,30mm(2D群8.3%,3D群50.0%),50mm(2D群0%,3D群54.5%),100mm(2D群0%,3D群36.4%)であった.5回以内の成功率は,30mm(2D群75.0%,3D群100%),50mm(2D群63.6%,3D群100%),100mm(2D群45.5%,3D群90.9%)であった.いずれも3D群で成功率は高い傾向であり,50mmの距離における初回成功率は3D群で有意に高かった(P<0.05).
【結論】3D内視鏡は立体感や距離感の認識において2D内視鏡より有用な可能性があると考えられた.
大腸におけるESDでは,大腸は腸管壁が薄いという解剖学的特徴があるため,他部位のESDに比べ安全性,特に穿孔に十分注意する必要がある.バイポーラナイフデバイスであるJet B-knifeⓇはジェット局注機能をもち,ナイフ根部で切開し,ナイフ先端部には電流を生じないように設計されている先端系ナイフである.このため穿孔のリスクが低く安全に切開剝離を施行可能としているが,その特性上,他の先端系ナイフとは多少異なる技術的側面および設定の特徴がある.本稿ではバイポーラデバイス止血鉗子であるTighturnⓇも含め,バイポーラデバイスの使用方法を,ジェネレーターの設定も含め概説する.
大腸EMRは外来で日常的に施行されている内視鏡手術であり,粘膜内(Tis)癌の治療にも有用である.EMRはESDに比べ,時間も費用も通電ダメージも患者にやさしいが,スネアリング時に正常粘膜が全周性に含まれたかどうかの確認と切除深度のコントロールが難しいという欠点がある.その手軽さ故に一度に多数の病変のEMRをすることも多いが,この欠点を踏まえて,一つ一つの病変に対して,スネア切除直後に潰瘍底と潰瘍辺縁の観察をしなければならない.まず潰瘍底の状態を見て,穿孔や出血・露出血管の有無を確認し,次に潰瘍辺縁を残存病変がないか拡大観察で確認することが有用で,わかりにくい時は画像強調や色素撒布も用いる.特に分割EMRの場合には辺縁のみならず分割の継ぎ目も丁寧に観察し,病変の遺残を認めた場合や疑わしい場合は追加治療を行う.後出血リスクのある潰瘍に対してはクリップ閉鎖などの後出血予防が必要であり,通常のクリップ閉鎖が困難な場合も種々の内視鏡的縫縮術が選択可能である.大腸EMR前だけでなく後にも十分な観察と必要な処置を加えることが,外来での安全で堅実な内視鏡治療を行うために必要である.
【目的】この研究の第一の目的は,嚥下困難感を訴える食道運動障害患者のEGDによる診断率を明らかにすることである.第二にその診断に有用なEGD所見を特定することである.
【方法】嚥下困難感患者380例を対象に,EGD施行後,高解像度食道内圧検査(high-resolution manometry:HRM)を行った.EGD所見は食道胃接合部通過時の抵抗,食道内残渣,食道拡張,食道痙攣を疑う収縮,非閉塞性収縮の5つの指標を用いて評価した.なお,HRM診断はシカゴ分類(v3.0)に基づいて行った.
【結果】食道運動障害患者の64.4%に上記のEGD所見のいずれかを認め,その所見は食道運動障害のタイプによりそれぞれ異なっていた.シカゴ分類(v3.0)のDisorders with EGJ outflow obstructionとMajor disorders of peristalsisでのEGD異常の割合は,HRM正常者に比べて有意に高かった.多変量解析の結果,食道胃接合部通過時の抵抗,食道内残渣,食道痙攣を疑う収縮,非閉塞性収縮が食道運動障害と有意に関連していることが判明した.これらのEGD所見を用いた食道運動障害の検出における感度,特異度,陽性的中率,陰性的中率は,それぞれ75.1%,86.6%,84.8%,77.8%であった.
【結語】Disorders with EGJ outflow obstructionやMajor disorders of peristalsisはEGDでスクリーニング可能である.いくつかの内視鏡所見の中で,食道胃接合部通過時の抵抗,食道内残渣,食道痙攣を疑う収縮,非閉塞性収縮は特に有用な所見と考えられた.
【背景と目的】膵神経内分泌腫瘍(Pancreatic neuroendocrine neoplasma:PanNENs)は,グレード1(G1)またはG2腫瘍であっても,予後不良となりうる.本研究の目的は造影超音波内視鏡検査(Contrast-enhanced harmonic endoscopic ultrasonography:CH-EUS)がPanNENsの予後を予測できるか評価することである.
【方法】本研究は,2011年12月から2016年2月の間に近畿大学にてCH-EUSを受け,外科切除または超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS-FNA)によりPanNENsと診断された連続47例を対象とした.対象者は,臨床的悪性度によって侵襲性と非侵襲性PanNENsに分類した.CH-EUSの侵襲性PanNENsの診断能,造影パターンと病理学的所見の対比,PanNENsの予後予測能について評価した.
【結果】侵襲性PanNENsは19例,非侵襲性PanNENsは28例であった.侵襲性PanNENsの内訳は,G1が3例,G2が4例,G3が3例,外分泌成分との混合腫瘍(Mixed neuroendocrine non-neuroendocrine neoplasm:MiNEN)が3例,神経内分泌細胞癌(Neuroendocrine carcinoma:NEC)6例である.CH-EUSにおけるhypo-enhancementは侵襲性PanNENsを示唆する所見であり,感度94.7%,特異度100%,陽性的中率100%,陰性的中率96.6%,正診率97.9%と造影CTに比べ有意に診断能が高かった(P<0.001).G1とG2のうち,CH-EUSでhypo-enhancementを呈した腫瘍は,hyper/isoenhancementとなった腫瘍に比べ,予後不良であった(P=0.0009).切除例36例の病理組織学的検討では,CH-EUSにてhypo-enhancementとなった部位は血管が少なく,繊維化の程度が高かった.
【結語】CH-EUSはPanNENsの予後予測に有用である可能性がある.