日本外科感染症学会雑誌
Online ISSN : 2434-0103
Print ISSN : 1349-5755
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原著
  • 伊藤 千尋, 船水 尚武, 曽我部 恭成, 岩田 みく, 坂本 明優, 西 悠介, 新恵 幹也, 浦岡 未央, 永岡 智之, 本庄 真彦, ...
    2024 年 20 巻 5-6 号 p. 519-526
    発行日: 2024/09/11
    公開日: 2024/09/11
    ジャーナル 認証あり

    【目的】オラネキシジングルコン酸(olanexidine gluconate:以下,OLG)とポビドンヨード(povidone-iodine:以下,PVI)による皮膚消毒後の表層切開創の手術部位感染(surgical site infection:以下,SSI)予防効果を後ろ向きに比較した。【方法】2018年10月から2023年3月までに当科で開腹肝切除,または膵切除の予定手術を受けた患者を対象とした。2020年12月以前は全例にPVIを使用し(PVI群),2021年1月よりOLGを導入し,以後全例に使用した(OLG群)。SSIの有無はCDCガイドラインに沿って診断し,患者の術前データや周術期データも評価した。【結果】PVI群166例,OLG群133例における表層切開創SSIの発生率はそれぞれ5例(3.0%)と3例(2.3%)(P=0.74)で有意差を認めなかった。【結論】PVIとOLGで表層切開創SSIの発生率に差はなく,患者や施設の状況,および医療コストを考慮して使い分けても良いと考えられた。

  • 石貫 智裕, 加藤 透, 合田 恵理香, 進士 誠一, 吉田 寛, 渡邉 学, 横尾 英樹, 柴田 英貴, 青木 武士, 問山 裕二, 西森 ...
    2024 年 20 巻 5-6 号 p. 527-532
    発行日: 2024/09/11
    公開日: 2024/09/11
    ジャーナル 認証あり

    【背景】消化器外科領域における手術部位感染症(surgical site infection:以下,SSI)の発症率は高いが,その医療経済的な影響に関するエビデンスは不足している。本研究は医療費に対するSSI発症の影響をオンラインによる患者報告アウトカム電子システム(electronic Patient Reported Outcome:以下,ePRO)を活用して検証した。【方法】2020年10月〜2022年8月までに肝がん,膵がんに対して施行した肝切除術症例19例,膵切除術症例18例を対象に,SSI非発症群とSSI発症群の医療費を,ePROを活用して比較した。【結果】SSIの発症率は肝切除術で16%,膵切除術で28%であった。SSI非発症群とSSI発症群における医療費は436 ± 128千円と1,208 ± 686千円で有意にSSI発症群が高かった(P < 0.01)。【結論】肝切除または膵切除術を受けた患者においてSSI発症によって医療費が大きく増加することを,ePROを活用することにより検証できた。

  • 矢口 義久, 吉田 茉実, 水谷 政之, 椙田 浩文, 尾本 健一郎, 西原 佑一, 竹内 俊介, 塩入 利一, 鈴木 隆文
    2024 年 20 巻 5-6 号 p. 533-537
    発行日: 2024/09/11
    公開日: 2024/09/11
    ジャーナル 認証あり

    高齢者における術後感染性合併症が予後に与える影響を後方視的に検討した。対象は,2013〜2019年で待機的消化器癌手術(大腸癌,胃癌)を施行した80歳以上の120症例。術後感染性合併症群(n=24,以下,PI群)と対照群(n=96,以下,non-PI群)に分け,腫瘍学的予後を比較検討した。術後5年生存率(overall survival:以下,OS)は,PI群63%,non-PI群69%であり,術後5年癌特異的生存率(cancer specific survival:以下,CSS)は,PI群88%,non-PI群81%であり,OS,CSSとも両群間で有意差を認めなかった。OSに関するCox回帰分析における多変量解析では,性別(男性),癌種(胃癌),Stageが有意な因子として選択された。高齢者においては,感染性合併症は腫瘍学的予後に影響しないと考えられた。

トピックス
  • 眞継 賢一, 細田 洋平, 清地 秀典
    2024 年 20 巻 5-6 号 p. 538-546
    発行日: 2024/09/11
    公開日: 2024/09/11
    ジャーナル 認証あり

    外科周術期における薬物療法は多様化しており,薬剤師の積極的なかかわりが求められている。今回,病棟薬剤師による情報提供の形態とその受諾率を解析することにより,消化器外科病棟における薬剤師の周術期感染管理への影響を評価した。2015年7月から2016年6月までの1年間,医師および看護師に対して病棟薬剤師が行った医薬品情報提供について調査した。医師へ薬剤師から積極的に情報提供した能動的情報提供件数の割合は43%,感染症領域に関する情報提供割合が29%と最も多かった。受諾率は医師,看護師ともに高率であった。周術期で汎用される注射用抗菌薬cefmetazoleのantimicrobial use density(AUD)/days of therapy(DOT)は有意に増加していたことから,情報提供による薬物療法支援は,抗菌薬適正使用の推進に貢献し集学的治療におけるチーム医療の一翼を担う重要なものと思われた。

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