日本消化器内視鏡学会雑誌
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66 巻, 12 号
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総説
  • 佐々木 隆
    2024 年 66 巻 12 号 p. 2639-2647
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/20
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    悪性胆道・十二指腸閉塞は病状が進行した状況で発症する複雑な病態であり,各病態に応じた治療戦略が必要となってくる.この病態で最も重要な点は,十二指腸胆道逆流をいかにコントロールするかである.胆道の側面からは,胆道ドレナージルートの変更や逆流防止弁付き胆管ステントの使用が挙げられる.胆道ドレナージルートの変更において,超音波内視鏡下胆道ドレナージの果たす役割は大きい.一方で十二指腸の側面からは,十二指腸がうっ滞しにくい十二指腸ステントの工夫もしくは食事が胆管ステント開口部を通らないようにするバイパス術が挙げられる.そのためにも,さらなる十二指腸ステントの改良とともに,超音波内視鏡下胃空腸バイパス術の導入に期待が寄せられる.超音波内視鏡を用いた技術の普及により,この病態のマネージメントは以前より改善しつつあるが,デバイスの改良などによってまだまだ発展の余地が大きく残っている領域である.

症例
  • 邑並 祐人, 山形 拓, 菅野 良秀, 原田 喜博, 嶋田 奉広, 清水 孟, 駒林 大智, 伊藤 啓
    2024 年 66 巻 12 号 p. 2648-2654
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/20
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    症例は91歳女性,繰り返す嘔吐を主訴に受診した.CTで,胃と横行結腸が食道裂孔から縦隔へ脱出し,牽引された十二指腸が屈曲し通過障害を生じたものと診断した.内視鏡検査の際に屈曲が解除され,食事可能となり退院したが,2カ月後に症状が再燃した.この時には横行結腸の脱出は無く,胃と十二指腸球部の脱出を認めた.ヘルニア内容が変化しているため強い癒着は無いと考え,内視鏡的整復を施行した.整復には胃壁を内視鏡で伸展させ,ループを形成しながら屈曲を超える必要があり,受動灣曲機能付きの有効長の長い下部消化管用スコープを用いた.内視鏡を十二指腸下行部まで挿入後,右トルクをかけながら引き抜くことで容易に整復が可能であった.その後12カ月再燃せず経過している.

  • 原 和也, 河原 史明, 坂根 達哉, 田中 彩香, 賀来 英俊, 山中 広大, 松浦 敬憲, 高橋 卓也, 西岡 千晴
    2024 年 66 巻 12 号 p. 2655-2661
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/20
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    62歳男性.全身倦怠感,体重減少を主訴に近医を受診し,黄疸を指摘され当院紹介となった.造影CTにて十二指腸乳頭部に乏血性の潰瘍性病変と総胆管拡張,多発肝腫瘍を認めた.また左肺上葉には60mm大の腫瘍を,右肺には小結節を複数個認めた.腫瘍性の閉塞性黄疸と考えERCPを施行したところ,十二指腸下行部に20mm大の粘膜下腫瘍様の立ち上がりを伴う潰瘍性病変を認めた.乳頭の正常構造は消失していたが,胆管口は残存しており内視鏡的胆管ドレナージを施行した.十二指腸腫瘍,肝腫瘍ならびに左肺腫瘍からの生検にていずれも扁平上皮様の腫瘍細胞を認めた.免疫染色ではCK5/6,p40,CK19が陽性であり低分化型扁平上皮癌の所見であった.十二指腸腫瘍,肝腫瘍,左肺腫瘍いずれもTTF-1が弱陽性であった.以上より肺低分化型扁平上皮癌を原発巣とした転移性十二指腸癌と診断した.肺癌として化学療法を開始し,縮小を認めた.原発性肺癌の転移性十二指腸癌による閉塞性黄疸は非常に稀な症例であり,貴重なため報告する.

  • 北澤 征三, 山田 雄太, 安藤 理孝, 佐々木 茂真, 兼平 卓, 渡部 通章
    2024 年 66 巻 12 号 p. 2662-2666
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/20
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    症例は79歳,男性.食道癌に対する化学放射線療法のため入院した.治療開始後発熱,血液検査で炎症反応の上昇を認めた.熱源精査目的のCT検査で回腸異物穿通による限局性腹膜炎と診断した.抗菌薬治療開始し,血液検査上改善を認めたが,CT検査で異物は残存していたため大腸内視鏡下異物除去術を施行した.除去術施行後化学療法を再開することができた.爪楊枝による回腸穿通に対して内視鏡的除去術を行い,手術を回避することができた.

  • 永田 大和, 堀内 英和, 秋葉 昭多郎, 奥本 和夫, 八戸 茂美
    2024 年 66 巻 12 号 p. 2667-2673
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/20
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    症例は72歳,女性,主訴は下痢,下腹部痛.腹部造影CT検査では回盲部内腔の腫瘤と口側の小腸の拡張を認め,腸重積の所見を呈していた.CSでは回盲弁から逸脱した表面平滑な腫瘤を認め,小腸粘膜をひきこんでいた.送気,圧迫で内視鏡的整復を試みたが困難であり,腹腔鏡補助下回盲部切除を施行,Diffuse large B-cell lymphomaの診断であった.術後化学療法が行われている.腸重積に対するCSによって,重積先進部病変の質的診断や粘膜虚血の評価ができ,外科手術の適応や術式,手術のタイミングを計る情報を得ることができる.症例によっては腫瘍による腸重積に対しても内視鏡的整復が可能なこともあるため,有用性を認識しておく必要がある.

注目の画像
手技の解説
  • 髙林 馨, 加藤 元彦, 金井 隆典
    2024 年 66 巻 12 号 p. 2676-2684
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/20
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    近年,本邦において潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis:UC)患者は増加の一途を辿っており,更に昨今の内科治療の進歩による手術回避症例,寛解維持症例が増え,長期にわたる管理が可能な患者数も増加している.長期管理症例に伴う重要な合併症としてUC関連腫瘍が挙げられる.UC関連腫瘍は進行した状態で発見された場合,通常型大腸癌よりも予後不良であることが知られており,一方で早期に診断され治療が実施されればその予後は改善されることも報告されており,このことからもUC患者に対するサーベイランス内視鏡の重要性はますます高くなっている.しかし,一方でUC関連腫瘍に対する内視鏡的存在診断に確立されたものがないのも現状である.UC関連腫瘍の拾い上げにはそのrisk因子,検査時期や間隔,好発部位,内視鏡像の特徴,観察法,散発性腫瘍との相違点など様々な特徴を理解した上での検査実施が必要となり,今回は実際に当院で実施しているサーベイランス法に基づきその現状に関して述べた.

  • 松本 和幸, 加藤 博也, 大塚 基之
    2024 年 66 巻 12 号 p. 2685-2693
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/20
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    電子付録

    悪性肝門部領域胆管狭窄に対する金属ステントを用いたマルチステンティングは,主にStent-in-stent(SIS)法とSide-by-side(SBS)法で行われている.文献的には手技成功率,臨床的改善率,ステント開存期間,内視鏡的リインターベンション成功率ともに両手法間で差異はないが,SBS法では金属ステントを横並びで留置するため,胆管の過拡張に伴う偶発症に注意する必要があり,SIS法ではメッシュが重なるためリインターベンションに難渋する場合がある.マルチステンティングの成功には肝門部領域胆管の解剖の理解と,ステントを留置する順番など技術的なコツを知っておくことが重要である.さらに,使用するデバイスの特性を理解することで,マルチステンティング後のリインターベンションも十分対応可能である.本稿では,悪性肝門部領域胆管狭窄に対する金属ステントを用いたマルチステンティングの手技の実際について,リインターベンションも含め解説する.

資料
  • 尾形 洋平, 八田 和久, 小池 智幸, 髙橋 壮, 松橋 保, 及川 智之, 岩井 渉, 阿曽沼 祥, 大方 英樹, 大矢内 幹, 伊藤 ...
    2024 年 66 巻 12 号 p. 2694-2705
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/20
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    電子付録

    【目的】Blue light imaging(BLI)とlinked color imaging(LCI)は,従来の白色光観察よりも食道扁平上皮癌の検出に優れている.そこで,食道扁平上皮癌スクリーニングにおける,それぞれの診断能を比較した.

    【方法】本研究は,オープンラベルのランダム化比較試験で,7施設で実施された.食道扁平上皮癌の高リスク患者を,BLI先行群(BLIに続いてLCI)とLCI先行群(LCIに続いてBLI)にランダムに割付けした.主要評価項目は,先行観察モードにおける食道扁平上皮癌の検出率で,主な副次評価項目は,先行観察モードにおける見逃し率であった.

    【結果】合計699名の患者が登録された.BLI群とLCI群での食道扁平上皮癌の検出率に有意差は認めなかったが[4.0%(14/351)vs. 4.9%(17/348);p=0.565],BLI群における食道扁平上皮癌患者数は少ない傾向にあった(19例 vs. 30例).一方,BLI群における食道扁平上皮癌の見逃し率は低く[26.3%(5/ 19)vs. 63.3%(19/30);p=0.012],また,BLIで見逃されLCIで検出された食道扁平上皮癌は認められなかった.感度はBLIのほうが高かったが(75.0% vs. 47.6%;p=0.042),陽性的中率はBLIのほうが低い傾向にあった(28.8% vs. 45.5%;p=0.092).

    【結語】BLI・LCI間で食道扁平上皮癌の検出率に有意な差はなかった.BLIはLCIに比して食道扁平上皮癌の診断能に優れている可能性はあるが,BLIがLCIよりも優れているかどうかはまだ明確ではなく,さらなる大規模な研究が必要である.

    Clinical trial number:Japan Registry of Clinical Trials(jRCT1022190018-1)

内視鏡室の紹介
最新文献紹介
  • 木暮 宏史
    2024 年 66 巻 12 号 p. 2713
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/20
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    【背景と目的】膵囊胞性腫瘍(pancreatic cystic tumor;PCT)に対する超音波内視鏡ガイド下アブレーション(endoscopic ultrasound–guided pancreatic cyst ablation;EUS-PCA)は,選択された症例において外科手術の代替治療として実施されている.本研究は,PCTに対するEUS-PCAと手術の長期成績を直接比較することを目的とした.

    【方法】2004年1月から2019年7月までの期間にEUS-PCAまたは手術を受けた単房性または6房以内の寡房性のPCT患者を,PCTデータベースから抽出した.潜在的な交絡因子に基づき,1対1の傾向スコアマッチングを行った.主要評価項目は長期合併症とし,副次評価項目として早期(14日以内)および後期(14日超)の重大な有害事象(major adverse events;MAE),糖尿病の発症,再入院,在院日数,治療効果を評価した.

    【結果】傾向スコアマッチングの結果,計620人の患者(EUS-PCA群310人,手術群310人)が選択された.EUS-PCA群は,10年間の累積長期合併症率が手術群に比べて有意に低かった(1.6%対33.5%,P=.001).また,早期MAE(1.0%対8.7%,P=.001),後期MAE(0.3%対5.5%,P=.001),再入院率(1.0%対15.2%,P=.001)もEUS-PCA群で低かった.さらに,EUS-PCA群の在院日数は短く(3.5日対10.3日,P=.001),糖尿病発症率も低かった(2.2%対22.8%,P=.001).一方,手術群では完全治癒率が高く(76.5%対100%,P=.001),再発率は低かった(4.6%対0.3%,P=.001).

    【結論】選択されたPCT患者において,EUS-PCAは外科手術に比べ,長期的な安全性および膵機能の保持に優れていることが示された.

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