現代ファイナンス
Online ISSN : 2433-4464
17 巻
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
論文
  • 鈴木 健嗣
    2005 年 17 巻 p. 3-25
    発行日: 2005/03/31
    公開日: 2018/12/07
    ジャーナル オープンアクセス

    市場間競争は新興市場のい場・廃止基準の設定に大きな影響を与えている.しかし,こうした基準が発行企業に与える影響についての分析は少ない.本稿の目的は,上場・廃止基準の違いが発行企業の新規公開費用(引受手数料,公開価格のディスカウント)に与える影響について,2000年から2002年までに新興三市場で公開した企業380社を対象に検証することにある.主要な結果は以下のとおりである.(1)新興三市場で新規公開費用が児なっている.(2)マザーズやナスダック・ジャパンで公間した企業が支払う引受手数料はジャスダックで公開した企業と比べて高い.(3)ナスダック・ジャパンのグロース基準で公開した企業はその他の市場で公開した企業より初期収益率が高い.以卜の結果は,上場・廃止基準が厳しい市場で公開した企業ほど全体の新規公開費用が低くなることを意味しており,発行企業の市場選択や市場の基準設定に対し示唆を与える結果といえる.

  • 豊福 建太
    2005 年 17 巻 p. 27-46
    発行日: 2005/03/31
    公開日: 2018/12/07
    ジャーナル オープンアクセス

    銀行規制に関する新しい流れとして,劣後債による市場規律を活用するという動きがある.これは,規制当局だけでなく投資家にも銀行の情報を収集させることで,より効率的に銀行を規律付けることを狙ったものである.そこで重要になってくるのが,銀行規制の中で規制当局と投資家がどのような役割を果たすべきかという点である.本論文では,このテーマについて,金融契約理論や情報の経済学を用いて分析する.そして,契約が不完備なために銀行のリスクテイクの可能性がある状況では,銀行の情報が劣後債の金利に正確に反映するときよりも正確に反映しない時の方が,市場での価格決定の歪みを利用することでかえって効率的に銀行を規律付けられることを示す.さらに,規制当局がモニタリングして情報間示を行うことが,場合によっては効率的でなくなることを導く.

  • 石川 大輔
    2005 年 17 巻 p. 47-62
    発行日: 2005/03/31
    公開日: 2018/12/07
    ジャーナル オープンアクセス

    本論文は,銀行の異時点間の最適化行動により導出された動学的なオイラー方程式を推定することにより,1990年以降における銀行部門の脆弱性と銀行貸出との関連を分析したものである.本論文による推定結果は,1996年9月以降において,銀行部門の脆弱性が貸出を抑制していたという仮説を支持している.さらに本論文では,推定結果を用いて,タイムスパンを四半期とするダイナミック・シミュレーションを行った.その結果,第一に,1998年第1四半期と1998年第3四半期において,いわゆる「貸し渋り」が発生していたこと,第二に,1998年第4四半期から1999年第1四半期にかけて,資本の増加による脆弱性の改善が貸出の落ち込みを緩和していたこと,第三に,1999年第2四半期以降の貸出の落ち込みは,脆弱性の悪化を反映しているものではないこと,を明らかにした.

  • 牧田 修治
    2005 年 17 巻 p. 63-81
    発行日: 2005/03/31
    公開日: 2018/12/07
    ジャーナル オープンアクセス

    本論文の目的は,わが国上場企業の自社株買いがフリーキャッシュフロー仮説と整合的であるかどうかということを検証することである.本論文では,(1)自杜株買いのアナウンスメントは,成長性や収益性の限界に直面し,フリーキャッシュフローが豊富な企業によって行なわれている,(2)アナウンスメント直後にはプラスの超過収益率が生じる,そして,(3)アナウンスメント後にはフリーキャッシュフローが減少し設備投資は増加しない,ということが明らかになった.フリーキャッシュフロー仮説と整合的な結果である.自杜株買いは,企業経営の非効率化を回避する財務手段の一つとして機能していると評価できる.日本企業は,長らく1980年代後半のフリーキャッシュフローに惹起された過剰投資の調整に悩まされてきたが,自社株買いは,こうした非効率的な投資を抑制する新たな財務手段として機能していることが示された.

  • 瀬古 進, 鈴木 淳生, 澤木 勝茂
    2005 年 17 巻 p. 83-81
    発行日: 2005/03/31
    公開日: 2018/12/07
    ジャーナル オープンアクセス

    本論文では,償還条項付きアメリカンオプションの評価について議論する.Kifer[2000]はこのようなオプションをゲームオプションと呼んでいるが,既存の金融商品では償還条項付き転換社債が償還条項付きアメリカンオプションの例であろう.アメリカンオプションの価格は,早期行使プレミアムの部分だけヨーロピアンオプションの価格より高く評価されるように,償還条項付きアメリカンオプションはアメリカンオプションより償還の権利の部分だけ安く評価される.これを買い戻し割引額と呼ぶ.本論文では,償還条項付きアメリカンコールの価格は,ヨーロピアンコールの価格から買い戻し割引額を差し引いた値に等しいことを示す.さらに二項モデルによる数値例では,償還条項付きアメリカンプットの価格を計算し,通常のアメリカンプットおよびヨーロピアンプットの価格と比較・検討する.

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