現代ファイナンス
Online ISSN : 2433-4464
43 巻
選択された号の論文の3件中1~3を表示しています
論文
  • 祝迫 得夫
    2021 年 43 巻 p. 1-25
    発行日: 2021/04/17
    公開日: 2021/04/17
    [早期公開] 公開日: 2020/09/29
    ジャーナル 認証あり

    日本の急速な高齢化の進行は,家計の貯蓄率や資産選択に大きなインパクトを与えると考えられている.実際は,家計の貯蓄水準は2000年代に入った直後に大きく低下したが,その後はライフサイクル・モデルに基づく予測と比較して,相対的に高い水準に留まっている.その一方で,日本の家計の年金水準は国際的な比較で見てあまり高くないにもかかわらず,老後の収入を年金に依存する割合が高く,金融資産の構成は安全資産に大きく偏っている.したがって年金社会保障制度の維持可能性を担保するためには,家計の自助努力による資産形成を促すための投資環境を整備する制度改革を早急に行うべきであり,そのような改革は高齢家計間の不平等にも配慮したものである必要がある.また,積極的な資産運用を促すための政策・改革の一つの鍵として,家計にとっての資産運用コストを低下させるために,金融経済情報の取得をより容易なものにする必要がある.日本の家計が実際どのように金融経済情報を取得しているかについて,行動ファイナンス的な視点から分析を行った結果,リスク資産を保有しない家計の多くは資産運用に興味がなく,情報収集も行っていないが,リスク資産保有家計と比較しても長い時間を情報取得に費やしているが株式等に投資をまったく行っていない家計も一定割合いることがわかった.後者を積極的な資産運用に引き入れるための方策を考えることは,個人投資家を巡る金融制度・税制改革を成功させるために極めて重要である.

  • 霧生 拓也, 枇々木 規雄
    2021 年 43 巻 p. 27-48
    発行日: 2021/04/17
    公開日: 2021/04/17
    [早期公開] 公開日: 2020/09/29
    ジャーナル 認証あり

    資産価格変動要因の特定はファイナンスにおける重要なトピックの一つである.その中でも日次など短期の変動要因を特定することは,経済イベントと紐づけて議論するために特に重要である.しかし,短期の変動要因の分析に適した方法は少なく,関連した研究はこれまでなされていない.本研究では,オプション価格情報を利用した変動要因の分解方法を提案し,米国株式指数の日次リターンの変動要因を分析する.具体的にはRecovery Theoremを用いてオプション価格から推定した実分布とSDFをもとに,リターンをキャッシュフロー要因と割引率要因に分解する.オプション価格は情報を迅速に織り込むため,短期の変動要因の分析に適すると考えられる.実証分析の結果から,キャッシュフロー要因が短期の価格変動の主要因であることが明らかになった.ただし,FOMCアナウンスメント日には割引率要因の影響がそれ以外の日と比べて大きくなることもわかった.

  • 安藤 希
    2021 年 43 巻 p. 49-74
    発行日: 2021/04/17
    公開日: 2021/04/17
    ジャーナル 認証あり

    本研究は,金融市場での損切りの重要性を教育的観点から指導する介入処置が,投資に関する典型的な行動バイアスであるdisposition effect(気質効果)に与える因果効果を実証的に検討するものである.具体的には,投資家に「ルールに従い損切りを実施するべき」という教育的指導を行い,disposition effectが軽減するかどうかを検証した.本研究の特徴として,模擬市場を用いたランダム化比較試験(RCT)を行った点に加えて,先物取引を分析対象とすることでロングポジションとショートポジションとを区別しながら処置効果を推定した点が挙げられる.分析の結果,第一に,損切りの重要性に関する教育的指導によりdisposition effectが軽減された.第二に,ショートポジションの場合に比して,ロングポジションの場合においてこの処置効果がより強く確認された.第三に,相場にトレンドがある場合においてこの処置効果がより強く確認された.

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