日本消化器内視鏡学会雑誌
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66 巻, 7 号
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総説
症例
  • 倉橋 知英, 山田 拓哉, 早田 菜保子, 岡本 明之, 青地 一樹, 芦田 宗宏, 楠本 侑弘, 平尾 元宏, 法水 淳, 平松 直樹
    2024 年66 巻7 号 p. 1458-1464
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/07/22
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    66歳女性.ふらつき,腹痛,黒色便の精査加療目的で当科に紹介となった.EGD施行時,送気による胃壁伸展は不良で,胃体中部小彎に約8cm大の潰瘍性病変を認めた.潰瘍底にKerckring襞を有する腸管開口部が見られ,内視鏡下X線造影検査で上部空腸と胃との交通を認め,胃空腸瘻合併胃潰瘍と診断した.潰瘍からの生検で悪性所見を認めず,非ステロイド性抗炎症薬(Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drugs)潰瘍もしくはヘリコバクター・ピロリ菌(Helicobacter pylori)感染による胃潰瘍と診断した.保存的治療で潰瘍は瘢痕化し,胃空腸瘻のみ残存したが,潰瘍の再発や症状の出現はなく経過している.送気による胃壁伸展が不良な巨大潰瘍性病変を認めた場合は,胃空腸瘻の存在を念頭におく必要がある.

  • 金子 由佳, 横堀 将一, 金城 美幸, 渡辺 秀樹
    2024 年66 巻7 号 p. 1465-1471
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/07/22
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    82歳男性.32歳時に胃潰瘍に対して,幽門側胃切除術ならびにBillrothⅡ法再建が施行された.右上腹部痛を主訴に受診し,CTならびにEGDで残胃と空腸の吻合部の腫瘤と輸入脚の拡張を認め,吻合部胃癌による悪性輸入脚閉塞症と診断された.内視鏡的イレウス管挿入術で輸入脚の拡張を改善後,吻合部胃癌による狭窄部にプラスチックステントを留置した.プラスチックステントの留置から胃癌により患者が亡くなる2カ月間に,輸入脚閉塞症の再燃はなかった.吻合部胃癌による悪性輸入脚閉塞症に対して,内視鏡的プラスチックステント留置術が有効であった症例を経験したため報告する.

  • 山本 嘉太郎, 今西 みゆき, 河合 淳一, 中嶋 紀元, 中沢 啓, 東野 健, 新田 敏勝, 芥川 寛, 廣瀬 善信, 西川 浩樹
    2024 年66 巻7 号 p. 1472-1477
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/07/22
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    症例は74歳,男性.慢性膵炎に対する経過観察の腹部造影CTで直腸に隆起性病変が指摘された.CSを行うと,直腸にクッションサイン陽性で浮腫状の隆起性病変とS状結腸にスコープの通過が困難な狭窄を認めた.透視下でCSを行ったが,狭窄より口側の造影が困難であった.カテーテル下にガイドワイヤーを狭窄より口側に進めると,直腸の隆起性病変と交通がありS状結腸直腸瘻と診断した.その後,腹腔鏡下低位前方切除術を行ったが,直腸の隆起性病変は認めなかった.切除標本でS状結腸に多発の憩室を認め,病理診断は憩室炎が原因で形成されたS状結腸直腸瘻であった.直腸の隆起性病変はその経過で一時的にみられた変化と考えられた.

  • 早川 宇宙, 山口 晃弘, 壽美 竜太郎, 白川 貴大, 鍛治 諒介, 伊倉 顕彦, 高城 健, 倉持 みずき, 細田 泰雄
    2024 年66 巻7 号 p. 1478-1484
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/07/22
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    症例は22歳男性.右上腹部痛を主訴に来院した.CTにて十二指腸に胆管を圧排する約60mm大の囊胞性腫瘤を認めた.胆管炎をきたしていたことから超音波内視鏡下に穿刺を行い囊胞内に内視鏡的経鼻胆道ドレナージチューブを留置し胆管炎は改善した.後日側視鏡にて再検し,洗浄にて胆石を排出,超音波内視鏡検査および内腔からの生検結果より十二指腸重複症と診断した.その後,ERCPにて総胆管が内腔と直接交通する十二指腸重複症と診断し,膵炎や消化管出血,鬱滞による悪性化の可能性は低いと考え経過観察の方針とした.

Video Communication
手技の解説
  • 島村 勇人, 鬼丸 学, 井上 晴洋
    2024 年66 巻7 号 p. 1486-1494
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/07/22
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    食道アカラシアに対する経口内視鏡的筋層切開術(Per-oral endoscopic myotomy:POEM)の開発により,粘膜下層トンネルを介して深部の筋層に安全にアプローチできることが確認された.これにより,従来は外科手術によってのみ可能であった粘膜下層以深での内視鏡処置が可能となった.その結果,治療内視鏡の分野において「粘膜下層内視鏡(Submucosal endoscopy)」と呼ばれる新しい診断・治療方法が手技的に確立された.このSubmucosal endoscopyは,粘膜下層トンネルを経由した内視鏡手技全般を包括する概念であり,内視鏡を用いて,粘膜下層,筋層,さらに深部の体腔内に対して安全にアプローチする治療法の発展に寄与した.その応用の一つが,粘膜下層トンネル内で粘膜下腫瘍核出を内視鏡的に行う経口内視鏡的腫瘍核出術(Per-oral endoscopic tumor resection:POET)である.本稿ではPOETの適応と手技について詳述する.

  • 加藤 恒孝, 引地 拓人, 中村 純
    2024 年66 巻7 号 p. 1495-1502
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/07/22
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    悪性食道狭窄に伴う食道通過障害や嚥下困難感は,患者の栄養状態や生活の質のみならず,生命予後にも影響する.そのような患者の中で,切除不能な場合には,金属ステント留置術が選択肢の1つとなる.ステント留置で通過障害が改善し,栄養状態が改善すれば,化学療法を施行できることで生命予後が延長する可能性がある.しかし,狭窄が軽度である患者や食道胃接合部に病変がある患者では,ステントが胃内に逸脱することが危惧される.したがって,ステント逸脱リスクがある悪性食道狭窄の患者では,逸脱の予防策を考慮したステント留置術が必要である.本稿では,強い組織把持力を有するover-the-scope clipを使用し,食道ステントと食道壁を固定することで,ステント逸脱を予防する内視鏡的食道ステント留置術の手順ならびに手技のコツを解説する.

資料
  • 河村 卓二, 関口 正宇, 高丸 博之, 水口 康彦, 堀口 剛, 加藤 正之, 小林 清典, 佐田 美和, 尾田 恭, 横山 顕礼, 内海 ...
    2024 年66 巻7 号 p. 1503-1513
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/07/22
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    電子付録

    【目的】大腸内視鏡検査報告書から作成したデータベースを用いて,内視鏡的に腺腫と診断された病変の検出割合(“内視鏡的”腺腫検出割合[adenoma detection rate:ADR])を算出し,“病理学的”ADRの代替指標として使用できるかどうかを検討すること.

    【方法】日本の8つの内視鏡センターで2010年から2020年に実施された大腸内視鏡検査の病変ごとのデータベースと,対応する病理データベースを統合した.検出されたポリープ,内視鏡的腺腫と病理的腺腫の数の違い,およびこれらの違いが何に起因するかを検討した.ポリープ検出割合(polyp detection rate:PDR),内視鏡的ADRおよび病理学的ADR,ならびに各内視鏡医における病理学的ADRとPDRまたは内視鏡的ADRとの相関係数を算出した.

    【結果】全体で129,065件の大腸内視鏡検査報告が解析された.合計146,854個のポリープのうち,内視鏡的腺腫(117,359個)が病理学的腺腫(70,076個)よりも多く観察された.これは誤診のためではなく,主に腺腫がその場で切除されなかったためであった.解析した全患者において,PDR,内視鏡的ADRおよび病理学的ADRはそれぞれ56.4%(95%信頼区間[CI]:56.2-56.7),48.0%(95%CI:47.7-48.3)および32.7%(95%CI:32.5-33.0)であった.各内視鏡医による内視鏡的ADRと病理学的ADRは,腺腫が検査時に切除される病院において高い相関を示した.

    【結論】内視鏡的に診断された病変を「腺腫」として内視鏡検査報告書に適切に記載することにより,内視鏡的ADRを病理学的ADRの大腸内視鏡検査の質の指標として代用できる可能性がある(UMIN 000040690).

ガイドライン
  • 藤城 光弘, 井口 幹崇, 小野 敏嗣, 舩坂 好平, 坂田 資尚, 三上 達也, 片岡 幹統, 島岡 俊治, 道田 知樹, 五十嵐 良典, ...
    2024 年66 巻7 号 p. 1515-1538
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/07/22
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    日本消化器内視鏡学会は,エビデンスに基づく内視鏡診療ガイドライン作成作業の一環として,非静脈瘤性上部消化管出血における内視鏡診療ガイドラインを作成した.非静脈瘤性上部消化管出血の主因は出血性胃十二指腸(消化性)潰瘍であり,ヘリコバクター・ピロリ菌に起因するものが低下傾向にある一方で,超高齢社会の到来とともに,アスピリンなどによる薬剤に起因するものが増加している.非静脈瘤性上部消化管出血に対する止血術の第一選択は内視鏡的止血術であり,様々な方法が考案されている.内視鏡的止血術前後には,患者の重症度評価に基づいた的確な管理でバイタルサインを安定化するとともに,酸分泌抑制剤の投与を行うことが推奨されている.本ガイドラインでは,上部消化管出血の評価と初期治療,上部消化管出血を消化性潰瘍とそれ以外に大別し,それぞれについて内視鏡的止血法の選択,内視鏡的止血後の管理を記載した.文献的裏付けがあるものについてはステートメントを作成し,エビデンスレベルと推奨度を記載した.第1版発行後,新たなエビデンスの集積がみられるものの,この分野においては依然エビデンスレベルが低く,推奨度が低いものが多いのが現状である.

内視鏡室の紹介
最新文献紹介
  • 貝瀬 満
    2024 年66 巻7 号 p. 1547
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/07/22
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    【目的と方法】白色光内視鏡(WLE)と非拡大NBIで表在性食道扁平上皮癌(SCC)と前癌病変(IEN)を検出する人工知能(AI)システムを用いて,中国12病院で多施設ランダム化比較試験を行った.対象はスクリーニング,消化器症状,サーベイランスのために上部消化管内視鏡(EGD)を受けた患者で,AI優先群とルーチン優先群に無作為割り付された(1:1).患者は同日に2回EGDを受け,AI優先群はAI補助あり→補助なし,ルーチン優先群は補助なし→補助ありで行った.観察は挿入時WLE,抜去時非拡大NBI.主要アウトカムはSCC/IEN見逃し率(病変ごと,患者ごと,per-protocol).

    【結果】AI優先群5,934例,ルーチン優先群5,912例が登録され,5,865例と5,850例が解析された.病変当たりの見逃し率はAI優先群で1.7%(2/118,95%CI;0.0-4.0),ルーチン優先群6.7%(6/90,95%CI;1.5-11.8)であった(リスク比0.25,95%CI;0.06-1.08,p=0.079).1人当たりの見逃し率はAI群で1.9%(2/106,95%CI;0.0-4.5),ルーチン優先群で5.1%(4/79,95%CI;0.2-9.9)(リスク比0.37,95%CI;0.08-1.71,p=0.40).

    【解釈】SCC/IENの病変当たり・患者当たりの見逃し率に対するAI支援効果は統計学的には有意でなかったが,負の効果がなく実質的な利益が得られている.実臨床におけるこのAIシステムの有効性と費用対効果はさらに評価が必要である.

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