現代ファイナンス
Online ISSN : 2433-4464
最新号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
論文
  • 藍口 梨里花, 池田 直史, 井上 光太郎
    2023 年 46 巻 p. 1-21
    発行日: 2023/10/31
    公開日: 2023/11/14
    [早期公開] 公開日: 2023/03/14
    ジャーナル 認証あり

    本稿では,機関投資家の受託者責任の認識が法体系で異なることから,環境・社会側面を配慮するESG投資を通した企業への効果が,機関投資家所在国の法体系で水準に差が生じるかを検証した.具体的には,アメリカ・日本・フランス・ドイツ・イギリスの5か国の主要企業を対象に,各企業に投資する機関投資家の所在国85ヵ国の法体系に基づき,機関投資家の持株比率を集計した.そして,外国機関投資家,国内機関投資家それぞれから投資先企業のESG活動への働きかけを検証した.本稿の結果は,機関投資家の所在国85か国の法の起源が各国に個別の他の要因と相関している可能性を否定できない点で留意点はあるが,シビルロー体系国の機関投資家は企業の環境・社会配慮活動に対し働きかけ,コモンロー体系国の機関投資家はそうした働きかけが確認できないことを示す.これは機関投資家がそれぞれの固有の制度的背景に基づき,企業のESG活動に影響を持つことを示唆する.

  • 今仁 裕輔
    2023 年 46 巻 p. 23-46
    発行日: 2023/10/31
    公開日: 2023/11/14
    ジャーナル 認証あり

    本稿では銀行からの資金供給が企業の取引ネットワーク再構築に与える影響を検証した.具体的には,既存の取引相手との取引打切り件数と新規の取引相手との契約件数の関係が,銀行からの資金供給によって影響を受けるかを分析した.分析の結果,企業が銀行貸出を受けているという条件付けの下,銀行貸出が多いほど,既存の取引相手との取引打切り件数と新規の取引相手との契約件数の正の関係が強くなることを確認した.この結果は,既存の取引相手との取引打切り件数と新規の取引相手との契約件数の間に存在する逆因果の問題や,銀行貸出の変数に存在する企業の需要要因による内生性に対処した上でも観察された.この結果は,銀行からの資金供給が多いほど,取引ネットワーク断絶に直面した際の取引ネットワークの回復が早くなることを示唆するものである.

  • 小澤 秀幸, 光定 洋介, 斎藤 文
    2023 年 46 巻 p. 47-69
    発行日: 2023/10/31
    公開日: 2023/11/14
    ジャーナル 認証あり

    本稿では「AI等の先進技術」(以下,先進技術)に対する積極性という企業姿勢と,「市場が評価する企業価値」(トービンのQを用いる)や企業業績(ROAを用いる)との関係を分析した.まず有価証券報告書のテキスト分析を行い先進技術に積極的な企業姿勢を定義した.次に先進技術に積極的な企業と同業種内で同規模のそうでない企業とでマッチングを行い,企業価値や企業業績に与える影響を多変量解析により検証した.

    分析の結果,企業価値への影響では,企業価値に対しては直ちに有意にプラスの効果があった.この結果は先進技術に積極的な企業姿勢をもつ企業群の将来キャッシュフロー予測値を市場が上昇させたと解釈することもできる.また,企業業績への影響では,2期後の企業業績に対して有意にプラスの効果があり,ROAが改善した.

    これらの結果から,先進技術に積極的な企業姿勢が,企業文化などと同様に無形資産と見做すことができるという可能性が示唆された.

報告
feedback
Top