日本プライマリ・ケア連合学会誌
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40 巻, 1 号
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Editorial
原著(研究)
  • 武田 三花, 小泉 仁子, 江守 陽子
    2017 年 40 巻 1 号 p. 2-8
    発行日: 2017/03/20
    公開日: 2017/03/25
    ジャーナル フリー

    目的:若い女性の生活習慣と隠れ肥満について先行研究では明確でない点も多い.女子学生の生活習慣と隠れ肥満を探索的に調査する.

    方法:2012年9~10月,関東地方2校の18-23歳の女子学生85名を対象に,隠れ肥満(BMI<25 kg/m2,体脂肪率≧30%)と標準体型(18.5≦BMI<25 kg/m2,体脂肪率20~25%)の生活習慣の違いを横断的に調査した.体型は体組成計InBody430,生活習慣は自記式質問紙により調査した.

    結果:本対象において標準体型は6名(7.1%),隠れ肥満は25名(29.4%)であり,普通体重56名の44.6%が隠れ肥満であった.違いがみられたのは食物摂取頻度で,隠れ肥満者は標準体型者より緑黄色野菜(p<.001)と野菜(p=.008)の1日摂取量が少なく,マヨネーズ(p=.003)と揚げ物(p=.018)の摂取頻度が多かった.

    結論:本対象の隠れ肥満者は生活習慣病につながりやすい食習慣を持つ傾向があった.普通体重の女性においても食生活支援が必要である可能性が示唆され,定期的体脂肪測定がのぞまれる.

  • 佐藤 文音, 神藤 隆志, 藤井 啓介, 辻 大士, 北濃 成樹, 堀田 和司, 大藏 倫博
    2017 年 40 巻 1 号 p. 9-15
    発行日: 2017/03/20
    公開日: 2017/03/25
    ジャーナル フリー

    目的:自治体主催の専門家による運動教室を修了した女性高齢者が,高齢ボランティアが運営する運動サークルへ参加することで得る身体機能への効果を明らかにする.

    方法:茨城県笠間市が主催した3ヵ月間の運動教室を修了した女性高齢者47名のうち,高齢ボランティアが運営する運動サークルに所属した28名(所属期間:約11ヵ月)と所属しなかった19名を分析対象者とした.運動教室および運動サークルでは,主運動として下肢機能の向上を目的として開発されたスクエアステップ・エクササイズがおこなわれた.教室終了時およびその約1年後に追跡調査をおこない,身体機能を5つのパフォーマンステストを用いて測定した.

    結果:二要因分散分析の結果,有意な交互作用が認められた項目はtimed up and goであり(P=0.003),運動サークルに所属した者においてのみ有意な向上がみられた(P=0.007).

    結論:高齢ボランティアが運営する運動サークルへの参加は,自治体主催の専門家による運動教室を修了した女性高齢者の起居移動動作能力を向上させることが示唆された.

  • 内田 信之, 芝 陽子, 平形 浩喜, 島村 修, 神邉 雅良, 大久保 百子, 飯塚 みゆき, 中島 美江
    2017 年 40 巻 1 号 p. 16-20
    発行日: 2017/03/20
    公開日: 2017/03/25
    ジャーナル フリー

    目的:原町赤十字病院における過去10年間の医科歯科連携の取り組みの意義を検証する.また当院入院患者の口腔内の実態について調査し,今後の活動について考察する.

    方法:医科歯科連携に関するアンケート結果や実態調査からその成果を見出す.また歯科医師による口腔アセスメント開始後の現状を,歯科医師不在時の状況と比較する.

    結果:平成17年に院外の歯科衛生士が当院のNST回診に参加する.その後,入院患者に対する口腔内アセスメント,手術,化学療法前患者の歯科医受診の奨励,医療者を対象とした口腔ケアセミナーを行う.この結果,病院職員の口腔ケアに対する意識や手技は向上した.平成25年から歯科医師による口腔アセスメントおよびケアを開始したが,外科入院中の患者の口腔内の問題の割合や術後肺炎の頻度は必ずしも低下していない.

    考察および結論:医科歯科連携には一定の効果があった.今後は一般住民に対する歯科検診や歯周病対策の啓蒙も必要と考える.

  • 太田 龍一, 向山 千賀子, 福澤 康典, 森脇 義弘
    2017 年 40 巻 1 号 p. 21-26
    発行日: 2017/03/20
    公開日: 2017/03/25
    ジャーナル フリー

    目的:小児喘鳴発作とサトウキビ製糖作業との関係性を検討する.

    方法:沖縄県南大東島の幼稚園,小中学校に通学する全児童167人を対象に,喘鳴発作を含めた毎日の症状の有無を前向きに収集した.喘鳴発作の発生率を2ヶ月ごとに算出し通年変化を検討した.また喘鳴発作の有無を従属変数とし,児童の背景因子を独立変数とするロジスティック回帰分析を行った.

    結果:チェックシート回収率は62.5%,年齢の中央値は7.5歳,男女比は8:7,喘息既往者は36%であった.製糖作業期間である1-3月における喘鳴発作発生率はそれ以外の期間より有意に高かった.喘息の既往のない小児においても一定数の喘鳴発作がみられた.

    結論:小児喘鳴発作発生率の増加とサトウキビ製糖作業の関係性が示唆された.

  • 渡邊 法男, 細川 佐智子, 山田 卓也, 吉田 知佳子, 鈴木 瑛子, 安部 成人, 伊藤 真也, 丹羽 伊紀詠, 山村 恵子
    2017 年 40 巻 1 号 p. 27-32
    発行日: 2017/03/20
    公開日: 2017/03/25
    ジャーナル フリー

    目的:フェンタニル舌下錠(Fentanyl Sublingual Tablets:FST)の有用性および安全性について調査を行い,FSTの適正使用に向けた問題点について検討した.

    方法:薬学的管理を行ったがん性疼痛入院患者のうち,突出痛に対してFSTを使用した18名を対象に,FST使用前後の疼痛スコアおよび副作用(嘔気・嘔吐,傾眠)の変化について調査した.

    結果:FST使用前後の疼痛スコアは,投与直前6.4±2.4と比較して,投与30分後3.4±2.8と有意な改善が認められた(p<0.01).傾眠は,投与直前と比較して,投与30分後および2時間後に有意な発現の増加が認められた(p<0.05).嘔気・嘔吐は,有意な変化を認めなかった.FST使用患者9名に口腔乾燥が出現し,口腔乾燥出現時には,疼痛スコアおよび副作用に有意な変化を認めなかった.

    結論:FSTの適応を判断する上で口腔状態の観察は必須で,十分な口腔ケアを行った上でFSTを使用すべきである.また,傾眠の副作用が高頻度に出現する可能性が示唆された.

  • 今永 光彦, 外山 哲也
    2017 年 40 巻 1 号 p. 33-37
    発行日: 2017/03/20
    公開日: 2017/03/25
    ジャーナル フリー

    目的:介護老人福祉施設入所者において,緊急入院のリスク因子を検討することを目的とする.

    方法:埼玉県内にある2ヵ所の介護老人福祉施設に,2013年5月1日の時点で1年間以上入所している170例を対象とし,過去起点コホート研究を行った.先行研究を参考に,研究者らが臨床的に重要であると考えた因子も加えて,それらの17項目と1年以内の緊急入院の有無との関連について検討した.単変量解析を行い,P<0.05を基準として変数選択を行い,多変量解析を行った.

    結果:1年以内の緊急入院は70例(41.2%)で認めた.多変量解析(ロジスティック回帰分析)で有意な因子は,慢性心不全(OR:5.73,95%CI:1.37-23.84)・褥瘡(OR:16.70,95%CI:1.89-147.41)・1年で5%以上の体重減少(OR:2.47,95%CI:1.07-5.68)であった.

    結論:介護老人福祉施設入所者において,「慢性心不全」・「褥瘡」・「1年で5%以上の体重減少」が,緊急入院のリスク因子であった.

  • 小菅 瑠香, 河合 慎介
    2017 年 40 巻 1 号 p. 38-43
    発行日: 2017/03/20
    公開日: 2017/03/25
    ジャーナル フリー

    目的:地域医療の立て直しに際して,近年は家庭医や総合診療医など,かかりつけ医の導入が注目されている.本研究では静岡県菊川市の事例を通して,家庭医療診療所の設置が医療圏にもたらした受診の影響を動態的に把握することを目的とした.

    方法:家庭医療診療所開院前後の受療行動の変化を知るために,K病院およびK診療所のレセプトデータを分析した.動向は診療所開設後1ヶ月を基準日として前後に渡り3年間,季節による受診の変動を考慮し3ヶ月ごとの月末平日データを用いた.

    結果:圏域別に患者数や属性を分析した結果,K診療所の開設に伴う連携先のK病院からの患者の移行は僅かであると判断できた.特に診療所は近傍の高齢者から支持されていることが明らかになった.

    結論:病院と診療所では,施設機能の相違が反映された役割分担が行われていると考えられた.

原著(症例報告)
総説
活動報告
  • 宮本 恭子
    2017 年 40 巻 1 号 p. 52-57
    発行日: 2017/03/20
    公開日: 2017/03/25
    ジャーナル フリー

    目的:離島で暮らす高齢者が住み慣れた島で暮らし続けることを可能にする地域居住要件について検討する.

    方法:総務省の『住民基本台帳人口移動報告』を整理するとともに,島根県隠岐郡知夫村役場村民福祉課職員を対象に,質問紙調査とフィールド調査(面接法)を実施し,質的分析を行った.

    結果:隠岐島では,高齢者の島外への転出が続いている.年次によってばらつきはあるが,県外への転出も多い.知夫村には入院施設や入所施設がなく,在宅介護サービスも訪問介護と通所介護のみである中,高齢者の死亡場所は島外の病院が多かった.伝統的に近隣同士の結びつき,支え合いが強く,これが生活継続の重要な社会資源であることが特徴である.

    結論:離島地域の高齢者が最期まで住み慣れた島で暮らし続けるためには,重度の要介護者の受け皿の整備と地域の互助活動をベースにした,保健・医療・福祉サービス供給主体と行政及び住民との連携強化が重要であることが示唆された.

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