日本プライマリ・ケア連合学会誌
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38 巻, 4 号
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Editorial
原著(研究)
  • 前田 雅子, 前田 稔彦, 松元 加奈, 森田 邦彦
    2015 年 38 巻 4 号 p. 335-339
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/25
    ジャーナル フリー
    目的 : 診療時グラム染色検査の導入が抗菌薬の使用動向に影響を及ぼすかを検討することを目的とした.
    方法 : グラム染色導入前後での抗菌薬の種類・使用量の動向, 診療経過の動向を後方視的に調査した.
    結果 : 抗菌薬処方頻度 (100 人当たり) は, マクロライド系は20.9件 (2006年) から3.6件 (2012年) , 第三世代セフェム系は7.9件 (2005年) から2.4件 (2012年) に減少の一方, ペニシリン系は1.6件から3.9件に増加した. それにともなって1人当たりの抗菌薬消費額が約1/5に低下した. 小児急性副鼻腔炎患者50人当たりの抗菌薬不使用患者数は9倍に増加した一方, 治療期間中に抗菌薬2種類以上を処方された患者数は26名から9名に減少し, 治癒に要した日数は約6日間短縮された.
    結論 : グラム染色導入がよりよい抗菌薬使用につながる取り組みとなる可能性が示唆された. 多施設での研究的取り組みによる評価の必要性が考慮される.
  • 三河 貴裕, 小山 隆文, 大山 優
    2015 年 38 巻 4 号 p. 340-344
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/25
    ジャーナル フリー
    目的 : 悪性腫瘍合併血栓症に対して抗凝固薬外来自己注射を施行可能であった4例を経験した.
    症例1 : 58歳男性, 膵癌, ワルファリン抵抗性深部静脈血栓症 (DVT)/肺塞栓症 (PE) . 自宅でフォンダパリヌクス5mg1日1回皮下注を使用し, 3ヶ月後のCTで血栓縮小を確認した. 自宅での自己注射期間は23ヶ月であった. 症例2 ; 55歳男性, 肺癌, ワルファリン抵抗性DVT. 自宅にて皮下注ヘパリン20000単位1日2回 (40000単位/day) を使用し, その後副作用があったためフォンダパリヌクス2.5mg皮下注へ変更した. 3ヶ月後のCTで血栓消失を確認した. 自宅での注射期間は3週間であった. 症例3&4 ; 59歳女性, 膵癌およびPE, 68歳女性, 腹膜癌およびDVT/PE. 頻回の腹水穿刺が必要と見込まれ, それぞれ自宅でフォンダパリヌクス2.5mg皮下注を17週間, 皮下注ヘパリン10000単位1日2回 (20000単位/day) を6週間行った. 本邦でも悪性腫瘍合併血栓症の長期治療に抗凝固薬外来自己注射を安全に使用出来る可能性が示唆された. 皮下注ヘパリンは量・穿刺回数・APTT・合併症に注意が必要であり, 低分子ヘパリンや フォンダパリヌクス自己注射の保険適応が望まれる.
  • 國吉 保孝, 田代 実
    2015 年 38 巻 4 号 p. 345-348
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/25
    ジャーナル フリー
    目的 : 肺炎球菌の薬剤耐性化の動向について検討する. 小児分離株と成人分離株の薬剤感受性の傾向に違いがあるか検討する.
    方法 : 2005年~2011年の7年間に, 呼吸器臨床検体から分離された肺炎球菌1062株について, penicillin G (PCG) とcefotaxime (CTX) , meropenem (MEPM) に対する薬剤感受性の経年的変化を後方視的に検討した.
    結果 : 小児分離株では, ペニシリン感受性肺炎球菌 (PSSP) の割合に有意な変化はなかった. MEPMに対する感受性菌の割合は有意に増加傾向にあり, CTXに対する感受性菌の割合は有意に減少傾向にあった. 小児分離株は, 成人分離株に比べて有意にPSSPの割合が低かった.
    結語 : 小児分離株は, セフェム系抗菌薬に対する耐性化がすすんでいる可能性が示唆された. 同一地域でも, 小児分離株は成人分離株に比較して耐性菌の割合が高いことが示唆された.
  • 松下 明, 田原 正夫, 吉本 尚
    2015 年 38 巻 4 号 p. 349-354
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/25
    ジャーナル フリー
    目的 : 高齢男性は支援や介護を要する状態となっても社会資源利用を好まず, 家に閉じこもりがちとなるケースが散見される. こういった背景から高齢男性の心理状態を評価及び分析し, 社会的関わりを促す具体的な方策を提言することが本研究の目的である.
    方法 : 岡山県勝田郡奈義町在住の75歳以上男性を対象に質的研究を行い, データ収集を2段階にて実施した. 一つは奈義町内の3地区に行われたフォーカスグループで, もう一つは個別に行われた半構造化インタビューである. 文章化されたインタビュー内容は修正版グラウンデッド・セオリーアプローチ (M-GTA) で分析・比較検討され, 概念化された.
    結果 : 高齢男性の社会的参加に関する心理的背景要因として, 内的要因 (役割へのこだわり・老いの受容) , 関係性の要因 (女性参加者・スタッフとの関係) , 外的要因 (経済・交通手段) が3つのカテゴリーとして示された.
    結論 : 関係性の要因と外的要因を中心に介入を行うことで, 高齢男性の社会的関わりを改善することが可能と思われた. 行政への10の提言を行った.
原著(症例報告)
総説
  • フィリップ ザゾフ, 井上 真智子, 本原 理子, マイク D. フェターズ
    2015 年 38 巻 4 号 p. 358-368
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/25
    ジャーナル フリー
    家庭医療は, 多くの先進諸国においてその医療システムを支える要となっており, 今日, 経済情勢の悪化によりますます重要な役割を果たすものと考えられるようになってきた. これまで日本では, 確固とした家庭医療のインフラが整っていなかったが, 近年急速に全国各地で家庭医療を推進する動きが見られる. しかし, 日本の医療ニーズに即した家庭医の育成を十分行っている研修プログラムは多くはない. 本稿では, 家庭医療学のもつ背景について概説し, 大学における家庭医療学講座の成功例を示すとともに, 日本で家庭医療を発展させることで得られる利点について考察する.
  • 星野 智祥
    2015 年 38 巻 4 号 p. 369-382
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/25
    ジャーナル フリー
    日本は原爆による被ばく国として, また原発事故の当事国として, 深刻な放射線災害を経験してきた. その一方で, 日本は他の先進国と比べて国民の医療被ばくが多く, その主な要因は, 診断を目的としたCT検査が増え続けていることである. 福島原発事故が発生してから, 全国的に低線量被ばくと発がんのリスクについて議論が繰り広げられてきたが, 近年, 大規模コーホート研究において, CTスキャンからの低線量電離放射線による発がんリスクが明らかとなってきている. CTスキャンは短時間で解像度の高い画像が得られるため, 医療現場には欠かせない重要な診断技術となっているが, 患者の利益とリスクのバランスの上に立ち, CTが適切に使用されているのかどうか評価することがきわめて重要である. 病院総合医に求められる中核的能力には, 病院医療の質を改善する能力, 他科やコメディカルとの関係を調整する能力が含まれる. この観点から, 病院総合医が放射線科医や放射線技師らと協力し, CTの使用を正当化しながら, 不必要な被ばくを最小限にするためにはどのような役割を果たせるのか考察した.
活動報告
  • 富永 あや子, 冨田 晴樹, 石田 岳史
    2015 年 38 巻 4 号 p. 383-385
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/25
    ジャーナル フリー
    昨今モニタ・アラーム関連事故報道が後を絶たたず, 我々はこの原因をアラーム疲労と考えている. この問題を解決するために当院では多職種で構成したモニタ・アラーム・コントロールチーム (以下MACT) を発足し, 循環器内科病棟を対象に介入を行った. その効果を介入前後のアラーム数で評価し, 介入前1,263.4±453.4件あったアラームが介入後264.1±128.4件となったので報告する.
  • 三原 一郎, 渡邊 田鶴子, 土田 兼史, 中村 秀幸, 遠藤 貴恵, 小野寺 亜衣
    2015 年 38 巻 4 号 p. 386-390
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/25
    ジャーナル フリー
    目的および方法 : 医療と介護の連携を進める上での障害のひとつとして, 地域の介護サービス事業所 (以下事業所) の医療依存度の高い人の受け入れなど実態が分かりにくいという指摘がある. そこで, 本研究では, A県B地域に存在する事業所を対象に聞き取り調査を行い, 医療依存度の高い人の受け入れの現状と課題を明らかにすることとした.
    結果 : 1) 介護老人保健施設を除くほとんどの事業所に看護師の夜間配置はなく, 医療処置を必要とする人の受け入れは困難という現実が示された. 2) 喀痰吸引は, むしろ制度が施行されてから受け入れ先が狭まっており, その背景には, 研修に出すにも勤務交代が難しい, コストがかかるなど事業所の実情が伺えた. 3) 看取りに関しては, 事業所の理解・経験不足もあるものの医師の理解不足が障害になっていることが示唆された.
    結語 : 事業所の実態と役割を理解した上で, なお一層の医療と介護の連携を強化する必要がある.
  • 内田 信之, 橋爪 直紀, 剣持 る美, 狩野 道子, 荒木 栄子
    2015 年 38 巻 4 号 p. 391-392
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/25
    ジャーナル フリー
    「NPO法人あがつま医療アカデミー」は, 群馬県吾妻地域の医療の問題をあらゆる医療者が共有し考えていくことを目的に, 2012年7月に設立された. 2014年は「リビング・ウィル」を最重要テーマに位置づけ, 計32回の研修会を開催, 同時に「私の意思表示帳」の作成, さらに「リビング・ウィル」をテーマとしたフォーラムを開催した. 今後もこの活動を, 地域に密着した形で地道に継続していく予定である.
  • 古本 尚樹
    2015 年 38 巻 4 号 p. 393-400
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/25
    ジャーナル フリー
    我が国における自然災害において, 雪害による犠牲は年によっては災害種別で水害に次いで, あるいは最も多い年もある. 近年は首都圏でも局地的豪雪もあり, 雪害対応が必要となる自治体は少なくない. 降雪の被害が予想される各自治体で, 普段の除雪に関してどのような課題に直面し, かつどのような対応を行っているかを各地域での聞き取りを通じて, 比較することとした. 住民からの苦情で多いのは, 間口への「置き雪」であった. また, 除雪を実際に行う建設業などマンパワー不足, 資材不足, 技術の伝承ができないなども挙げられた.
  • ─英国短期訪問プロジェクト参加報告─
    氏川 智皓, 加藤 大祐, 栗本 美緒, 新道 悠, 原田 直樹, 澤 憲明
    2015 年 38 巻 4 号 p. 401-403
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/25
    ジャーナル フリー
    この度, 著者の5人である氏川, 加藤, 栗本, 新道, 原田が第2回日英プライマリ・ケア交換留学プログラムの英国短期訪問プロジェクトの派遣団員として, 2014年9月末から10月初めにかけて, それぞれ異なる英国の家庭医療診療所を見学し, 英中部Liverpoolで開催された英国家庭医学会 (Royal College of General Practitioners, 以下RCGPと略す) 主催の年次学術大会に参加した. 本プログラムは, 日本プライマリ・ケア連合学会とRCGPとの正式な交流の一環として, 本学会国際キャリア支援委員会とRCGP若手国際委員会 (Junior International Committee, 以下JICと略す) が窓口となり, 2013年に行なわれたパイロット事業の理念と成功を受け継ぐものである.
    今回の渡英に先立ち, 英国家庭医5人 (Dr Greg Irving, Dr Jessica Watson, Dr Shazia Munir, Dr Seher Ahmed, Dr Anna Romito) が2014年5月に来日し, それぞれ異なる家庭医療後期研修プログラムを見学し, 岡山で開催された本学会学術大会でポスター発表を行なった. 本稿では, 派遣団員が本事業を通して印象深かったもののうち, 「診療所の質の担保」「医師の質の担保」「家庭医のコミュニケーション技術」の3つを紹介する.
編集者への手紙
男女共同参画委員会
  • 村田 亜紀子, 西村 真紀
    2015 年 38 巻 4 号 p. 406-411
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/25
    ジャーナル フリー
    2015年6月, 第6回プライマリ・ケア連合学会学術大会において, 「キャリアcafé」と題し全学会員向けに交流の場と個別の相談コーナーを企画した. 多職種の幅広い年代の参加者が来場し, 悩みや知恵, 取組みを共有し, キャリアや人生について考え, 自分の価値観や思考を振り返る機会を提供できた. テーマ設定や運営等課題は残るものの概ね好評価であり, 今後は男女共同参画委員会を中心に委員会横断的な企画として学術大会での定例開催を予定している.
病院総合医委員会
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