潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis:UC)と鑑別が必要なカンピロバクター腸炎,サルモネラ腸炎の,クローン病(Crohnʼs disease:CD)と鑑別が必要な腸結核とエルシニア腸炎の,UC・CDと鑑別が必要なアメーバ性大腸炎の内視鏡診断ついて述べた.炎症性腸疾患(Inflammatory bowel disease:IBD)と感染性腸炎の鑑別が重要なのは,もし感染性腸炎に免疫抑制薬が投与されると増悪する可能性があるからである.また,感染性腸炎は抗菌薬で治癒する疾患であり,もしIBDと誤診されると,長期に薬物治療を受け続ける可能性がある.誤診を防止するためには,UCやCDと診断した場合には,それぞれに類似した感染性腸炎を把握しておき,必ずそれらを除外する必要がある.診断は内視鏡像で感染性腸炎を疑うことができるかが最も重要である.疑えればそれぞれの感染性腸炎特有の検査を行うことで確定診断に迫ることができるからである.
膵臓癌は予後が極めて不良な悪性腫瘍であり,その早期発見は生命予後を改善する上で重要な課題である.本稿では予後を考慮し,前癌病変とされるHigh-grade Pancreatic Intraepithelial Neoplasia及び浸潤径10mm以下膵癌,所謂早期膵癌の診断における画像診断及び内視鏡的診断の有用性について概説した.特に,主膵管狭窄・拡張・口径不同を含む膵管不整,分枝膵管拡張,限局性膵実質萎縮,膵管周囲低エコー所見などの間接画像所見が,明らかな腫瘤を伴わない早期膵癌の拾い上げにおいて有用であること,これらの所見の内視鏡検査(EUSや内視鏡的逆行性膵管造影)での指摘可能性,早期膵癌に対する超音波内視鏡下組織採取と経鼻的膵管ドレナージチューブを用いた膵液細胞診による細胞・病理学的確定診断の可能性など,早期膵癌に対する内視鏡検査の現状と将来展望について概説する.
症例は67歳男性.健診でEGDを施行し,十二指腸に異物を認め紹介となった.前医の情報では金属片が疑われていたが,CTでは明らかな異物は描出されなかった.EGDを再検すると異物はバッグクロージャーと判明し,下十二指腸角の腸管壁に瘻孔を形成し固着していた.早期脱落の可能性は低いと判断して当日の摘出は断念し,体外でバッグクロージャーに対して内視鏡器具を用いた変形や破損の実験を行い,治療戦略を検討した.初診より2週間後にEGDを再検し,フードと把持鉗子を用いてバッグクロージャーを変形させることで有害事象なく摘出に成功した.粘膜に瘻孔を形成して固着したバッグクロージャーを内視鏡的に摘出しえた症例は稀と考え報告する.
症例は66歳男性.骨髄異形成症候群に対しヒト白血球抗原(human leukocyte antigen:HLA)不一致の同種臍帯血移植を行い,22日後に生着が確認された.3カ月後に下痢,発熱を認めた.全消化管の内視鏡検査で胃噴門部に竹の節様外観,小腸にびらん,S状結腸に縦走潰瘍・敷石状粘膜を認め,クローン病と診断された.治療として栄養療法とベドリズマブを開始し,症状は改善したが,内視鏡的に軽度の炎症が残存していた.12カ月後に原病再発を認め,原疾患に対する治療を開始したところ著明な白血球減少を認め,クローン病は臨床的寛解となったことからベドリズマブは中止とした.治療開始5カ月後のCSでは粘膜治癒が確認できた.今回,骨髄異形成症候群にクローン病を合併した1例を経験した.
症例は76歳女性.近医でCSが施行され,S状結腸に巨大な有茎性ポリープを指摘された.当院で行ったCS・CT画像より腸重積の危険性を有する大腸脂肪腫と診断し,肛門から腫瘤が脱出するという自覚症状もあったことから,切除適応と判断した.腫瘍が大きく可動性もあったため筋層牽引を予測し,手技の安定性と安全性を考慮した上でESDを行った.ESDの術中所見より一部筋層牽引を認めたが,穿孔なく断端陰性で切除し得た.切除標本は60×48×55mm,核異型のない成熟脂肪組織で形成された脂肪腫であった.巨大な脂肪腫に対し,スネアでの絞扼や切離が困難な場合もある.また,本症例のように筋層牽引による穿孔リスクの懸念がある場合には,ESDでの切除が選択肢となり得る.
光線力学療法(photodynamic therapy:PDT)は,2015年の保険収載後より幅広く行われている.遺残再発病変が2カ所以内,深達度がT2以浅,長径3cm以下,周在性半周以下,頸部食道に及ばない病変とされている医師主導治験の適応内の病変の治療成績は良好である.PDTの治療手技に関しては,病変を正面視して,適切な視野でレーザ照射を行う必要がある.医師主導治験の適応を超える病変に対するPDTの治療成績に関して近年報告されており,根治の可能性がある病変も存在する.本稿をきっかけに,ひとりでも多くの食道癌患者の治療に結びつくことを期待する.
多くの大腸癌の発生には腺腫癌相関が関与しており,その前駆病変である大腸腺腫の発見と内視鏡的切除が大腸癌の発生および死亡を低減する.10mm以上の病変にはhot snare polypectomy(HSP)およびEMRが標準治療である.近年の報告によると10-19mm大の病変の浸潤癌割合は0.9%と低く,より安全性の高い手技が求められる.われわれは,HSPにおける高周波電源装置の設定に着目し,筋層への熱損傷を最小限に抑えつつ粘膜下層の切除を可能とする低出力純切開波(PureCutモード)を用いたHSP(Low-Power Pure-Cut Hot Snare Polypectomy:LPPC HSP)を開発した.動物モデルを用いた検討では,従来のHSPと比較してLPPC HSPは固有筋層への熱損傷を低減しつつ粘膜下層を厚く残しながらも全例で粘膜下層を切除した.ヒト大腸腺腫(10-14mm)に対する切除能を評価した探索的臨床試験においても100%の手技成功割合,高い一括/R0切除割合を達成しつつ有害事象は切除時出血1例(1.1%)のみであった.LPPC HSPは,HSPおよびEMRと比較し,粘膜下層の浅層を切除しながら熱損傷を抑制し,安全性を向上する可能性を有する.本手技は,特に10-14mmの大腸腺腫に対する新たな標準治療としての適応が期待される.
【目的】切除不能な悪性胆道閉塞(malignant biliary obstruction:MBO)に対する超音波内視鏡ガイド下肝胃吻合術(EUS-guided hepaticogastrostomy:EUS-HGS)において,金属ステント(metal stent:MS)とプラスチックステント(plastic stent:PS)のいずれが優れているかは議論の余地がある.本研究では,初回EUS-HGSにおいてMSまたはPSを使用した際の成績を比較検討した.
【方法】当院において2018年3月~2024年1月までに切除不能MBOに対してEUS-HGSを実施した症例を対象に後ろ向きに解析を行った(MS群:151例,PS群:72例).100日をlandmark dateと定義し,胆道再閉塞(recurrent biliary obstruction:RBO)までの期間(time to RBO:TRBO)を評価した.
【結果】臨床的成功率は両群で同等であった.2週目の総ビリルビン(T-Bil)の平均減少率はMS群で有意に高率であった(-45.1% vs. -23.7%,P=0.016).TRBO中央値はMS群183日,PS群92日であり,有意差を認めた(P=0.017).100日以内のTRBOは両群で同等であったが,100日以降はPS群で有意に短縮した(調整ハザード比 12.8,P<0.001).有害事象(adverse event:AE)はMS群で有意に高率であった(23.8% vs. 9.7%,P=0.012).一方,胆管炎を伴う症例ではPS群でもAE発生率が相対的に高率であった(Pinteraction=0.034).Re-interventionでは,PS再留置例のTRBOが延長する傾向が示唆された(HR 0.40,P=0.47).
【結論】MSは早期の黄疸改善および長期のステント開存性に優れる一方,PSは100日以内では同等の開存性を示し,安全性においてMSより優れていた.また,re-interventionでも良好な成績が得られた.EUS-HGSにおいて,PSは適切な緩和的ドレナージ法の選択肢の1つとなり得る.
【背景】ERCP後膵炎(post-ERCP pancreatitis;PEP)は,ERCPに伴う一般的で潜在的に重篤な有害事象である.予防として直腸投与の非ステロイド性抗炎症薬(non-steroidal anti-inflammatory drugs;NSAIDs)が推奨されているが,日本では用量に関する懸念から使用が限られている.本多施設無作為化対照試験は,PEP低減における乳頭への氷水灌流の有効性と安全性を評価した.
【方法】単盲検試験として,未処置乳頭を有しERCPを受ける成人880例を日本の8病院で登録(2022年3月〜2024年2月).3例が撤回し,877例を解析対象とした(氷水冷却予防:434例,対照:443例).主要評価項目はPEP発症率で,定義は24時間以内の腹痛に加え,血清アミラーゼまたはリパーゼが基準上限の3倍以上.副次評価項目は胆管炎,出血,穿孔,死亡とした.
【結果】PEP発症率は,氷水冷却予防群で3.2%(95%信頼区間[CI]1.7%-5.4%),対照群で6.8%(95%CI 4.6%-9.6%)と有意に低く(P=0.02),絶対リスク減少3.6%,相対リスク減少52.4%であった.副次評価項目(胆管炎0.9% vs 1.1%,P=1.00;出血1.4% vs 2.5%,P=0.33;穿孔0.9% vs 0.2%,P=0.21)に有意差は認めなかった.対照群で重症PEPにより1例が死亡した.氷水冷却予防に関連する有害事象は報告されなかった.
【結語】氷水を用いた冷却予防はPEP発症を有意に減少させ,安全・有効かつ低コストの戦略であることを示した.本アプローチは,NSAIDsの使用が制限される状況において実践的な代替策を提供する.