多期間モデルにおける最適ポートフォリオ理論の基本的枠組みはMerton[1969, 1971],Samuelson[1969]らによって提示された.ところが,多期間モデルにおける最適解を具体的に求めることが難しいため,一期間モデルでの最適ポートフォリオ理論,たとえばMarkowitz[1959]の平均分散モデルや,Sharpe[1964],Lintner[1965]のCAPMが学界だけでなく実務界にも大きな影響を与えたのに比べると,多期間のポートフォリオ理論が実際に利用されることは少ない.一方で,近年の市場データ分析から,一期間モデルを繰り返し解くことによって得られる解は,多期間モデルの解と異なることが予想される.実際,最近発表されたいくつかの論文はこの予想を支持している.本稿ではこれらの論文の結果をまとめ,多期間モデルの最適解の特徴を探り,今後の発展の方向性を探る.
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