日本プライマリ・ケア連合学会誌
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34 巻, 1 号
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Editorial
原著(研究)
  • —精神科訪問看護利用者の特性と再入院との関連要因—
    定村 美紀子, 奥野 純子, 山川 百合子, 柳 久子
    2011 年 34 巻 1 号 p. 6-13
    発行日: 2011年
    公開日: 2015/05/30
    ジャーナル フリー
    【目的】精神科訪問看護利用者の特性と訪問看護利用者の調査後の入院の有無に関連する要因を明らかにする.
    【方法】精神科外来に通院する統合失調症患者で訪問看護利用者 (55名) 非利用者 (31名) を対象に, 質問紙による面接調査を実施し両群間で特性を比較した. また, 平均9カ月間の入院の有無と関連する要因を検討した. 調査項目は, 年齢, 性別, 家族状況, 精神症状, 服薬態度, 自己効力感などであった.
    【結果】全対象者の86%は家族と同居していたが, 訪問看護利用者は非利用者と比較して独居の割合が高く, 年齢も高く, 調査直近の入院期間が長く退院後の期間が短いなど継続した支援を必要としている者が多かった. また, 訪問看護利用者で入院した者は自己効力感が高かった.
    【結論】家族の支援が困難で, 症状が重度な統合失調症患者でも訪問看護を利用することで在宅生活が可能となることが示唆された. また, 患者が自己の能力を適切に判断し, 疾病管理ができるような働きかけが訪問看護に求められている.
  • —振り返りシートの枠組みによる学びの変化—
    八木田 一雄, 宮田 靖志
    2010 年 34 巻 1 号 p. 14-23
    発行日: 2010年
    公開日: 2015/05/30
    ジャーナル フリー
    【目的】地域医療実習で学生が何を学んでいるかについての研究は実施されておらず, また, 地域医療実習で家族・地域に関してどのような学びを得ているのかについての評価も実施されていない. ポートフォリオ作成により, 地域医療実習での学生の学びを把握することを目的とした.
    【方法】2006年度と2007年度の札幌医科大学5年生で実施された2週間の地域医療実習期間中, 学生は日々の振り返りシートを記載した. これをデータとして, 学生の記述から学びと考えられるものを抽出してカテゴリー別に分類した. さらに, 家族・地域に関する学びの内容を詳しく分類した. 2007年度には, 通常の振り返りシートに加え, 家族・地域に関する気づきの振り返りシートを追加し, 同様の分類を行なった.
    【結果】抽出された学びの総数は, 2006年度が2243, 2007年度が3193であった. 2006年度は, 家族, 地域に関する学びはそれぞれ5.2%, 3.7%であったが, 2007年度は10.7%, 7.9%であり, 2007年度は有意に増加していた.
    【結論】家族・地域に関する気づきの振り返りシート導入で学習の枠組みを意識することにより, 同じ体験であっても実習での学びが大きく変化する可能性がある. 地域医療実習での体験を学習目標に沿った学びにつなげるためには, 適切な学習方略を開発する必要がある. 振り返りの枠組みを設定することは, その一つになると思われた.
  • 青木 昭子, 須田 昭子, 長岡 章平, 岳野 光洋, 石ヶ坪 良明
    2010 年 34 巻 1 号 p. 24-31
    発行日: 2010年
    公開日: 2015/05/30
    ジャーナル フリー
    【目的】 関節リウマチ (RA) 患者は治療法を決定する際に, どの程度関わりたいと考え, 実際はどのように関わっているのかを調査した.
    【対象と方法】RA患者 (500名) に自記入式質問紙を配布した. 5つの選択肢から「最も望ましい役割 (理想) 」と「実際の役割 (現実) 」を選択してもらった. 治療について, 1) 全て医師に任せる, 2) 医師が最良だと思う方法について説明を受け同意する, 3) 複数の治療方法について説明を受けた上で, 医師が最良だと思う方法に同意する, 4) 患者と医師が相談して決める, 5) 患者が判断する.
    【結果】 76.4%から回答が得られた. 71%が60歳以上, 91%が女性. 患者の54%が4) を希望していたが, 実際は3) が最も多かった (44%). 意思決定の役割の理想と現実が一致している患者は45%であった. 一致している患者は, そうでない患者に比べ有意に満足度が高く, 一致しない場合は, 実際の患者の関わりが理想より大きく, 意思決定により主体的に関わる方が満足度は高かった.
    【結語】意思決定における役割の理想と現実を一致させることの重要性が示された.
  • 工藤 欣邦, 川崎 紀則, 藤岡 利生
    2010 年 34 巻 1 号 p. 32-37
    発行日: 2010年
    公開日: 2015/05/30
    ジャーナル フリー
    【目的】高齢者医療や介護を中心とした学外地域医療実習を行うにあたり, 実習に必要と考えられる基礎知識を学生がどの程度持ち合わせているか調査を行い, 実習前における事前知識の確認や基本事項説明の必要性について検討を行った.
    【方法】大学附属病院で10ヵ月間, 内科系, 外科系の実習を終了した後, 当院へ実習に来院した医学科5~6年生70名を対象とし, 学外実習で必要と思われる基礎知識に関する11項目の設問を記入方式で回答させた.
    【結果】設問に対し適正な回答をした学生の割合は以下の通りであった. 有床診療所と病院の病床数の違い ; 11.4%. 公的医療保険制度の適用に関する設問 ; 20.0%, 高齢の女性患者に対し「名前」ではなく「おばあちゃん」と呼ぶ事が不適切となる可能性を指摘 ; 68.6%, 学校保健法で定められたインフルエンザ罹患時の出席停止期間 ; 87.1%, 経口摂取の困難な患者に対する栄養法 ; 58.6%, 注射針とカテーテルの太さに関する知識 ; 71.9%, クレンメの役割 ; 92.9%, 成人用輸液セットの1mlに相当する滴下数 ; 15.7%, 通常のシリンジとカテーテルチップ型シリンジの違い ; 18.6%, デイ・ケアやデイ・サービスの利用は「介護保険」を適用 ; 82.9%, その概念や特徴についての説明文を読み「グループホーム」と回答 ; 37.1%.
    【結論】高齢者医療や介護を中心とした学外実習を行うにあたり, 医療制度や医療器具に関する基礎知識を十分に持ち合わせていない学生が少なくない事が判明した. 実習中の事故やトラブルを防止し, 実習内容の理解度を向上させるためには, 実習前における事前知識の確認や基本事項の説明が極めて重要であると考えられた.
原著(活動報告)
  • 中出 美代, 黒谷 万美子, 須崎 尚
    2010 年 34 巻 1 号 p. 38-47
    発行日: 2010年
    公開日: 2015/05/30
    ジャーナル フリー
    【目的】就労成人を対象にサプリメント使用に関する実態を, 意識を含めて性別に検討することを目的とした.
    【方法】東海地区のA社の社員と配偶者を対象に横断的質問紙調査を実施し (回収率61.3%), 常勤社員658人を分析対象とした.
    【結果】サプリメントの使用は全体の23.7%で男性より女性が多く, その使用に際してアドバイスを受けた者は男性 (24.1%) より女性 (44.9%) の方が多く (p=0.01), その相手として専門職は少なかった. 使用の満足度では満足・不満足のどちらでもないとの回答者が最も多かった.
    【結論】サプリメントの使用に際して専門職のアドバイスを受けた人が少なく, また, その効果を実感しないまま使用している者が多かった. このことから, 必要なサプリメントの適切なアドバイスができる身近な専門家の育成と, 安易にサプリメントに頼らない食習慣形成を目指した教育を勧める必要性が示唆された.
特集 これからのジェネラリスト―動き出した日本プライマリ・ケア連合学会の専門医・認定医制度
インタビュー:ジェネラリスト温故知新
臨床医学の現在(プライマリ・ケアレビュー)
  • 坂上 祐司
    2011 年 34 巻 1 号 p. 67-72
    発行日: 2011年
    公開日: 2015/05/30
    ジャーナル フリー
     日本人における虚血性心疾患のエビデンスは, まとまった大きさの臨床研究が少ないといわれており, 虚血性心疾患の二次予防に関するガイドラインは存在しない (存在するのは心筋梗塞のみ). しかし, その後少しずつエビデンスが増えてきており, 現在日本循環器病学会のガイドラインが改訂の真っ最中である. よって, ここでは2006年に改訂された少し古い心筋梗塞二次予防ガイドライン1) を主に引用しながら, 最近増加してきたエビデンスも少し付け加えて解説する. 欧米に比し, 虚血性心疾患の発症頻度が低いとされる日本人においても, 最近の食の欧米化に伴い増加するメタボリックシンドロームや耐糖能障害・糖尿病により, その発症頻度増加は注目されており, 二次予防に関して内科医は関心を持たなければならない時代である.
  • 川尻 宏昭
    2011 年 34 巻 1 号 p. 73-76
    発行日: 2011年
    公開日: 2015/05/30
    ジャーナル フリー
     片頭痛は, その有病率が10%前後と高く, 総合医 (プライマリケア医, 家庭医, 総合内科医) が, 日常よく遭遇するcommon diseaseである. しかしながら, 病型は多岐にわたり, そのすべてを記憶し診療を行うことは難しい. 総合医は, ICHD-IIやガイドラインを踏まえ, 2次性頭痛に含まれる危険な頭痛の除外をおこない, 時に専門診療科と協働しつつ, できる限り正確な診断をつける努力をする必要がある. また, その診断の上で, 片頭痛患者への適切な治療的対応を継続的に行うことが求められる.
ジェネラリストに学ぶ診断推論
  • 生坂 政臣
    2011 年 34 巻 1 号 p. 77-79
    発行日: 2011年
    公開日: 2015/05/30
    ジャーナル フリー
     診断推論のプロセスは, 疾患仮説を生成する前半と, 生成された仮説を検証する後半に分けられる. さらに前半の疾患仮説生成のプロセスは, 症例の難易度や医療者の有する経験と知識体系により, 1) 確信のある疾患を即座に思いつく, 2) 自信はないが何とか疾患を想起できる, 3) 何も浮かばない (あるいは絞り込めないほど膨大な鑑別数となる) の3パターンに分けられる. 1), 2) の場合はヒューリスティックバイアスに注意しつつ, そこから疾患仮説の検証作業に入る. 3) の場合は, ①キーワードやキーフレーズを選ぶ, ②Semantic Qualifierに置き換える, ③解剖学的またはVINDICATE+Pから検討する, などにより疾患仮説を生成する. ある疾患と診断することは, 他の疾患の確率を相対的に低下させることになるので, 危険な疾患だけでなく良性疾患を含めて適切に診断する姿勢が大切である.
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