ジェンダー史学
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  • 神山 美奈子
    2024 年20 巻 p. 5-19
    発行日: 2024/10/13
    公開日: 2025/10/13
    ジャーナル フリー

    はじめに

    2022 年、韓国で行われた第20 代大統領選挙において「ジェンダー」というキーワードは、選挙結果に大きな影響を与えた。また世界的な「#MeToo」の拡散によって韓国では有力な政治家たちが失脚するケースもあった。最近の総選挙(2024 年4 月10 日)においては急進的フェミニズム(radical feminism)のカラーを全面に出した「緑の正義党(녹색정의당)」が選挙で惨敗し、6 議席あった議席数が0 になった(洪 2022)。このように韓国の政治及び社会は、アメリカの政治のようにフェミニズムやジェンダーの問題が重要な判断基準として扱われている。また、伝統的・保守的・排他的なジェンダー意識と現代的・進歩的・開放的なジェンダー意識が衝突・対立し、激しい論争が行われている代表的な「場」が韓国のキリスト教界だ。本論稿では、このような韓国のキリスト教界におけるフェミニスト神学の研究史と最近の動向及び課題について考察することによって、韓国特有の社会現象の背景を探り、日本のフェミニスト神学との対話の可能性と展望を示したい。

  • ――フェミニスト神学とクィア神学――
    工藤 万里江
    2024 年20 巻 p. 21-33
    発行日: 2024/10/13
    公開日: 2025/10/13
    ジャーナル フリー

    はじめに

    多くの伝統宗教と同じく、キリスト教は強固な家父長制と異性愛主義を深く内包し、それらを維持・強化してきた宗教である。ローマ・カトリック教会をはじめとする「伝統的」キリスト教会では何世紀にもわたって男女二元論、男女相補論1 、男性優位主義、生殖中心主義といった性規範が保持されてきた。これらに基づき中絶・避妊といったリプロダクティブ・ライツや同性愛者の権利を侵害し攻撃してきたキリスト教はそれゆえ、フェミニズムやクィア・アクティビズム/理論にとっては往々にして対峙すべき「敵」ともなってきたのである。

    しかしそうしたキリスト教の内部にあって、家父長制や異性愛主義を支える教義や聖書解釈に異議を唱え、むしろ女性差別や性的マイノリティ差別に抵抗する力となりうる教義や聖書解釈を探る動きが出てきた。それらがフェミニスト神学やゲイ神学、レズビアン神学、クィア神学等と呼ばれる思想潮流である。本稿ではこれらの内部に分け入ることで、それらが真に抵抗実践となりうるのか、そこにどのような課題と可能性があるのかを考察する。

New Trends Abroad
  • ――実写BL がもたらした新たな展開――
    堀 あきこ
    2024 年20 巻 p. 47-59
    発行日: 2024/10/13
    公開日: 2025/10/13
    ジャーナル フリー

    はじめに

    本稿の課題はBL(ボーイズラブ)の研究動向を素描することにある。しかし、少し遠回りをして日本のBLの概説から本稿を始めたい。その理由は、BLに関わる研究において、歴史的な背景やBL コンテンツの差異を無視して書かれたものが散見されるためである。たとえば、BLには、「少年愛」やJUNE、やおい、ボーイズラブという成立期の異なるサブジャンルがあるが、これらの混同がしばしば見られる。また、BLには小説やマンガのほかにも多くのメディアがあるが、BL小説のテクスト分析結果を、そのままBLマンガ分析にスライドさせたものなどがある。BLという共通項によって、メディアの特徴やコンテンツの違いをないまぜにして論じることは、研究として問題があると考える。

    こうした理由から、本稿では、1節でBLの概説を述べ、2節でサブジャンルの説明と、時代ごとの研究を紹介する。3節ではコロナ禍に世界的なブームとなった実写BLの影響について論じ、最後にLGBTQとの関係からの今後の研究課題を検討する。

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