日本プライマリ・ケア連合学会誌
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39 巻, 2 号
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Editorial
原著(研究)
  • 津島 久孝
    2016 年 39 巻 2 号 p. 94-97
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/06/24
    ジャーナル フリー
    目的 : 臓器不全のない非がん高齢者終末期の予後に影響する要因の検討
    対象および方法 : 2011年10月1日から30ヶ月の間に当院医療療養病棟にて, 終日臥床状態で軽度意識障害があり経口摂取が不可能でかつ臓器不全を伴わない非がん高齢者のうち, 皮下輸液および血液検査をおこなってその後死亡した36例を対象とした. 後ろ向きに輸液開始より死亡迄の日数 (予後) を算出し, 予後に影響する血液検査結果を中心に検討した.
    結果 : 平均年齢は85.1歳, 男女比は19 : 17. 基礎疾患は認知症 (21例) , 老衰 (8例) , パーキンソン病 (4例) , 多発性脳梗塞 (3例) であった. 予後は中央値31日で平均34.9日であった. 血液検査結果と予後との関係では, 単相関でも重回帰解析でも統計的に有意な要因はなかった. しかし, 血清アルブミン値3g/dl未満群 (24例) では3g/dl以上群 (5例) に比べ有意 (p=0.001) に予後が短かった (27日vs 61日) .
    結論 : 上記対象症例の予後予測は困難であるが, 血清アルブミン値がその指標の一つとなる可能性がある.
  • ─SOC (首尾一貫感覚) に注目して─
    若山 修一, 高田 祐, 久保田 智洋, 中村 茂美, 藤田 好彦, 巻 直樹, 長谷川 大悟, 柳 久子
    2016 年 39 巻 2 号 p. 98-105
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/06/24
    ジャーナル フリー

    目的 : 高齢者の閉じこもりは, 現行の介護予防施策において重要視されているが, 未だ有効な介入手段は確立されていない. そのため, 現在明らかになっていない閉じこもりの関連要因を解明することが必要と考える. とくに, 閉じこもりの身体的要因に比べて心理・社会環境的要因に関する知見は少なく, 本研究では, 閉じこもりの新たな心理・社会環境的要因と予測したSOCに注目し, 閉じこもりとSOCの関連を検討した.
    方法 : 地域在住の要介護認定を受けていない高齢者1,895名を対象に郵送による調査を実施した. 調査項目は, 基本属性, 閉じこもり状態, 身体的特性, 心理・社会環境的特性とした. なお, 心理・社会環境的特性の評価の一つとしてSOCを調査した. 解析対象となった853名を閉じこもり状態に応じて3群に分類し, 閉じこもり状態を従属変数とした順序ロジスティック解析を実施した.
    結果 : 閉じこもりと有意な関連が認められた項目は, 年齢, 性別, 運動機能が低い, うつ傾向, SOCが低い, 老研式活動能力指標が低いことであった.
    考察 : 本研究では, 閉じこもりとSOCとの関連が認められた. 閉じこもり予防支援において, 運動機能やうつに対する介入に加え, 新たにSOCに着目した支援の必要性が考えられた.
  • ─症例蓄積研修
    雨森 正記, 大原 紗矢香, 中村 琢弥, 松原 英俊, 服部 昌和
    2016 年 39 巻 2 号 p. 106-110
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/06/24
    ジャーナル フリー
    目的 : 診療所が全国がん登録に参加しなかった場合に, 登録漏れになる可能性のあるがん患者の頻度と, 患者背景をさぐることを目的とした.
    方法 : 本研究は症例蓄積研修である. 26年間に竜王町国民健康保険診療所, 医療法人社団弓削メディカルクリニックで発見し, 滋賀県がん登録に報告したがん患者の症例蓄積から, 診療所での登録がなければ, がん登録から漏れる可能性のある患者の抽出を行い, その背景について検討した.
    結果 : 報告したがん患者は441例であった. そのうち入院しなかった患者は, 28例 (6.3%) あり, それらの患者は, がん登録から漏れる可能性があると考えられた. その内訳は, 発見時にすでに進行した状態の高齢者で入院せずに在宅看取りが行われた例が10例, 診療所で治療が完結した (内視鏡下で切除) 例が2例, 病院の外来での診察のみで入院することなく在宅看取りが行われた例が12例, 病院には外来受診, 入院することなくCT検査のみ施行され在宅での看取りが行われた例が4例であった.
    結論 : 外来で治療を完結する可能性のある疾患を扱っている専門診療所や, 在宅医療でがん患者の看取りを行っている診療所は, 全国がん登録事業に参加すべきである.
  • 谷垣 靜子, 乗越 千枝, 長江 弘子, 岡田 麻里, 仁科 祐子
    2016 年 39 巻 2 号 p. 111-115
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/06/24
    ジャーナル フリー
    目的 : マグネット訪問看護ステーションの管理者を対象に職員の定着のためにどのような組織育成を行っているのか, 管理者の考えや取り組みを明らかにする.
    方法 : 訪問看護ステーション管理者6名を対象にインタビューを実施し, 質的帰納的分析を行った.
    結果 : 管理者は, ≪看護実践を共有し訪問看護のレベルをあげる≫努力をし, ≪利用者・家族の期待に応える≫ため≪多職種とチームを組む≫ことで【訪問看護の使命を示す】ことに取り組んでいた. また, 管理者は, ≪スタッフの強みを伸ばす≫≪スタッフの主体性を育む≫ことに努め, ≪スタッフのワークライフバランスを考える≫ことで【スタッフ個々の個性を活かし育む】職場づくりに取り組んでいた.
    結論 : 訪問看護ステーションの管理者は, 訪問看護のレベル向上と職員の労働環境整備に取り組むことで, 職員の定着を図っていることが明らかとなった.
  • ─地域高齢者によるケア活動と主観的QOL (quality of life) との関連─
    黒岩 祥太, 北 啓一朗, 渡辺 史子, 三浦 太郎, 黒岩 麻衣子, 小浦 友行, 吉田 樹一郎, 南 眞司, 山城 清二
    2016 年 39 巻 2 号 p. 116-121
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/06/24
    ジャーナル フリー

    目的 : 地域高齢者がケアを提供する相手を持つことと主観的QOLとの関連を明らかにすることを目的とした.
    方法 : 2014年5月-7月に富山県南砺市で実施された日常生活圏域ニーズ調査の回答者である65歳以上の高齢者7728人のデータを解析対象とした. ケアを提供する相手の有無及び本人の属性, 健康, 生活に関する各種指標を説明変数とし, 主観的QOL指標とみなせる生きがい, 充実度, 自尊心の有無をそれぞれ目的変数とする多重ロジスティック回帰分析を行った.
    結果 : 属性, 健康, 生活に関する各種指標を調整したとしても, 高齢者にとってケアを提供する相手がいることと, 生きがい, 充実感, 自尊心との間には, いずれも正の有意な関連があることが認められた.
    結論 : 地域における互助の推進にはケアの受容者のみならず, ケアを提供する高齢者に対しても積極的な意義があること, またケアされることにも社会的な意義があることが示唆された.
原著(症例報告)
  • 和泉 泰衛, 矢野 聡, 佐藤 早恵, 西野 文子, 大野 直義, 荒木 利卓, 矢嶌 弘之, 中島 一彰, 伊東 正博
    2016 年 39 巻 2 号 p. 122-124
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/06/24
    ジャーナル フリー
    症例は24歳男性. 主訴は感冒症状が先行する右頸部痛. 画像上, 右内頸静脈血栓を認め, Lemierre症候群と診断. 抗生剤と抗凝固療法にて症状改善した. 退院後に腰痛, 乾性咳嗽が出現し頸部-骨盤造影CTにて右総腸骨静脈, 左内腸骨静脈に新たな血栓, 右下葉の肺炎, 椎体の骨髄炎の所見を認めて再入院となった. 各種感染症検査を提出したが原因は特定できなかった. 抗生剤治療を継続したが, 両側胸水が増悪し, 椎体の溶骨性病変が多発, 増大した. 骨病変の生検を施行した所, 転移性腺癌の診断に至った. 内視鏡検査にて進行胃癌を認め, 多発骨転移, 癌性リンパ管症を合併した進行胃癌と診断された. 以上の経過より, 上気道炎から内頸静脈血栓を合併したのは, 進行胃癌に伴う過凝固状態が一因であったと推察した. つまり, 進行胃癌に伴うTrousseau症候群の一例と考えられた. 本症例のように血栓症を繰り返す症例では若年者でも悪性疾患合併を考える必要があると感じた症例であった.
活動報告
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