日本プライマリ・ケア連合学会誌
Online ISSN : 2187-2791
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ISSN-L : 2185-2928
37 巻, 1 号
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Editorial
原著(研究)
  • ─体位と指先圧の有無に着目して─
    梶原 理絵, 乗松 貞子
    2014 年 37 巻 1 号 p. 5-9
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/03/28
    ジャーナル フリー
    目的 : 覚醒度に及ぼす背面開放端座位の影響を, 自律神経機能および大脳機能から検討し, 加えて背面開放端座位における指先圧の有無の影響も考察することである.
    方法 : 健常成人女性20名を対象に安静仰臥位と背面開放端座位における大脳機能, 自律神経機能を, 2007年10月から11月に測定した.
    結果 : 被験者は平均25.8±4.1歳であった. 背面開放端座位は安静仰臥位よりも, 脳波のβ波含有率, 心拍数, 拡張期血圧値が高値を示し, 副交感神経活動は低値を示した. また, 指先圧の有無による背面開放端座位の効果は, すべての指標において有意差が認められなかった.
    結論 : 背面開放端座位は, 自律神経機能のみならず大脳機能においても覚醒度の上昇に効果的な姿勢であることが示唆された. また, 手掌接地した背面開放端座位で, 指先に力を入れた状態と入れない状態を比較すると, 大脳機能, 自律神経機能からは覚醒度に差は認められなかった.
  • 今藤 潤子, 大西 弘高, グライナー 智恵子
    2014 年 37 巻 1 号 p. 10-15
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/03/28
    ジャーナル フリー
    目的 : 地域基盤型診療所で働く看護師が看護実践を行う上での肯定的要素を明らかにする.
    方法 : 関東の無床地域基盤型診療所にて働く看護師6名への半構造的面接. 木下のM-GTA手法を用い分析を行った.
    結果 : 看護師は, 患者・家族・地域との関わりから【総合的に看ることで全人的ケアができている実感】を持っていた. また【ワークライフバランスの調和】を取りながら, 自らの【看護師の人生経験の有用性】を認識し, 【地域の包括的看護実践者としての自負と開拓精神】が組み込まれていた. 【診療所内での主体的立場】も感じているものの, 【ケアの恊働性】を抱きながら【地域医療福祉とのチームアプローチ】の意義を実感しており, これらが地域基盤型診療所で働く肯定的要素としてあげられた.
    結論 : 地域基盤型診療所は地域指向性や家族指向性といった専門性から, 看護師が持つ全人的ケアを行いやすい職場であることが明らかにされた. また, 看護師が主体性をもって働き, 豊かな発想で取り組みを行えること, 家庭医と恊働性をもって学び合える環境にあるなどの肯定的要素があり, 病院や保健所, 他の医療施設とも異なる魅力をもつ看護分野であることが示された. 地域で継続性をもってケアができ, 今後入院から在宅へと医療体制がシフトしていく中で, 地域基盤型診療所は期待される看護分野である.
  • 山口 治隆, 藤本 裕俊, 秋山 祥子, 増田 さら良, 湯浅 志乃, 田畑 良, 河南 真吾, 申 輝樹, 中西 嘉憲, 清水 伸彦, 河 ...
    2014 年 37 巻 1 号 p. 16-21
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/03/28
    ジャーナル フリー
    目的 : 日本の女性医師数は増加傾向にあり, 子育て世代の就労率低下は医師不足問題の一要因である. 医学生の結婚後に仕事を継続する意思, 及び継続意思の弱い人がもつ背景を知ることは今後の対策に有用である.
    方法 : 2010年から2012年の3年間, 徳島大学医学科学生を対象に女性医師問題に関してvisual analog scale (VAS) 式質問と多肢選択式質問からなるアンケート調査を実施した. 本研究は3年間の質問票のうち共通項目のみを抽出し解析を行った.
    結果 : 解析対象は1, 3, 6年女子と6年男子である. 各集団とも仕事の「やりがい」を最重視していた. VAS式質問の「結婚後の仕事継続」意思は, 6年女子は男子と比較し中央値 (四分位範囲) が86.5 (64~97)mm vs. 98 (92.5~100)mmと低かった (p<0.001) . この項目が75mm以下の6年女子は80mm以上の女子に比し「医師職への興味」が79.5 (64.5~88.5)mm vs. 90.5 (82~100)mmと低かった (p=0.001) .
    結論 : 「結婚後の仕事継続」意思が弱い女子医学生は「医師職への興味」が低く, 卒前教育が重要である.
  • 後藤 美和, 竹谷 英之, 久保田 実, 芳賀 信彦, 新田 收
    2014 年 37 巻 1 号 p. 22-26
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/03/28
    ジャーナル フリー
    目的 : 血友病患者に対するホームエクササイズ (HE) 効果を検討すること
    方法 : 16~60歳の血友病患者にHEを指導し, 12週間の介入前後に身体機能評価と自記式質問紙調査を行った. HEは, 膝伸展筋力の強化と膝屈曲筋群の持続的伸張, 活動量計装着下での身体活動促進とした. 評価項目は, 膝関節の屈曲と伸展の筋力と可動域, modified Functional Reach (mFRT) , 10m歩行, 3分間歩行とした. 調査項目は, 出血頻度と日常生活活動 (ADL) , 生活の質 (HRQOL : SF36) とした.
    結果 : 対象は22名で, 平均年齢37.2歳, 86.4%が重症 (凝固因子活性1%未満) であった. 出血頻度の増加なく膝伸展筋力と膝伸展可動域, mFRT, 10m歩行, 3分間歩行, ADL, SF-36の身体機能において有意な改善を得た. 歩行エクササイズ量と3分間歩行変化量は有意に相関していた.
    結論 : HEにより身体機能とADLの改善を得た. 身体機能の改善には, 身体活動量向上だけでなく, 個別の機能改善を目的としたエクササイズ指導が必要である.
活動報告
リレーエッセイ:日本のプライマリ・ケアの論点
インタビュー:プライマリ・ケア フロンティア
臨床医学の現在(プライマリ・ケア レビュー)
省察的実践家入門
  • 小西 竜太
    2014 年 37 巻 1 号 p. 54-57
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/03/28
    ジャーナル フリー
    医療組織内でのリーダーシップ, マネジメントを発揮する際に, 省察的プロセスは個人のみならず, 組織の目標達成や成長についても非常に重要なプロセスである. 組織の目標や活動を個人レベルに落とし込み, 成果を定期的に振り返って目標達成を促すようなマネジメント手法として「目標によるマネジメント」がある. また新しい知識や技術を取り入れて組織で実践する際の知識経営として「ナレッジ・マネジメント」も挙げられる. いずれも個人の振り返りや内省のプロセスを必要としている. リーダーは省察的プロセスを個人, 組織全体, そしてリーダー自身に対しても, 戦略的に仕組むことで, 組織マネジメントを確立させ, 組織と個人の成長を促すことができる. 省察的実践は, 組織のリーダーにとって必要な要素の一つと言える.
CBME(地域基盤型医学教育)
  • 鈴木 孝明
    2014 年 37 巻 1 号 p. 58-60
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/03/28
    ジャーナル フリー
    ・地域住民の生活における, あらゆる健康問題に第一に対応していくのがプライマリ・ヘルスケアである
    ・医療は地域社会における基本的必要資源のひとつにすぎない
    ・医療機関に訪れる人だけでなく, 訪れない人のことも考えることが大切である
    ・集団への考え方と住民個人の思いは必ずしも一致しない
    ・一人のスタッフとして参加し, 様々なジレンマの中で意志決定していくプロセスを経験することで, 理論と現実のギャップを実感することができる
    ・指導者自身が地域社会に関わる楽しさや苦しさを理解しているか振り返ってみるとよい
    ・地域での講演などに, 企画立案段階から学生に参画させ, 講演の中に地域診断の要素を組み込ませた上で発表の機会を設けるとよい
    ・患者のふるさとを訪問してくることは, 生活環境を知る上で役に立つ
    ・地域活動には積極的に参加させ, 住民と対話し, 活動自体も楽しむことができる機会を設けるとよい
    ・地域住民とどれだけ対話できたかは, 評価指標になりうる
  • 家 研也
    2014 年 37 巻 1 号 p. 61-63
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/03/28
    ジャーナル フリー
    CBME (community-based medical education : 地域基盤型医学教育) を成功させるための4つの鍵となる関係は, 臨床の軸, 個人の軸, 社会の軸, 施設の軸からなる. 施設の軸とは, 地域で実習の受け皿となる施設と, 派遣元施設との間の連携を扱う軸である. CBMEにおける施設の共生モデルでは, 学習者をハブとして臨床─研究─教育が両施設を共生関係にする. 地域は大学に臨床教育と研究のフィールドを提供し, 大学は地域の診療の質向上と教育・研究のサポートを提供できる. 本邦における効果的なCBMEの推進には, 大学が地域での研究を通じて行政の支援を得ることでのハード面整備と, 各地域における派遣元─実習先の顔の見えるコミュニケーションの促進が優先課題である.
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