日本外科感染症学会雑誌
Online ISSN : 2434-0103
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最新号
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原著
  • 田平 梓, 團野 克樹, 小山 太一, 大里 由紀枝
    2019 年 16 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 2019/03/30
    公開日: 2019/07/13
    ジャーナル 認証あり

    当院では医師・看護師と共同で,開腹大腸手術における手術部位感染(surgical siteinfection:以下,SSI)対策を導入した。今回,その対策が表層切開創SSI(superficial incisional surgical site infection:以下,s―SSI)発症に及ぼす効果を検証した。SSI対策の違う時期により 3群に分け,A群(n=265)は対策導入前,B群(n=521)では全症例に創部洗浄を行い,さらに創分類3・4に対しては器械・ドレープ交換を実施,C群(n=247)では全症例に創部洗浄と器械・ドレープ交換を実施した。3群間の s ─SSI発生率とリスク因子を解析したところ,s―SSIは,A群14.0%,B群7.7%,C群1.2%で,有意な減少を認めた( P<0.0001)。s―SSIのリスク因子は,SSI対策の違いがあがり,多変量解析においてオッズ比(95%CI, Pvalue)は,AB間で0.485(0.296 ─0.795, P=0.0042),BC間で0.156(0.037 ─0.441, P<0.0001)と有意な独立したリスク因子となった。今回,SSI対策の導入が s―SSI減少につながったと考えられた。

特集:手術部位感染(SSI)におけるリスク因子
巻頭言
原著
  • 秋山 泰樹, 桂 宜輝, 武田 裕, 村上 剛平, 賀川 義規, 益澤 徹, 竹野 淳, 村田 幸平
    2019 年 16 巻 1 号 p. 10-17
    発行日: 2019/03/30
    公開日: 2019/07/13
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    【背景】手術部位感染(surgical siteinfection:以下,SSI)発生率の低減化は,致死的合併症を防ぎ,術後在院日数の短縮,医療費の縮小にもつながると考えられる。今回,予定胃手術と SSI発生との関連性について検討した。【対象と方法】2013年 1月から 2015年 12月まで予定手術として施行した胃手術 273症例を対象とし,SSI発生について検討した。【結果】SSI発生率は13.5%(表層 /深部切開創5.1%,臓器 /体腔8.4%)。術式別の検討では胃全摘で SSI発生率は高かった。SSIあり /なしで手術時間は 308.0±98.7分 /250.5±68.2分(P<0.001),出血量は 593.5±698.0ml/264.0 ±438.7ml(P<0.001)で有意差を認めた。腹腔鏡手術では開腹手術と比較して SSIは6.1%と有意に低かった(P=0.006)。多変量解析では,長時間手術と開腹手術,胃全摘術が独立した危険因子であった。【結論】SSIの低減には腹腔鏡手術の時間短縮と胃全摘術への対応が必要である。

  • 橋爪 正, 神田 大周, 久保田 隼介, 一戸 大地, 横山 拓史, 山田 恭吾, 松浦 修
    2019 年 16 巻 1 号 p. 18-25
    発行日: 2019/03/30
    公開日: 2019/07/13
    ジャーナル 認証あり

    術後高血糖は大腸手術の手術部位感染(SSI)リスク因子である。1990~2009年の初回開腹腸切除 2,099例を対象として,全例に SSI予防バンドルを施行し,1990~1999年(前期)は血糖目標値200mg/dL,随時インスリン皮下注(SCI)法を行った。前期の糖尿病患者の創部 SSI率は17%と高かった。2000~2009年(後期)は目標血糖値を150mg/dLに変更し,一部の糖尿病と耐糖能異常に5%または7.5%糖濃度の維持輸液を投与し,術後 48時間まで持続インスリン静注(CII)法を行うきめ細かな血糖管理を前向きに実施した。CII法は SCI法に比べてすみやかに高血糖を改善し,血糖変動が少なく,術後 2~4時間で血糖値は安定した。著しい低血糖の発生もなかった。後期糖尿病患者の創部 SSI率は10%まで改善した(非糖尿病9.3%)。150mg/dLを目標とするきめ細かな血糖管理は大腸手術 SSI予防に有用と確認された。最近の SSIガイドラインは血糖目標値 150~200mg/dLを示しているが,今後も周術期血糖管理に関して詳細な検討が必要と思われる。

  • 井上 善博, 内山 和久
    2019 年 16 巻 1 号 p. 26-33
    発行日: 2019/03/30
    公開日: 2019/07/13
    ジャーナル 認証あり

    消化器外科領域のなかでも肝胆膵領域の手術は手術侵襲が大きく,術後合併症の発生率は比較的高い。とくに臓器 /体腔手術部位感染(surgical site infection:以下,SSI)は多く発生する術後合併症であるため,肝切除におけるその危険因子に関して本稿にて概説する。当教室において 2010年 1月から 2018年 6月までに施行した胆道・消化管再建を伴わない肝切除術 782例を対象とし,臓器 /体腔手術部位感染の危険因子について検討した。表層切開創 SSIが31例(4.0%),深部切開創 SSIが 15例(1.9%),臓器 /体腔 SSIが 130例(16.6%)であった。臓器 /体腔 SSIの最も多い原因としては術後胆汁漏 61例(46.9%)であり,次いで感染性腹水 32例(24.6%),断端膿瘍 31例(23.8%),消化管穿孔 4例(3.1%),腹腔内出血 2例(1.5%)の順であった。単変量解析において有意であった因子を用いて多変量解析を行った結果,アルブミン値 4.0g/dL未満,開腹肝切除,中央区域切除,手術時間 300分以上,術中胆汁漏陽性が臓器 /体腔 SSIの危険因子として同定された。近年の周術期管理の目覚ましい進歩にもかかわらず,臓器 /体腔 SSI発生は患者の QOLを悪化させるのみならず,医療経済的にも不利益をもたらす。そのため臓器 /体腔 SSI発生への対策を講じるうえで重要な,肝切除術における臓器 /体腔 SSI発生の危険因子について解説した。

  • 田中 肖吾, 竹村 茂一, 新川 寛二, 天野 良亮, 木村 健二郎, 山添 定明, 大平 豪, 西岡 孝芳, 田内 潤, 伊藤 得路, 宮 ...
    2019 年 16 巻 1 号 p. 34-40
    発行日: 2019/03/30
    公開日: 2019/07/13
    ジャーナル 認証あり

    (背景)腹腔鏡下肝切除の手術部位感染(SSI)に対する影響は知られていない。(患者・方法)2007. 2016年に肝細胞癌に対し腹腔鏡下肝切除を施行した 193例(LH群)および開腹下肝切除を施行した 314例(OH群)に対し傾向スコアマッチングを行った結果,片群 117例ずつ抽出された。2群間の SSIを含めた治療成績に関して比較検討した。(結果)術後合併症の頻度は LH群で低かったが( P=0.038),SSIの頻度は 2群間で差は認められなかった(3例vs 6例, P=0.499)。切開創 SSIは LH群 1例 /OH群 4例( P=0.370)および臓器 /体腔 SSIは LH群 2例 /OH群 2例に認められ( P=1.00),有意差はみられなかった。ただし完全腹腔鏡下 84例では切開創 SSIは認められなかった(P=0.087 vs OH群)。(まとめ)傾向スコアマッチングの結果,腹腔鏡下肝切除と開腹下肝切除では SSI発症率に差が認められなかった。

総説
  • 森兼 啓太
    2019 年 16 巻 1 号 p. 41-46
    発行日: 2019/03/30
    公開日: 2019/07/13
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    手術部位感染(surgical site infection:以下,SSI)のリスク因子は,患者因子,手術因子,微生物因子の 3つに分類される。患者因子には介入不可能ないしは困難なものが多く,手術因子の大部分は介入可能である。介入が可能な因子は,各種の SSI防止ガイドラインなどに SSI防止対策として推奨され,実践されている。さらに,研究による新たな知見や新たなデバイスを用いた新たな防止対策が開発され,実務に応用されつつある。一方,介入が困難あるいは不可能な因子は,SSIサーベイランスによる SSI発生状況の評価を行う際に調整に用いる。リスク調整は当初,少ない数の因子で行われていたが,今ではより公平な調整を行うために多数の因子を用いる傾向にある。SSIのリスク因子を探索する研究と,その結果を SSI防止対策やサーベイランスといった実務への活用は,今後も継続して行われなければならない。

  • 森崎 晃正, 柴田 利彦
    2019 年 16 巻 1 号 p. 47-59
    発行日: 2019/03/30
    公開日: 2019/07/13
    ジャーナル 認証あり

    胸骨正中切開による心大血管術後深部胸骨創感染(縦隔炎・胸骨骨髄炎)は,その発症率は低いもののまだまだ死亡率が高く,留意すべき合併症の1つである。リスク因子として,術前因子:糖尿病,肥満,慢性閉塞性呼吸障害,喫煙歴,ステロイド使用,高齢,心不全,心機能低下,腎機能低下あるいは透析例,抗血小板剤投与,長期の入院日数,緊急手術,術中因子:両側内胸動脈使用,長時間の手術・人工心肺時間・心停止時間,再開胸止血術,不十分な胸骨閉鎖,術後因子:術後呼吸不全,長期の人工呼吸器管理,気管切開術,長期 ICU滞在などが報告されている。最近では深部胸骨創感染の発症率を予測する Med-Score 24が報告された。心大血管手術を行う症例はこれらのリスク因子を多数有した症例が多く,深部胸骨創感染発症が避けられない場合もある。その発症率を少しでも下げられるようにリスク因子を十分理解し,対策を講じることが重要と考える。

  • 永田 向生, 大野 久美子, 木幡 一博, 山田 浩司
    2019 年 16 巻 1 号 p. 60-70
    発行日: 2019/03/30
    公開日: 2019/07/13
    ジャーナル 認証あり

    整形外科領域は人工関節置換術,脊椎手術,骨折手術といったさまざまな術式があるため,術式ごとに手術部位感染(SSI)リスクを論じる必要がある。また整形外科手術は他科と異なり,インプラントを使用することが多く,感染がインプラントに及んだ場合,インプラントを抜去せざるを得ない症例も存在する。インプラント抜去は,四肢や体幹の支持機構を失うため,患者の quality of lifeを著しく損なう。本編では最新のシステマティックレビューやメタ解析が行われた文献をもとに,人工関節置換術,脊椎手術,骨折手術のそれぞれの SSIリスクを検討した。糖尿病,肥満,貧血,喫煙,飲酒,低栄養などのエビデンスレベルが高かった。介入可能なリスクはなるべく早期にスクリーニングを介することでリスクを軽減する必要がある。

  • 吉川 祐輔, 山本 聖一郎, 葉 季久雄, 高野 公徳, 筒井 麻衣, 金子 靖, 原 明日香
    2019 年 16 巻 1 号 p. 71-74
    発行日: 2019/03/30
    公開日: 2019/07/13
    ジャーナル 認証あり

    導入から約 30年が経過し,現在では腹腔鏡下大腸切除術は標準術式としての地位を確立している。また,この間に腹腔鏡手術侵襲の低減だけでなく,さまざまな恩恵や新規知見をわれわれにもたらしてきた。本稿では外科手術における永遠のテーマともいえる手術部位感染症(surgical site infection:SSI)に着目し,腹腔鏡が大腸切除術における SSI発生に与えた変化に関して,これまでに得られてきたエビデンスを中心に概説し,今後の展望について考察した。

症例報告
  • 江藤 亮大郎, 吉富 秀幸, 髙屋敷 吏, 賀川 真吾, 古川 勝規, 久保木 知, 高野 重紹, 大塚 将之
    2019 年 16 巻 1 号 p. 75-79
    発行日: 2019/03/30
    公開日: 2019/07/13
    ジャーナル 認証あり

    症例は74歳,男性。膵癌の診断で当科紹介され,精査で閉塞性黄疸を伴う局所進行膵癌と判断し,胆管ステントを留置後に化学療法を開始した。治療開始後31日目に38度の発熱を認め,その2日後に意識障害をきたし救急搬送された。血液検査で高度のアシドーシスと溶血性変化を,CTで肝後区域にガス像を伴う腫瘤性病変と肝内胆管気腫を認めた。検査直後に心肺停止状態となり,蘇生を試みるも来院2時間後に死亡した。血液培養からはClostridium perfrin-gens(以下,CP)が検出され,同感染に伴う肝ガス壊疽,敗血症と最終診断された。CPによる肝ガス壊疽は一旦発症すると急激な全身状態の悪化から致死的経過をたどることが多く,膵癌患者,とくに胆道ドレナージを有する症例に対する集学的治療中に感染兆候を認めた場合,本感染症発症の可能性を念頭に置き早期診断,治療介入をすることが今後の課題と考えられた。

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