日本消化器内視鏡学会雑誌
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64 巻, 9 号
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総説
  • 柴垣 広太郎, 高橋 佑典, 石原 俊治
    2022 年 64 巻 9 号 p. 1533-1540
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/20
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    腺窩上皮型胃腫瘍は腺窩上皮細胞への分化を示す胃型腫瘍である.Helicobacter pyloriH. pylori)未感染胃に発生する場合は,発赤調で表面顆粒状の小隆起として認められることが多く,肉眼像から「ラズベリー様」と呼ばれる.胃体部および穹窿部が好発部位であり,ほとんどが5mm以下で発見される.Narrow band imaging拡大観察では乳頭状/脳回様構造を呈し,窩間部は広く,拡張した異常血管が視認されることが多い.組織学的には腺窩上皮細胞に類似した腫瘍細胞で構成される上皮内腫瘍であり,本邦では胃型腫瘍の潜在的悪性度を考慮されて癌と診断されることが多いが,非浸潤性の上皮内腫瘍であることからWHO分類(2019)ではfoveolar-type gastric adenomaである.内視鏡所見が類似した病変として,H. pylori未感染者の過形成性ポリープや過誤腫があるが,多くは内視鏡所見による鑑別が可能である.

  • 松本 和幸, 加藤 博也
    2022 年 64 巻 9 号 p. 1541-1549
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/20
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    膵神経内分泌腫瘍(pancreatic NEN:PNEN)に対する治療の基本は外科切除であるが,膵切除術は未だに周術期偶発症の高い手技であり,膵切除に伴う術後膵機能の低下も問題となる.そのため,腫瘍サイズが小さく,悪性度が低い腫瘍の治療法は議論が分かれており,手術治療に関しても術後の膵機能に配慮した術式選択が必要とされている.近年,主に腫瘍径2cm以内で悪性度の低いPNENに対して,超音波内視鏡ガイド下に腫瘍を穿刺し,エタノールを注入することで腫瘍を凝固壊死させるエタノール局注療法の報告があり,耐術能などが問題で外科切除ができない症例に対する低侵襲治療法の1つとして期待されている.本稿では,EUSガイド下エタノール局注療法の動物実験を含めた報告を紹介し,治療成績や現状の問題点について解説したい.

症例
手技の解説
  • 飯塚 敏郎
    2022 年 64 巻 9 号 p. 1579-1587
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/20
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    食道疾患に対するEUSは,治療方針決定の一助となるためその有用性は高い.診断には技術的要素が大きく関係するため,その精度を高めるためには統一した手技で安定的な検査を行う必要がある.ソフトバルーンを用いてのEUSとジェル充満下のEUSの手技はそれぞれ一長一短があるが,その特徴を理解したうえで実践することで治療方針の決定の一助となる.適応となる病変は食道粘膜下腫瘍と表在型食道癌であり,特に後者においては,T1bが疑われ相対的適応としての内視鏡治療を検討している場合,確実に深部断端陰性で切除が可能かどうかの判断には非常に有用である.ソフトバルーンでは圧排や腫瘍直下でのリンパ濾胞に伴う深読みのリスクがあり,微小浸潤を認識できないことによる浅読みの可能性がある.ジェル充満では安定してできる部位で確実に行うことが重要である.

  • 山内 康平, 島田 不律, 中村 昌太郎
    2022 年 64 巻 9 号 p. 1588-1595
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/20
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    経皮内視鏡的胃瘻造設術(percutaneous endoscopic gastrostomy:PEG)は経口摂取の困難な患者にとって有益な治療である一方,対象となる患者は全身状態が悪く,重篤な基礎疾患を有することがある.偶発症のない,安全なPEG造設を行うためには,PEG適応の判断を含めた十分な術前評価が重要である.加えて,術前評価で得られた情報を基に,造設方法の選択(Pull/Push法もしくはIntroducer法),周術期管理の方法を事前に検討しておく.基礎疾患として循環器疾患を有する患者は抗血栓薬を内服していることが多いため,出血予防のための処置を考慮する.神経疾患,慢性呼吸器疾患の患者は禁忌,注意とされる前処置薬の投与を避け,各病態に応じた酸素投与法の検討,鎮静薬,鎮痛薬の可否を判断する.また,帰室後も早期に異常を察知するためのモニタリングを継続することが望ましい.

    本稿ではPEGの手技の実際とともに,周術期リスクマネジメントに必要な評価項目について述べる.

資料
  • 池松 弘朗, 村野 竜朗, 新村 健介
    2022 年 64 巻 9 号 p. 1596-1606
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/20
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    早期大腸癌における深達度診断は,内視鏡的切除と外科的腸切除の治療選択のために非常に重要である.いくつかの画像診断の中で,われわれは拡大内視鏡を使用して粘膜表面層の所見を細かく観察することにより病変を診断する.色素を用いた拡大色素内視鏡検査は,pit構造を評価することを可能にする.拡大色素内視鏡検査によるpit pattern分類が提案され,現在大腸病変の標準的な診断基準として広く使用されている.一方,Narrow band imaging(NBI)に代表される画像強調内視鏡検査は,染色無しに表面構造および血管所見の視覚性を向上させるために開発された.日本の大腸内視鏡専門医によって行われた多施設共同研究により,拡大併用画像強調内視鏡を用いたThe Japan NBI Expert Team(JNET)分類が作成された.本総説では,色素拡大内視鏡と拡大併用画像強調内視鏡に着目して,pit pattern分類とJNET分類の概要を示し,関連した文献のレビューをすることにより,早期大腸病変の深達度診断の正解率について検討することを目的とした.どちらの分類も,90%近くの高い正診率であった.拡大併用画像強調内視鏡は,色素散布無しに病変を診断できるため,理想的なモダリティーである.しかし,JNET分類 Type 2B病変の診断能力は不十分であり,色素拡大内視鏡を加味する必要がある.各モダリティーの欠点を補うためにも,両方のモダリティーを適切に使用し病変を診断することにより,より正確な診断が可能となる.

内視鏡室の紹介
最新文献紹介
  • 貝瀬 満
    2022 年 64 巻 9 号 p. 1614
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/20
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    【背景】本研究はシングルカテーテル(Revita DMRTM)を用いたhydrothermal duodenal mucosal resurfacing(DMR)の安全性と有効性を検討する無作為化二重盲検対照比較優越性試験.2型糖尿病(T2D)の血糖コントロールと肝脂肪量に対する有効性を検討した.

    【デザイン】対象患者(HbA1c 59~86mmol/mol≒7.6~10.0%NGSP,24≦BMI≦40kg/m2,空腹時インスリン>48.6pmol/L,経口抗糖尿病薬1種類以上)を欧州とブラジルでの多施設で登録.主要評価項目は安全性と24週後HbA1c,12週後肝臓MRIプロトン密度ファットフラクション(MRI-PDFF).

    【結果】1)全体のITT解析(DMR n=56,sham n=52):24週後HbA1c変化量中央値(四分位範囲)は,DMR群-10.4(18.6)mmol/mol,sham群−7.1(16.4)mmol/mol(p=0.147).MRI-PDFF>5%以上の患者(DMR n=48,sham n=43)の12週間後肝脂肪はDMR群-5.4(5.6)%,sham群-2.9(6.2)%(p=0.096).2)欧州とブラジル間で異質性があり(p=0.063)地域別に層別化した.3)欧州のITT解析:24週後HbA1c変化量は,DMR群-6.6(17.5)mmol/mol,sham群-3.3(10.9)mmol/mol(p=0.033).12週後肝脂肪変化量はDMR群-5.4%(6.1)sham群-2.2%(4.3%)(p=0.035).4)ブラジルのITT解析:DMRはHbA1c減少効果の傾向があったが,肝脂肪の差はなかった.5)PP解析:空腹時血糖値≧10mmol/Lの患者は,DMR群でHbA1c減少が大きかった(p=0.002).6)ほとんどの有害事象は軽度で一過性であった.

    【結論】DMRは安全で,T2D特にFPG高値の患者で有益な代謝改善効果をもたらす.

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