腺窩上皮型胃腫瘍は腺窩上皮細胞への分化を示す胃型腫瘍である.Helicobacter pylori(H. pylori)未感染胃に発生する場合は,発赤調で表面顆粒状の小隆起として認められることが多く,肉眼像から「ラズベリー様」と呼ばれる.胃体部および穹窿部が好発部位であり,ほとんどが5mm以下で発見される.Narrow band imaging拡大観察では乳頭状/脳回様構造を呈し,窩間部は広く,拡張した異常血管が視認されることが多い.組織学的には腺窩上皮細胞に類似した腫瘍細胞で構成される上皮内腫瘍であり,本邦では胃型腫瘍の潜在的悪性度を考慮されて癌と診断されることが多いが,非浸潤性の上皮内腫瘍であることからWHO分類(2019)ではfoveolar-type gastric adenomaである.内視鏡所見が類似した病変として,H. pylori未感染者の過形成性ポリープや過誤腫があるが,多くは内視鏡所見による鑑別が可能である.
膵神経内分泌腫瘍(pancreatic NEN:PNEN)に対する治療の基本は外科切除であるが,膵切除術は未だに周術期偶発症の高い手技であり,膵切除に伴う術後膵機能の低下も問題となる.そのため,腫瘍サイズが小さく,悪性度が低い腫瘍の治療法は議論が分かれており,手術治療に関しても術後の膵機能に配慮した術式選択が必要とされている.近年,主に腫瘍径2cm以内で悪性度の低いPNENに対して,超音波内視鏡ガイド下に腫瘍を穿刺し,エタノールを注入することで腫瘍を凝固壊死させるエタノール局注療法の報告があり,耐術能などが問題で外科切除ができない症例に対する低侵襲治療法の1つとして期待されている.本稿では,EUSガイド下エタノール局注療法の動物実験を含めた報告を紹介し,治療成績や現状の問題点について解説したい.
症例は69歳女性.2005年からプロトンポンプ阻害薬を内服しており,2015年にHelicobacter pyloriを除菌した.2017年10月の上部消化管内視鏡検査で,胃内多発ポリープの1つから生検でGroup 4,胃癌疑いと診断された.同ポリープは経時的にサイズが増大し,頂部に不整陥凹を伴っていたため,腺癌の発生を疑って2018年1月にEMRを行った.切除病変は病理学的に非萎縮性胃粘膜に生じた胃底腺ポリープであったが,連続した腺窩上皮に高分化型腺癌が発生していた.今回われわれは胃底腺ポリープに腺癌が併存した貴重な1例を経験した.腺癌の併存が疑われる場合は慎重な経過観察や適切な治療を行う必要がある.
症例は81歳男性.上腹部痛および嘔吐で当院を受診され,腹部単純CT検査で胃の著明な拡張を認めた.胃管挿入による減圧で症状は改善し,EGDでは通過障害を来す器質的疾患を認めなかった.食事を摂取することにより同症状を繰り返し,腹部単純CT検査で胃軸捻転症と診断した.慢性閉塞性肺疾患による呼吸機能障害のため,標準治療とされている外科手術はリスクが高いと判断し,低侵襲の代替治療法として内視鏡的胃壁4点固定術を施行した.胃軸捻転症に対する内視鏡的胃壁固定術は報告が少なく固定法が確立されていないが,4点固定が再発予防に有用な可能性があると考えられた.
クエン酸マグネシウム(Mg)製剤による大腸内視鏡前処置後に著明な高Mg血症を生じた2例を経験した.両症例とも前処置前には腎障害を認めず,大腸癌による腸管切除歴を有していた.発症時,症例1は直腸吻合部付近の便塊貯留による糞便性腸閉塞を,症例2はS状結腸に吻合部狭窄による通過障害を認めていた.それぞれ全身管理のもとで用手摘便とバルーン拡張にて閉塞を解除することで病状の改善が得られた.潜在的に腸管通過障害を有する被験者では,腎機能に関わらずMg製剤を用いた前処置による高Mg血症の出現に十分注意する必要があると考えられた.
症例は73歳男性.主膵管内の膵石を伴うアルコール性慢性膵炎で定期通院中.自宅にて突然,心窩部痛を認め,改善がみられないため当科を受診した.CT検査でVater乳頭部に10mm大の膵石を認め,同部位を閉塞起点とした総胆管および主膵管の拡張を認め,膵石嵌頓による閉塞性黄疸および急性胆管炎,急性膵炎と診断した.緊急ERCPでは乳白色調の膵石が膵管開口部から露出しており,緊急で内視鏡的膵管口切開術およびバルーンカテーテルを用いた膵石除去術を施行したところ症状改善を得た.
食道疾患に対するEUSは,治療方針決定の一助となるためその有用性は高い.診断には技術的要素が大きく関係するため,その精度を高めるためには統一した手技で安定的な検査を行う必要がある.ソフトバルーンを用いてのEUSとジェル充満下のEUSの手技はそれぞれ一長一短があるが,その特徴を理解したうえで実践することで治療方針の決定の一助となる.適応となる病変は食道粘膜下腫瘍と表在型食道癌であり,特に後者においては,T1bが疑われ相対的適応としての内視鏡治療を検討している場合,確実に深部断端陰性で切除が可能かどうかの判断には非常に有用である.ソフトバルーンでは圧排や腫瘍直下でのリンパ濾胞に伴う深読みのリスクがあり,微小浸潤を認識できないことによる浅読みの可能性がある.ジェル充満では安定してできる部位で確実に行うことが重要である.
経皮内視鏡的胃瘻造設術(percutaneous endoscopic gastrostomy:PEG)は経口摂取の困難な患者にとって有益な治療である一方,対象となる患者は全身状態が悪く,重篤な基礎疾患を有することがある.偶発症のない,安全なPEG造設を行うためには,PEG適応の判断を含めた十分な術前評価が重要である.加えて,術前評価で得られた情報を基に,造設方法の選択(Pull/Push法もしくはIntroducer法),周術期管理の方法を事前に検討しておく.基礎疾患として循環器疾患を有する患者は抗血栓薬を内服していることが多いため,出血予防のための処置を考慮する.神経疾患,慢性呼吸器疾患の患者は禁忌,注意とされる前処置薬の投与を避け,各病態に応じた酸素投与法の検討,鎮静薬,鎮痛薬の可否を判断する.また,帰室後も早期に異常を察知するためのモニタリングを継続することが望ましい.
本稿ではPEGの手技の実際とともに,周術期リスクマネジメントに必要な評価項目について述べる.
早期大腸癌における深達度診断は,内視鏡的切除と外科的腸切除の治療選択のために非常に重要である.いくつかの画像診断の中で,われわれは拡大内視鏡を使用して粘膜表面層の所見を細かく観察することにより病変を診断する.色素を用いた拡大色素内視鏡検査は,pit構造を評価することを可能にする.拡大色素内視鏡検査によるpit pattern分類が提案され,現在大腸病変の標準的な診断基準として広く使用されている.一方,Narrow band imaging(NBI)に代表される画像強調内視鏡検査は,染色無しに表面構造および血管所見の視覚性を向上させるために開発された.日本の大腸内視鏡専門医によって行われた多施設共同研究により,拡大併用画像強調内視鏡を用いたThe Japan NBI Expert Team(JNET)分類が作成された.本総説では,色素拡大内視鏡と拡大併用画像強調内視鏡に着目して,pit pattern分類とJNET分類の概要を示し,関連した文献のレビューをすることにより,早期大腸病変の深達度診断の正解率について検討することを目的とした.どちらの分類も,90%近くの高い正診率であった.拡大併用画像強調内視鏡は,色素散布無しに病変を診断できるため,理想的なモダリティーである.しかし,JNET分類 Type 2B病変の診断能力は不十分であり,色素拡大内視鏡を加味する必要がある.各モダリティーの欠点を補うためにも,両方のモダリティーを適切に使用し病変を診断することにより,より正確な診断が可能となる.
【背景】本研究はシングルカテーテル(Revita DMRTM)を用いたhydrothermal duodenal mucosal resurfacing(DMR)の安全性と有効性を検討する無作為化二重盲検対照比較優越性試験.2型糖尿病(T2D)の血糖コントロールと肝脂肪量に対する有効性を検討した.
【デザイン】対象患者(HbA1c 59~86mmol/mol≒7.6~10.0%NGSP,24≦BMI≦40kg/m2,空腹時インスリン>48.6pmol/L,経口抗糖尿病薬1種類以上)を欧州とブラジルでの多施設で登録.主要評価項目は安全性と24週後HbA1c,12週後肝臓MRIプロトン密度ファットフラクション(MRI-PDFF).
【結果】1)全体のITT解析(DMR n=56,sham n=52):24週後HbA1c変化量中央値(四分位範囲)は,DMR群-10.4(18.6)mmol/mol,sham群−7.1(16.4)mmol/mol(p=0.147).MRI-PDFF>5%以上の患者(DMR n=48,sham n=43)の12週間後肝脂肪はDMR群-5.4(5.6)%,sham群-2.9(6.2)%(p=0.096).2)欧州とブラジル間で異質性があり(p=0.063)地域別に層別化した.3)欧州のITT解析:24週後HbA1c変化量は,DMR群-6.6(17.5)mmol/mol,sham群-3.3(10.9)mmol/mol(p=0.033).12週後肝脂肪変化量はDMR群-5.4%(6.1)sham群-2.2%(4.3%)(p=0.035).4)ブラジルのITT解析:DMRはHbA1c減少効果の傾向があったが,肝脂肪の差はなかった.5)PP解析:空腹時血糖値≧10mmol/Lの患者は,DMR群でHbA1c減少が大きかった(p=0.002).6)ほとんどの有害事象は軽度で一過性であった.
【結論】DMRは安全で,T2D特にFPG高値の患者で有益な代謝改善効果をもたらす.