大腸表面陥凹型腫瘍(Ⅱc)は1970年代に本邦で初めて報告され,発見困難かつ悪性度の高い病変として注目されてきた.Ⅱcは小型病変であっても粘膜下層への浸潤やリンパ節転移を来しやすく,さらに便潜血検査(fecal immunochemical test:FIT)で陰性となりやすいこと,加えて内視鏡観察においても発見困難で見逃されやすいことから,post-colonoscopy colorectal cancer(PCCRC)の原因病変の一つと考えられている.このため,Ⅱcの発見には大きな臨床的意義がある.歴史的には「幻の癌」と称されたが,色素内視鏡やnarrow-band imaging(NBI)などの画像強調観察技術の導入により,その存在診断は着実に進歩してきた.さらに近年ではAIによる検出支援の有用性が期待されているが,一方でAIへの過度な依存が術者の集中力低下を招く可能性も指摘されている.Ⅱc発見の向上には,FIT陰性例を含めた初回内視鏡検査の受診率向上を基盤とし,サーベイランスにおいてもⅡcを常に念頭に置いた質の高い内視鏡検査を実践することが求められる.その上で,Ⅱcの拾い上げ診断を可能とする教育および技術の体系化が今後の重要な課題である.
急性胆囊炎に対する治療においては早期の腹腔鏡下胆囊摘出術が第一選択だが,手術不能例では胆囊ドレナージが必要となる.従来の経皮経肝胆囊ドレナージや内視鏡的経乳頭的胆囊ドレナージに加え,近年は超音波内視鏡下胆囊ドレナージが注目され,特にlumen apposing metal stent(LAMS)を使用することで臨床的成功率が高く,再発や再入院が少ないことが示されている.国内でも2025年6月に絶対的手術不能患者を対象としてLAMSが承認され普及が期待されるが,重篤な有害事象を防ぐため適切な適応判断と技術習得が不可欠である.今後は術前ドレナージへの適応拡大も検討されているが,待機的手術への影響など課題も残っている.
【背景・目的】近年,胆道感染症において起因菌及び抗菌薬感受性の変遷が考えられている.治療において,起因菌と抗菌薬への感受性を特定することは重要な役割を持つ.
【方法】胆道感染症患者に対しERCP施行時に採取した胆汁より,細菌学的検索を好気的並びに嫌気的に行い,起因菌を特定し,抗生剤感受性を調べ,変遷を検討した.
【結果】検出された菌種では,好気性菌としてEscherichia coliを含むグラム陰性桿菌が最も多く,菌種の傾向に変化はなかった.薬剤感受性はアンピシリン・スルバクタム(AMPC/SBT)に対する感受性が全体で低下していた.カルバペネム耐性腸内細菌症例は増加し,カルバペネム耐性の緑膿菌も増加傾向にあったが,extended-spectrum β-lactamase(ESBL)産生菌の検出率は減少していた.
【結論】菌種は変化がないものの,従来の薬剤感受性から変化を認めており,胆道感染症の治療に際し,ERCPでの胆汁採取,培養は抗菌薬選択に際し,有用な方法であると考えられる.
72歳の男性.スクリーニングのEGDで胸部中部食道に病変を認め,生検でSquamous cell carcinomaと診断され精査加療目的に紹介となった.通常白色光観察では病変の丈が高く粘膜下層浸潤癌が疑われたが,狭帯域光拡大内視鏡観察における微小血管構造は粘膜上皮/固有層癌と考えられる所見であった.EUSで粘膜筋板由来の平滑筋腫上に併存する粘膜上皮/固有層癌と診断し,ESDで一括切除した.粘膜下腫瘍の存在により癌の深達度を過大評価し,外科的介入した症例の報告もあり,術前精査を十分に行うことが重要である.術前EUSが診断に有用であった1例を経験した.
症例は69歳女性.体動困難を主訴に当院へ救急搬入され,造影CT検査でS状結腸憩室炎による憩室穿孔・骨盤内膿瘍形成を認めたため緊急入院した.絶食・抗菌薬治療を開始し,第2病日に横行結腸に人工肛門を造設した.しかし第7病日の造影CTで膿瘍腔の縮小がなく,門脈血栓症を併発していた.直腸と膿瘍腔が隣接していたため,第8病日にEUS下経直腸的ドレナージを施行し,外瘻チューブを留置した.門脈血栓症には抗凝固療法を導入した.膿瘍腔の縮小と全身状態の改善を認め,第18病日にドレーンを抜去し,第26病日に退院した.本法は低侵襲かつ安全性が高く,有用な治療選択肢となりうるため報告する.
十二指腸乳頭部腫瘍もしくは十二指腸乳頭を巻き込んだ腫瘍に対するESDは非常に先進的な治療である.十二指腸ESDというだけでも十分に高難度な治療である事に加えて,Oddi括約筋の切除,その後の胆管膵管開口部へのカニュレーション,治療後のドレナージなどのマネジメントも必要であり,基本的には十二指腸の解剖学的構造の特徴や適切な周術期管理を理解したhigh volume centerで行うべき治療である.しかし,外科切除と比較して侵襲性は低く,適切にマネジメントを行えば安全性も十分担保できる治療法である.治療手技の実際に文献的考察を加えて解説する.
大腸ステントの普及に伴い,ステント留置術は比較的安全性の高い手技となっている.しかし,閉塞性大腸癌では前処置ができないため,腸管内の残便や残渣により視野不良な状況が多く,スコープを病変部まで進めることや管腔開存部の同定が困難なことがある.その際,知らずのうちに過送気になり腸管内圧が上昇し患者苦痛を増悪させ,カテーテルやガイドワイヤーの無理な操作により出血や穿孔などの偶発症が生じてしまうことがある.近年,管腔内をゲルで満たした状態で内視鏡処置時の視野を確保するgel immersion endoscopy(GIE)が注目されている.大腸ステント挿入の際にGIEを併用することで,腸管内を低圧環境にし,内視鏡視野および操作性を向上させ,患者負担の少ないより安全なステント留置が実施できる.
【目的】本研究の目的は,無痛性膵石に対する内視鏡治療が及ぼす臨床的影響を明らかにすることである.
【方法】無痛性の主膵管内膵石を有する慢性膵炎患者268例(内視鏡治療群145例,保存的治療群123例)を解析した.これら症例の膵萎縮,糖尿病の新規発症/増悪,疼痛出現を調査し,無痛性膵石に対する内視鏡治療が及ぼす臨床的影響を保存的治療群と比較し評価した.
【結果】保存的治療を基準とした場合,内視鏡治療による膵石完全除去は,治療後の膵萎縮発生リスクを低下させた(ハザード比0.42,95%信頼区間0.21~0.84).内視鏡治療を開始したものの治療対象膵石の完全除去に至らなかった場合は,糖尿病の新規発症/悪化(ハザード比2.08,95%信頼区間1.10~3.91),疼痛発生(ハザード比4.03,95%信頼区間1.45~11.19)の相対リスクが上昇していた.
【結論】無痛性膵石を有する慢性膵炎患者において,内視鏡治療による膵石の完全除去はその後の膵実質体積の維持につながるが,完全除去に至らなかった場合は,耐糖能の悪化や疼痛症状の出現のリスクが上昇する.
【背景】非静脈瘤性上部消化管出血(NVUGIB)では内視鏡的に一次止血が得られても,特に高リスク内視鏡所見を伴う症例で再出血が臨床転帰を左右する.一方,一次止血後の再出血予防を目的とした追加内視鏡治療の有効性は十分に確立していない 2).本研究は,一次止血後に粘着性止血パウダー(Nexpowder)を追加散布することで再出血を予防できるかを検証した.
【方法】多施設・被験者盲検ランダム化比較試験.内視鏡的一次止血に成功したForrest Ⅰa/Ⅰb/Ⅱa/ⅡbのNVUGIB患者を,一次止血直後の追加治療としてNexpowderを散布する群と追加治療なし群に1:1で無作為化した.Nexpowderは3gを散布し,必要に応じ追加投与した.両群とも標準的PPI療法(パントプラゾール80mg静注後,8mg/時を72時間)を施行し,割付群以外の周術期管理は可能な限り統一した.主要評価項目は72時間再出血,副次評価項目は30日再出血などとし,modified intention-to-treat(mITT)で解析した.
【結果】mITT解析341例(パウダー群173例,対照群168例).72時間再出血は2.9% vs 11.3%(p=0.005)でパウダー群が有意に低率であった.30日再出血も7.0% vs 18.8%とパウダー群で低下した.潰瘍出血サブグループ解析でも,72時間再出血3.0% vs 12.0%,30日再出血7.2% vs 19.3%と同様に低下した.Nexpowder関連有害事象は認めなかった.
【結論】一次止血後の粘着性止血パウダー追加散布は,NVUGIBの早期および30日再出血を有意に抑制し,高リスク例の再出血予防策として有用性が示された.