日本プライマリ・ケア連合学会誌
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最新号
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Editorial
原著(研究)
  • 今西 孝至, 工藤 優佳, 楠本 正明
    2024 年 47 巻 3 号 p. 74-80
    発行日: 2024/09/20
    公開日: 2024/09/20
    ジャーナル フリー

    目的:京都府における薬局薬剤師の在宅医療活動の特徴を把握するために,在宅訪問を実施している薬局薬剤師を対象にアンケート調査を実施した.

    方法:京都府薬剤師会に所属し在宅訪問を実施している411薬局に依頼状を郵送し,本調査に同意が得られた薬剤師のみを対象とした.解析は重要度と実施度の評価およびCS分析を用いた.

    結果:在宅医療における薬剤師業務30項目のうち,重要度よりも実施度が低く相関が認められなかった項目として「④患者の状態に応じた懸濁法による調剤」,「⑤麻薬の調剤」,「⑥経腸・経鼻薬等の補助管理」,「㉖歯科医・歯科衛生士との連携・情報共有」,「㉚退院時カンファレンスへの参加」があり,CS分析でも要改善項目に該当した.

    結論:医薬品の説明や管理などの対物業務は積極的に実施できていたが,病状・副作用の確認や多職種連携などの対人業務は重要であるとの認識はあるもののあまり実施できていないことが明らかになった.

  • 松坂 雄亮, 道辻 徹, 大園 恵梨子, 梅田 雅孝, 泉野 浩生, 松島 加代子, 長谷 敦子, 浜田 久之
    2024 年 47 巻 3 号 p. 81-88
    発行日: 2024/09/20
    公開日: 2024/09/20
    ジャーナル フリー

    目的:一般外来と一次・二次救急外来はともにプライマリ・ケアの範疇に入るが,二者の治療場面の違いは卒後臨床研修の教育プログラム策定に影響すると考えられる.本研究は,一般外来と救急外来を含む地域基盤型外来研修で研修医が経験した内容を後方視的に調査することにより,それぞれの治療場面で経験しやすい項目の相違を比較することを目的に実施した.

    方法:一般外来と救急外来それぞれについて,経験すべき症候や疾患を経験した研修医の人数を算出し,Fisherの正確確率検定を用いて比較した.

    結果:「頭痛」など臨床推論を学ぶのにふさわしい項目,「認知症」など慢性疾患の継続診療を学ぶのにふさわしい項目で,救急外来よりも一般外来の方が有意に多く経験していた.

    結論:臨床研修における経験すべき症候・疾患のうち,一般外来で経験しやすいものが抽出された.これらの項目は一般外来研修の目的にも合致していると考えられた.

原著(事例報告)
  • 水谷 直也, 森 寛行, 見坂 恒明
    2024 年 47 巻 3 号 p. 89-98
    発行日: 2024/09/20
    公開日: 2024/09/20
    ジャーナル フリー

    統合失調症の63歳男性が,1か月前からの食欲不振と下腿浮腫を主訴に受診した.上部消化管内視鏡検査で胃体上部から胃角部に肉眼型分類3型胃癌(病理:tubular adenocarcinoma,moderately differentiated type)を認めた.血清総蛋白4.7 g/dL,血清アルブミン1.5 g/dLで,造影CT・造影MRI,腹水検査で遠隔転移は認めず,進行胃癌cT4bN2M0,cStageⅢCと臨床診断した.低アルブミン血症はアルブミン投与に不応性で,審査腹腔鏡で癌性腹膜炎所見は認めなかった.消化管シンチグラフィで,胃癌から消化管への蛋白漏出を確認した.文献レビューで蛋白漏出性胃癌の臨床的特徴を検討した.胃体部や前庭部のBorrmann 0ないし1型腫瘍で,最大腫瘍径が10 cm近く,カリフラワー状外観を示す場合は蛋白漏出性胃癌の可能性が高く,癌性腹膜炎との鑑別のため,99mTc-HSAシンチグラフィと審査腹腔鏡を積極的に実施すべきである.

  • 山本 淳生, 進藤 達哉, 八幡 晋輔
    2024 年 47 巻 3 号 p. 99-104
    発行日: 2024/09/20
    公開日: 2024/09/20
    ジャーナル フリー

    症例は71歳女性.1ヶ月前の腎機能は正常であった.右大腿部の帯状疱疹と診断され,バラシクロビル(VACV)3,000 mg/日を処方された.その後腎機能障害と意識障害を来して入院した.アシクロビル(ACV)脳症を疑い,VACVの中止及び持続的腎代替療法を施行したところ,速やかに軽快した.後日ACV血中濃度が57.5 μg/mLと判明し,経過も踏まえてACV脳症と診断した.治療前の腎機能が正常であっても,腎機能障害やACV脳症を来しうる.本例のように治療前の腎機能が正常でVACVを投与され,ACV脳症を発症した症例の報告10例中9例が65歳以上であり,特に高齢者では注意が必要である.ACV脳症の症状は非特異的だが,早期に診断できれば薬剤中止のみで改善しうる.帯状疱疹は近年増加傾向であり,プライマリ・ケアの中でACV処方機会の増加が予想される.プライマリ・ケア医はACV脳症を熟知すべきである.

  • 宮本 由香里, 東 利紀, 勝木 保夫
    2024 年 47 巻 3 号 p. 105-110
    発行日: 2024/09/20
    公開日: 2024/09/20
    ジャーナル フリー

    高齢の関節リウマチ女性で間質性肺炎急性増悪時に経鼻高流量療法(NHFT)を行い,短期入院後に在宅療養を行いながらADLが改善,QOLが向上したケースを経験した.寝たきりとなり尿道留置カテーテル使用,摘便・褥瘡ケアが必要だったが,NHFT・在宅酸素をしながら呼吸状態を観察し,訪問看護師がケアを通して,少しずつ離床を促がすことでADLが拡大できた.また,患者は余命短いと言われながらも,外出したいという意欲を持ち続けていた.その気持ちを叶えたいと訪問看護師が考え,行動変容技法のstep by step法を行うことにより,患者・家族とともに看護計画を少しずつ見直していった.結果,患者の自己効力感が高まることで,できることが増えADLも拡大していった.そして,患者の生きる意欲を支えることによりQOLも向上した.今後,在宅でのNHFTが普及・機器の改良が進むことによりNHFT患者の増加が見込まれる.

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