肥満症に対する主な標的臓器は消化器であるものの,本邦において内視鏡医が肥満症治療に携わる機会は,皆無に等しい.これまでに内科治療や外科治療の問題点を克服すべく,様々な内視鏡的減量・代謝治療が開発され発展してきた.特に内視鏡的スリーブ状胃形成術は外科治療に比して侵襲度が低いものの,内科治療よりも減量効果が高く,信頼性の高い肥満症治療法として,海外を中心に一般化しつつある.近年,肥満症に対して適応が承認されたglucagon-like peptide-1受容体作動薬とともに,内視鏡医が知っておくべき内視鏡的減量・代謝改善治療の動向について概説する.
EUSは非侵襲的かつ高解像度な画像評価が可能であり,早期慢性膵炎および慢性膵炎の診断に有用なモダリティとして広く認識されている.しかし,EUSによる早期慢性膵炎および慢性膵炎の診断では,観察者間の信頼性の低さが長らく課題とされてきた.近年,超音波機器の技術的進歩により,組織硬度を評価するエラストグラフィーが利用可能となっている.従来のstrain elastographyに加え,shear wave elastographyの導入によって,膵実質の線維化の程度をより客観的かつ定量的に評価することが可能となった.さらに,近年の画像処理技術の進展により,最適超音波速度測定による診断精度向上への貢献が報告されている.これらの進歩により,早期慢性膵炎および慢性膵炎の診断は,より簡便かつ客観的に実施可能な段階へと移行しつつある.特に,慢性膵炎の早期診断は膵癌への進展を予防する観点からも極めて重要であり,EUS技術のさらなる進化と標準化が今後一層期待される.
【背景・目的】アメーバ性大腸炎には,無症候例がときに存在する.無症候例の臨床的特徴と内視鏡所見を明らかにすることを目的とした.
【方法】2012年1月から2024年2月までに単施設で診断したアメーバ性大腸炎21例を,無症候9例と有症候12例に分け,臨床背景,病変分布と内視鏡所見,生検病理診断および鏡検診断におけるアメーバ虫体検出率を後方視的に比較した.
【結果】臨床背景に両群間で有意な差は認めなかった.直腸病変は無症候例で11%,有症候例で83%陽性であり,無症候例で有意に低く(p=0.002),また無症候例では盲腸病変を8例(88.9%)と高率に認めた.アフタ,潰瘍,びらん,白苔の有所見率,病理診断・鏡検診断での虫体検出率には両群間で有意差はなかった.
【結論】無症候性アメーバ性大腸炎では直腸病変が少なく盲腸病変が多く認められ,病理診断・鏡検診断は有症候例と同等に有用である.
症例は69歳,男性.健診で左肺に異常陰影を認めたため当院呼吸器内科へ紹介された.造影CT検査にて左上葉の大動脈弓頭側と食道に接する部位に76×34mm大の腫瘤性病変および縦隔リンパ節腫脹を認めた.肺結核や肺癌等を鑑別に挙げ,超音波気管支鏡下穿吸引生検法を検討したが解剖学的に困難なため,経食道的EUS-FNA目的に消化器内科へ紹介された.EUSにて病変は境界明瞭で辺縁不整な低エコー像を呈していた.FNAを施行し,検体の塗抹標本にてZiehl-Neelsen染色陽性と核酸増幅検査による結核菌陽性が判明し,肺結核および結核性リンパ節炎と診断を確定することができた.
症例は75歳男性.繰り返すS状結腸捻転に対して待機的S状結腸切除術を施行したが縫合不全を来し,横行結腸人工肛門造設術を行った.術後のCSで吻合部狭窄を認めたため,内視鏡的バルーン拡張術を段階的に3回行いΦ15mmまで拡張したところスコープ通過が可能となった.しかし短期間に再狭窄を認めたためバルーン径をさらに拡大して拡張を行ったところ穿孔したが保存的治療で改善した.その後のCSで再狭窄を認めたため,バルーン拡張術でΦ15mmまで拡張した後にトリアムシノロン局注とプレドニゾロン内服を行ったところ再狭窄は認めず,人工肛門閉鎖が可能となった.
症例は63歳,男性.急性膵炎を疑われ当院を紹介受診した.CTで慢性膵炎を背景とした縦隔内膵仮性囊胞が疑われ,膵管造影で造影剤の囊胞内への膵管外漏出を認め診断確定に至った.内視鏡的経鼻膵管ドレナージ後に膵管ステントを内瘻化し,複数回の膵管ステント交換を行うことで膵管破綻部の自然閉鎖が得られ膵管ステントを抜去できた.縦隔内膵仮性囊胞の治療における内視鏡治療の有用性を,文献的考察を加え報告する.
EISは食道静脈瘤に対する有用な予防的止血手技である.しかし,硬化剤を血管内に注入することは技術的に難しく,十分な硬化剤注入ができない症例もしばしば経験する.内視鏡視野確保ゲルを用いたgel immersion endoscopy(GIE)を用いたEISであるgel immersion-EIS(GI-EIS)では,ゲルにより低い消化管内圧を維持することで静脈瘤を拡張させ,硬化剤の血管内注入を容易にし,スコープの安定性を向上させる可能性がある.本稿ではGI-EISの手順ならびに手技のコツを解説する.
消化管粘膜下腫瘍に対する内視鏡的治療のひとつである内視鏡的開窓術(endoscopic unroofing technique)は,スネアで腫瘍上方を1/3-1/2程度切除することで残存腫瘍が自然に脱落する治療であり,出血や穿孔などの合併症が少ないとされている.消化管出血,腸重積症などの原因となりえる消化管脂肪腫に対しては,腫瘍の基部を留置スネアで絞扼した後にendoscopic unroofing techniqueにより腫瘍を切除することで,穿孔リスクを最小限に抑えつつ,組織学的診断と根治的治療の双方が可能となる.本術は安全かつ短時間で施行できる低侵襲な治療法である.
【目的】大腸内視鏡検査は前癌病変の早期発見と切除のための重要なスクリーニング法である.十分な質が保たれた大腸内視鏡検査を実施するためには前処置時の排便性状を適切に評価しなくてはならない.本研究の目的は,大腸内視鏡検査前処置時の排便性状を評価する人工知能モデルが搭載されたスマートフォンアプリケーション(アプリ)の開発,およびアプリを使用して前処置を実施した際に十分な質が保たれた大腸内視鏡検査が実施できるかどうかを検証することである.
【方法】最初にAIモデルを構築するためにわれわれの施設にて排便画像を収集し,それぞれの排便画像をグレード1(固形または泥状の便),グレード2(混濁した水様便),グレード3(透明な水様便)に分類した.排便性状(グレード1-3)を評価するAIモデルを構築し交差検証法によって内部検証を実施した.続いて,われわれの施設でこのAIモデルを搭載したアプリを使用して大腸内視鏡検査の質に関する前向き観察研究を実施した.主要評価項目はアプリを適切に使用できた患者における,Boston Bowel Preparation Scale(BBPS)が6点以上を達成できた割合とした.
【結果】AIモデルの平均正診率はグレード1,グレード2,グレード3についてそれぞれ90.2%,65.0%,89.3%であった.前向き観察研究では106名の患者が登録され,BBPSが6点以上であった患者の割合は99.0%(95%信頼区間:95.3-99.9%)であった.
【結論】開発したアプリを使用して実施された大腸内視鏡検査においてBBPSが6点以上の割合は設定した期待値を上回った.このアプリは臨床現場における質の高い大腸内視鏡検査の実施に貢献できる可能性がある.
日本カプセル内視鏡学会は,「Minds診療ガイドライン作成マニュアル2020 ver. 3.0」に従い,EBM(evidence based medicine)に基づいた「カプセル内視鏡診療ガイドライン」を作成した.カプセル内視鏡は低侵襲に消化管内腔の検査が可能で本邦では2007年に保険収載された.さらに消化管全域にそれぞれ対応するものが開発され,大腸カプセル内視鏡は2014年に保険適用となった.本ガイドラインはCQ(clinical question)形式とし,必要に応じてBQ(background question)・FRQ(future research question)を設けた.なお,一部のCQにおいては,レベルの高いエビデンスが少ないため,専門家のコンセンサスを重視せざるを得なかった.本ガイドラインは,小腸カプセル内視鏡,大腸カプセル内視鏡,未承認のカプセル内視鏡,パテンシーカプセル,内視鏡挿入補助,読影支援の有効性,在宅カプセル内視鏡検査について検討し現時点での指針とした.
【背景と目的】胃静脈瘤からの出血は,食道静脈瘤出血に比べて頻度は少ないが,発症した場合の罹患率および死亡率は高い.胃食道静脈瘤タイプ1(gastroesophageal varix type 1:GOV1)の出血に対しては,食道静脈瘤と同様の治療が行われる.一方,GOV type 2(GOV2)や孤立性胃静脈瘤(isolated gastric varix:IGV)など他の型の胃静脈瘤に対しては,多様な内視鏡的治療法が適用される.内視鏡を用いない治療としては,経頸静脈的肝内門脈大循環短絡術(transjugular intrahepatic portosystemic shunt:TIPS)やバルーン閉塞下逆行性経静脈的塞栓術(balloon-occluded retrograde transvenous obliteration:BRTO)などがある.本報告では,胃静脈瘤に対する内視鏡的治療の技術に焦点を当てる.
【方法】「gastric varices」「glue」「cyanoacrylate」「thrombin」「sclerosing agents」「band ligation」「topical hemostatic spray」「coils」「EUS」「TIPS」「BRTO」などのキーワードを用いて,2022年8月までのMEDLINEデータベースを検索した.論文の作成,査読,編集は米国消化器内視鏡学会(American Society for Gastrointestinal Endoscopy:ASGE)技術委員会が行い,ASGE理事会により承認された.
【結果】胃静脈瘤に対する主要な内視鏡的治療は,シアノアクリレート系組織接着剤(cyanoacrylate:CA)の静脈瘤内注入術である.近年,EUSガイド下でのCAおよびコイルを併用した血管内治療が注目されている.この手法により,胃静脈瘤の精確な同定と高い技術的成功率が得られる.CAとコイルの併用により,コイルがCA留置の足場として機能し,CA流出による大循環や他臓器の塞栓リスクを軽減し,治療成績の向上につながる.他の注入剤や局所治療法も報告されているが,十分な検証はなされていない.
【結論】現在,胃静脈瘤出血に対する内視鏡的管理の基本戦略はCA注入である.とくに,EUSガイド下でのCAおよびコイルを併用した治療は,新たな治療オプションとして有望であり,今後の臨床応用の拡大が期待される.