2000年代初頭から経鼻内視鏡による画像強調診断は行われており,最近の画質は革新的な進歩を遂げている.そのため標準型内視鏡と遜色のない鮮明な画像が得られ,経鼻内視鏡でも微細画像診断の知識が要求されるようになった.Narrow band imaging,Blue laser(light)imagingは食道癌のスクリーニングに頻用され,咽頭喉頭において広角での観察も可能である.経鼻内視鏡では胃内の死角が少なく正面視しやすいという長所もある.胃癌のスクリーニングでは初期にはFlexible spectral image color enhancementによる,最近ではLinked color imaging(LCI)による色調コントラスト診断が行われてきた.LCIでは組織の違いにより色調が異なるという,これまでの画像診断では得られなかった炎症性および腫瘍性病変の診断が可能となった.最近では高解像度Complementary metal oxide semiconductorセンサーを搭載し,ハイビジョン画質で近接2mmから遠景観察まで高精細な画像が得られる.Texture and brightness and color enhancementによる視認性の評価も行われている.このような白色光画像から画像強調診断への大きな進化期を迎え,経鼻内視鏡による早期上部消化管癌の拾い上げ診断は,今後人工知能による診断支援を伴ってさらに進歩していくと考えられる.
腺腫検出割合(adenoma detection rate:ADR)は,大腸内視鏡検査の最も重要な質の指標の一つである.ADRは,大腸内視鏡検査で少なくとも1個以上の腺腫が発見された症例の割合として定義される.欧米では2000年代前半にADRの概念が提唱され,以降の研究により,ADRが内視鏡検査後の大腸癌発生率および死亡率といった重要な臨床アウトカムに影響を与えることが明らかとなった.2015年の米国の推奨値は25%(50歳以上の初回スクリーニング内視鏡を対象)であったが,2024年の改訂では35%(45歳以上のスクリーニング・サーベイランスおよび診断内視鏡を対象)へ引き上げられた.ADRの向上には,適切な前処置や十分な観察時間といった基本的要素に加え,画像強調観察や人工知能支援システムなどの新技術の活用が有用であると報告されている.一方,日本ではADRのモニタリング体制が未だ不十分であり,今後の課題と考えられる.
症例は100歳女性.廃用症候群による嚥下機能障害のため,経皮内視鏡的胃瘻造設術後であった.内視鏡やX線透視を使用せずに2回目の胃瘻チューブ交換を施行したところ,ガイドワイヤーが抜去できなくなった.内視鏡で確認すると,ガイドワイヤーが胃粘膜を巻き込むように結び目を形成していた.そこで,生検鉗子で内視鏡的に結び目を緩めることで,ガイドワイヤーを抜去することができた.胃瘻交換時にガイドワイヤーが抜去できなくなった場合には,粘膜で結び目を形成している可能性がある.また,その予防には,必要以上にガイドワイヤーを長く挿入しないことや交換前に送気をして胃を膨らませることも重要である.
症例は62歳の女性.人間ドックのEGDで前庭部小彎前壁に2cm程度の中心に小潰瘍を有する粘膜下腫瘍様の隆起性病変が観察された.生検で印環細胞癌と低分化腺癌を認めた.H. pylori血清抗体および尿素呼気試験は陰性であった.開腹による幽門側胃切除術を施行し,病変は粘膜下腫瘍様で2.0×1.2cm大であった.病理組織学的には,腫瘍は固有筋層まで浸潤し,増殖能の高い低分化型腺癌が主として粘膜下層で線維性間質組織の増生を伴いながら増殖し,粘膜内の印環細胞癌と非腫瘍性粘膜を押し上げていた.固有筋層まで浸潤したH. pylori未感染進行胃癌の報告例は本例を含めて4例とまれであり,今後の症例の集積が必要である.
症例は74歳,男性.検診精査のEGDで胃前庭部に陥凹性病変を認め,当科を紹介された.EGD所見では胃前庭部小彎に12mm大の陥凹性病変を認めた.Narrow band imaging(NBI)拡大観察で,陥凹部の腺管構造は不明瞭となっており,口径不同や途絶を呈する不整血管を認めた.生検で神経内分泌癌(neuroendocrine carcinoma:NEC)疑いの診断となった.十分なインフォームド・コンセント(informed consent:IC)のうえESDを施行した.ESD切除標本の病理組織学的所見では,粘膜内に腫瘍細胞を認め,免疫組織化学染色でNECと診断した.なお,腺癌成分は含まなかった.早期胃NECに対し内視鏡治療を施行した報告は少ない.中でも粘膜内にとどまる症例,腺癌成分を含まない症例の報告は少なく,貴重な症例と考えられた.
症例は68歳,男性.排便時出血を主訴に当院を受診した.残便感のため排便時間が長く,肛門脱出の自覚症状もあった.CSの直腸内反転像では歯状線に接して発赤した3/4周性の隆起性病変を認め,2型直腸癌が疑われる形状であった.病理組織学的検索では上皮細胞の異型は軽度であり,粘膜固有層の平滑筋線維と膠原線維の増生が確認された.以上の所見より粘膜脱症候群(mucosal prolapse syndrome:MPS)と診断し,排便時間の短縮を指導し経過観察の方針とした.3カ月後と6カ月後のCSでは病変の縮小傾向を認め,1年後には発赤は消退して病変も目立たなくなった.
今回われわれは直腸癌に類似した形態を呈し保存的治療により著明な改善を認めたMPSの1例を経験したので報告する.
EUS-BDはERCP困難症例や術後再建腸管に対して行われる手技である.悪性疾患に対して行われることが多いが,抗腫瘍療法の発展に伴い患者予後が延長し,経消化管ドレナージ・吻合ステント(transluminal drainage/anastomosis stent:T-DAS)の閉塞に対するreinterventionの機会が増えている.EUS-BDは初回ドレナージだけでなく,reinterventionも難易度が高く,経験や各デバイスの特徴を理解しておくことが大切である.本稿では,当院での実際の症例を提示しながら,reinterventionの基本的な手技と工夫を解説していく.
膵周囲液体貯留は,慢性膵炎や腫瘍,膵炎後の局所合併症として発生する液体貯留病変の総称で,感染を伴う場合には侵襲的な治療が必要となる.EUS下膵周囲液体貯留ドレナージ(EUS-guided peripancreatic fluid collection drainage:EUS-PFD)は標準的治療法であり,内部に液体成分を含む膵仮性囊胞(pancreatic pseudocyst:PPC)には高い奏効率を示す.一方,壊死物質を含む被包化壊死(walled-off necrosis:WON)では追加の内視鏡的ネクロセクトミーが有効である.Lumen-apposing metal stent(LAMS)は,EUS-PFDと追加処置を効率化する画期的デバイスで,特に困難なWON治療に適する.本稿では,LAMSの適応,LAMS留置の基本手技,留置後マネージメントを詳述し,その利点と課題を示す.
【背景】脈管侵襲(リンパ管侵襲および静脈侵襲を含む,lymphovascular invasion:LVI)は,リンパ節転移(lymph node metastasis:LNM)の重要なリスク因子であり,T1大腸癌(colorectal cancer:CRC)の内視鏡切除後の追加手術を必要とする場合が多い.しかし,LNMの予測に対する追加染色の影響については不明である.本系統的レビューは,T1 CRCにおけるLNMの判定に対する追加染色の影響を評価することを目的とした.
【方法】5つの電子データベースを用いて文献検索を行った.アウトカムは,階層的要約受信者動作特性曲線を用いて評価された診断オッズ比(diagnostic odds ratio:DOR)と,カッパ係数(κ)を用いて評価されたLVIの病理医間の一致度を設定した.また,SM浸潤度,低分化,簇出などの他のリスク因子を含めた多変量解析を実施し,サブグループ分析も実施した.
【結果】64件の研究(18,097人の患者)を対象とし,ヘマトキシリン・エオシン(HE)染色およびLVIの追加染色におけるLNM判定のプールされた感度はHE染色で0.45(95%信頼区間[confidence interval; CI]0.32-0.58),追加染色で0.68(95% CI 0.44-0.86)であった.特異度は,それぞれ0.88(95% CI 0.78-0.94)と0.76(95% CI 0.62-0.86)であった.DORはHE染色で6.26(95% CI 3.73-10.53),追加染色で6.47(95% CI 3.40-12.32)であった.多変量解析では,LNMの追加染色に対するDOR(DOR 5.95;95% CI 2.87-12.33)は,HE染色に対するDOR(DOR 1.89;95% CI 1.13-3.16)よりも有意に高かった(P=0.01).HE染色とLVIの追加染色のプールされたκ値は,それぞれ0.37(95% CI 0.22-0.52)と0.62(95% CI 0.04-0.99)であった.
【結論】LVIの追加染色は,LNMのDORと病理医間のLVIに対する観察者間一致度を向上させる可能性がある.
【背景】EUS-guided biliary drainage(EUS-BD)は,経験豊富な施設では良好な手技成績が示されている.EUS-BDの黎明期には経験の浅い施設で手技成績が劣ることが報告されていたが,近年の成績は不明である.本研究では,近年EUS-BDを導入した施設におけるEUS-BDの実現可能性と安全性を明らかにすることを目的とした.
【方法】本多施設後視的研究は,2017年から2022年の間にEUS-BDを導入した22施設で実施された.各施設のEUS-BD初回20例以内を評価した.これらの治療成績と84人の施行医の経験を調査した.主要評価項目は手技的成功割合と有害事象発生割合,副次評価項目は手技不成功と処置関連有害事象のリスク因子であった.
【結果】255名の患者が登録された.手技的成功割合は91.4%(233/255)であった.手技不成功22例のうち,ガイドワイヤ操作の不成功が最も多く(n=12),次いで穿刺路拡張の不成功(n=5)であった.有害事象発生割合は10.2%(26/255)であった.多変量解析により,穿刺胆管径5mm未満および肝表に及ぶ中等量の腹水貯留が,それぞれ手技不成功および処置関連有害事象の独立したリスク因子として同定された.施行医の処置経験は,手技不成功,処置関連有害事象のリスク因子ではなかった.
【結語】EUS-BDの実現可能性と安全性は,未経験施設における導入段階でも維持されていた.