日本プライマリ・ケア連合学会誌
Online ISSN : 2187-2791
Print ISSN : 2185-2928
ISSN-L : 2185-2928
36 巻, 4 号
選択された号の論文の21件中1~21を表示しています
Editorial
原著(研究)
  • 堤 円香, 中村 明澄, 前野 貴美, 高屋敷 明由美, 阪本 直人, 横谷 省治, 前野 哲博
    2013 年 36 巻 4 号 p. 291-296
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/10
    ジャーナル フリー
    目的 : 小中学生への喫煙予防教育と父母の行動変容との関連を調査した.
    方法 : 茨城県神栖市の小中学校7校で喫煙予防教育を実施し, 受講した生徒に学んだことを家で話すよう促した. 1か月後に生徒の親を対象に自記式アンケート調査を行い, 子供からタバコの話を聞いたか, この1か月のタバコに対する新たな行動変容の有無とその内容などを調査した.
    結果 : 1109家庭に2枚ずつ調査票を配付し1427名の有効回答を得た. 子供から話を聞いたのは794名 (55.6%) , 行動変容があったのは271名 (19.0%) であった. 具体的な内容は, 禁煙した, 本数を減らす, 子供の前で吸わないなどが挙がった. 行動変容の有無は, 子供から話を聞いたことに有意に関連していた (オッズ比3.3 (95%Cl 2.4-4.6)).
    結論 : 小中学生に対する喫煙予防教育の実施は, 本人のみならず父母のタバコに対する行動変容につながる可能性が示唆された.
  • 松久 雄紀, 廣瀬 英生, 後藤 忠雄, GP-COMERnet Group
    2013 年 36 巻 4 号 p. 297-301
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/10
    ジャーナル フリー
    目的 : 子宮頚癌予防ワクチンに対する被接種者・保護者の意識, 知識を調査する.
    方法 : 岐阜県のプライマリ・ケア関連施設で子宮頚癌予防ワクチンの情報源, 接種決定者, 知識, 癌検診等を被接種者・保護者にアンケート調査した.
    結果 : 被接種者66人, 保護者57人より回答を得た. 情報源について被接種者は学校, 家族が多く, 保護者は自治体からの連絡, テレビが多かった. 接種決定に被接種者が関わったのは約半数であった. 接種に躊躇いがあったのは15%で全員が痛みを理由にあげ流産や不妊が不安との回答はなかった. 子宮頸癌の原因を知っていたのは被接種者15%, 保護者54%, 感染源を知っていたのは被接種者41%, 保護者79%, 子宮頸癌検診を知っていたのは被接種者21%, 保護者63%で, 接種後も検診を受けた方がよいと回答したのは被接種者71%, 保護者90%であった.
    結論 : 子宮頚癌, 癌検診に対する知識は十分ではなく, 情報提供を行い理解度を深めていくことが重要である.
  • ─疑義照会の事後報告導入がジェネリック医薬品使用率及び医療費に及ぼす影響
    小川 壮寛, 松下 明, 中島 利裕, 守安 洋子, 島田 憲一, 江川 孝, 五味田 裕, 髙橋 正志, 髙見 陽一郎
    2013 年 36 巻 4 号 p. 302-307
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/10
    ジャーナル フリー
    目的 : 共同薬物治療管理 (CDTM) を地域医療に導入するための方略の一つとして, 事前に処方医と事後報告を行うポジティブリストを作成し, 疑義照会を事後報告へ切り替えることによる効果を検証した.
    方法 : 事後報告に替えることのできる疑義照会をリソルブ疑義と定義した上で, ポジティブリストに基づく事後報告への切り替えを行い, その効果をリソルブ疑義の件数, 保険点数およびジェネリック医薬品使用率の変化を調査することにより評価した.
    結果 : 医師の治療計画を変更することなく, ポジティブリストにより178件 (疑義照会全体の22.7%) の疑義照会を事後報告に替えることができ, 疑義照会にかかる時間を大幅に短縮することができた. これにより保険点数は17,455点削減でき, ジェネリック医薬品使用率は46.6%まで上昇した.
    結論 : ポジティブリストに基づく薬剤師自身の判断で疑義照会を事後報告に切り替えることにより, 疑義照会実施件数および医療費削減とジェネリック医薬品使用率上昇を可能とした.
  • 青木 昭子, 須田 昭子, 長岡 章平, 岳野 光洋, 石ヶ坪 良明, 川井 孝子, 大出 幸子, 高橋 理, 大生 定義
    2013 年 36 巻 4 号 p. 308-314
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/10
    ジャーナル フリー
    目的 : 関節リウマチ (RA) 患者の健康行動に対する自己効力感と患者の疾患評価との関連を明らかにする.
    対象 : 都市部3病院のRA専門外来に3カ月以上通院している成人RA患者.
    方法 : 無記名自記入式質問紙法による連続性サンプリング横断的調査研究を2010年10~12月に実施した. 自己効力感の測定には「慢性疾患患者の健康行動に対する自己効力感尺度 Chronic disease-self efficacy scale (CD-SES) 」を用いた. CD-SESは対処行動の積極性14項目 (積極性) と健康に対する統制感10項目 (統制感) の2つの下位尺度で構成される. 患者による疾患の評価として, 疼痛関節数, 腫脹関節数, 最近の血清CRP, 全般的な体の調子, 日常生活動作 (ADL) の障害度を質問した.
    結果 : CD-SES24項目に回答した191人の回答を解析した. CD-SES全体は高齢者ほど, 全般的な体の調子が良く, ADLの障害が少ないほど高値であった. 積極性は高齢者ほど, 統制感は全般的な体の調子が良いほど高値であった.
    結語 : RA患者の健康行動に対する自己効力感は, 年齢, 全般的な体の調子やADLの障害度と相関することが示された, 心理的なサポートが統制感を含む自己効力感を改善し, 全般的な体の調子を改善することができるか, 今後縦断的な研究が必要と考えられた.
原著(症例報告)
  • 岩崎 さやか, 児玉 憲一, 谷崎 英昭, 三澤 美和, 福家 智也, 江川 克哉
    2013 年 36 巻 4 号 p. 315-317
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/10
    ジャーナル フリー
    アトピー性皮膚炎 (Atopic dermatitis 以下AD) は, そう痒を伴う湿疹を主病変とした慢性炎症性皮膚疾患である. AD患者の皮膚では黄色ブドウ球菌を高率に保菌していることが知られ, 黄色ブドウ球菌菌血症を引き起こすリスクも高いと考えられている1). 症例は重度のADにて加療中の20代男性, 左胸背部痛, 発熱を主訴に当院を受診した. 当初熱源は不明であったが, 血液培養から黄色ブドウ球菌を検出し, 画像検査で左肋骨肋軟骨移行部に膿瘍形成を認めた. ADは日常的に遭遇するありふれた疾患であり, プライマリ・ケア医がADを基礎疾患として有する患者を診療する機会も少なくない. AD患者の発熱を診る際には, 菌血症の存在も念頭に置きながら早期に診断し適切な治療にあたることが重要である.
総説
  • 津田 修治, マイク D. フェターズ
    2013 年 36 巻 4 号 p. 318-323
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/10
    ジャーナル フリー
    目的:欧米における外来プリセプティングの制度や方法とそのエビデンスの文献調査をする.
    方法:PubMedを用い,家庭医療や一般内科の外来研修のプリセプティングに関する文献をレビューした.309件の文献から日本の家庭医療後期研修のヒントという観点で,選択・除外基準に基づき,18の文献を精読して,テーマを抽出した.
    結果:プリセプティングのスタイルはプリセプターが専任であることが効果的だった.プリセプティングは症例のプレゼンテーション後に5分前後のディスカッションで,主に診断・治療に焦点が当てられた.プリセプティングの場でEBMや心理社会的な問題,フィードバックは少なかったが,それらを増やす試みとして,one minute preceptorや学習者中心のプリセプティングのSNAPPSの技法が効果的だった.
    結論:外来プリセプティングでは,EBMや心理社会的問題も含めて議論し,フィードバックなど教育的なディスカッションを効率的にする試みがなされていた.
活動報告
報告
編集者への手紙
リレーエッセイ:日本のプライマリ・ケアの論点
インタビュー:プライマリ・ケア フロンティア
臨床医学の現在(プライマリ・ケア レビュー)
  • 廣岡 伸隆
    2013 年 36 巻 4 号 p. 345-349
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/10
    ジャーナル フリー
    ワーファリンに加え新規経口抗凝固薬である直接トロンビン阻害薬と第Xa因子阻害薬が近年使用可能となり, 心房細動の抗凝固療法は現在転換期にある. 今後, 関連する学会ガイドラインにはこれらの新規経口抗凝固薬の使用適応追加等の変更が予想され, プライマリ・ケア医も心房細動を持つ患者の診療において注目したい. 個々の薬剤の特色を知ることは大切であるが, 一方で診療指針の決定は今後も今まで通りCHADS2スコア等を使用した心房細動時の血栓症リスク評価に基づき, 患者個人の背景因子を加味して実施されるであろう. 本稿では, 新規経口抗凝固薬を含め心房細動に対する抗凝固療法について近年のエビデンスとその使用方法をまず紹介し, 続いて関連学会の策定した現状ガイドラインによる診療指針を中心に概説する.
省察的実践家入門
  • 田中 朋弘
    2013 年 36 巻 4 号 p. 350-352
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/10
    ジャーナル フリー
    本稿の目的は, 省察的実践という概念を, 倫理学の文脈を踏まえて考察することである. そこで, ショーンの「厳密性」と「適切性」という対概念をとりあげる. 「厳密性」とは, 曖昧で不確実な感覚や感情によらず, 理性に基づく客観的な確からしさ (合理性) の要求である. 倫理学的な知の探究もまたそれに応じており, 理論や原理 (厳密性) に合わせるために, しばしば実践的状況 (適切性) を削ぎ落とした. 私たちは実践の場において, 厳密性だけでは解決できない曖昧さや不確実さの中で倫理的ジレンマに出くわす. しかしそれでもなお, 一定の行為や態度を選択せざるをえないという制約が常にある. それは, 一般的あるいは専門的な事実を踏まえて行為や態度を選択するという意味で, 道徳的判断に属する. またそれは, 私とあなたが今ここに共にあるという関係性 (共に決断する勇気) をどのように引き受けるか, という問題を含んでいる. 省察的実践は, 専門職の責任をこれまでとは違った仕方で要請するものになるように思われる.
CBME(地域基盤型医学教育)
総合カンファレンス
書評
ご案内
feedback
Top