日本プライマリ・ケア連合学会誌
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37 巻, 3 号
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Editorial
原著(研究)
  • 藤田 好彦, 高田 祐, 久保田 智洋, 堀田 和司, 中村 茂美, 奥野 純子, 柳 久子
    2014 年 37 巻 3 号 p. 212-218
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/26
    ジャーナル フリー
    目的 : 地域在住の虚弱高齢者を対象に活動度計を用い定量的な活動度を把握し, その特徴を明らかにすることである.
    方法 : 要支援1,2の地域在住高齢者25名を対象に, 生活活動度計 (activity monitoring and evaluation system : 以下A-MES) を装着し, 24時間における活動度 (Physical activity : 以下PA) の測定と, 身体・介護情報, 日常生活機能の評価を行った. 結果より性別・介護区分別に検討した.
    結果 : 立位, 歩行時間は女性が有意に長く, 日中臥位, 座位時間では男性が有意に長かった. また, 要支援2群で座位→臥位への姿勢変換回数が有意に多かった. PA各項目と機能的自立度評価表 (Functional Independence Measure : 以下FIM) 下位尺度の関連より, PAの定量的評価により在宅生活での活動度低下を発見出来ること, 十分な歩行時間の確保と日中臥位時間の短縮が, セルフケア能力と移動能力の維持に重要であることが示唆された.
    結論 : 日中の臥位時間の短縮や姿勢変換の機会を増やすためのプログラムの検討・提供が, 活動度低下予防・機能維持へと繋がる可能性が示唆された.
  • 小曽根 早知子, 高屋敷 明由美, 前野 貴美, 前野 哲博
    2014 年 37 巻 3 号 p. 219-224
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/26
    ジャーナル フリー
    目的 : 地域診療所に短期間勤務する医師が診療・研修することについて患者がどのように感じているかを把握し, 医師が地域診療所において短期間の診療・研修を行う際に配慮すべきことを明らかにする.
    方法 : 地域診療所に定期通院している患者に個別面接を行い音声記録したものをデータとし, Steps for Coding and Theorization (SCAT) を一部改編した方法にて質的解析を行った.
    結果 : 患者は地域診療所に対して所長が常にいる安心感を持ち, 【プライマリ・ケアの概念に準じた医療を期待する】が, そのすべての要素が満たされることを期待しているわけではなく【現状を受け入れる姿勢】をとり, それぞれに自分が優先するものに応じて受療行動を決定している.
    結論 : 地域診療所に短期間勤務する医師は, 患者の期待に部分的には応えられている. 医師には, プライマリ・ケアの概念に準じた医療を提供することと, 医師の側から患者に近づく努力が必要であると考えられた.
  • ─中国東北部吉林省 (朝鮮民族・漢民族) の実態調査から─
    裴 麗瑩, 奥野 純子, 堀田 和司, 深作 貴子, 権 海善, 柳 久子
    2014 年 37 巻 3 号 p. 225-232
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/26
    ジャーナル フリー
    目的 : 近年, 中国は急激な高齢化, 少子化が進んでおり, 老老介護世帯が増加している. 本研究は中国の吉林省の朝鮮民族と漢民族の老老介護世帯の現状を調査し, 習慣と文化が異なる民族間による生活の質に関連する要因を明らかにする.
    方法 : 横断研究. 対象は中国吉林省の長春・延吉2市在住の60歳以上の老老介護世帯. 生活の質はSF-8を用いた. ステップワイズ法による重回帰分析を行い, 主介護者の生活の質に関連する要因を検討した.
    結果 : 対象は朝鮮民族51世帯, 漢民族61世帯で, 2民族間で年齢, 男女の割合に差が無く, 両民族とも主介護者は配偶者が多かった. 主介護者の身体的QOLに関連する要因は, 朝鮮民族 : 介護者の主観的健康感・疾患数, 漢民族 : 介護者の主観的健康感・介護期間・地域交流の参加頻度であった. 主介護者の精神的QOLに関連する要因は, 朝鮮民族 : 介護悩み相談頻度, 漢民族 : 冠婚葬祭時の援助・被介護者の教育歴であった.
    結論 : 両民族とも高齢介護者の良好な健康が身体的QOLを維持するために重要であることが示唆された. 身体的QOL・精神的QOLに関連する要因は民族により異なっており, 民族に適した支援が必要である.
  • 中西 真一, 藤原 純一, 加賀谷 結華, 高橋 久美子, 澤邉 淳, 三浦 勉, 粕谷 孝光, 福岡 岳美, 小野 剛
    2014 年 37 巻 3 号 p. 233-237
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/26
    ジャーナル フリー
    目的 : 大腿静脈カテーテル留置時に上行腰静脈へ迷入すると, 後腹膜血腫等の合併症を引き起こす可能性がある. しかし, カテーテルの迷入についてはあまり認識されていない.
    方法 : 2011年4月から2013年3月の間に当院で大腿静脈カテーテルを留置した患者107名を対象とし後ろ向きに検討した.
    結果 : 上行腰静脈への迷入は11/110回 (10.0%) で認め, 左側で5/34回 (14.7%) , 右側で6/76回 (7.9%) だった. 位置確認の腹部レントゲン検査で, カテーテルが側方へ変位している場合, 頭側に急峻に立ち上がる場合に迷入の可能性があった.
    結論 : カテーテル迷入は稀では無く, 迷入が疑われれば積極的に腹部CT, 側面レントゲン等の追加の検査が必要である.
  • 俵 哲, 幸崎 弥之助, 小阪 崇幸, 田北 智裕, 有馬 京子
    2014 年 37 巻 3 号 p. 238-243
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/26
    ジャーナル フリー
    目的 : 救急時を想定した, 患者の個人健康情報記録 (m-SAPPHIRE) の自己管理, 記録の作成・評価について, 医師の意見を検討する.
    方法 : 地域医療圏で医療連携を行っている2群 (A : 開業医, B : 勤務医) の医師に10項目の質問からなるアンケート調査を行った.
    結果 : 回答した医師292名の72.9%が個人健康情報記録の自己管理に賛成だった. 記録の作成と評価は, 開業医の47.4%は「共に医師」を選択した. アンケート結果を集計すると, m-SAPPHIREの作成にはコメディカルの協力を得る (44.1%) が, 内容の評価は医師がすべき (79.7%) という意見であった.
    結論 : コメディカルの協力を得てm-SAPPHIREを作成し, 医師の知識で評価されたものであれば, 救急時のみならず, 患者とそのケア供給者間の情報の共有に役立つものと思われる.
  • 豊田 祐一, 江田 英雄
    2014 年 37 巻 3 号 p. 244-248
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/26
    ジャーナル フリー
    目的 : 病理専門医 (病理医) 不足の解決にあたりどのような問題が存在するのかを把握するため, 特に一人病理医の現状を中心にアンケートとインタビューによって調査を行った. また, 病理医不足の状況を補うために, バーチャルスライドという技術が問題を解決できるかどうかを検討する.
    方法 : 学会にて病理医に対してアンケートを行い, また実際にバーチャルスライドを利用している病理医に対してインタビューを行った.
    結果 : 一人病理医の割合は約30%であり, バーチャルスライドを遠隔病理コンサルテーション用途で使用している割合が一番多かった. 難しい症例が出た場合, 病理医の人数に限らず, 施設外部にコンサルテーションを求めることが多いことがわかった. 一人病理医は一人で癌の診断をすることへの不安があるが, 気軽に他の施設に相談することは難しいようであった.
    結論 : 一人病理医の診断に対する不安を取り除き, 癌の診断精度を向上させるためには, 病理医同士のコンサルテーションができる仕組みが必要であり, バーチャルスライドを利用して, そのような病理医ネットワークを構築することはプライマリ・ケアにおいて重要である.
  • ─北海道の一地方都市を事例にした医療の合理化に関する探索的研究─
    浅川 朋宏, 川畑 秀伸, 村上 学, 木佐 健悟, 大島 寿美子, 寺下 貴美, 小野寺 慧洲, 大滝 純司
    2014 年 37 巻 3 号 p. 249-253
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/26
    ジャーナル フリー
    目的 : 財政破綻を機に医療資源の縮小を伴う医療の合理化に直面した住民の思いと, 新たな医療体制への住民の考え方を明らかにし, 医療の合理化において考慮すべき要素を探索する.
    方法 : 自治体の財政破綻に直面したX市の住民を対象に, 医療の合理化に対する思いと今後の医療のあり方への考え方の2点を質問し, 質的な分析を行った.
    結果 : 医療資源縮小を伴う医療の合理化への住民の思いと, 新たな医療体制への住民の考え方として「医療の合理化の進め方」, 「地域医療のあり方」, 「行政, 医療者の姿勢」の3つのテーマが抽出された.
    結論 : 医療の合理化おいて, 行政や医療機関が合理化の過程および内容に関して住民の意見を受け止め, 地域の歴史的背景や住民の心情を理解することが重要である.
  • 坂西 雄太, 原 めぐみ, 福森 則男, 草場 鉄周, 田中 恵太郎, 杉岡 隆, 日本プライマリ・ケア連合学会ワクチン・プロジェクトチーム ...
    2014 年 37 巻 3 号 p. 254-259
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/26
    ジャーナル フリー
    目的 : わが国のプライマリ・ケア医のワクチンの接種状況, 接種推奨の割合および障壁を明らかにする.
    方法 : 2012年に日本プライマリ・ケア連合学会に属する医師から3000名を無作為抽出し質問紙調査を行った.
    結果 : 卒後2年以内など119名を除外した2881名のうち, 744名より回答を得た (有効回答率25.8%). 接種状況および接種推奨の割合は, 定期接種が29.0~91.4%および58.2~70.2%, 任意接種が15.2~89.5%および14.1~50.9%であった. 定期接種推奨の際の医師側の障壁は, 接種スケジュールの複雑さ, 被接種者・保護者の考えが多く, 被接種者側の障壁は, ワクチンの安全性, 対象疾患の理解不足が多かった. 任意接種推奨の障壁は医師, 被接種者側ともに, 接種費用負担, 安全性が多かった.
    結論 : わが国のプライマリ・ケア医のワクチンの接種状況, 接種推奨の割合および障壁の現状が明らかとなった.
  • 沢崎 健太, 星川 秀利, 宮崎 彰吾, 向野 義人
    2014 年 37 巻 3 号 p. 260-264
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/26
    ジャーナル フリー
    目的 : 非侵襲性の微細突起による皮膚刺激を用いて, 大学生の便秘に及ぼす影響を検討した.
    対象 : 便秘の事前調査を回収できた280名の内, 研究趣旨に同意が得られた17名とした.
    方法 : 微細突起を耳甲介腔に各自貼付するS群 (9名) とプラセボP群 (8名) を封筒法により無作為に割付け, 便秘 (CAS-J) , 体重, 体脂肪率, 血圧の評価を行った.
    結果 : S群では介入開始前と比較して研究終了後にCAS-Jが有意に低下 (P=0.02) したが, P群では有意な差はなかった. 両群共に体重, 体脂肪率, 血圧は研究終了後に有意差はみられなかった.
    結論 : 本研究は耳甲介腔への微細突起による非侵襲性の皮膚刺激が便秘の改善傾向, 特にセルフケアの一手段として活用できる可能性を示唆する.
原著(症例報告)
総説
  • 浜野 淳, 木澤 義之
    2014 年 37 巻 3 号 p. 268-272
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/26
    ジャーナル フリー
    わが国における死亡者数は, 今後急速に増加することが予想されている. 生命を脅かす疾患を持つ人々への緩和ケアの提供は重要と認識されているものの, 十分に応えられていない可能性が国際的に指摘されている. 近年, “Primary Palliative Care”という概念が国際的に提唱され, プライマリ・ケア医などが, (1) 生命を脅かす疾患を持つ患者をケアする, (2) 疾患の早期から緩和ケア・アプローチを提供する, (3) 身体的, 心理社会的, 社会的, 霊的な側面の全てのニーズに対応する, (4) 地域でEnd of Life Careを提供することを意味する用語として使用されている. 多死時代に向かうわが国において, プライマリ・ケアの現場でわが国の医療システム, 国民性に適したPrimary Palliative Careが構築され, 普及することで患者・家族のニーズに応じて適切な時期に緩和ケアが提供され, 地域社会に貢献できる可能性がある.
  • 越田 全彦
    2014 年 37 巻 3 号 p. 273-280
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/26
    ジャーナル フリー
    同種造血幹細胞移植にも関わらず死亡した急性白血病の若年女性の自験例を機に, 筆者は以下の3つの問いを立てた. ①科学技術を駆使すれば機械と同様に肉体を修理できるという考え方はどこから来たのか?②病気や人間を包括的に捉えるための人間観にはどのようなものがあるのか?③より包括的な人間観に立った時, 「なぜ私が病気になったのか」との患者の問いに臨床医はどのように対応できるのか?肉体を機械とみなす生物医学モデルはデカルト以来の心身二元論と還元主義に由来する. 生物医学モデルを超克したものとしてEngelの生物心理社会モデルが存在するが, より包括的な人間観として, 魂の次元を含む霊心身三元論が存在する. 人間が取り結ぶ関係性として, 「自己と他者」, 「自己と世界」, 「自己と自己自身」, 「自己と超越者」の4つがあり, 三角錐を用いて図示できる. 病の真因はこれらの関係性の歪みと捉えられる. 三元論-三角錐モデルと名付けられた新たな包括的医学モデルは, スピリチュアルケアや補完代替医療を含めたあらゆる専門分野・介入手法の特徴と守備範囲を明示し, それらの専門家をも交えた未来のチーム医療の形を提示するとともに, 「なぜ私が」という患者の苦悩を軽減させるための指針を臨床医に与える可能性がある.
活動報告
  • 工藤 欣邦, 河野 香奈江, 木戸 芳香, 兒玉 雅明, 藤田 長太郎
    2014 年 37 巻 3 号 p. 281-284
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/26
    ジャーナル フリー
    目的 : 大学生におけるインフルエンザ対策の励行状況を調査し, 今後の感染予防対策に関する啓発活動に役立てることを目的とする.
    方法 : 健康診断にて保健管理センターへ来所した大分大学の学生を対象に, インフルエンザワクチンの接種や, 日常生活における感染予防対策の励行に関するアンケート調査を行った.
    結果 : 2,752名の学生にアンケートを依頼した. アンケートは2,579名から回収し (回収率93.7%) , 2,489名から有効な回答が得られた (有効回答率96.5%) . 学生のワクチン接種率は21.0%で, 男性19.1%, 女性23.7%と男性の接種率が有意に低かった. 手洗いの励行率は71.7%であったが, うがい, マスクの着用, 人ごみを避ける, の3項目は励行者が半数に満たなかった. また, ワクチン非接種群は接種群と比較して4項目すべての励行率が有意に低かった.
    結論 : 大学生のインフルエンザ感染予防対策として, ワクチン接種やうがい, マスクの着用, 人ごみを避けることを励行させるための啓発活動が必要と考えられたが, 男性に対するワクチン接種や, ワクチン非接種者に対する日常生活指導が特に重要と考えられた.
  • ─会議手法の工夫
    安成 英文
    2014 年 37 巻 3 号 p. 285-288
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/26
    ジャーナル フリー
    在宅や施設における終末期ケアに関わるようになり本人や家族と同様ケアに当たるスタッフの不安を目にした. そこで, 病院以外の場所での看取りのケア向上のために多職種, 多事業所で看取りの経験を振り返る作業を試みた. 参加者からの意見収集方法に改善を加えた結果, 多様な意見を収集でき継続的に開催可能な手法を紹介する. 本手法はケア当事者には振り返りの作業, 参加者には模擬体験, そして参加者同士の相互承認の場に, ひいては地域住民の地域肯定感へと寄与しうると考えている.
特集 病院総合医セミナー2014
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