説明責任と透明性を強く求められる医療変革の時代にあって総合診療が果たすべき役割について医学教育の観点から略述した.
はじめに医師養成の側面から明治期のドイツ医学導入, 戦後の国民皆保険制度, 更にインターン制度の廃止に至るわが国の医療史を振り返り, 次いで日本医学教育学会の発足と医学教育ワークショップの開催, その後のプライマリ・ケア改革運動, 家庭医療制度導入の試みとそれに続く大学病院や研修病院における総合診療部門の設置, 日本総合診療医学会設立の経緯をたどりながら, 総合診療医の基本的価値観 (core value) が, 新医師臨床研修制度で取り上げられた行動目標, 患者安全のための医療人教育におけるコア・コンピテンシー概念, 新しいプロフェッショナリズム教育などと共通するものであることを示した.
最後に, 医療改革における総合診療医のフロントランナーとしての役割が, 地域の第一線医療においても, 研修病院や大学病院においても, また, 患者中心のチーム医療, EBM, 医療の質と患者安全などの医療人としての行動規範の領域においても, 更には, 卒前・卒後の医学教育改革においても重要であること, また, 総合診療の将来にとっては総合診療を担う次世代の医師をいかに養成するかが特に重要であることを強調した.
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