日本外科感染症学会雑誌
Online ISSN : 2434-0103
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特集:日本版敗血症診療ガイドライン2020
巻頭言
総説
  • 小倉 裕司, 江木 盛時
    2022 年 18 巻 3-4 号 p. 333-338
    発行日: 2022/08/15
    公開日: 2022/08/15
    ジャーナル 認証あり

    日本版敗血症診療ガイドライン(J-SSCG)の改訂に際し,一般臨床家だけでなく多職種医療者にも理解しやすく,かつ質の高いガイドラインとすることをめざした。J-SSCG2020では新たに4領域(Patient- and Family-Centered Care,Sepsis Treatment System,神経集中治療,ストレス潰瘍)を加え,22領域118の重要臨床課題(CQ)を抽出した。委員25名を中心に,多職種(看護師,理学療法士,臨床工学技士,薬剤師)・患者経験者も含めたワーキンググループメンバー,両学会の公募によるシステマティックレビューメンバーによる総勢226名の参加・協力を得た。結果,118CQに対する回答として,79個のGRADEによる推奨,5個のGPS(Good Practice Statement),18個のエキスパートコンセンサス,27個のBQ(Background Question)の解説,および敗血症の定義と診断を示した。CQごとに診療フローなど時間軸に沿った視覚的情報も取り入れた。J-SSCG2020は,多職種がかかわる国内外の敗血症診療の現場において,ベッドサイドで役立つガイドラインとして広く活用されることが期待される。

  • 松田 直之
    2022 年 18 巻 3-4 号 p. 339-345
    発行日: 2022/08/15
    公開日: 2022/08/15
    ジャーナル 認証あり

    2016年に敗血症(sepsis)の定義と診断がSepsis-3として新しく公表され,日本版敗血症診療ガイドラインおよびSurviving Sepsis Campaign guidelines(以下,SSCG)は,Sepsis-3に準じて敗血症の定義を「感染に対する調節不全の宿主応答によって引き起こされる生命を脅かす臓器不全」としている。敗血症の診断においてもSepsis-3に準じて,病院外,外来,また一般病棟で感染が疑われる成人ではquick SOFAスコア(以下,qSOFA)を用いることをガイドラインで推奨してきた。そして,集中治療室ではSequential[Sepsis-related]Organ Failure Assessment(SOFA)スコアの2ポイント以上の急上昇をもって,臓器不全の進行とし,敗血症を確定診断している。その上で,敗血症性ショックは,深刻な循環障害,細胞障害および代謝異常を示し,高い死亡リスクとして敗血症の1つの区分としている。輸液蘇生をしても平均動脈圧を65mmHg以上,あるいは血清乳酸値を2mmol/L(18mg/dL)以下を維持できずに血管作動薬を必要とする場合に,敗血症性ショックと診断される。以上の敗血症の定義と診断において,診断に用いるqSOFAの感度の低さが問題とされている。SSCG2021では,敗血症や敗血症性ショックのスクリーニングツールとしてqSOFAを単独で使用しないことが推奨された。qSOFAの評価にあたっては,qSOFAを評価するタイミングやqSOFAを反復して評価する必要がある。敗血症診断後の院内死亡などの可能性については,感染症管理および多臓器管理の治療面での一層の充実が期待される。

  • 高橋 希, 中田 孝明
    2022 年 18 巻 3-4 号 p. 346-349
    発行日: 2022/08/15
    公開日: 2022/08/15
    ジャーナル 認証あり

    敗血症診療において,感染巣へのアプローチは抗菌薬投与と並んで重要な治療項目の1つである。そのためにはまず感染巣の検索が必須であり,明らかでない場合には疑われる感染巣に合わせた適切な画像検査を選択する必要がある。感染源が明らかになった場合には基本的にはドレナージ術が検討されるが,一方で感染性膵壊死については早期の侵襲的なアプローチは必ずしも推奨されない。また近年は内視鏡などを用いたより低侵襲なドレナージ術が広まっており,初期にはこれらの治療法から開始して徐々にステップアップする戦略も視野に入れる。

  • 垣花 泰之
    2022 年 18 巻 3-4 号 p. 350-359
    発行日: 2022/08/15
    公開日: 2022/08/15
    ジャーナル 認証あり

    敗血症性ショックの病態には,血管透過性亢進や血管拡張に伴う相対的な循環血液量減少だけではなく,心機能低下が混在する場合もある。個々の症例に対して病態を正確に把握し,適切な治療法を選択する必要があるため,J-SSCG 2020では,敗血症患者に遭遇した場合には,まず簡易的な心・血管エコー検査により前負荷や心機能を評価することを推奨している。循環血液量減少に対しては初期蘇生輸液を行い,血管拡張に伴うショックと判断された場合にはノルアドレナリン投与,それでも血圧が維持できない場合には,バソプレシンの追加投与が推奨されている。一方,心・血管エコー検査で心機能障害が認められた場合には,強心薬が必要であり,頻脈性不整脈に対してはβ1受容体遮断薬の投与が推奨され,重篤な心機能低下に対しては補助循環の適応も検討されている。本稿では,敗血症性ショック患者の初期蘇生・循環作動薬に関して,J-SSCG 2020が提示しているCQ/Answer,診療フローを解説する。

  • 畠山 淳司
    2022 年 18 巻 3-4 号 p. 360-367
    発行日: 2022/08/15
    公開日: 2022/08/15
    ジャーナル 認証あり

    今日の救急集中治療医学の発展により,重症患者の短期アウトカムは飛躍的に向上したが,それに伴いICU退出後にもさまざまな後遺症に苦しんでいる患者が増加していることが無視できない状況となっている。2012年にSociety of Critical Care MedicineがICU-acquired weakness(以下,ICU-AW)やPost-intensive care syndrome(以下,PICS)という概念を提唱し,それをきっかけにPICS/ICU-AWに関するさまざまな報告がなされるようになった。PICSやICU-AWは敗血症患者にも密接に関与していることが示唆されており,日本版敗血症診療ガイドライン2020では独立した章として取り上げられている。本稿では,まずPICSおよびICU-AWについて概説し,ガイドラインで取り上げたclinical questionについて解説する。

  • 敗血症関連脳障害を中心に
    黒田 泰弘
    2022 年 18 巻 3-4 号 p. 368-376
    発行日: 2022/08/15
    公開日: 2022/08/15
    ジャーナル 認証あり

    敗血症における脳障害は,1.狭義の敗血症関連脳障害(sepsis-associated acute brain dysfunction:以下,SABD),2.広義のSABD,3.敗血症に合併した新たな脳神経疾患,に分けられる。狭義のSABDは炎症性メディエーターによる脳への直接的影響により生ずる。一方,広義のSABDは敗血症による脳以外の臓器障害または薬剤などによって間接的に引き起こされる。SABDは,敗血症関連臓器障害のうちで最も頻度が高く,敗血症患者の最大70%が罹患し,他の臓器が侵される前に発症することが多い。SABDは症状が非特異的であり,病歴も加味した除外診断が重要である。1は敗血症の治療が中心となるが,2および3は治療の追加や治療内容の早期変更が必要な場合がある。

  • 河合 佑亮, 西田 修
    2022 年 18 巻 3-4 号 p. 377-387
    発行日: 2022/08/15
    公開日: 2022/08/15
    ジャーナル 認証あり

    集中治療領域における短期の生命予後改善の一方で,集中治療後症候群(Post intensive care syndrome:以下,PICS)や,ICU滞在中の療養環境の調整,医療者・患者・家族のかかわりなどに関する課題が浮き彫りになりつつある。「Patient–and Family–Centered Care」は,患者と家族の精神に関連した内容,ICUにおける療養環境や意思決定支援などに関する内容を扱う領域と位置づけ,6つのCQで構成されている。CQ20–1:患者と家族に対する,PICSおよびPICS–Fに関する情報提供の方法は?CQ20–2:敗血症患者あるいは集中治療患者に対してICU日記をつけるか?CQ20–3:集中治療中の身体拘束(抑制)を避けるべきか?CQ20–4:睡眠ケアとして換気補助または非薬物学的睡眠管理を行うか?CQ20–5:ICUにおける家族の面会制限を緩和するべきか?CQ20–6:患者の価値観・考え方等を尊重した意思決定支援の方法は?これらはエビデンスに乏しい領域であるが,今後の敗血症診療,集中治療の質を向上し得る非常に重要な領域である。

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