第3次人工知能ブームの中,ディープラーニング技術の発展により内視鏡AI開発が急速に進展した.2018年には大腸病変診断支援AIが日本初のAI搭載医療機器として承認され,2024年からは診療報酬加算も設定された.内視鏡AIは大きく病変検出支援(CADe)と鑑別診断支援(CADx)に大別される.大腸内視鏡領域では,CADeによる腺腫発見率が8-10%向上し,見逃し率も有意に低下することがメタ解析で示されている.胃癌,食道扁平上皮癌でも前向き研究の結果が報告されている.一方で,実臨床では偽陽性の問題,医師のAI依存(deskilling),Human-AI Interactionの最適化など多くの課題が明らかになってきた.内視鏡AIは着実に臨床実装が進んでいるが,真の臨床的有用性の確立にはさらなる前向き研究が必要である.
非乳頭部十二指腸腺腫および粘膜下層までにとどまる腺癌:表在性非乳頭部十二指腸上皮性腫瘍(superficial nonampullary duodenal epithelial tumor,SNADET)はEGDスクリーニングの普及により診断されることが多くなっている.SNADETは十二指腸下行部乳頭付近から球部にかけて発見されることが多く,腫瘍・非腫瘍の鑑別,悪性度および細胞形質の鑑別には白色光および画像強調併用拡大内視鏡観察による診断が有用である.SNADETの1-2割を占める胃型形質を有する病変は,腸型形質のものと比較し,悪性度が高い.一方,球部に存在する腫瘍様病変には腫瘍・非腫瘍の鑑別が困難な病変もあり,生検や超音波内視鏡を含めた総合的な判断が必要である.SNADETに対する至適な治療法選択には細胞形質を加味した低異型度腺腫と高異型度腺腫/癌の鑑別診断が重要である.
【目的】PEG-Asc単剤による大腸内視鏡検査前処置の有効性,および前処置に長時間を要する因子を明らかにする.
【方法】対象は外来患者237例(平均年齢64.2歳,男女比151:86).前日は下剤を投与せず検査食のみを併用し,当日はPEG-Asc2杯に対して水かお茶1杯を交互に服用する「2:1法」により前処置を施行した.有効性,安全性,前処置所要時間が長くなる因子を検討した.
【結果】PEG-Ascの平均服用量は1,474mL,平均前処置所要時間は189.6分,腸管洗浄度は99.2%が有効で,重篤な副作用は認めなかった.多変量解析の結果,前処置が180分を超える因子は,65歳以上の高齢者,検査前日と当日来院前の排便がないことであった.少量でも検査前日と当日来院前に排便があれば,排便がない群より平均前処置所要時間が有意に短かった.
【結論】本法は安全かつ有効であることが示された.検査前日や当日来院前に排便がある患者では,補助的な下剤の使用は必ずしも必要ではない可能性が示唆された.
症例は76歳の男性.食道癌術後の再建胃管にType1病変を認め,生検でGroup5 adenocarcinomaの診断となった.胃管癌の診断で開腹胃局所切除術を施行したが,術後縫合不全および同部位の肺瘻を認めた.保存的加療に不応であったため手術も考慮したが,侵襲が低い内視鏡治療を選択し,ポリグリコール酸シートを用いた内視鏡下瘻孔閉鎖術を施行した.その後瘻孔の閉鎖が得られ,全身状態は軽快し転院となった.食道癌術後の再建胃管癌に対する局所切除後の難治性瘻孔に対して,ポリグリコール酸シートを用いた内視鏡下瘻孔閉鎖術は低侵襲かつ有効な治療法と考えられた.
症例は68歳女性.47歳時に左骨盤内平滑筋肉腫に対し左腸骨切除,腫瘍切除術を施行された.嘔吐あり外来受診,CT検査で左腸骨切除後付近に下行結腸の狭窄と口側腸管の拡張を認めた.S状結腸のたわみで経肛門的イレウスチューブの留置に難渋したが,イレウスチューブの脇から大腸内視鏡を挿入しS状結腸のたわみを解除することで,留置に成功した.金属ステントの登場により経肛門的イレウスチューブを留置する機会は減少しているが,良性腸管狭窄の場合は術前の腸管減圧などを目的とした留置を要する場合もある.経肛門的イレウスチューブの挿入困難例に対する大腸内視鏡での腸管保持は簡便かつ有効な方法と考えられた.
大腸CT検査は,10mm以上の大腸腫瘍性病変に対して患者別の感度・特異度ともに約90%と高い精度を有する大腸精密検査法である.本邦では認知度の低さや検査に熟練した医師の不足により普及が限定的であるが,適切な前処置,腸管拡張,低線量撮影,読影の標準化により精度管理が可能である.大腸CT検査は合併症発生率が皆無ではないが,検診陽性者への精密検査として用いるとトリアージに有効で,大腸内視鏡検査の待機期間短縮や治療へのリソース集中に資する.法改正により放射線技師単独での検査施行が可能となり,今後は地域医療での活用が特に期待される.検査の標準化と制度的位置づけを進めることで,効率的かつ効果的な大腸がん検診への組み込みが可能になると考えられる.
バルーン内視鏡の登場により,術後再建腸管を有する症例においてもほとんどのERCP関連手技が実施可能となった.一方で,目的部位に到達できたとしても,解剖学的な変化や直視型内視鏡で鉗子起上装置を備えていないといった内視鏡側の制約により,胆管カニュレーションは通常のERCPと比べて難易度が高く,特有の工夫が求められる.
本稿では,再建法ごとの内視鏡深部挿入および胆管カニュレーションの要点について概説し,さらにショートタイプのダブルバルーン内視鏡を用いた胆管カニュレーションの実際について解説する.
【目的】超音波内視鏡ガイド下穿刺吸引法/生検(EUS-FNA/B)は胃粘膜下病変(粘膜下病変)診断のゴールドスタンダードであるが,20mm未満の病変の診断は依然として困難である.われわれは,これまで糸付きクリップを用いて病変を牽引し可動性を安定させ,針の穿刺を容易にすることで診断精度を高めた糸付きクリップによるトラクション補助下EUS-FNB(TA-EUS-FNB)という工夫を行った.本研究は,小さな胃粘膜下病変の診断におけるTA-EUS-FNBの有効性を評価するものである.
【方法】この前向きランダム化比較クロスオーバー試験(2019年8月~2022年11月)では,20mm未満の胃粘膜下病変を有する患者30名を,TA-EUS-FNBまたは通常のEUS-FNBのいずれかを受ける群に無作為に割り付けた.各患者は,各方法で2回ずつ,合計4回の穿刺を受けた.主要評価項目は,両手技における適正検体採取率とした.副次評価項目は,診断成功率および消化管間質腫瘍(GISTs)と非GISTsを鑑別する診断能(感度および特異度)とした.
【結果】平均腫瘍径は15.0mmで,診断の内訳はGISTs(n=15,50%),平滑筋腫(n=8,26.7%),神経鞘腫(n=2,6.7%),迷入膵(n=3,10%),炎症(n=2,6.7%)であった.TA-EUS-FNBは,EUS-FNBよりも有意に高い適正検体採取率(90% vs. 66.7%,P=0.035)および診断成功率(86.7% vs. 63.3%,P=0.037)を示した.感度(86.7% vs. 66.7%)および特異度(両群とも100%)は,両方法間で同等であった.本研究では有害事象は観察されなかった.
【結論】TA-EUS-FNBは,20mm未満の粘膜下病変に対して,通常のEUS-FNBと比較して優れた検体採取率と診断成功率を示した.小さい粘膜下病変におけるEUS-FNBの成功には,病変の可動性を制御することが不可欠である.
【試験登録】本研究は,CONSORTガイドラインに従い,大学病院医療情報ネットワーク臨床試験登録(UMIN 000037494)に登録された.
【背景】大腸癌の発生率と死亡率を低下させるために大腸腺腫や早期大腸癌を発見し,かつ治療することができる大腸内視鏡検査は非常に重要である.本研究の目的は,大腸病変の発見において,白色光画像(white light imaging:WLI)に対する構造色彩強調機能(texture and color enhancement imaging:TXI)の優位性を確認することである.
【方法】本研究はランダム化比較試験であり,日本の8施設で実施された多施設共同研究である.期間は2023年3月から2023年10月,対象は40~80歳とした.EVIS X1内視鏡システム(CV-1500,オリンパスメディカルシステムズ株式会社)および新型の大腸内視鏡(CF-EZ1500DI,オリンパスメディカルシステムズ株式会社)を使用し,TXIモード1とWLIの2群に割り当て検査を実施した.主要評価項目は検査ごとに検出された腺腫の平均数(mean number of adenomas detected per procedure:MAP)とし,副次的評価項目は,腺腫検出率(adenoma detection rate:ADR),ポリープ検出率(polyp detection rate:PDR),平坦ポリープ検出率(flat polyp detection rate:FDR),SSL検出率(SSL detection rate),有害事象等とした.
【結果】合計956人の患者が登録され,適格基準を満たさない患者を除外した後,451人と445人の患者がそれぞれTXI群とWLI群に割り当てられた.MAPはTXI群で1.4個,WLI群で1.5個,ADRはそれぞれ57.2%と56.0%であり,2つの群間に統計学的有意差は認めなかった.一方,PDRとFDRはTXI群の方がWLI群よりも有意に高く,それぞれ82.5%対74.4%(P 1⁄4 .003),76.5%対70.3%(P 1⁄4 .036)であった.またSDRはTXI群の方がWLI群よりも高値であったが,統計的に有意差は認めなかった.
【結語】本研究では腫瘍性病変の検出において,WLIに対するTXIの優位性を確認することはできなかった.しかしTXIは平坦ポリープの検出に有効である可能性が示唆された.