日本プライマリ・ケア連合学会誌
Online ISSN : 2187-2791
Print ISSN : 2185-2928
ISSN-L : 2185-2928
33 巻 , 4 号
選択された号の論文の16件中1~16を表示しています
Editorial
原著(研究)
  • 黒谷 万美子, 中出 美代
    2010 年 33 巻 4 号 p. 350-359
    発行日: 2010年
    公開日: 2015/05/30
    ジャーナル フリー
     近年, 労働者の受けるストレスは拡大する傾向にあり, 仕事に関して強い不安やストレスを感じている労働者が6割を超える状況にあり, 心の健康問題が労働者, その家族, 社会に与える影響は, ますます大きくなっている. また, 定期健康診断における有所見者も年々増加しており, 心身両面にわたる健康増進対策が急務である. そこで本研究は, 職域における生活習慣, 食行動とストレス反応の実態を把握するとともに, ストレス反応と生活習慣や食行動等の関連要因について検討することを目的とし, 2006年8月にA社 (小売業) 社員 (980名) を対象に, 自記式アンケートを実施 (回収率63.7%) し, そのうちほとんど記入されていないものを除く有効回答624名について分析した. ストレス反応と生活習慣との関連をみた結果, 食行動, 運動, 体型満足との関連が認められた. また心理的ストレス反応と関連が高かった項目は, 心理的な仕事の量的負担, 仕事における部署内での対人関係, 上司との対人関係, 生活満足度と食行動の歪みであり, 身体的ストレス反応と関連が高かった項目は, 心理的な仕事の量的負担, 自己技術の仕事への活用, 生活満足度と食行動の歪みであった. 生活習慣を変える行動変容支援とともに, 上司からの職場内でのサポートを高める支援がストレス対策を考える上では不可欠であることが示唆された. 管理監督者に対する教育を効果的に行うことは言うまでもないが, それ以外の種々の機会を利用した従業員や家族に対する長期的な教育・相談活動が重要であると考える.
  • 若林 崇雄, 宮田 靖志, 山上 実紀, 山本 和利
    2010 年 33 巻 4 号 p. 360-367
    発行日: 2010年
    公開日: 2015/05/30
    ジャーナル フリー
    【目的】
     内科医撤退を経験した基幹病院を利用する患者・住民が, 医師・医療についてどのような想いを抱いているのかを明らかにする.
    【方法】
     一時内科医が撤退し, 現在は診療を再開しているA市の基幹病院を利用する患者・住民を対象とした.
    1. 質問紙作成
    2回のフォーカス・グループ・インタビューをもとにテーマとサブテーマを抽出する質的な手法により質問項目を作成した.
    2. 質問紙調査
    A市基幹病院を利用する患者を対象とした.
    【結果】
     有効回答は399名. 内科医師撤退の原因として, 81%の患者が大学, 79%が国の制度, また72%が病院と回答した. 内科医師が撤退したことは医師の身勝手かどうかについては50%ずつに意見が分かれた. また74%の患者は内科医師撤退が患者に不信感を与えたと回答した. 88%の患者は医師が患者に尽くしていると回答し, 88%が勤務条件で病院を移ることは仕方ないと回答したが, 96%の患者は医師に患者のために尽くすことを求めていた. 85%の患者は医師を信頼できると考えていた.
    【結論】
     医師撤退を経験した患者は撤退により現実的に困っており, これは患者の利便性が損なわれるため当然と考えた. また撤退の原因として医療に関する組織に対し不信感を持っていることが示唆された一方で, 医師個人に対しての感情は複雑であった. 多数の患者は医師を聖職と考え, 医師撤退を経て尚, 医師の人間性やコミュニケーションへ期待し信頼していると考えられたが, 医師をサービス業と捉える患者も見られ, 信頼の構造に変化がある可能性も示唆された.
  • 小﨑 真規子, 早野 恵子, 徳田 安春, 尾藤 誠司
    2010 年 33 巻 4 号 p. 369-377
    発行日: 2010年
    公開日: 2015/05/30
    ジャーナル フリー
    【目的】女性内科医の仕事満足度やメンタルヘルス, 就労環境など医師としての職業生活について記述し, 男性のそれと比較検討する.
    【方法】内科勤務医を対象に郵送法による自記式質問紙票調査を行った. 調査票は仕事満足度, 外来診察時間, 就労環境等の質問項目を含み, これらについて男女間で比較した.
    【結果】234名を解析対象とした (女性 : 59名). 女性医師は男性医師に比べ一人の患者にかける診察時間が長かった (初診P<0.01, 再診P=0.046). 当直時には女性医師も男性医師と同程度の連続勤務についていたが (平均31.1時間), 質を維持できると考える最長の連続勤務時間 (限界連続勤務時間) について, 女性医師は男性医師より有意に短く回答した (-4時間, P=0.02).
    【結論】女性医師は男性医師より患者あたりの診察時間が長く, 限界連続勤務時間が短かった.
原著(症例報告)
  • 横田 昌, 浦崎 裕二, 布村 眞季
    2010 年 33 巻 4 号 p. 378-382
    発行日: 2010年
    公開日: 2015/05/30
    ジャーナル フリー
     アジア変異型血管内大細型B細胞リンパ腫 (Asian variant of intravascular large B-cell lymphoma 以下AIVL) は多彩な臨床症状を呈し, 腫瘍細胞が全身臓器の小血管内に増殖することを特徴とする比較的まれなリンパ腫である. 症例は85歳女性. 意識障害と腹痛を主訴に当院へ紹介入院となった. 低酸素血症を呈し, 画像上肝脾腫を認めたが, リンパ節腫脹はなかった. 盲目的皮膚生検にてAIVLと診断した. 全身状態は急速に悪化し第10病日に死亡した. 剖検ではほぼ全臓器, 全組織の小血管内に腫瘍細胞が塞栓状に増殖していた. 一般に血管内大細胞リンパ腫 (intravascular large B-cell lymphoma 以下IVL) は多彩な臨床症状を呈するため, プライマリー・ケア医が担当することがあると考えられる. 短期間のうちに全身状態が悪化する症例もある一方, 化学療法が奏功する例も少なからず知られている. 中高齢者に原因不明の血球減少, 発熱, 低酸素血症や神経症状を認めた場合, IVLは重要な鑑別疾患である.
原著(活動報告)
  • 一瀬 直日
    2010 年 33 巻 4 号 p. 383-392
    発行日: 2010年
    公開日: 2015/05/30
    ジャーナル フリー
    【目的】国内には約三千の介護老人保健施設 (老健) があり, 利用者の健康を管理する医師が配置されている. 施設担当医の認定はなく, 医療管理を支援する生涯教育プログラムもない. 老健では様々な医療的問題が生じるが, 医療費を介護報酬から支出するため, 安い費用で利用者の安全を最大限守ることが求められている. そこで施設担当医の持つ生涯教育ニーズを調査した.
    【方法】質的調査を行った後にアンケートを作成し, 兵庫県下35の老健から医師の持つ学習ニーズと希望する学習形式の回答を得た.
    【結果】学習ニーズは「認知症の診断」「認知症周辺症状への対応」「職員教育」に高かった. 希望する学習形式は, 研修会での講義, 書籍・雑誌に多かった. インターネット上の学習サイトの利用希望も4割にみられたが, 医師経験年数40年以上では好まない傾向があった. (回収率31%)
    【結論】本結果をふまえ, 老健施設医向けの教育プログラム開発を行いたい.
  • 秋枝 克昌, 村田 和弘, 木村 有花
    2010 年 33 巻 4 号 p. 393-399
    発行日: 2010年
    公開日: 2015/05/30
    ジャーナル フリー
    今回, 特別養護老人ホームに嚥下リハビリテーションを導入した結果, PEGを造設して以来, 約4年間経口摂取をしていなかった入所者が経口からの摂取が可能となり, FIM・FG・DSSともに多少の改善が認められた. PEGによる栄養管理は, 長期間の経腸栄養療法として認識されているが, そのほとんどが, ” 生きるためのPEG” で, 経口摂取を目的とした “食べるためのPEG” は少ないのが現状である. 今後, PEGは, 単なる長期間の経腸栄養オプションではなく, 再度経口摂取を可能とするための “食べるためのPEG” を目的とすることが望ましいと考える. また, リハ担当看護師・介護職員の協力のもと嚥下障害の疑いのある入所者の栄養管理, 定期的なフォローアップを行い, ADLの維持向上とあわせて, 嚥下リハ, 口腔ケア, 胃食道逆流の対策を継続し嚥下機能を維持, 向上させる必要があると考えられた.
  • 長田 孝司, 鈴木 弘誉, 山田 重行, 山村 恵子
    2010 年 33 巻 4 号 p. 400-407
    発行日: 2010年
    公開日: 2015/05/30
    ジャーナル フリー
    【目的】
    平成21 (2009) 年6月1日より改正薬事法が施行され, 薬剤師は第1類医薬品を購入する顧客に対して安全かつ適正な使用ができるよう情報提供を行うことが義務付けられた. 第1類医薬品に関する適切な情報を提供するために顧客の健康ニーズをアンケート調査した.
    【方法】
    愛知県, 岐阜県, 三重県のドラッグスギヤマにおいて第1類医薬品を購入した顧客を対象とし, 薬剤師が購入した第1類医薬品に関する情報提供を行った後, アンケート用紙を配布した. 記入したアンケート用紙は, 郵便にて直接, 当研究室で回収した.
    【結果】
    第1類医薬品の顧客のうち66.4%が購入を繰り返し, 77.6%が「満足」と回答した. また, 90%以上の顧客は, 購入時の薬剤師の説明について「分かりやすい」と感じているが, 64.2%の顧客が薬剤師の説明がないと買えないのは不便と思っていることも明らかとなった. そして, 今回アンケートに回答した顧客の6.0%に一般用医薬品使用後に調子が悪くなった経験があった.
    【結論】
    添付文書を読まない顧客に対する薬剤師の説明や相談を丁寧でわかりやすいものにすることで, 第1類医薬品購入時の利便性意識を向上し, 安全で有効なセルフメディケーションの推進を加速すると考えられた.
ご案内
第1回 日本プライマリ・ケア連合学会学術大会 記念シンポジウム論文
インタビュー:ジェネラリスト温故知新
臨床医学の現在(プライマリ・ケアレビュー)
ジェネラリストに学ぶ診断推論
  • 福原 俊一
    2010 年 33 巻 4 号 p. 423-426
    発行日: 2010年
    公開日: 2015/05/30
    ジャーナル フリー
     ジェネラリストの使命は, 診断をつけることよりも, むしろ将来の患者のアウトカムを可及的最善に維持・改善すること, 少なくとも悪化の速度を遅らせることにある. この使命の達成を最終的に左右するのはアクション (予防, 治療, 指導) であり, 診断推論も「アクションのための推論」でなければならない. 推論とアクションは, 相即不離なのである.
    アクションは, 適切なだけでなく, 適時でなければならない. 同じアクションでも適時でなければ, 無意味, 時に有害でさえあり得る. この点で「時間の軸」は極めて重要である. 医療者がともすると過依存しがちな検査などの「情報」は, 得られた瞬間に固定され, 「過去」となる. 重要なのは, 患者の「未来」=アウトカムである.
    医療を受けることは, それ自体が事故や死亡リスクの高い行為である. 患者の「現在」を, 鋭い観察と感性で捉え, 「未来」を見立て, 適切なアクションを適時にとることこそが, 医療に内在するリスクを少しでも低下させる手立てである.
省察的実践家入門
  • 永井 睦子
    2010 年 33 巻 4 号 p. 427-430
    発行日: 2010年
    公開日: 2015/05/30
    ジャーナル フリー
     看護や看護教育の世界でも『省察的実践家 (reflective practitioner)』という考え方が注目を集めるようになってきている. D.ショーンはJ.デューイの探究理論を発展させ, 専門家像のパラダイム転換を示し, 専門職としての教師や看護師の実践を勇気づけることにも貢献した. 臨床経験を積んだ看護師や看護師としての臨床経験を基盤に看護教育に携わる看護教育者も『省察的実践家』であることはいうまでもない. 『省察的実践家』にとって自らの実践を省察していくことで, 自らに身体化されている「臨床の知」を自覚化し, 成長していくことはきわめて重要であるといえる. そういった視点から本稿では筆者らが看護教育において取り組んでいる授業の省察 (reflection) について紹介する.
プライマリ・ケア アーカイブ
  • 小泉 俊三
    2010 年 33 巻 4 号 p. 431-436
    発行日: 2010年
    公開日: 2015/05/30
    ジャーナル フリー
     説明責任と透明性を強く求められる医療変革の時代にあって総合診療が果たすべき役割について医学教育の観点から略述した.
     はじめに医師養成の側面から明治期のドイツ医学導入, 戦後の国民皆保険制度, 更にインターン制度の廃止に至るわが国の医療史を振り返り, 次いで日本医学教育学会の発足と医学教育ワークショップの開催, その後のプライマリ・ケア改革運動, 家庭医療制度導入の試みとそれに続く大学病院や研修病院における総合診療部門の設置, 日本総合診療医学会設立の経緯をたどりながら, 総合診療医の基本的価値観 (core value) が, 新医師臨床研修制度で取り上げられた行動目標, 患者安全のための医療人教育におけるコア・コンピテンシー概念, 新しいプロフェッショナリズム教育などと共通するものであることを示した.
     最後に, 医療改革における総合診療医のフロントランナーとしての役割が, 地域の第一線医療においても, 研修病院や大学病院においても, また, 患者中心のチーム医療, EBM, 医療の質と患者安全などの医療人としての行動規範の領域においても, 更には, 卒前・卒後の医学教育改革においても重要であること, また, 総合診療の将来にとっては総合診療を担う次世代の医師をいかに養成するかが特に重要であることを強調した.
feedback
Top