日本プライマリ・ケア連合学会誌
Online ISSN : 2187-2791
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37 巻, 4 号
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Editorial
原著(研究)
  • 坂本 晴美, 高田 祐, 稲田 晴彦, 奥野 純子, 柳 久子
    2014 年 37 巻 4 号 p. 324-332
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/24
    ジャーナル フリー
    目的 : 介護老人保健施設の入所者が受けているリハビリテーションに満足しているかどうかは不明である. 本研究の目的は, 施設サービス満足度と入所者が介護老人保健施設で受けているリハビリテーションの顧客満足度との関係を検討することであった. また, リハビリテーションに対する顧客満足度に関連する要因も検討した.
    方法 : 19の介護老人保健施設に入所している100名の入所者がこの研究に参加した. 入所者からの同意を得た後, 我々は, 施設サービス満足度, リハビリテーションに対する顧客満足度, そして, 老年期うつ病評価尺度 (GDS) 等を使用した半構造化面接を実施した. 入所者の特性等は, 調査した施設リハ職員に自記式調査を行った. 統計分析は, Spearmanの順位相関検定, 重回帰分析を用いた.
    結果 : 対象者の67%が女性で, 平均年齢 (±SD) は78.2±10.4歳であった. 重回帰分析では, 施設サービス満足度は, 「リハビリテーションに対する顧客満足度」 (β=.232, P<0.05) と関連していたことが明らかになった. その他, 「女性」 (β=.198, P<0.05) , 「支援相談員数」 (β=.269, P<0.01) , 「GDS」得点 (β=-.291, P<0.01) と有意に関連があった. リハビリテーションに対する顧客満足度は, 「年齢」 (β=-.296, P<0.01) , 「BI」 (β=.261, P<0.01) , 「リハビリテーション時間への満足感」 (β=.254, P<0.01) , 「訓練環境への満足感」 (β=.206, P<0.05) , 「排泄動作訓練」 (β=.210, P<0.05) , 「入浴動作訓練」 (β=-.252, P<0.01) , 「GDS」得点 (β=-.258, p<0.01) と有意に関連があった.
    結論 : リハビリテーション顧客満足度が介護老人保健施設における施設サービスの満足度と関連していた. これらの結果から, リハビリテーションは, 介護老人保健施設で重要なサービスであることを示唆した. 介護老人保健施設では, リハビリテーションの顧客満足度を向上させるために重要であったリハビリテーション時間の十分な量の供給やリハビリテーションの訓練環境の整備が重要であると考えられた.
  • 小畑 陽子, 浜田 久之, 宮本 俊之, 松島 加代子, 原 信太郎, 中田 るか, 成田 智子, 柴田 英貴, 中田 智夫, 近藤 久義, ...
    2014 年 37 巻 4 号 p. 333-339
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/24
    ジャーナル フリー
    目的 : 長崎大学病院では, 県内の5つの地域病院 (離島やへき地を含む) でのプライマリ・ケア患者を対象とする外来研修を開始した. 本研究では, 医師臨床研修到達目標達成における外来研修プログラムの効果について検討した.
    方法 : 2012年度長崎大学病院に在籍する全初期研修医49名を対象とした. 外来研修終了後, 研修医に対するアンケートにて, 診察人数, 経験症状の調査と研修の評価を行い, 同時に指導医からの研修評価を行った.
    結果 : 平均診察患者数は, 3.29人/回で, 年間を通じての総診察患者人数と経験すべき頻度の高い症状の経験項目数は, 有意な正の相関を示していた. 治療, 診断に関する自己評価が, 他の項目に比べて全体的に低かったが, 回数を重ねるごとに上昇傾向を示し, 問診, 診断, 治療に関する研修医の自己評価と指導医からの評価の差は, 回数を重ねるごとに縮まっていく傾向にあった.
    結論 : プライマリ・ケア患者を対象とする外来研修プログラムは, 医師臨床研修目標を達成するための一つの手段となる可能性が示された.
原著(症例報告)
活動報告
  • 西村 真紀, 大野 毎子, 小崎 真規子, 片岡 仁美, 川島 篤志, 早野 恵子, 村田 亜紀子, 森 敬良
    2014 年 37 巻 4 号 p. 346-349
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/24
    ジャーナル フリー
    日本プライマリ・ケア連合学会は, 2012年8月に系統的キャリア形成支援を目的に女性会員支援委員会を設立した. 西村真紀委員長以下5名の委員により, 学会員の現状把握, 学術大会・セミナーでの定例企画開催, 託児所の円滑な運営が行われてきた. 2014年度より委員を8名へ増員, 名称を2014年9月男女共同参画委員会へ変更し男女共同参画に関する要望の作成を進めている. 概要につき報告する.
  • ─2年間の歩みを振り返って─
    村田 亜紀子, 西村 真紀
    2014 年 37 巻 4 号 p. 350-352
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/24
    ジャーナル フリー
  • 古本 尚樹
    2014 年 37 巻 4 号 p. 353-359
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/24
    ジャーナル フリー
    目的 : 東日本大震災被災住民が生活するにあたり, 課題や今後の目標, 支援について把握する.
    方法 : 2013年7月に多賀城市内の仮設住宅に住む被災住民のうち男性2名, 女性6名に聞き取り調査を行った (本論文で記述するのはそのうち有効な回答のあったものを抽出している) .
    結果 : 顔見知りの人も多く, 大きなトラブルはないが, 高齢者の割合が多く, 集会に出席しない人について危惧される. ここの仮設住宅には支援で全国各地からいち早く, ボランティアが来てくれて助かった. 仮設住宅へ入居当初は風呂の追い炊きがなかったり, 街路灯がなく周辺が暗い等の問題があったが, 多賀城市に要望したら大部分かなえてくれた. 通常の場合と比較して仮設住宅の住民に車椅子利用の被災者が多いので, 大きな地震が発生したら支援をだれがするのか等が心配である.
    結論 : 復興住宅の建設, 入居の徐々に決まりつつあり, 集まってくれた被災者には大きな問題はないように見られた. しかし, 集会に来られない階層の存在, 高齢者が抱える課題が明らかとなり, 彼らへの支援が必要ではないか (保健等を含め) .
  • 渡邉 剛史, 末松 篤樹, 岡田 祐美子, 山室 亮介, 吉田 心慈, 吉田 紗衣子, 宮川 慶, 久田 敦史, 吉見 祐輔, 横江 正道, ...
    2014 年 37 巻 4 号 p. 360-362
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/24
    ジャーナル フリー
    American College of Physicians (ACP) 日本支部年次総会2014において, ワークショップ (WS) 「誰も教えてくれなかった診断学・中級編─複雑な症例に挑戦する」を開催した. 今年度は, 所見が多系統・多臓器に渡りProblem listが膨大になる複雑な症例を取り上げ, 多くのProblemから診断を収束させる思考プロセスを体験する試みを行った. 2013年度に行った「鑑別診断を絞り込む」をテーマにしたグループワーク (GW) とは異なる形式でWSを行い, 参加者から診断能力の向上に役立ったとの感想が聞かれた. 今後も研修医や学生に臨床診断を学ぶ場を提供し, 診断の過程で抱く疑問や悩みを解決するための教育環境を整えることが重要だと考える.
  • ─地域社会と大学との共に歩む関係性
    森田 喜紀, 神田 健史, 山本 祐, 古城 隆雄, 小松 憲一, 梶井 英治
    2014 年 37 巻 4 号 p. 363-365
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/24
    ジャーナル フリー
    自治医科大学地域医療学センターは, 平成25年度より栃木県小山市で始まった「小山の地域医療を考える市民会議」の活動を行政と共に支援してきた. 行政・医療者・市民が市民会議で担う役割を明確にし, とくに市民が無理なく市民会議の主役を担えるように活動の企画や運営の支援を行ったことが, 市民の意識変化や市民会議の活性化に繋がったと思われた.
  • 大石 愛, 浜野 淳, 春田 淳志, 木村 洋輔, 菅野 哲也, 田中 久也
    2014 年 37 巻 4 号 p. 366-368
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/24
    ジャーナル フリー
    第4回日本プライマリ・ケア連合学会学術大会にて現場の参加者が抱く緩和ケアに関する困難感の共有を目的とし, ワールドカフェに準じてワークショップ (以下WS) を実施した. 医師・薬剤師17名の参加があり, 知識を現場に落とし込む難しさや解決できない様々な困難感が窺われた. ジェネラリストに限らず複雑性の高い緩和ケアの現状を把握したうえで, 各専門職や施設, 関連学会などとの連携・対話の必要性を実感したWSであった.
  • 大友 宣, 佐野 かず江, 島田 千穂
    2014 年 37 巻 4 号 p. 369-373
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/24
    ジャーナル フリー
    目的 : 在宅療養支援診療所と連携する訪問看護ステーションが行う在宅デスカンファレンスの意味づけを明らかにすること.
    方法 : 診療所医師・看護師, 訪問看護ステーションの看護師を対象にインタビューを行い, 修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチによる分析を行った.
    結果 : 11名にインタビューを行い, 14の概念を抽出し, 《学びの場としての在宅デスカンファレンス》, 《癒しの場としての在宅デスカンファレンス》, 《弔問の役割の再確認》, 《顔の見える関係の構築》, 《在宅デスカンファレンスの限界》という意味付けとしてカテゴリー化した.
    結論 : 参加者らは《学びの場としての在宅デスカンファレンス》と《癒しの場としての在宅デスカンファレンス》という, ふた通りのふり返りの仕方をしていた. 在宅デスカンファレンスの中で弔問についてディスカッションすることができていた. 在宅デスカンファレンスにおける《顔の見える関係の構築》は, 連携を円滑にする可能性がある.
報告
  • ─家庭医療専門医取得後にどのような道を進むべきか?
    遠井 敬大, 吉本 尚, 錦織 宏
    2014 年 37 巻 4 号 p. 374-376
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/24
    ジャーナル フリー
    目的 : 2009年に本邦で初めてプログラム認定を基盤にした家庭医療専門医が誕生したことにより, 近年, 後期研修終了後のキャリアについての関心が高まりつつある. 今回はその調査を行う目的で, 家庭医療専門医取得者を対象にアンケートを行った. その結果をもとに2013年の第4回日本プライマリ・ケア連合学会学術大会でシンポジウムを開催し, 多様なキャリアモデルを紹介するとともに, ディスカッションも行った. 今回は委員会の活動として行ったその内容を報告する.
    方法 : シンポジウムでは, アンケート調査の報告・パネリストからの発表および参加者とのディスカッションの順に行った.
    結果 : 参加者層は主に後期研修医および後期研修終了後の家庭医療専門医であった. また, ディスカッションではパネリストのキャリアパスに関して, 具体的な選択理由やその時期, 選択などのさらに掘り下げた質問などもあり, 活発な討論が行われた.
    結論 : 家庭医療専門医の取得はキャリアの安定化に一定の役割を担っている可能性があると考えられる. 一方で, 専門医取得後のキャリアパスはまだ暗中模索の様相であり, 安定志向の強い家庭医療専門医取得者にとっては, まだそれに対する不安が多そうである. よって学会による家庭医療専門医取得後のキャリアのさらなる明確化は, 総合診療・家庭医療領域の拡充を戦略とする場合は, 今後の課題の一つと言えそうである.
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