日本プライマリ・ケア連合学会誌
Online ISSN : 2187-2791
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36 巻, 1 号
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Editorial
原著(研究)
  • 「音読」と比較して
    髙田 大輔, 松田 ひとみ
    2013 年 36 巻 1 号 p. 5-10
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/05/02
    ジャーナル フリー
    要 旨
    目的 : 楽しい会話と音読による情動反応に着目し, 自律神経系に与える影響を比較検討し, 高齢者に対する会話交流の価値とケアとしての有用性を見出すことを目的とした.
    方法 : 65歳以上の高齢者12人を対象とし, (1) 楽しい会話, (2) 音読, (3) 黙読の3つの課題を用いた. 各課題の単独の作用を導き出すために, 1日1課題を実施した. 1つの課題の所要時間として, 実施前の安静を10分, 課題5分, 実施後の安静5分の計20分間とした. 心拍変動パワースペクトル解析を用いて自律神経系の変化を調べた.
    結果 : 5分間の「楽しい会話」は, 自律神経系への強い刺激となり, 実施中には交感神経の活動が増加し, 実施後に減少するという先行研究の「笑い」と同様の変化がみられた. この過程において, 実施後には相反して副交感神経の活動が有意に増加し, 「音読」とは異なる影響がみられた. この副交感神経の変化は対象者の心の充足感やリラクゼーションの効果の影響であることが考えられた.
    結論 : 「楽しい会話」の導入は「音読」と比較し, 短時間の介入でも自律神経系の働きを活性化し, 終了後に心の充足感やリラックス感が得られるとともに副交感神経の活動が増加する効果が明らかとなった. この短時間の介入によりもたらされる情動の変化は, 臨床の現場でも用いることができると考えられ, 「楽しい会話」はケアとして導入可能であることが示唆された.
  • 元吉 ひろみ, 松田 ひとみ
    2013 年 36 巻 1 号 p. 11-18
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/05/02
    ジャーナル フリー
    要 旨
    目的 : ピアノ講座に参加した高齢者の感情および手指運動機能の変化を明らかにする.
    方法 : 高齢者54名 (実施群32名, 対照群22名) を対象とし, 実施群には3ヵ月間 (全6回) のピアノ講座を開講した. 感情指標 (Mood Check List-Short Form 1 : MCL-S1およびフェイススケール) , 最速タッピング数 (右手2-3指, 右手4-5指, 左手2-3指, 左手4-5指の4種類) , 練習時間数などを基に検討した.
    結果 : 介入前後の実施群変化量と対照群変化量との比較で, 有意差が示されたものは, MCL-S1の不安感 (p=.04, 実施群は有意な改善, 対照群は有意な悪化) および最速タッピング数 (4種類全てにおいてp<.01, 実施群>対照群) であった. フェイススケール値の実施群変化量と対照群変化量との比較では, 有意差が示されなかった (p=.16).
    結論 : 地域在住高齢者がピアノ学習をすることは, 不安感情の改善および手指運動機能の維持向上に効果があることが見出された.
活動報告
  • 若林 崇雄
    2013 年 36 巻 1 号 p. 19-22
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/05/02
    ジャーナル フリー
    要 旨
     震災を契機に日本人と医療について考察した. 日本人は以前よりつながりを重視する文化を有していた. これはリスクを回避する役割があり, 重大な災害時でも秩序だった行動を可能にした. このような文化を有する日本人は欧米流の契約を主体としたプロフェッショナリズムを完全に受容しているわけではなく, むしろ「義理」や「人情」といったつながりを基盤とした思考に行動を規定されているのではないかと考えた. 我々日本人は日本の文化的基盤に即したプロフェッショナリズムを構築する必要があると考えた.
  • 芝 祐輔, 坂井 亮太, 綿野 亮太, 奥田 泰考, 若林 宏海, 荒川 昌史, 中澤 寛仁, 須藤 俊明, 梶井 英治, 長谷川 剛, 岡 ...
    2013 年 36 巻 1 号 p. 23-26
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/05/02
    ジャーナル フリー
    要 旨
    目的 : これまで長期災害支援の報告は数少ない. そこで今回我々が経験した東日本大震災の長期災害医療支援として巡回診療で得られた診療記録と処方箋から薬剤関連データを解析した.
    方法 : 巡回診療で得られた診療記録と処方箋から患者数と医薬品の処方件数ならびに処方件数の多かった上位3位の医薬品使用量の推移について解析した.
    結果 : 患者数は支援を開始した3/26から1週間後の166名/日 (中央値48.5名, 範囲14-166) をピークに減少し, 4/11以降は24名 (中央値)/日 (範囲0-47) であった. 医薬品の処方件数は感冒薬, 降圧薬, 抗アレルギー薬の順で多かった. また医薬品の使用量は感冒薬と降圧薬は時間経過とともに減少したが, 抗アレルギー薬は継続的に処方されていた.
    結論 : 災害医療支援チームは被災地の医療機関の復興状況に応じて急性期だけでなく長期の支援を行うべきである. また支援の介入が早いほど, 急性疾患と慢性疾患の両方の治療薬を災害医療支援チームは必要とする.
  • 工藤 欣邦, 川崎 紀則, 藤岡 利生
    2013 年 36 巻 1 号 p. 27-31
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/05/02
    ジャーナル フリー
    要 旨
    目的 : 学外診療所実習の事前説明における当院の工夫として「実際に使用する医療器具を供覧し操作させる」「資料を配布する」「コメディカルスタッフが参加する」ことが, 実習を行う上で学生にとって有用であるかについて検討した.
    方法 : 実習に来院した医学科5年生42名を対象とし, 実習終了後, 実習に関する事前説明についてのアンケート調査を行った.
    結果 : 医療器具の供覧については全員が「わかりやすかった」, 資料の配布は81%が「必要だと思う」, コメディカルスタッフからの説明は97.6%が「重要」または「必要」, 介護保険関連施設に対する理解度は95.2%が事前説明によって「高まった」, 胃瘻管理に関する医行為については97.6%の学生が「実習前の説明は十分であった」としたが, 50%の学生が「事前説明は十分であったが不安を感じながら行った」と回答した.
    結論 : 学外診療所実習における事前説明の方法として当院で行った工夫は, 学生にとって有用であると考えられた. ただし, 説明が十分であっても医行為中に不安を抱く学生もみられ, 不安を安全な実習につなげることができるようなプログラム作りが今後の課題と考えられた.
特別座談会
リレーエッセイ
インタビュー
臨床医学の現在(プライマリ・ケア レビュー)
  • 稲福 徹也
    2013 年 36 巻 1 号 p. 43-46
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/05/02
    ジャーナル フリー
    要 旨
     頭痛診療において初めて経験する頭痛については, 生命に危険が及ぶくも膜下出血と細菌性髄膜炎を見逃さず適切なタイミングで専門医へ紹介することが大事である. 一方同じような頭痛を繰り返す慢性頭痛については, 日常生活に支障をきたす片頭痛をきちんと診断して適切にマネージメントすることが大事である. いずれの場合も頭痛の診断には病歴聴取が最も重要であることは言うまでもない.
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