(目的)TG18では腹腔鏡下胆囊摘出術(LC)が安全に行えない場合の回避手術(bail–out procedures:BOP)の1つとして開腹移行手術が記載された。しかし腹腔鏡手術より治療成績が不良であるとの報告がある。今回急性胆囊炎に対する開腹移行手術の治療成績および開腹移行の要因について検討した。また,腹腔鏡下手術でのBOPである腹腔鏡下胆囊亜全摘術(laparoscopic subtotal cholecystectomy: LSC)についても検討した。(方法)当院で2001年1月から2019年9月までに急性胆囊炎に対しLCを企図した417症例を対象とし,年齢,性別,急性胆囊炎重症度,胆石の有無,術直前のWBCとCRP,術前ドレナージの有無と種類,手術時間,出血量,総入院日数,術後在院日数,合併症発生率,病理結果を検討した。(結果)LC群と開腹移行(OC)群の比較では手術時間(151分vs 247分,P<0.0001),術中出血量(26.2mL vs 337.3mL,P<0.0001),合併症発生率(3.8% vs 17.1%,P<0.0001),総入院日数(21日vs 36日,P<0.0001),術後在院日数(9日vs 18日,P<0.0001)で有意にOC群が不良であった。またLSC群との比較でも手術時間,総入院日数でOC群が不良であった。開腹移行の要因は腹腔内因子,胆囊肝床部線維性癒着,Calot三角線維性癒着の3つに分類されるが,後者2つは手術時間延長,出血量を助長させる原因であった。患者の安全を考慮すれば,BOPとしてLSCを選択して腹腔鏡手術で完遂することが望ましい可能性がある。
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