Gastric adenocarcinoma and proximal polyposis of the stomach(GAPPS)は胃底腺ポリポーシスを背景として胃癌を発症する遺伝性疾患であり,APC遺伝子のpromotor 1B領域の病的バリアントが報告されている.一方,報告数は未だ絶対的少数のいわゆる希少疾患であるため認知度は低く,その自然史や長期予後を含めた詳細な検討も十分ではない.こうした現状を踏まえ本稿ではGAPPSの疾患概念と疫学,特に内視鏡画像所見及び病理組織学的特徴を中心に解説し,さらには日常診療における現状と今後の課題についても言及する.
炎症性腸疾患を含む腸管の炎症性疾患の内視鏡診断は腫瘍の診断よりも難しいことが多い.それは,炎症の診断では病理が絶対診断ではないこと,腫瘍に比べ原因も内視鏡像も多様であることに由来する.炎症では非典型例も多く,内視鏡像のみによる診断ではなく,その患者の病歴なども十分に考慮したうえで診断する必要があり,内視鏡を挿入する前から鑑別診断を考えておくという心構えが必要である.潰瘍性大腸炎,クローン病とも典型例での診断はさほど難しくはないが,正確な診断には非典型例についての知識も必要で,たとえば潰瘍性大腸炎で直腸に内視鏡的炎症がないことがしばしばあることや,クローン病でもびまん性炎症をきたすことがあることなどは知っておきたい.炎症性腸疾患との鑑別が重要な疾患としては,感染性腸炎,薬剤性腸炎,好酸球性胃腸炎などが挙げられるが,いずれも内視鏡像以上に詳細な病歴の聴取が重要であることを認識すべきである.
症例は75歳女性.主訴は心窩部不快感で,十二指腸に落下した胃石と診断された.内視鏡的除去は困難であり,イレウス管を用いて胃石の小腸への落下を防止しつつコーラ溶解療法を行い,軟化させたのちに内視鏡的に破砕,摘出することに成功した.胃石が小腸へ落下すると摘出のために手術が必要となる場合が多いが,われわれの報告した手法を用いることで,より安全・確実に十二指腸胃石の除去が可能となることが期待される.
症例は60歳女性.スプーンを誤飲し,受診した.上部消化管内視鏡検査でスプーン先端の皿部分が十二指腸に嵌入していた.汎用内視鏡とスパイラルスネアを用いて,スプーンの胃内牽引を試みたが難しく,前庭部大彎を用手圧迫したところ成功した.食道内へ牽引する際に,スプーンが食道胃接合部に引っ掛かったため,患者を仰臥位から左側臥位に変換すると牽引できた.十二指腸に嵌入した金属スプーンを2チャンネル内視鏡で回収した報告は散見されるが,今回,われわれは工夫することで汎用内視鏡での回収に成功した.スプーンのような先端が鋭利でない消化管異物回収において,スパイラルスネア,用手圧迫,体位変換が有用である可能性が示唆された.
症例は73歳,男性.以前よりアルコール性肝硬変で当院を定期受診していたが,数日前からの腹痛と嘔吐を主訴に今回受診した.腹部CT検査では便塊により上行結腸は閉塞しており,腸閉塞の診断で入院した.大腸内視鏡検査では上行結腸に指状のポリープが密集・融合し,便塊を取り込んで腫瘤を形成していた.腫瘤は正常の上皮で覆われていたが,腸閉塞の原因となっており,また腫瘍性病変の可能性も除外しきれなかったため腹腔鏡下結腸右半切除術を施行した.最終診断はfiliform polyposisであった.
消化管憩室は主に大腸に見られ小腸に発生する事は稀とされている.近年,小腸精査をする機会が増加しているとは言え,小腸憩室が憩室炎や憩室出血に至る事は少なく,発見される頻度は多くない.今回,回腸憩室出血の2例を認め,1例は内視鏡的に止血可能で,1例は血管内治療で止血しえた.今回,比較的稀である回腸憩室出血の2例を同年に経験した.各々の症例の特徴を振り返り評価し報告する.
本邦では小児消化器病医が不足しているため,小児患者の消化器内視鏡検査は消化器内視鏡医が担当することが多い.市中病院では異物除去など,消化器内視鏡医が内視鏡検査の必要性に迫られることが多いが,内視鏡器具の選択・麻酔管理・家族への説明など,成人に対する内視鏡検査とは異なった対応・診療姿勢が求められる.さらに異物除去以外にも,小児特有の疾患に対する知識をもって内視鏡検査に臨むことが要求される.小児内視鏡検査を消化器内視鏡医が行う際には,小児科医との間で十分な連携・情報共有を行うことが重要であるが,将来的にはより多くの小児内視鏡医の育成が期待される.
膵管癒合不全は発生過程において,腹側膵原基と背側膵原基の主導管の癒合が不十分となる奇形である.近年の画像診断技術の進歩などもあり,偶発的に発見される機会も増えてきている.本邦においても決して稀な病態ではないが,副乳頭アプローチによる診断や治療の適応については慎重に判断する必要がある.本稿では膵管癒合不全症例に対する内視鏡診断・治療の適応とコツについて,当院での手技の実際に文献的考察を加え,解説した.
膵周囲液体貯留は,急性膵炎後局所合併症として発生することが多く,臨床経過が悪い場合には致死的となる可能性もある病態であり,症候性の被包化膵壊死や膵仮性囊胞ではインターベンションが必要となる.壊死性膵炎とその後の被包化壊死に対する治療では,外科的治療や経皮的治療から,近年では超音波内視鏡下ドレナージやStep-up approachとしての内視鏡的ネクロセクトミーがより低侵襲であることから選択されるようになっている.Lumen-apposing metal stentをはじめとした治療機器の開発もあり膵周囲液体貯留に対する内視鏡的治療はある程度確立されたものの,ネクロセクトミーの開始あるいは終了時期,ステントの抜去時期を含む様々な治療時期など標準化されていない点が多く残されている.また抗菌薬,栄養療法などの支持療法についてのエビデンスも増えつつあるが,同じく適切な治療時期に関するデータは限られている.本総説では,インターベンション・支持療法の両面からその適応と治療タイミングの現在のエビデンスを提示するとともに,今後検討が必要な課題についても概説する.
日本消化器内視鏡学会は,「Minds診療ガイドライン作成マニュアル2020 ver. 3.0」に従い,EBMに基づいた「EUS-FNAガイドライン」を作成した.EUS-FNAは,優れた病変描出能を有するEUSの技術を応用し,経消化管的に超音波で病変を確認しながら穿刺により病理検体を採取する手技であり,本邦では2010年の保険収載以降,広く施行されている.執筆はCQ(clinical question)形式とし,必要に応じてBQ(background question)・FRQ(future research question)を設けた.なお,一部のCQにおいては,レベルの高いエビデンスが少ないため,専門家のコンセンサスを重視せざるを得なかった.本ガイドラインは,EUS-FNAの概略,適応・偶発症,診断能,手技の4項目を柱に構築し,現時点での指針とした.
【背景と目的】ダブルバルーン内視鏡(DBE;double-balloon endoscopy)はクローン病(CD;Crohn’s disease)の診断に広く用いられている.しかし,内視鏡医が病変を正確に指摘できない場合,CD診断が困難になることがある.また,内視鏡医の主観によりCDの評価が不正確になることもある.本研究では,人工知能(AI;artificial intelligence)を用いて小腸CDを正確に検出し,客観的に評価することで,より精緻な病態把握を行うことを目的とした.
【方法】2018年1月から2022年12月までに628名の患者から28,155枚の小腸DBE画像を収集した.4名の消化器内科専門医が画像にラベル付けを行い,少なくとも2名の内視鏡医が同意のうえで最終判定を行った.最先端のディープラーニングモデルであるEfficientNet-b5によって学習させ,CD病変の検出とCD潰瘍の評価を行った.検出には潰瘍,非炎症性狭窄,炎症性狭窄の病変が含まれた.潰瘍の評価には,潰瘍表面,潰瘍サイズ,潰瘍の深さが含まれた.AIモデルと内視鏡医との精度比較が行われた.
【結果】EfficientNet-b5は,潰瘍,非炎症性狭窄,炎症性狭窄の検出において,それぞれ96.3%(95%信頼区間[CI],95.7%-96.7%),95.7%(95%CI,95.1%-96.2%),96.7%(95%CI,96.2%-97.2%)という高い精度を示した.潰瘍のグレードにおいて,EfficientNet-b5は潰瘍表面の評価に87.3%(95%CI,84.6%-89.6%),潰瘍サイズの評価に87.8%(95%CI,85.0%-90.2%),潰瘍の深さの評価に85.2%(95%CI,83.2%-87.0%)の平均精度を示した.
【結論】EfficientNet-b5は,CD病変の検出とCD潰瘍自体の評価において高い精度を達成した.このAIモデルは,専門内視鏡医レベルの精度と小腸CDの客観的評価を提供し,治療ストラテジーを最適化することができる.