コーポレート・ファイナンスにおいて,実務では「財務の柔軟性」が最重要視されているにもかかわらず,学術では,「最適資本構成」が最重要課題とされてきた.学術と実務とのギャップを埋めるべく,財務政策を包括的に理解することが必要である.本稿では,資本構成そのものではなく,資金の流れこそが一番大事であることを再認識した上で,資金の流れを中心とした企業の投資に基づく負債と流動性の統合的マネジメントについて,不確実性下における動学的アプローチを用いた理論研究を中心に整理していく.
取引所の定める呼値単位(株価の刻み)は,投資家の注文執行戦略や流動性供給の重要な決定要因である.呼値単位が過大な場合,指値注文は最良気配に集中し執行待ち時間が長くなる.一方,呼値単位が細分化されると,ビット・アスク・スプレッドの内側に指値注文を入れるアンダーカット注文が可能になり,迅速にポジションを解消できるようになる.本稿では,東京証券取引所の2014年7月の呼値単位の制度変更前後を分析し,マーケットメイク型のHFT(高頻度取引業者)が,流動性供給において収益性が低下した銘柄を避けるのか,またはマーケットメイク業務の効率を高める代替的行動を取るのか,について究明した.マーケットメイク型のHFTの流動性供給行動は,相対呼値が大きいほど活発になるが,相対呼値が10 BPより大きい場合には供給行動が低下する傾向が見られた.呼値単位は過小な場合のみならず過大な場合も,流動性供給の低下要因となる可能性を示唆している.
地域銀行の気候変動リスクは営業基盤とする地域の特性の影響を受けるため,直面するリスクが大きく認識されやすい地域とされにくい地域が存在する可能性が指摘されている.しかし,近年新たに認識され始めた気候変動リスクは定量的に評価する方法が確立されておらず,日本の地域銀行の気候変動リスクをクロスセクションで比較した研究はあまり進んでいない.本研究では,株価や財務諸表等の公開情報のみで計測可能な気候変動リスク指標CRISKを用いて,2015~年から2023~年までの日本の地域銀行73~行の気候変動リスク,特に移行リスクを定量的に分析する.分析結果から,地域銀行の移行リスクは営業基盤とする地域の産業構成の影響を受けており,地域銀行のブラウン産業に対する融資が増加することで移行リスクが高まることを示す.また,気候関連情報開示によって市場参加者が認識した移行リスクは,地域銀行の株価に織り込まれる可能性があることを明らかにする.
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